涼宮ハルヒの日常   作:My11

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キョン子「今度は何をするって?」
キョン「映画を作るんだそうだ…」
双子「「……やれやれ…」」


第14章 監督はハルヒ

二学期が始まって二週間ほどが経った。

 

(原作であればそろそろ体育祭がありますが、この作品では6月に終わっています)

 

これほど遊んだと思える夏休みはないだろうと言えるほどの例の二週間がまだ昨日のように思えた。

 

二学期入ってすぐの日々はあたしがあの異世界に飛ばされた時の向こうの日で、もしかしたら夏休み同様同じ事があるのか?と思ったが特に同じような事はなかった。ハルヒの相談があるのかとちょっと思っていたんだがな。まあズレが生じたんだろう。

 

 

 

そんなある日の六限後のHR。クラス内では話し合いが行われていた。

何の話し合いかと言うとあと一ヶ月後に迫った学校行事の一つ、文化祭についてだ。そこで何をするかの話し合いだ。だいたいのクラスが今日の今話し合いを行っているらしい。

 

文化祭と言えば前にキョンから聞いたんだが、ハルヒが一年間の中で一番のスーパーイベントだと言っていたのを聞いたと言う。またなんかやらかしそうだな。

 

あたしがそんな事を考えている内に話し合いが終わったみたいだ。我が6組は多数決で『占い』をすることに決まった。夏姫を中心にやる気満々なのが何人かいるから、たぶん計画は大丈夫だろう。

 

夏姫はキョンの件でかなり学期の始めはへこたれていたが、なんとか吹っ切れたようだ。まあ元気が戻ってよかったよ。

 

 

HRが終わったのであたしと有希、早川は鞄を持っていつものように部室へと足を運んだ。

歩きながら早川が話しかけてきた。

 

 

「占いなんて、ちゃんとできるんかいな」

「さあな。他にあった意見よりマシだからいいんじゃないか?」

「それもそやな」

 

早川は苦笑いしながら言った。

だってだな、他の意見に猫耳付けて喫茶店やろうとかいうのがあったんだぞ?占いのほうがはるかにマシというもんさ。

 

部室に着きドアを開けると、ちょうど朝比奈さんが着替えを終えたところだった。脱いだ制服をハンガーラックにかけながら朝比奈さんはこっちを向いて微笑んだ。

 

「こんにちは。まだまだ暑いですねぇ」

「そうですね。もう暦では秋だと言うのに、きっと地球温暖化が原因ですよ」

「そうかもしれませんねぇ。あ、今お茶煎れますね」

 

そう言って朝比奈さんはいつものようにお茶を煎れ始めた。

あたしはいつもの定位置に座る。机を挟んで早川はあたしの前に、有希は本棚から一冊本を取り出してあたしの左隣りに座った。

 

「有希、その本なんだ?」

 

そう訊くと有希は「これ」と言いながら表紙を見せた。

早川があたしより先に読んだ。

 

「『占いについて』て、長門さっそく文化祭に向けて勉強かいな。感心やな」

「別に……ちょっと知っておこうと思って……」

 

有希は少し照れながら言った。

最近の有希は、本当に表情が豊かになった。まだぎこちなさはあるが、それでも前より笑顔が見れるようになった。

 

「はい、お茶です。キョン子ちゃんたちは文化祭で占いをするんですか?」

 

朝比奈さんがお茶を置きながら言った。

 

「あ、ありがとうございます。そうですよ、まだ具体的な事は決まってませんが。朝比奈さんのクラスは何をするんですか?」

「私のクラスですか?私のクラスは……」

 

朝比奈さんが言おうとした時、部室のドアが開いてハルヒとキョンが入ってきた。朝比奈さんはさっきと同じようにあいさつした。

 

「あ~、喉が渇いたわ!みくるちゃんお茶!」

「は、はい!ただいま!」

 

そう言って朝比奈さんはまたお茶を煎れに行った。ハルヒは団長席にドカッと座った。キョンはあたしの右隣りに来て座った。

朝比奈さんからお茶をもらったハルヒは一気に飲み干した。いつも思うんだが熱くないのかね。

そんなハルヒはどこかうずうずしていて上機嫌のようだ。

 

「なあキョン、ハルヒかなり機嫌がいいみたいだが何かいいことでもあったのか?」

「さあな。ただ今日は大事な話があるから早く部室に行きたいとは言っていたがな」

 

ああ、そう言えば今日の昼休みにハルヒがあたしたちのところに来て『今日部室で重要な会議をするからちゃんと遅れないように来なさいよ!』とか言ってたな。

まあ会議ってもハルヒが一方的に話して勝手に決めるだけなんだけどな。

 

