亡霊、彼の地にて斯く祟れり   作:餓龍

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ううむ、どうしてもぶつ切りになってしまう。
書きたいとこのために伏線(?)ばら撒く段階です。

皇國臣民 さま、244 さま。
誤字報告ありがとうございます!

そして、ねこです。さまより挿絵を頂きました!

【挿絵表示】

もはやTさんのイメージがAさんに固定されてきていますw

*歌詞の一部を使用してしまい、運営様に怒られてしまいました。
該当箇所の修正終了しましたので再度公開状態にします。
ごめいわくをおかけいたしました。


愚者と祠と教師

 皇太子府を開設することで倒れた皇帝に代わって全権を握り、やがては玉座に座る権利を手に入れた帝国皇太子ゾルザルは哄笑をあげたくなるほどの歓喜に包まれていた。

 自室にて金の酒杯を傾け、最高級の酒を喉に流し込む。

 彼は皆が言う異界の神について、そう警戒すべき相手であるとは考えていなかった。

 なにしろ自身には異界の神のものと呼べる出来事は一切起こっていなかったからだ。

 むしろ最近は、連日悪夢を見続けているという議員の家を訪れたところ悪夢を見なくなったらしく、異界の神の呪いを打ち破るハーディーの加護を受けているとまで呼ばれ始めている。

 異界の神に怯える議員からの支持を得て、さらに権力がその手に集まっている彼にとっては異界の神とはある意味で味方であった。

 わざわざ自分を支持する議員を増やしてくれるとは、心憎いことをしてくれるという冗談を部下の前で放言することができるほどには。

 

「……ゾルザル様。 御身の前に」

「おぉ、ハリョか。 して、どうであった? 足取りは掴めたか?」

「はっ。 炎龍討伐の英雄のうち、新たな異界の神の使徒となったダークエルフはアルヌスの街より動かず。 ロゥリィ聖下をはじめとした残りの者は、魔導師レレイを学都ロンデルへと護送している模様です」

「ほう、さすがに早いな。 しかし、ロンデルか……」

 

 窓の陰から聞こえてきた声が告げる情報にゾルザルは眉をしかめ、腕を組む。

 ごく最近に売り込んできたハリョと名乗る集団は相当手広く、そして深く浸透しているらしい。

 ゾルザルの求める情報をまるで最初から用意していたかのように提供してみせるその集団に、ゾルザルは満足げな笑みを浮かべる。

 

「そうだな、まずはロンデルと周辺の情報伝達を遮断し、ロンデルにて炎龍討伐は聖下の御業であると吹聴せよ。 聖下へ注意が集中した後で魔導師を処理するのだ。 帝国の者ではない英雄はいらん」

「はっ。 しかし他の者達はいかが致しましょう? 聖下がおられる以上、魔導師殿一人を処理するだけならまだしも他の者もとなれば至難かと」

「捨て置け。 神の使徒でもなく、ヒトですらないモノがいくらいようと帝国をゆらがすことはできん」

「承知いたしました。 それでは失礼いたします」

 

 気配が消えたあと、金の酒杯に酒を注ぎつつ思う。

 やはりすべての状況が自身の追い風になっていると。

 地が揺れたあの日に起こったことはすべて何かの間違いだったのだと。

 これから手に入れるすべてが理想の、いや本来の自分の姿なのだと。

 

「そういえばテューレも虚空に話しかけていたりしていたな。 そろそろ壊れるだろうから新しいのを手に入れねばならんか……」

 

 どうせならばニホンジンとやらを手に入れるのも悪くない。

 そう考え、笑うゾルザルは朱い酒を飲み干した。

 

 

 

 

 

 冥府の神ハーディーのベルナーゴ神殿から南に3km。

 人跡未踏の山中にて。

 

「よっと、こんなもんかな? おーいみんな、さがるぞー」

「わかったわぁ」

 

 補給物資を梱包していた木製コンテナの一部として組み込まれていたパーツを釘を使わずにパズルのように組み立て、設置した祠に人形のパーツを納めると伊丹は他の皆と共に高機動車のところまで下がる。

 かわりに前にでた八眼童の人形が、懐から取り出した神呪に満たされた紅い酒杯を一度掲げるとそのまま傾けた。

 

 

  我等が故郷、我等が内にありけり

 

  我等が身、六つに分かたれり

  

  東南東に右腕、西南西に左腕、北北東に右足、北北西に左足、そしてここ南に首と胸

 

  我等が内、我等が故郷ありにけり

 

  ここに我等が故郷を招きけり

 

 

 酒杯から零れ落ちた神酒が地に落ちる直前で宙に溶けて消え、周囲の地面から湧き出るように濃霧が立ちこめ始める。

 八眼童の祝詞が多重に響き、空間が、否世界そのものが塗りつぶされていく。

 やがて揺らぎが収まれば濃霧が一気に晴れ、再び元の光景へと戻った。

 

