亡霊、彼の地にて斯く祟れり   作:餓龍

27 / 42
かなり短いですがお待たせいたしました……!!
いやもう転職したい感じで忙しかったのでポメラ開いてる暇もありませんでして。
これからものんびり続けていきまする。

また絵を頂いておりました!
寺生まれのTさんだそうでw

【挿絵表示】

なんともはやw


隊長と陸将と霊媒師

 

 第三偵察隊の隊長職を解かれ、次に伊丹が与えられた任務は特地における資源状況の調査であった。

 いつもの三人娘にヤオを加えた四人を護衛として率い、今回は八眼童の人形の同行は無しで高機動車に乗り彼らが向かう先は学都ロンデルの街。

 伊丹が求める特地の資源関係の情報を集めるに当たり、レレイのすすめで特地の学者の協力を求めるために向かっている最中である。

 なお伊丹の中ではレレイの導師号への挑戦のほうが優先であり、資源状況の調査は無理せず時間をかけてやっていくつもりであった。

 道中レレイが病気にかかったり(八眼童の協力でレレイの家から薬のロクデ梨を取り寄せてスピード完治)、同じ病気にかかった村を救うために迷宮にあるロクデ梨を入手するべく攻略(壁を爆破解体でショートカット)したり、ロゥリィをもぐもぐ(食事)した迷宮の守護者を討伐してリアル『七匹の子山羊』したりと冒険を繰り広げつつ旅を続けている。

 大小さまざまな障害があったが、普段から八眼童と行動をともにする羽目になっていた伊丹にとっては、祟り神の気配が身近にないだけでも精神的な面で余裕を持てているこの旅はよい息抜きとなっていた。

 

「これ、いつも思うけど中身大丈夫なの? 結構な勢いで落ちてるけど……」

「大丈夫だって。 今までも中身は壊れてなかったろ?」

 

 今回で何回目かになるCー1輸送機からの物資投下で投下された木製コンテナが軽く破損している(壊れることで中身を保護している)のをみて不安げにつぶやくテュカに伊丹は笑ってかえす。

 レレイが運転する高機動車が木製コンテナの側に停車すると、助手席から降りた伊丹はまず減速用パラシュートを手早く畳んで片づけ、解体用のバールで手際よく木製コンテナを解体していく。

 いわれずとも釘抜きで解体された木材から釘を引き抜き、それぞれまとめて高機動車に積み込んでいくヤオに一言礼を告げつつ、伊丹はコンテナ内に積み込まれていた補給物資を分別してテュカと共に高機動車へと積み込み始めた。

 

「いよっと。 ガソリンはいつものとこに、食料と水もいつものとこでよろしくな」

「わかった」

「ねえぇ、これはなぁにぃ? いつもはこんな大きな革の鞄なんてはいってなかったわよねぇ?」

「うん? あぁ、それは丁重に頼むよ。 ロンデルへの荷物だそうだけど、一度中身を確認するようにいわれてるから助手席においといてくれ」

「わかったわぁ」

 

 高機動車の荷台でロゥリィが荷物を受け取り、レレイが所定の位置へと並べていく。

 やがてすべての積み込みが終了すると、伊丹は助手席のドアを開いたまま座席を占領している大きな旅行用の革鞄の鍵を開ける。

 のぞき込んでくるロゥリィに少し下がってもらいながら革鞄のデザインに既視感を覚えつつ、ひょいとふたを開けたその中身は。

 

「oh……」

「あらぁ? ヤツメの人形じゃないのぉ。 やっぱりついてくるのねぇ」

 

 某薔薇な乙女のごとく、膝を抱えた八眼童の人形が入っていた。

 予備パーツや換えの和服に小物なども詰められた中身を一緒に入っていたリストと照らし合わせて確認しつつ、伊丹は思う。

 

 これ、みなかったことにして降神の儀式をせずに片づけられないだろうかと。

 

 伊丹にとっては残念ながら、常に八眼童の加護を受けている以上無視をしても催促がひっきりなしにくることは確定なのだが。

 伊丹は空を見上げ、短かった自由を懐かしんだ。

 

 

 

 

 

 湯気を上げる湯飲みを机に置き、一礼して自身の斜め後ろへ下がっていく人形を見つつ狭間陸将は思う。

 

 どうしてこうなったと。

 

 英霊達の憑依するラジコン飛行機への武装搭載について、搭載可能重量の関係でまともな武装が搭載できないと判明。

 自衛隊の保有する装備類の供与もできないため、少量で絶大な威力を発揮する高性能爆薬を使用した投下爆弾も使用できない英霊達は、ラジコン飛行機そのものを弾頭にした体当たりを前提にした攻撃を自衛隊側に提案し。

 

『生者の相手は我々生者にお任せください。

 それに、たとえその身に何の影響もないのだとしても。

 私は貴官方に、二度と片道の旅路を歩んでほしくはないのです。

 還ってきて、ほしいのです』

 

 狭間陸将による言葉に、ラジコン飛行機に搭載されるはずだった体当たり用追加加速ロケット(模型ロケットの固形燃料使用)は純粋な機体加速用に。

 そしてほぼすべてのラジコン飛行機は武装の代わりに偵察機器のカメラなどを搭載し、英霊達の内の一部は狭間陸将の指揮下へと参加を希望。

 当然狭間陸将はなんとかやんわり断ろうとしたが、八眼童により夢にて英霊達との会談を持たされ、承諾。

 こうして狭間陸将の部屋に、従卒として小柄な女性サイズの人形に宿った英霊達の代表が控えるようになっていた。

 

(ううむ、なれん。 が、偵察についてありがたいのは事実。 ここはいかにして本国に英霊の集めた情報を利用することを認めさせるかが問題か)

 

 狭間陸将は知らない。

 すでに本国でも八眼童が英霊達を引き連れて自衛隊及び政府上層部の夢枕に立ち、英霊の自衛隊指揮下への参入を宣言していることを。

 ただし、英霊達自身が認めた者の指揮下にはいるということを。

 その代表として狭間陸将の名前が挙げられているということを。

 彼は知らない。

 

 

 

 

 

「うぇへへへへ、かゆ……うま……」

 

 バレリーナな青い人形が作りかけの赤い人形を片づけ、里沙がブレイクでジャズダンスな黄色の人形に布団に運ばれていくのを見送り。

 目前に座るフラメンコな緑の人形に宿る八眼童に彼は問いかける。

 彼女がそうなのかと。

 

 神は答える。

 彼女が望むならと。

 

 彼は続けて問う。

 こちらでもおこなうのかと。

 

 神は答える。

 それを人々が望むのならと。

 

 彼は深く深くため息をつき、禿頭を抱える。

 どうしてこんなになるまで放っておいたんだと。

 どうして自分がと。

 どうして、と。




次は日本のになると思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。