インフィニット・ストラトス ~迷い込んだイレギュラー~ 作:S-MIST
という訳で、タイトル通り2学期終了。冬休み突入となりました。
2学期最終日。朝のホームルーム前。
1年1組の教室は、冬休みの予定を話す生徒達で賑わっていた。
自宅に帰る者。寮に残る者。色々いる。
そんな中で、晶は一夏に尋ねた。
「ところで、一夏は冬休み中どうするんだ?」
「ん~。これと言って特に。あると言えば幾つかの撮影と、正月に箒と鈴とで初詣くらいかな。そっちは何処に行く予定―――あ、そういえば発表あったっけ」
「ああ。正月は束と2人でいる予定だけど、その前後に予定が盛り沢山だよ」
晶の冬休み中の行動予定は、事前にIS委員会を通じて、ある程度周知されていた。
元々そんな事をする予定ではなかったのだが、束が珍しく言ったのだ。
「いきなり私達が動くと、驚いた凡人共が焦ってちーちゃんに連絡したりして、ゆっくり休めないかもしれないからね。大まかな予定だけ教えてあげないかな」
気分は娘の成長を見守る母親だろうか?
閑話休題。
晶の年末年始の予定は、次のように組まれていた。
まずはフランスへ赴き束の代理として、建造中の地下都市を視察。次いでイギリスとドイツに向かい観光――――――となっていたが、この観光は両国への配慮という面が強かった。
というのも現在のフランスは、束や晶との関係という点で見れば1人勝ち状態だ。そこに晶が1人でフランスにだけ行ったのでは、要らぬ嫉妬心から、欧州圏での活動時に足を引っ張られかねない。
なのでクラスメイトがいる事を理由にイギリスとドイツにも行って、少しばかりガス抜きをしてこよう、という訳だった。
ちなみに先日、セシリアとラウラに観光の話をした時の様子は、随分と対照的であった。
セシリアは純粋に喜んでくれたのだが、ラウラは――――――。
「そ、そそそ、そうか。た、楽しみにしているぞ」
何やら妙にうろたえていた。
そして正月は束と2人きりで過ごし、三が日後半は更識姉妹のところにお邪魔する予定だった。とは言っても更識は家の付き合いが多いので、姉妹の背後に誰がいるのかを知らせる意味合いが強い。
(………まさか俺が、こんな活動をするようになるなんてな)
この学園に通い始めた当初は想像すらしていなかった現状に、晶は珍しくそんな事を思う。
そうしている間に織斑先生が教室に入ってきて、朝のホームルームが始まった。
「――――――さてお前達。いよいよお待ちかねの冬休みだ。各人、色々予定を立てて楽しみにしている者も多いだろう。ハメを外し過ぎない程度に、存分に遊んでくると良い。ただ、注意しておいて欲しい事がある」
織斑先生は一度言葉を区切り、生徒達を見回してから続けた。
「例年、夏休みや冬休みの度に、少々問題を起こしてしまう生徒が少なからずいる。それはある意味、仕方のない面もある。お前達はまだ学びの途中なのだからな。手痛い経験から学ぶ事もあるだろう。だがな………お前達のようなヒヨッ子どもにこんな言葉は使いたくないが、お前達は世間からの注目度が高い。問題を起こした時の反動は、他人のそれよりも大きいと思え。そしてもう1つ。IS学園の生徒という肩書きは、お前達が思っている以上に重いぞ。特に夏休みの時とは違って、キャノンボールで実際にISを扱っている姿を晒した後の冬休みでは、入学前の友人も、その周囲にいる人達も、お前達の事をISパイロットの卵として見るだろう。分かるか? 1歩学園から出たら、多くの者はお前達を“IS学園の生徒”“ISパイロットの卵”という色眼鏡で見る。その肩書きに寄って来る不逞の輩もいるかもしれん。だから身を守る為に、極々基本的な事を守って欲しい。怪しい人にはついて行かない。旨い話には裏があると思え。何か困った事があったら友人なり先生なり、誰でもいいから相談しろ。そんな事と思うかもしれんが、こういう基本的な事が、身を守る為に一番有効という事を、胆に命じておいて欲しい」
そうして話された内容は学び舎の教師らしいものであったが、他の一般的な学校で言われるような内容ではなかった。
IS学園の生徒達は皆、将来はISという超兵器を扱う可能性のあるエリート達だ。
そして1年1組は、専用機持ちの数々の華々しい活躍に加え、一般生徒達もキャノンボール訓練機部門で優勝を飾っている。