そうしていると、古泉がやっと部室にやって来た。

 

「すいません、遅くなりました。ちょっとHRが長引きまして」

 

そう言いながら古泉はキョンの前の席についた。

 

「よし、これで全員集まったわね。これよりSOS団定例会議を始めま~す!」

 

いつ定例になったんだかわからん会議が始まった。

 

「それで?なんだ、大事な話ってのは?」

 

キョンは厄介な事は何もするなよ?と言いたそうな顔で言った。

 

「決まってるじゃない。これからのSOS団の予定についてよ」

「何の予定だ」

「まったく、だからキョンはバカなのよ。文化祭に向けての予定に決まってるじゃない!」

 

そう言いながらハルヒはニッと笑った。

もう何か考えているみたいだな。

 

「ちゃんと学校中の期待に応えてあげないとね!SOS団の名に恥じないように!」

 

誰の期待にだって?

確かにSOS団という名は学校内で知らない人はいないが、とても奇っ怪な部活として知れ渡っているからで正直言ってこれ以上悪い意味で目立つ事はしたくはない。

 

「みくるちゃんのとこは何するの?」

 

なぜか他のクラスの出し物を訊き始めた。

 

「え?私のクラスは、焼きそば喫茶を……」

「ふ~ん。みくるちゃんはウェイトレスでしょ?」

「な、なんでわかったんですか!?」

 

そりゃあ朝比奈さん。たぶん誰でもわかると思いますよ。とても似合いそうですし。

 

「古泉くんとこは?」

「舞台劇をすることに決まったのですが、どういう劇をしようか揉めているとこです」

 

へえ、舞台劇ねぇ。古泉ならけっこううまくやるんじゃないか?

 

「有希たちは?」

「占いや、占い」

「占い?お前たちが占うのか?」

「そう」

「まだ詳しくは決まってないけどな」

 

そう答えるとそうかいとキョン。

 

「キョンたちは何をするんだ?」

「アンケート発表だとさ」

「ぶっ!な、なんやそれ!?そんなんでええんかい」

 

早川は笑いそうになりながら言った。

 

「そこ!うるさいわよ!」

 

そう言いながらハルヒは団長席から立ち上がった。

 

「みんなのとこはだいたいわかったわ。でもこれからSOS団がやることには敵わないわね」

 

そう言いながらハルヒはニコッと笑い言い放った。

 

「あたしたちSOS団は、映画を作成します!!」

 

………マジか!?

 

映画を撮ると言い出したハルヒが言うことを簡潔にして要約する(できているかはわからんが)と、こういう理由らしい。

映画やテレビドラマなんかの最後に人がよく死んで終わるということがあるが、なぜそうタイミングよく死んでしまうのかおかしいだろう。自分はそういうのが大嫌いだと言う。不自然極まりないらしい。

自分だったらそんな映画は撮らないと考え、ならば自分で撮ってみようと答えが出たそうだ。

 

だがなぜいきなり映画が出てきた?と訊くと、昨日の夜中にたまたまテレビを点けたら変な映画がやっていて何気なく見ていたが、それがあまりにもクダラナイ映画だったらしくこんな映画だったら、自分のほうがもっとマシなモノを撮れるという結論だそうだ。

 

わかりやすく説明出来たかわからんが、まあだいたいこんな感じだ。

 

SOS団の面々はそれぞれの反応を見せる。

 

朝比奈さんはあわあわしながらハルヒの言葉に耳を傾けている。

隣の早川は呆れながらも何も言わずに頬杖をついているな。

古泉はまったく動じることなくいつものスマイルを見せているし、

有希を見ると、占いの本に集中しているみたいだ。

みんなハルヒには反論しないらしい。こうなったハルヒは止まらないとわかっているからな。

 

ただ一人は反論めいたことを言ったがな。

言わずともわかろう。―――キョンだ。

 

「いつからここは映画研究会になったんだよ」

 

早川とはちょっと違う呆れ顔を見せながら言った。

 

「何言ってんのよ。ここは永遠にSOS団よ!映研になんてなった覚えないわ!」

 

そう言われ、キョンはただただハァとため息をついた。

 

「はいはい。わかったけどよハルヒ、お前は映画を作りたいと言う。俺たちはまだ何も言ってない。もし俺たちがそんなの嫌だと言ったらどうすんだ?」

 

そうキョンが言うとハルヒはいつもの笑顔を振り撒いて言った。

 

