誤字報告ありがとうございます!
あと、ポメラではダブルクォーテーションの変換ができないようです。
どうにか考えねば。
年末へ向けての追い込みで、というか忙しいのがずっと続いておりまする。
言い訳にしかなりませんが、こんな感じの不定期更新で行きます。
夜の闇に沈む、自身の居館にて。
眠るために寝台に横になっているピニャはしかし、全く眠れる気がしなかった。
すでに5日はろくに眠れぬ日が続いており、思考にも靄がかかったようにはっきりとしない。
にもかかわらず、とにかくやばいという危機感だけが明確に積みあがっていた。
「ゾルザル兄ぃも、ディアボ兄ぃもわかっていないのだ。 あの異界の神はこの世の神とは違う、積極的に人に干渉してくる神なのだぞ!?」
ゾルザルは自身に追従する者達と共に横暴の限りを尽くし、悪夢に苦しんでいたディアボはこれ幸いとどこかへ姿を消していた。
皇帝の体調も思わしくはなく。 むしろ連日うなされ、目を覚ましても明確に意識を取り戻すことなく憔悴の一途をたどっているという。
「どうにかしなければ、しかしどうすればいいのだ? なにを、どう、あぁあぁぁぁ……」
枕を抱え、顔を埋め。
どうにもならない現実に彼女は苦悩する。
しかし彼女は諦めず、思考を巡らせ続ける。
帝国を、その民を生かすにはどうすればよいのか。
今この国の誰よりも帝国を想い、帝国を救わんとし続けるその姿を。
『彼ら』は見ていた。
夢を見る。
起きれば忘れてしまう夢であり、覚えているのは夢を見ている間だけ。
軋む身体を押し、孫を騙す詐欺師の背中に飛びつく。
階段を共に転げ落ち、孫の恩師を殺した。
愛する男のために、花束に隠し持ったナイフで悪女を刺す。
育ての親を殺され、激高した愛する男に首を絞められて殺される。
妻を喜ばせようと、商人に勧められた髪飾りを贈った。
髪飾りをみた妻に後ろから包丁で刺される。
毎晩のように夢を見る。
殺され、処刑され、絶望で自死し。 いずれも最後は死で終わる。
自身のすべてを奪った女を殺し、胎を暴く。
誠実であった愛する男をその手で殺し、自身の首を裂く。
盗賊の仲間である新入りの護衛を拷問し、待ち伏せの位置を聞き出す。
信用を失い店を潰し、貧困窟で小銭を巡って最期を遂げる。
陰口をたたく側近を解雇する。
信用のおける者を失い、裏切りによって殺される。
他人の記憶のような夢を見る。
そのすべてで最期に怨嗟と憎悪を向けるのは、姿こそ違えどすべてよく知ったヒトの姿。
かつて記憶の持ち主を破滅に追いやった、自身の姿……。
「っはぁっ!? はぁ、はぁ、はぁ……」
「おいおい、またうなされてんのかよ。 そんなんで仕事できんのか?」
飛び起きた直後に視界にはいるのはここ数日宿泊している宿の一室と、あきれた表情をしている男の姿。
思わず顔を覆い、呼吸を整える。
「だからハーディーを信仰しとけっていったんだぜ? なにしろ冥府の神様だからな! 殺せば殺すほど御喜びになるってモンだぜ!!」
「だから貴様のそれは違うと、……まぁいい。 それで首尾は?」
呼吸を整え終えた男は突っ込みつつ服装を正し、装備を確認していく。
「ぜぇんぶっダメッ!! けしかけた奴らは皆失敗してやがるよ。 しかもニホンのエイユウサマが聖下を差し置いて御一行を指揮しているらしいぜ? 殺そうぜ、それしかないっ!」
「余計なことをしてこのうえさらに難易度を上げるわけにもいくまい。 予定通り駒をけしかけ続け、疲労させてから目標だけを処理する」
一通り準備を終わらせた男は宿の部屋を出ると、今日けしかける予定の駒の下へと歩き出した。
「殺せよ、いつものことだろう? 毒がいいか? クロスボウで狙撃もありだな! 短剣は片道だがいつものことだろう? さぁ、殺そうぜ! その手を血で濡らしてさぁ!!」
「黙れっ!!」
道の真ん中で唐突に叫んだ男を奇異の目で見る周囲から逃れるように男は裏道へと歩く。
「殺せっ、殺せっ、殺せぇ!! その手を使って、命を奪えよ臆病者がっ!?」
「黙れと言っている……!!」
裏道を独り、男は歩く。
木靴の音から逃れるように。
男は歩く。
学会で発表を始めようとしたレレイを暗殺するために、獣人女性のノッラが跳躍突撃をし。
空中でその場にいた大半の者達からの攻撃に撃墜され、見事な車田落ちを披露して。
ノッラが退場するのに会場の皆が注意を引かれた隙をつき、シャンディーがレレイの胸元へと短剣を突き込み。
油断なくレレイに近づく者すべてを警戒していた伊丹の拳銃によって手首を撃ち抜かれていた。
さらに言うならば学会発表をすませ、建物から出てきたところを弓での狙撃で狙っていた男は取り落とした毒矢が足に刺さってこの世から退場。
地面に触媒を埋めて地雷とし、通りがかったところを周囲の者ごと吹き飛ばそうとした男は風邪を引いて昏倒中。
そのほかにもレレイを狙い、害そうとした者共はすべて順当な末路を迎えるか、『不幸な偶然』によっていなくなっていた。
それら皆がけしかけられた駒である。
さすがは小さな街ぐらいなら滅ぼせる怨嗟と憎悪を向けられている『笛吹男』、だろうか。
ちなみに個人だとか噂を流しているらしいけど、どうみても組織なんですが。
しかも相当高度に組織化された、暗殺集団というよりアサシンクラス専属の某教団的なやつ。
かなり複雑怪奇に縁が絡まってて、全体の把握には相当な時間がかかりそうだ。
とまぁ今は優先すべきことじゃないのでおいといて。
まだ願われたわけじゃないしね。
帝都では今まで以上の怨嗟と憎悪が大量生産されてるし、対ハーディー対策も順調。
自衛隊への英霊達の協力も形になってきたし、アルヌスに視察団とマスコミも迎えているからその対応。
それにエルフの天文学者のフラットが興味深いことを発表していたし、特地の環境調査の名目で協力してもらわなきゃね。
やることがいっぱいあって大変だね!
とりま書きたいとこが近づいてきてるのは楽しみですがね!