メディアで一般生徒達も取り上げられている事を考えれば、良い意味でも悪い意味でも、注目される条件は揃っていた。
しかし余り脅し過ぎるのは、織斑先生の本意では無い。注意喚起が出来れば、それで良いのだ。
「――――――とは言っても、心配し過ぎる事はないぞ。伸び伸びと休みを過ごして、変な奴に絡まれたら友人に相談するなり、学園に連絡を入れるなりする、という程度の考えで良い。ISの訓練で言うなら、そうだな………「救援要請は早めに。そしてピンチの時こそ表情に出すな。ハッタリを利かせて効いてないと思わせろ」というところか」
一転して軽い口調となった織斑先生の言葉に、引き締まっていた教室の空気が緩む。
そんな中で晶は、ふと思った。
(確かに、随分注目されてたな)
TVでも繰り返し放送されていたが、それ以外に、雑誌での扱いも大きかった。
例えばキャノンボールが終わった後に発売された月刊『ISファン』特別号。クラスメイトが教室に持ってきたそれでは、1年1組の事が、専用機持ちに次いでページ数を割かれていた。しかもクラスの集合写真まで載せて、卒業を控えている3年生を差し置いてだ。
(面倒事が起きなければ良いな)
冬休みという事で、将来有望だが専用機持ちほど
善悪の方向性はさておき、接触したいと思っている人間にとっては、またとないチャンスだろう。
そして有名になるほど、厄介事というのは寄って来る。
経験的にそれを知る晶は、少し
(後で警備状況、楯無に確認してみるか………)
◇
そうして時間は瞬く間に過ぎて行き、放課後のIS学園生徒会長室。
晶を出迎え、応接用ソファに座ってもらった楯無は、自らコーヒーを入れつつ尋ねた。
「今日はどうしたの? 今のところ、特に何も無かったと思うけど」
「ああ。そんなに深刻な話じゃない。少し聞いてみたい事があっただけなんだ」
「どんなこと?」
「冬休みで結構な数の生徒が実家に帰るだろ? 学園外の警備ってどうなってるのかなぁってね」
「あら、そんな事まで気にするの? 少し意外………でもないわね。晶って、仲間認識した人には甘いもんね。1組のことでしょ」
「………そんなに分かりやすかったか?」
「格差の不満の矛先が1組に向かないように、現役パイロットを招いて模擬戦相手までさせて。幾ら直前に3年生の訴えがあったとは言え、少し頭が回る人間ならすぐに分かるわよ。
言いながら近付いてきた楯無がコーヒーを差し出し、自身は晶の右隣に腰を下ろした。
「ありがとう。―――あ、旨いな」
その言葉に顔を綻ばせつつ、彼女は身体を寄せ、2人の距離をゼロにした。
「私の給仕を受けれる人間なんて、他にいないんだからね」
「嬉しいな。このコーヒーは俺専用か」
「そうよ。有り難く飲んでね」
「そうする」
そうしてもう一口飲んだ晶は、話を本題に戻した。
「で、だ。警備ってどうなっているのかな?」
「日本国内については、更識の各支部を使って、帰省した生徒達の安全確認をしているわ。でも一夏君や箒さん、織斑先生みたいに、専任チームを24時間張り付けている訳じゃないの。対象が一般生徒全員だから、どうしても薄く広くにならざるを得ないわ。だから何かあった時に颯爽と現れて助ける、なんて真似は無理ね。異常の早期発見が精々だわ。そして国外だけど、そっちは完全に他国の領分。欧州の方でなら活動出来なくもないけど、外国に帰省した生徒の安全は、それぞれの国がやることだわ」
「なるほど。ならちょっと質問」
「なにかしら?」
「過去にはどんなトラブルがあったのかな?」
「色々あるわよ。そうね。まず多いのが、帰省した時にIS学園の生徒っていう事で色々持ち上げられてチヤホヤされて、挙句悪い男に捕まっちゃうパターンかな」
「ああ、ありそうな話だな。ちなみに顛末は?」
「学園の対応はケースバイケースだし、本人に余程の過失がない限り、退学みたいな事にはならないわ。でもね、ISパイロットってアイドルみたいな側面があるでしょう。だからね、そういう事があると自然と人が離れちゃうの。就職の時も、ISパイロットとして働くなら個人情報をかなり深いところまで洗われるから………そういう事があると、どうしても少し厳しくなるわ」
「なるほどな」
肯きながら、晶は思った。
今の話は、かなりオブラートに包んだ説明だろう。聞いた状況を想像してみれば、かなり厳しいと分かる。