「安心して。脚本ならほとんど考えてあるから!」

「いや、俺が言いたいのはそうではなくてだな……」

「何も心配しなくていいわ。あんたはいつも通り、黙ってあたしについてくればいいの!」

「「…心配だ」」

 

あたしもキョンに同調して呟いた。

 

「それにしてもまず制作費はどないすんねん。どっから出すんや?」

 

早川、いいとこ気づいた!そうだよ。予算も何もないのに映画なんて撮れないだろう。

 

「予算ならあるわよ。文芸部にくれたやつが」

「何!?だったらそれは文芸部のだろ?」

「有希は使っていいって」

「いいのか?有希?」

 

有希は読んでいた本からあたしに目線を変えて頷いた。

まあ、一応文芸部の部長である有希がいいって言うんなら何も言わないが。

 

「みんなわかったわね!クラスの出し物よりこっちが優先よ!必ず世界がアッと驚くような作品を作るんだから!」

 

おいおいハルヒ。世界ってのは規模がデカすぎるだろ。アカデミー賞でもとるつもりか。

しかしまあ、団長の次は監督か。

 

「じゃあ、今日はこれで終わり!あたしはいろいろと考えることがあるから先に帰るわね。詳しい話はまた明日!」

 

そう言ってハルヒは颯爽と部室を後にした。

 

「「「はぁー……」」」

 

はい。このため息はあたしとキョンと早川のため息である。

 

「映画ねぇ」

「なかなか楽しそうではありませんか」

「一樹、ちょい気楽過ぎとちゃうか」

 

男性陣は各々の気持ちを述べていた。

有希は持っていた本を鞄に入れ帰り支度をしていた。

 

「涼宮さんがどんな映画を作るのか。とても興味がありますね。なんとなく想像できますが」

 

そう言いながら古泉プラス他二名は朝比奈さんのほうに向いていた。あたしと有希もつられて見る。

 

「あ、なっなんですか~?」

 

みんなのコップを片付けていた朝比奈さんはその手をとめてあたふたとしながら頬を赤らめた。

いえ、なんでもないですよ。ただハルヒは次にどんな衣装を用意するんだろうと思っただけですから。

 

しかし、映画……ねぇ。

まあ少しくらいなら興味を持ってもいいかな~っといった感じかな。

はたして、どんなモノが出来るんだろうね。

 

 

次の日の朝。

 

まずあたしに、いや、あたしと有希にとても良い知らせが届いた。

カナダに行った涼子から便りが届いたのだ。

 

―――――――――――――――

 

有希ちゃん、キョン子ちゃんへ

 

元気にしてた?

手紙出すの遅くなってごめんね。

 

母の手術なんだけど、無事成功したわ!かなりの大手術になっちゃったけどね。

他の場所に転移もなかったし、術後の回復も順調よ。

これも二人がくれたお守りのおかげね。

まだちょっと体力のほうが戻らないから、これから父とふたりで母を支えていこうと思ってるわ。

 

こっちの学校でもがんばっているけど、やっぱり二人に会いたいな。

冬の休みになったら一度そっちに戻ろうと思ってるから、その時に会いましょ!

 

それじゃまた。

 

朝倉涼子より

 

―――――――――――――――

 

手紙と一緒に写真も付いていた。

そこには嬉しそうに笑っている涼子と両親が仲良く写っていた。

 

「そっか。お母さんの手術上手くいったんだな。よかったな、有希」

 

有希は少し微笑みながら頷いた。

 

「私たちも、返事を……」

「そうだな、後で返事書こう。写真も撮るか。どうせならSOS団のみんなで撮っちゃうか」

 

そう言うと有希は頷いた。

 

そんなふうに始まった今日は平穏に過ぎていった。

まあ放課後に意表はつかれたが。

 

放課後、あたしたちはクラスの出し物の占いについての話し合いを少ししていた。

 

「やばいな。クラスの出し物より優先しろってハルヒに言われたばかりなのに、遅れて行くと絶対何か言われる」

 

あたしはため息まじりに言った。

 

「しゃあないやろ。クラスの出し物より優先せいっちゅうのは無理な話や」

 

隣の早川が小声で言った。まあ、そうだよな。

教卓のところに立ってリーダーシップをとっている夏姫が話し続ける。

 

「それじゃあ、さっき決めてもらった組同士でそれぞれどういう占いをするか決めておいてくださ~い!で、決まったところから各自練習しておいてください!何か質問は?………ないようなので、今日の話し合いはこれで終わりま~す!」

 

その夏姫の合図にクラスメイトは各々立ち上がり、帰宅する者、部活に行く者とわかれていった。

あたしと占いのペアになったのはもちろん有希だ。後でどういう占いをやるのかをしっかり考えないとな。

 