「なぁにこれ、まるで色の無い霧ねぇ」

「どうしたロゥリィ? いくぞー」

「はぁい。 そんなに急がなくてもいいんじゃないのぉ?」

「さっきからとんでもなくいやな予感がするんだよ……。 こんなところにいられるか、俺は人里に帰らせてもらう!」

「そしてまた刺客にねらわれるのねぇ?」

「おいやめろ」

 

 撤収準備を進める伊丹に呼ばれ、いつのまにか高機動車の荷台に腰掛ける八眼童を視界に入れながらロゥリィは歩き出す。

 その足下を陽炎のような揺らぎが過ぎり、消えた。

 

 

 

 

 

 アルヌスの街、八眼童の社にて。

 すっかり巫女服が板に付いてきたミューティは箒で境内の落ち葉を集めつつ、イヤホンで曲を聴きながら歌を歌っていた。

 

「♪(超重力)」

 

 日本の文化、特に歌唱に興味を引かれたミューティは自衛隊を通して日本の歌を大量に納めたプレイヤーを手に入れていた。

 

「♪(三角関係)」

 

 そのおかげで日本語、英語、ロシア語、中国語にドイツ語に架空言語まで問題なく歌うことができるようになっている(日常会話までできるのは日本語のみ)。

 

「♪(壊れろ)」

 

 なお、そのプレイヤーにはかなりの割合でアニソンやゲームソングが混じっており(伊丹は関与しておらず、後に『これが日本の業か……』とつぶやく姿が見られた)。

 

「♪(吸血鬼姉妹)」

 

 当然ミューティの歌のレパートリーにそれらが多く含まれることになった。

 

 結果。

 

「♪(ソロモン)」

「……すまないが、歌うのはせめてジャンルを統一してくれないかい?」

「あっ、すみません。 それじゃ、えーっと……」

 

 がたっと立ち上がりかけた金長髪赤目の犬っぽい人形を座らせるなぜかマイク持ってる眼鏡人形を横目に、日本の某組織より派遣されてきたミューティの教育係の彼は貧乏くじを引いたと深くため息をついた。

 真剣な表情でプレイヤーを操作するミューティから視線を逸らしてみれば、裏の森での生物採集から帰還したのだろう違法建築妹人形とそれをエスコートする艦隊アイドル人形が現れ。

 それを練習戦艦次女人形が迎えるという、中の人を考えたくないある意味恐ろしい光景に空に視線を逸らす。

 そらした先の空でもラジコン飛行機の群が格闘戦を繰り広げており。

 今頃は自衛隊基地の空港で弓道着組の人形達による地獄が顕現しているのが容易に想像できた。

 

「Rrha ♪」

「そうきたか……」

 

 そしてミューティが精霊魔法の詠唱に使用する技術を応用し、セルフコーラスで謳いだした歌に彼は諦めた。

 元々ミューティの種族が持つ力により、彼女の歌には歌を聴いた者を魅了してしまう力があったのだが。

 八眼童の加護を授けられたためであろう。 今では歌を聴いた者の感情を揺さぶり、歌に込められた想いを伝える力を手に入れていた。

 そう。 神霊妖仏に捧げ、その力を借りることができるほどの域にまで達している力を。

 

「この分野については教えることがないやもしれんな……」

 

 人形達が集まり、独唱会と化した境内を見つつ彼は思う。

 今度リクエストしたのを録音させてくれないかなー、と。




そして以前、サーヴァント化したらというのをつらつら考えてみた結果。


・サーヴァント以前の問題
 まず、FATE世界においては主人公が八眼童になることができないため、大前提としてFATE世界には八眼童が存在しない。
 よって、ゲート世界からの来訪という形になる。
 理由は、ゲート世界とFATE世界の差異が大きすぎるため。


・サーヴァントになるには
 FATE世界には八眼童の座も伝承も月の記録も存在しないため、それらを得るところから始める必要がある。
 が、FATE世界では小さな変化は修正・隠蔽され、あまり大きなことをやればそれこそ抑止力に英霊を送り込まれてしまう。
 それらを得ても、サーヴァントとして召喚される可能性があるのは月の聖杯戦争であるエクストラ、人理焼却後のグランドオーダーぐらい。

 一応それら無しでも、
 ・過去にFATE世界を訪れた異界の神として、月に記録されていた神を再現したサーヴァント(本人ではない)。
 ・聖杯戦争という怨嗟と怨念渦巻く地に、サーヴァントを依代にして本人が登場するタイプ(正確にはサーヴァントではない)。
 ・特異な状況に陥っているカルデアに気づき、サーヴァント召喚に割り込んで訪れるタイプ(もっともサーヴァント化に近いか?)。
 が可能。

となりました。
無駄に色々考えてたし、かなり短いのを番外短編として書こうかしら。

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