そんな事を思っている間にも、彼女の話は続いていく。
「――――――でもね、このパターンは危機管理の面では対応しやすい方なの。生徒の心の傷は別にしてね。問題は友人になって、時間をかけて信頼関係をつくって親友になり、少しずつ反社会的思考を吹き込んでいくタイプ。このタイプは発見が難しい上に、
「確かに。個人のプライベートは管理出来ないもんな。最後はダメな事をダメと言える、本人の人間性だけが頼りか」
「そういうこと。でも実を言うとね、私は1年1組の事は余り心配していないの」
「なぜ?」
晶は首を傾げた。
単純に考えるなら、顔の売れている1組の生徒の方が狙われそうだが………?
「こういう事で身持ちを崩したり狙われたりする子ってね、極論すると2パターンしかないの」
「2パターン?」
「ええ。1つは人付き合いの余りない子。もう1つが、異性ね」
「………ああ。なるほど」
数瞬考えて、晶は楯無の言いたい事が分かった。
「分かった?」
「分かった。心の隙間に潜り込むからだな」
「ご名答。今話したような事ってね、人付き合いが余り無かったり、満たされない子ほど掛かりやすいの。例えば詐欺って、誰も好き好んで引っ掛かりたいとは思わないでしょう。そして大体の人は「自分は大丈夫」って思ってる。でもそんなのはね、本職の人間に掛かれば一瞬なの。騙された事にすら気付かせないわ。大体の人って、自分に都合の良い事しか見ないもの。甘い言葉や希望で焚き付けてあげれば、年頃の小娘なんてすぐよ。でも人付き合いがあるとね、冷静な第三者が、それを覚ましちゃう確率が跳ね上がるの。――――――で、話は1組の事に戻るけど、貴方のクラスって仲が良いでしょう。仕掛ける側からしたらそういうクラスってやり辛いのよ。ちょっとした異変がすぐに浮かび上がっちゃうから」
「なるほど、でも異性が絡むパターンはどうなんだ? 恋は盲目って言うだろう」
「そっちはもっと簡単で、1組特有の事情よ」
「………分からないな。一体なんなんだ?」
楯無の言葉に考え込む晶だが、皆目見当がつかずに首を傾げる。
「あら、分からない?」
悪戯っ子のような笑みを浮かべた楯無が、晶の頬を人差し指で優しく
「う~ん。うん。分からないから回答を頼む」
「貴方と一夏君がいるからよ。貴方達2人に慣れたクラスの子が、今更女尊男卑に飼いならされた男を魅力的に感じると思う?」
「人の趣味はそれぞれだろう」
「そうだけど、賭けても良いわ。クラスの子達はね、心の中で必ず貴方達と他の男を比べているわよ。そして思うわ。物足りないってね」
「そんなものか?」
「ええ。一夏君だけでも相当な優良物件なのよ。女性に対して物怖じしない。セカンドシフトマシンのパイロットにして実戦経験者。挙句、同じ
「ちなみに俺は?」
「あら、私の口から言わせたいの? でも秘密。1時間でも2時間でも語っちゃいそうだもの。――――――そんな訳だから、異性関係も余り心配してないのよね。貴方達2人と比べられて、それでもなお近づける男なんて、そうはいないと思うわ、むしろ心配なのは、もっと直接的で短絡的なトラブルだけど、そればっかりは個人で対処してもらうしかないわね」
ちなみに楯無はあえて口にしなかったが、今の1年1組で外に彼氏を作った場合、その生徒は確実に、織斑一夏や薙原晶との接点が減るだろうと思っていた。これはつまり、「アンタは彼氏いるから、一夏君や晶君には近付かなくていいよね」という風に、彼氏持ちの女子を、他の女子がブロックしてしまうだろうからだ。女の子はその辺り、とてもシビアなのだ………。
「なるほど。分かった。ありがとう。――――――次に会うのは、年明けだな」
そんな内心を知る由も無い晶は、コーヒーを全部飲んでから立ち上がり、生徒会長室を後にしようとした。だが歩き出す前に、楯無に腕を掴まれた。
「どうしたんだ?」
「えっと、ほら、その………もうちょっといなさいよ。年明けまで、会えないんだから」
彼女の行動は、反射的なものだった。暫く会えないと思った瞬間、つい腕が動いてしまったのだ。
そして反射的だったが故に、引き止めた本人が一番テンパッていた。
(わたし、なに言ってるの? こんな引き止め方、全然私らしくない! もっと余裕をもって、優雅に!! さ、更識家当主が、こんな生娘みたいな引き止め方なんて、全然らしくない!!!!)