「そういえば早川、おまえは誰とペア組んだんだ?」

 

部室に向かう途中、訊いてみた。

 

「俺は占いせーへんで。客集めや、客集め」

「な、おまえ卑怯な」

「ええやろ。これも立派な仕事なんやから。ささ、はよう部室行かんと涼宮が怒っとるで」

 

そう言いながら早川は先を急いだ。

 

さて、部室に入ってみるとだ。ハルヒはいないどころか誰もおらず、一枚の書き置きとホワイトボードにデカデカと書いてあるものが目に入ってきた。

まず書き置きの方を読ませていただく。

 

―――――――――――――――

 

今日の部活動は、団長のあたしとみくるちゃんにキョンで機材の調達に行ってくるから無しよ!

ただし、ホワイトボードに書いてあるのをしっかりと見ておくこと!

 

それから、明日からはクラスの出し物なんかで遅れて来るようなことは無しだからね!

 

団長より

 

―――――――――――――――

 

だとさ。

まあ、あたしたちの話し合いは一応区切りがついたし、後は各自の練習なんかをすればいいからなんとかハルヒを怒らせることはないだろう。

 

さてさて、問題はホワイトボードに書いてある方だな。

ハルヒの快活な文字でこう書かれていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

・製作著作‥‥SOS団

・総指揮/総監督/演出/脚本‥‥涼宮ハルヒ

・主演女優‥‥朝比奈みくる

・主演男優‥‥古泉一樹

・脇役‥‥キョン子、長門有希、早川諒

・助監督/撮影/編集/荷物運び/小間使い/パシリ/ご用聞き/その他雑用‥‥キョン

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

全員の大まかな配役が決まっていた。

 

「脇役……」

 

有希は呟くように自分の名前の上に書かれたものを読んだ。

 

「脇役って……もうちょっと違う言い方でもいいだろうに……」

 

ため息をつきながらあたしはそう呟いた。

 

「しっかしな、朝比奈さんが主役で大丈夫なんかいな」

「おい早川。それは朝比奈さんに失礼だろう」

「いや、そんなん言うてもな~」

 

早川は苦笑いしながら言った。

まあ、早川が言いたいことはわかる。あの天然ドジっ子さんの朝比奈さんに主役が務まるのかと考えると、正直言って……はい、すみません。朝比奈さん。

ハルヒに怒鳴られながらやってる朝比奈さんの姿を想像してしまった。

 

「まあまだ俺らはいいほうやで」

「ああ、そうだな」

 

キョン、ご愁傷様ってやつだ。いったいキョンは何役こなさせられるんだ?

雑用関係はすべてキョンだな。こりゃ、これ見た瞬間のキョンは盛大に悪態をつきながらため息をしたに違いない。

 

そんな事を考えていると古泉がやって来た。

 

「すみません、遅くなりました。またHRが……と、涼宮さんはいないんですか?」

「ああ。これと、これを見ればわかる」

 

あたしは書き置きを渡しながらホワイトボードを指差し言った。

 

「ほお、なるほど」

 

古泉は書き置きとホワイトボードを見ながらにこやかに微笑んでいた。

いつもいつも笑顔の絶えないやつだ。

 

「まさかここでも主演を演じることになるとは。いやはや」

「ん?どういう事だ?」

「実は先程のHRで演劇の主役を担当することになってしまいまして」

 

古泉はにこやかにそう言った。

うわ、古泉おまえは大変になりそうだな。

 

 

ハルヒたちがいないので、今日は解散することにした。

古泉と早川はすぐに帰ったが、あたしと有希は文化祭の時にする占いをどうするか話し合うことにした。

 

「何がいいだろうな?」

 

そう考えていると有希が一冊の本を取り出した。

 

「これ」

 

その本には『トランプ占い』と書かれていた。

 

「これなら私たちにも難しくない」

「そうか、じゃああたしたちはトランプ占いにするか」

 

とまあ、意図も簡単に決まった。

後は失敗しないように練習するだけだな。

 

 

有希と軽く話した後家に帰宅すると、キョンはすでに帰って来ていた。

 

「よお、ハルヒとどこ行って来たんだ?」

 

だるそうにテレビを見ていたキョンに訊いた。

 

「ん?ああ、これを見ればわかる」

 

そう言いながらキョンは横にあった紙袋をあたしに突き出した。

中にあったのは……

 

「な、ビデオカメラにモデルガン!?どうしたんだこれ!?」

「ハルヒが手に入れたんだ。しかも無料(タダ)で」

「タダ!?一体どうやって!?」

「さあな。教えてくれなかったが、無理矢理奪っているようには見えなかったから、捕まりはしないだろうさ」

 

そう言いながらキョンはため息をついた。

キョンも大変だな。ま、ご苦労様です。

 

 

 

さて、翌日の放課後まで話を飛ばすが、部室に行く前に夏姫に止められた。有希と一緒に。早川は先に部室へと向かった。

 

「ちょっとユッキーにこれ着てみて欲しくてね」

 

そう言って有希の頭に真っ黒で鍔広なトンガリ帽子をかぶせ、同じ色のマントを着せた。

うん、魔女みたいになった。

 

「やっぱり、ユッキーに似合うと思った!」

 

夏姫にそう言われ有希は自分を見ながら嬉しそうにしていた。

何となく、目が輝いているようにも見えた。

 

「なんだ?これは」

「何って、文化祭ん時にこれをみんなに着てもらうの。なかなかいいでしょ!」

 

まあけっこういい案だろうな。目立つ格好だし。

 

「これ、着てていい?」

 

有希が帽子を掴みながら夏姫に訊いた。

 

「あ、うん。いいよ。じゃあそれはユッキーので。キョン子ちゃんや他のみんなのも随時作っていくから」

 

そう言って夏姫は被服室へと向かった。これから他のリーダーたちと同じ衣装を作ってくるんだそうだ。

 

「有希、それ着て行くのか?」

 

有希はキラキラした目で頷きながら、

 

「着てく」

 

と言った。そうとうその衣装が気に入ったようだな。

ハルヒも気に入りそうだ。もしかしたら映画でも使うことになるかも。

 

そんなあたしの予想は見事的中した。

部室のドアを開けるとすでに全員が揃っていて、魔女の格好をした有希を見て一瞬みんなは凍り付いたように固まった。相当驚いたようだ。

 

「……変?」

 

有希は自分の格好を見ながら心配そうに言った。

 

「いいじゃない!最高よ!有希!」

 

いち早く凍り付けから立ち直ったハルヒが有希の近くに来ながら言った。

有希は嬉しそうに少し頬を染めた。

クラスの占いをやるときの衣装だと伝えると、ハルヒは映画の衣装としても使いましょうと予想通りのことを言った。

 

「ちょうどいい衣装じゃない。よかったわ。有希のコンセプトがなかなか決まらなかったのよ。まさにあたしの考えていた配役にピッタリだわ!」

 

そう言いながらハルヒは団長席へと戻った。

さて、あたしにはひとつツッコミたいところがあるんだが。

 

「朝比奈さんの格好はまだわかるとして、そこにいる早川みたいな物体は何だ?」

 

朝比奈さんは少々小さめだが、映画で使用されると思われるウエイトレスの格好をしていた。なぜウエイトレスなのかはそこはスルーして、なんかけっこう危ない格好だがまあそこもおいておこう。

それよりも、古泉の横にいるのは今この部室内で顔の確認が出来ていない早川で間違ってないよな?

そこには北高の制服を着ているのだが、顔が鹿というなんともありえない生物がいた。

いや、どうせ鹿のマスクを被っているだけなんだろうが、鹿がまたかなりリアルに出来ていて謎の生物に見えてしまう。

 

「ああそれ?諒よ。けっこう似合ってると思わない?」

 

真顔で言ったハルヒにツッコもうとすると、早川がマスクを脱ぎ捨ててハルヒにツッコんだ。

 

「どこがや!シャレにもならへんわ!なんやねん、このマスクは!?」

「何よ~、ただの冗談じゃない」

 

ハルヒは笑いながら言った。

古泉の話によると、あたしと有希が部室に来る直前にハルヒが早川に被せたそうだ。で、早川がツッコミを入れようとした時に、ちょうどあたしたちが入って来たので、ツッコミのタイミングを逃していたというわけだ。

あたしたちはまさにグッドタイミング(いや、バッドタイミングか?)ってやつか。

 

「だいたいやな、なんで俺はいつもいつもこんなんばっかやね……」

「これでみんな揃ったわね。それでは詳しい配役を発表しまーす!」

 

早川をスルーしたハルヒは自分の鞄から数枚のコピー用紙を取り出し、みんなに手早く配った。

受け取った紙を見ると、次のようなことがハルヒの快活な文字で書いてあった。

 

―――――――――――――――

 

『朝比奈ミクルの冒険(仮)』

☆登場人物

・朝比奈ミクル……未来からやって来た戦うウエイトレス

・古泉イツキ……不思議エスパー少年

・長門ユキ……悪の宇宙人魔法使い

・きょんこ……異世界から来た女剣士

・その他エキストラたち

―――――――――――――――

 