既に思いを告げて、幾度と無く肌を重ねた相手だ。
内心を吐露する事に抵抗は無い。だがそれでも、もう少し優雅に伝えたい、というのが楯無の偽らざる本心だった。
そして彼女が内心で焦っている間に、ソファに腰を降ろした晶が口を開いた。
「悪い。女の子に言わせるような事じゃないな。ただ何て言うか、楯無っていつも傍にいる感じでさ。余り会えないっていう気がしなくて。でも、今のは俺が悪かった」
「ううん。良いの。それくらい身近な存在だって、思ってくれているんでしょう」
素直な謝罪に、楯無も心の声が素直に出てきた。だが彼女としては、もっと“良い女”を演じたいのだ。
しかしさっきの反射的な行動のせいか、どうにも調子が狂う。
(ああ、もう!! 恥ずかしいったらないわ。どこの少女マンガよ!!)
思い出すだけでも赤面してしまう。
そんな中で聞こえた晶の言葉は、場を仕切り直す絶好のチャンスだった。
「楯無。コーヒー、もう一杯貰えないかな」
「え? あ、うん。いいわよ。とびっきりのを煎れてあげるわ」
この後2人は雑談に興じ、とてもコーヒー1杯では足りない時間を、生徒会長室で過ごしたのだった――――――。
◇
その夜、束宅のリビング。
いつもは明るいこの部屋だが、今は明かりが落とされ、部屋の中央には建造中のアンサラーの立体映像が映し出されていた。
全機能を統括する中枢パーツはフレームパーツに納められ、「T」の文字に近しい姿になっている。
そしてアンサラー最大の特徴とも言える傘の部分はまだ無いが、「T」の部分に取り付けられる特徴的な菱形ユニットの半数は、既に取り付けが完了していた。
「――――――やっと、ここまで来たよ」
立体映像の傍らに立つ2つの人影。
その片方、篠ノ之束の感情のこもった言葉が、口から漏れ出た。これが
そして晶も、束の腰を抱き寄せつつ答えた。
「ああ。もう少しだ。これが
「うん。そうしたら月面に本格的な重機を送り込んで資源採掘させても良いし、火星や木星探査のための前線基地を作っても良い。衛星軌道に農業プラントや工業プラントを作っても良いし、宇宙コロニー建造の下準備をしても良い。夢が広がるね!!」
「そうだな。どれから手を着ければいいか分からないくらいだ。束は何からしたい?」
「う~~~~~~~ん、そうだね…………………」
口元に手を当て暫し考える束だが、返ってきた返事は、ある意味で彼女らしいものだった。
「楽しみ過ぎて分かんないや。後で晶も一緒に考えてね」
「勿論だ。ただ、楽しい話ばかり出来ないのが辛いところだな」
「確かにね。元々パワードスーツを世に出した時から予想はしていた事だけど………少し気が滅入るよ」
束が手元に仮想コンソールを呼び出し、アンサラーの立体映像を消去。代わりに世界地図が表示された。
そして地図上には、アラブ諸国、バルカン半島、南米、中印国境付近などにポイントがマークされ、同箇所に表示されているグラフは、右肩上がりを続けている。
「出来れば、外れて欲しい予想だったんだけどな」
晶もため息をつきながら答えた。
表示されているグラフは、それぞれの地域で行われている戦闘回数をグラフ化したものだ。
パワードスーツによって戦力が増強されたのは、軍や警察だけではない。ゲリラやテログループは、正規軍から横流しされた品や強奪したパワードスーツを使って犯罪行為を行い、それらを鎮圧する為に、軍や警察は更なる重武装を施していく。
その負のスパイラルにより、周辺地域が急速に不安定化しているのだ。
これに更に追い討ちをかけているのが、先進諸国で相次いで設立されている
出資元は様々で、国が密かに援助しているところもあれば、大企業が株主のところもある。
つまり民間企業の“自主的な”活動という建前の元、大手を振って介入しているのだ。