……………えーっと、なんだろうね。

まあ、おもしろい配役だがな、なんでこうもピッタリなのか。

 

あの向こうの別の世界の有希たちの立場そのまんまだ。あたしにも異世界人で当てはまる。さすがハルヒと言ったところか。

 

「なんで俺の名前がないねん!」

「だ~か~ら、いい配役が決まらなかったって言ったじゃない。それでさっきの鹿マスク用意してあげたんじゃないの」

「あんなんで出るんやったら登場人物Aとかの脇役のほうがまだマシや!」

 

またまたハルヒと早川の口論が始まった。なかなか早川もしぶといやつだな。

 

「もう、まったく。諒の配役はちゃんと後で考えてあげるから待ってなさい。今はまずこっちが先よ」

 

ハルヒは呆れたように言いながらクルリと振り返り、目をギラギラと光らせた。

その目線の先は………あ、あたし?

 

「さぁ~キョン子。あんたにも着替えてもらうわよ~」

 

両の手の平をワキワキさせながらあたしに近づくハルヒ。

 

「は?え?あ、あたしも??」

 

少しずつ近づくハルヒから逃げるようにあたしは後ずさりするが、運悪くパイプ椅子にぶつかってしまった。

 

「さあ、覚悟を決めなさ~い!」

 

そう言うと同時にハルヒはあたしに飛び掛かって来た。

 

「うわああああぁぁぁ!」

 

朝比奈さん。

あなたの気持ち痛いほどわかりました………。

男子三人はハルヒが飛び掛かった瞬間にはもう部室から退散していた。

 

「……で、なんなんだこれは?」

 

ハルヒに無理矢理着替えさせられたあたしは、自分の格好を見て呆然としていた。というか呆れていた?

 

「何って、あんたの衣装よ。変身後だけどね」

 

ハルヒはニッコリと笑いながら言った。

あたしが今着ている衣装と言うのは、学校指定の制服である。だが、ただのセーラー服ではない。全体が赤い感じになっている。いわゆる色違いってやつだ。

 

「こ、こんなもんどこから……」

「ああ、鶴屋さんにお願いしたらすぐに作ってくれたわ。特注だそうよ」

 

鶴屋さん、またあなたは……ハルヒには甘いですよね。というか人が良すぎですよ。

 

「本当はさ、きょんこは変身すると髪が赤くなるって設定がよかったんだけど、それはちょっと無理かなーって思って服が赤く変わるってことにしたの。けっこう斬新でしょ?」

 

髪が赤くなるって……待てよ?あたし確か剣士だよな?

まさか〇眼の〇ャナみたいにやれとか言わないだろうな。

まあ、さすがにハルヒも炎を操れとは言わない……

 

「そうそう、変身したら炎操りなさい!カッコイイから!」

「無理だ!!」

 

 

この日はハルヒが持って来た衣装を着るだけで終わった。

ちなみに古泉の衣装は?と聞くと、古泉は制服そのままらしい。どうやら学園ものらしいな。ま、あたしの衣装がセーラー服の色違いって時点で気付いたが。

というか、こんな改造制服なんか作っていいのか?先生にばれたらめんどくさそう……。

 

「なあハルヒ、脚本とかは?」

 

部室内に戻っていたキョンがハルヒにそう質問した。

 

「それなら大丈夫よ。ここにあるから」

 

そう言いながらハルヒは自分のこめかみの辺りを人差し指でトントンと叩いた。

 

「は?いや、ちゃんと書いたりしないと……」

「大丈夫よ。その時その時でちゃんとあたしから指示を出すから!あんたは安心してあたしについて来ればいいのよ!」

 

そう言ってハルヒは両手を腰にあてた。

キョンは心配だと言いそうな顔でいつものやれやれをした。

 

 

なんやかんやで翌日から本格的に撮影が開始の運びとなった。

 

まずハルヒ監督が指定した撮影場所は学校の屋上。

なんでも有希とあたしの登場&初対面するシーンらしい。

 

「うーん、どうしようかしら……ユキは宇宙船から降りて……いやいやそれよりも……」

 

何やらハルヒは一人でぶつくさ言っている。

ちなみに、今有希の格好はあの魔女姿。あたしはと言うと……

 

「なあキョン子、なんで着物みたいの着てんねん」

 

そう、あたしは何故かあの色違いの制服ではなく、よく時代劇なんかで登場する侍が着る着物を着ていた。

 

「さあな。ハルヒがこれ着ろって言うからさ。それに、こんな物まで……」

 

あたしの左腰には刀がある。いったいどこからこんな物を?まあ、だいたいは想像がつく…がな。

しっかしなんだ、ちょっと重くないかこの刀。まさか、真剣……?なわけないよな。

 

「よし、決まった!じゃあ有希、こっち来て!」

 

そう言ってハルヒは有希を屋上の端に立たせた。

 

「キョン子、あんたはこっちよ」

 

そう言ってハルヒが指した場所は有希とちょうど反対の場所だった。

向かい合ったあたしと有希。

 

「……で、これでどうするんだ?」

「いい!?これから撮るのはユキときょんこが初めて対面するシーン。ユキはある調査でこの地球にやって来た設定」

 

ハルヒはそう言いながら有希に指指す。有希は頷いた。

 

「それで、きょんこは異世界にいる自分の主からある使命を与えられ、それを遂行すべくこの世界にやって来た設定ね!」

 

そう言いながら今度はあたしに指を指すハルヒ。

 

「調査?使命?なんだそれは」

「ああ、そこんとこは後々。大丈夫よ安心して。あたしの辞書に不可能の文字はないわ!」

 

まあ、そこまで言うんなら心配せんが。

 

「登場の仕方は、そうね………ちょっとキョン」

「ん?なんだ?」

 

ぼーっとしていたキョンにハルヒは話しかけた。

 

「どっからでもいいから、机かなんか持って来なさい」

「はあ?いったい何に……」

「いいから、早く!」

 

そうハルヒが言うとキョンは渋々屋上の入口へと向かった。

 

「ハルヒ、机なんていったいどうするんだ?」

「ふふーん、ユキの登場シーンに使うのよ」

 

なんでもユキは空(宇宙)から舞い降りる感じで登場させたいらしい。そこで、台の上からジャンプして着地するという場面を作りたいそうだ。

 

「キョンが帰って来たらすぐにユキから撮るから、イメージしててね」

「わかった」

 

有希は頷いて、ジャンプして着地の練習をし始めた。

 

「そうそうそんな感じよ!」

 

意外と有希は撮影に熱心だ。まあ、良いことなんだけどさ。

 

「それで、きょんこは、この辺から……」

 

と言いながらハルヒは何もない空間を指し、

 

「……こうバッと飛び出して来て。なんかこう、異次元の歪みから飛び出す感じで!出来るでしょ!?」

 

と明るい笑顔で無茶振りした。

 

「……そんな芸当があたしに出来るとでも?」

「冗談よ冗談。この辺は後で編集の時にCGかなんかでテキトーにするから」

 

その編集ってのはどうせキョンにやらせるのだろうな。

ハルヒから細かい演技を有希と教わっていると、机を抱えたキョンが戻って来た。

 

「よし、じゃあ撮影に入るわよ!」

 

 

 

~ ~ ~

 

夕日で赤く染まったある学校の屋上―――

そこに一人の少女が空から舞い降りた。

その少女はマントを纏い、頭にはトンガリ帽子をかぶっている。

その姿はまるで魔女のようだ。

 

風がそよそよと吹き少女のマントを揺らす。

 

そこへ突然、何処から来たのかまた一人の少女が屋上に現れた。

まるでどこかの侍のような姿の少女は、腰に付けた刀を手に持ちながらそこに片膝をついた。

 

一瞬の沈黙――――

 

やがて、二人の目線が交差した。

 

「……そなた、名をなんと言う」

 

侍風の少女が刀に手をかけながら言った。

 

「……長門……ユキ」

 

魔女風の少女は静かに応えながら、懐から星マークつきの魔法の杖を取り出した。

 

「……あなた、は?」

「あたしは……きょんこ」

 

そう言ってきょんこは立ち上がりながら、刀を鞘からスッと引き抜いた。

 

その場で対峙する二人。

異様な気の流れが二人を包んでいた――――

 

~ ~ ~

 

 

 

「は~い、カーット!!」

 

ハルヒが持参したメガホンをバンバンと鳴らした。

 

「二人ともすごい良かったわよ!」

「あは、あはは。ちょっと恥ずかしかったな」

 

抜いた刀を鞘に入れながらあたしは言った。

 

「いや~、迫真の演技でしたね」

 

レフ板を持っていた古泉がそれを下ろしながら言った。

 

「二人ともかっこよかったですぅ」

 

朝比奈さんにそう言ってもらえると光栄です。

 

「さて、じゃあ次は……」

「おい、ちょっと待てハルヒ」

 

ハルヒの後ろでカメラをいじっていたキョンが待ったをかけた。

 

「何よキョン」

「もうそろそろ下校時間になる。今日はここまでにしないか?」

 