「無理でしょ。企業の動きを見ていれば分かるもん。それに――――――」
束が再びコンソールを操作すると、新たなデータが地図上に表示された。
表示されているアイコンは、
「………増えてるな」
「うん。でも正直、少し甘く見てた。まさか、ここまで資本投入するなんて………」
それがこの短期間で、稼働数が18に増えている。建造計画を含めれば、今後更に増えるだろう。
しかも巨大兵器の分かり易い威圧感と破壊力は、そこに存在するだけで政治的なカードになる。
一部地域では既に小競り合いも発生し、周辺地域の緊張は、否が応にも高まっていた。だが束はこれらの情報を調べている中で、1つだけ明るい話題も見つけていた。
「でも晶」
「ん?」
「この地図のデータを見て、何か気付かない」
言われて地図のデータを改めて見直す晶だが、特におかしなところは無い。
しいて言えば、幾つか戦闘の少ない地域がある程度だ。
(あれ? この地域って、確か――――――)
そこで彼は思い出した。
戦闘の少ない地域は、いずれも教導参加メンバーのパイロットがいた国だ。
「気付いた?」
「ああ、俺が教導した奴らのいる場所だ。でも、なんでだ? 俺が教えたのは、あくまで対巨大兵器についてだぞ?」
「私も不思議に思って調べてみたんだけどね。そしたら面白い事が分かったんだ」
束の指がコンソール上を滑らかに移動していくと、グラフの横に新たなデータが追加された。
「これは同じ地域に配属されているパイロット達の出現回数なんだけど、見ての通り、教導参加メンバーの出撃回数が突出してるんだよね。で、更に調べてみると、どうやら歩兵やパワードスーツ部隊の後詰めとして、頻繁に出撃してるみたい」
この時晶の脳裏を過ぎったのは、教導後半に教導参加メンバーが協力しあっていた事だった。恐らく国に戻ってからも、部下やその他の人達と協力関係を築いていき、その結果が出撃回数の増加という形で現れたのだろう。
「それが抑止力になってるのか。あいつらも頑張ってるんだな」
「教導参加メンバーの間でも、連絡も取り合っているみたいだしね」
「なるほど。色々調べたんだな」
「明らかに他よりも戦闘発生回数が少ないからね。ちょっと気になって調べただけ。――――――でも今後、どうしようか? これだけ火種が燻っていると、いつ燃え広がってもおかしくないよ」
「そうだな………」
束の心配は、晶にも理解できた。
パワードスーツを世に出した時から、ある程度は織り込み済みであったが、巨大兵器の出現が紛争拡大に拍車を掛けてしまっている。このままでは予想を超えて紛争が拡大し、宇宙開発に向けられるべきエネルギーが、地球圏内の争いで消費されてしまうだろう。
だが晶はそれらを分かった上で、アンサラーを最優先で
「理由を聞いても良いかな?」
「俺達の力は他人よりもずっと強いが、それでも万能じゃない。出来る事には限りがある。それとも束は、アンサラー計画を遅らせてまで、火種を消して回るかい?」
「論外だよ」
「だろ。それに俺が火消しに回ったって同じさ。NEXTの力は絶大だけど、迂闊に紛争に介入しようものなら、逆に紛争拡大の切っ掛けになりかねない。更識やデュノアだって、急激な勢力の拡大や地下都市の建造で、どちらもリソースをほぼ使い尽くしている。ここで更に行動範囲を拡大させたら、組織そのものが緩みかねない」
「打つ手が無いね」
「ああ。だから、出来る事を先にやってしまおう」
「そうだね。ありがと。少し心配になっちゃって」
「気にするなって。むしろ俺は、色々話してくれた方が嬉しいかな」
「なら、これからもそうするね」
束の返事に、晶は笑顔で肯いた。
こうして当面の方針を確認したところで、束がふと思い出したかのように口を開いた。