そう言いながらキョンはくたびれたと言いそうな顔をした。

まあ無理もない。なんせ、今オッケーが出るまで十回もやり直しさせられたんだからな。もう夕日もかなり西に傾いていた。

 

「ん~、まあそうね。区切りがいいし、今日はここまでにするわ。みんなお疲れ様!」

 

この一言で無事第一日目の撮影は終了。

 

文化祭まで後一ヶ月とちょっと。

……このペースではたして大丈夫なのだろうか。

 

 

それからの毎日は、マイペースながらも着々と映画撮影は行われていった。

 

まあ、ハルヒ監督の無茶ぶりに朝比奈さんが倒れかけたり、キョンが何かと撮影場所や内容について文句を言うので、幾度もハルヒと口論が勃発するなど大変な事は多々あったのだが。

 

他にも、途中から谷口や国木田、夏姫に真田、鶴屋さんまでもを撮影に引っ張り込んだりした。

しかも何故か鶴屋さんにけっこう重要な役まで与えちゃったもんだから、脇役っぽい役につかされた早川が機嫌を損ねたのは言うまでもない。

なんとか古泉がなだめたがな。

 

 

そんなこんなで、撮影開始から三週間。文化祭まであと四日と迫ったある日……。

 

「……は~い!!カーット!!」

 

この、ハルヒ監督の合図をもって全撮影が終了の運びとなった。

なんだか最後はなかなかの締めだったな。

 

「みんなー!お疲れ~!」

 

ハルヒはとても嬉しそうにそう言いながら、立ち上がった。

 

「ふぅえぇ、お疲れ様でした~」

 

その場に座り込んだ朝比奈さんは、もうへとへとですという感じで言った。

他のメンバーも、その場に座ったり大きく伸びをしたりなどした。

 

「さて、後の編集はキョン!任せたわよ」

 

撮影に使ったカメラをいじっていたキョンにハルヒはビシッと指を指しながら言った。

 

「……おい、マジで俺一人に編集させる気か?どうなるかわかったもんじゃないぞ?」

「何よ、そんなに編集に自信がないの?まあキョンだから仕方ないと思って、CGとかの完成度の高さはあまり期待しないどいてあげるから」

 

そうハルヒが言うとキョンは小さくため息をついた。

 

「ああそうかい。それよりも、後四日しかないのに……時間間に合うかな……」

 

そうキョンはぶつぶつと言いながらも、がんばって編集作業へと取りかかるのだった。

その他のメンバーは、自分たちのクラスの出し物の準備等の手伝いに行った。

あたしと有希の占いもちゃんと出来るようにしないとな……。

 

あ、ちなみにハルヒは映画の宣伝用にとチラシを作る作業をしたそうだ。

 

 

そして文化祭前日。

なんとか編集作業を終わらせたキョンが完成させた、『朝比奈ミクルの冒険』をSOS団のみんなで見ることに。

 

で、まあ結論から言って、なかなかの出来だったのは確かだった。

自分が映っているシーンとかは恥ずかしすぎてあまりよく見なかったが、作品としては良く出来ているんではないかと思う。

 

なんと言っても、キョンの編集が結構良かったってのがびっくりだ。

後で聞くと、なんとあの真田に手伝ってもらったのだそうだ。CGの部分は真田がほとんど請け負ってくれたみたいで、キョンはシーンの繋げる作業などを行っただけだったそうだ。

まさか真田がこんな特技を持っているとはな。驚きだ。

 

「うん!なかなか上出来じゃないの!」

 

映画を見終わったハルヒはかなりご満悦のようだ。

隣を向くと、朝比奈さんが今にも蒸発してしまうんじゃないかってくらい顔を真っ赤にしていた。

そういうあたしもかなり顔を赤くしているに違いない。

 

「なあハルヒ、これ本当に文化祭で上映するのか?」

「何言ってんのよキョン子?当たり前でしょ?そのために今日まで頑張ったんじゃない!」

 

ハルヒは満面の笑みでそう言った。

 

……………くぅ、あれがみんなに………恥ずかしいーーー!!

とにもかくにも、あれこれ大変だった映画も無事完成となった。

 

………もう勘弁したいが、…………来年もするなんて言わないだろうな、ハルヒ?




~あとがきのようなもの~

どうもMy11です。
前回の投稿から随分と間が空いてしまいました。申し訳ありません。

さて、今回の話は原作の『溜息』の部分でした。
正直あまりうまく書けなかったのですが、いかがでしたでしょうか?

少しでも楽しく読んでいただけたら幸いです。
それではまた。
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