「あっ、そうだ」
「どうした?」
「話は変わるけど今回の海外活動、基本的に単独行動でしょ。だから、サポートメカを1機作っておいたの」
束が仮想コンソールを再び操作すると、表示されていた世界地図が消え、今度は晶にとって馴染み深い3Dモデルが表示された。
その下にステータスウインドウが開かれる。
―――Status Window
機体名称:スーパーシミター(※1)
全 高:120cm
全 幅:250cm
WEAPON
MAIN:チェーンガン×1
SUB :スナイパーライフル×2
O.PARTS
広域レーダー
多目的複合センサー
データリンクシステム
備考
SUB WEAPONはアタッチメントにより別武装への変更が可能。
―――Status Window
「あれ、これって」
「うん。君の世界のMTを小型化したやつ。いつまでも
「ありがとう。アンサラーで忙しい時に、大変じゃなかったか?」
「大丈夫だよ。設計図を一から起こした訳じゃないし、私に掛かれば簡単簡単。あ、でも少し注意した事はあったかな」
「どんな事を?」
「一応サポートメカって使い捨ての可能性があるでしょ。だから他人に回収されても問題無い程度の技術力で作るのに。本当なら元の設計通りにプラズマ砲を乗せて、本体ももっと高機能かつ多機能にしたかったんだけど、万一他人に回収されると少し面倒な事になるからね」
晶は画面をスクロールさせ、スペックデータに目を通しながら答えた。
「十分だよ。でもこのサイズで前のメカを上回る性能だ。これが回収されるだけでも拙くないか?」
「商品化しても絶対に採算が取れないだけで、技術的には十分既存の範囲だよ。尤も、凡人が真似するにはちょっと大変かもしれないけどね」
つまり、一点モノのサポートメカということだった。
「分かった。有り難く使わせてもらうよ」
「使う度に、私の事を思い出してね」
「勿論だ」
返事をすると、束の腕が晶の腰に回された。
「もうこんな時間。良い子は寝る時間だね」
時計の針は、夜の11時を指していた。
「そうだな。良い子は寝る時間だな」
「私達は?」
「勿論、悪い子だ」
言いながら、晶の手がいけない方向へと動いていく。
だが彼女は、少しばかり彼を焦らした。
「待った。今日は立ちっ放しでしてた研究が多くて、足が疲れちゃった。ベッドでマッサージを受けてからにしたいな」
「分かった。なら、歩かせる訳にはいかないな」
すると晶は、束を抱き抱えた。
所謂、お姫様抱っこだ。
「え? あっ、こ、コラッ。自分で歩けるから」
「いやいや。疲れている束を歩かせるなんて、俺には出来ないよ。それよりも、ちゃんと掴まってくれないと危ないぞ」
「晶が私を落とす訳ないでしょ。でもまぁ、掴まって欲しいって言うなら、掴まってあげる」
「物凄く掴まって欲しいな」
「即答だなんて、正直者なんだから」
束の両腕が晶の首に回され、2人の身体が密着していく。
そうして2人が入って行った寝室の明かりは、朝まで消えないのであった――――――。
※1:スーパーシミター
登場作品:アーマードコア プロジェクト・ファンタズマ
アーマードコア ネクサス REVOLUTION DISC
クローム製二脚型MTの「シミター」に飛行ユニットを取り付けたタイプ。
本来の装備はチェーンガンとプラズマキャノン二門。
原作では限定的な飛行性能だが、本作中では偵察機として扱えるだけの飛行性能を持つように改良されている。
第106話に続く
学生なので当然冬休みもある!!
という訳で冬休みネタに走ろうとしたら、何故か警備とか安全とかが話のメインになってしまった………何故だ。
そして予想されていた方は多数いたと思いますが、パワードスーツや巨大兵器の出現で割りとヤバイ方向に転がっていってます。