ドラマCD「わたしの、がっこうぐらし」、アニメ11話「きずあと」、12話「そつぎょう」を繋げ、めぐねえ視点で描いてみました。
漫画「がっこうぐらし!」(芳文社様、海法先生、千葉先生)及び、TVアニメ「がっこうぐらし!」(Lerche様、がっこうぐらし!製作委員会様、NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン様等)とは、一切関係ありませんので、ご了承下さい。
この作品は、がっこうぐらし!DVD、BD6巻特典の「わたしの、がっこうぐらし」の続編として創作したものであるため、登場人物や世界観等の詳しい説明はしておりません。また、空気感や間の取り方等を表現するため、段落の作り方等、守ってないルールがございます。ご了承下さい。
私は、佐倉慈。
私立巡ヶ丘学院高校の国語教師。それから学園生活部の顧問だ。
珍しいこともあるもので、今朝は丈槍由紀さんに起こしてもらい、髪をとかしてもらっている。
幸せな朝だ。
……先ほどまで地下の避難区画にいたような気がすることを除けば。
夢だったのかもしれない。
細かいところまでは思い出せない。
「ふんふふ♪ふふーん♪ふふーん♪ めぐねえ、ブラッシング終わったよ~。いつもよりきれいだよ♪」
「もう、からかわないの。でもありがとう。 あと、めぐねえじゃなくて、佐倉先生。」
そんな談笑をしながらも、まだ、何かが腑に落ちない。
先ほど由紀さんが新入部員として、”みーくん”と”太郎丸”を紹介した時も、初めて聞く名前なのだろうが、太郎丸のことは、以前から知っている気がした。
まあ、先ほどよりは違和感も消えてきているので、いずれ忘れてしまうのだろう。
それより、今は朝ごはんを食べ、今日から再開される授業の準備をしなくては。
「さて、丈槍さん。 朝ごはんに行きましょうか。」
「あっ、ごめん、めぐねえ。教室に忘れ物したみたい。先に行ってて。」
「気をつけてね。それと、めぐねえじゃなくて…」
「佐倉先生。でしょ?」
そう言うと由紀さんは教室に向かって走り出した。
「…気をつけてね。」? 教室に行くだけなのに、何に気をつけるんだっけ?
そんなことを考えながら私は学園生活部の部室に向かって歩き始めた。
部室の手前あたりまで来ると、部室の入り口に銀色の短髪に胸元に青いリボンをし、ガーターベルトを履いた女子生徒が立っているのが見えた。
「彼女が新入部員さんかしら。」
そう思い、声をかけようとしたが、私の姿を見たとたん、怖がった様子でその女子生徒は部室に入り、鍵をかけてしまった。
「私、何かしたかしら?」と、少し不安になり、ドアをトントン叩きながら、「開けて。ねぇ開けてよ。」と、言ったつもりだったのだが、声が出ない。
私は戸惑いながらも、ドアをトントン叩き続けると、ドアの向こうから声が聞こえてきた。
「佐倉慈先生…ですよね?
初めまして。直樹美紀、学園生活部の新入部員です。
めぐねえのことはみんなから聞きました。優しくっていつもみんなを支えてたって。」
私はいきなりのことに驚いた。
だが、私も自己紹介をしなくては。
「初めまして、直樹さん。」
そう答えたつもりなのだが、やはり声が出ない。
そんな私に構わず、美紀さんは言葉を続けた。
「みんなを傷つけたくなかったんですよね?
だからここにいたんですよね。
…ずっと。
でも、今はもう大丈夫です。」
……何を言っているんだろう?
「悠里先輩は、みんなのお姉さんで、いつも先のことを見ています。
由紀先輩は、いつも元気で、みんなの支えになっています。
胡桃先輩は……、胡桃先輩は、困った時に頼りになります。
めぐねえがいなかったら、わたしもここにいません。」
……。
私は美紀さんの言葉を聞きながら、本当のことを思い出し始めていた。
あのすべての始まりの日のこと。
学園生活部を作り、記念写真を撮ったこと。
あの子たちが無事にこの学校から笑顔ででられるのなら、そのためなら、私はどうなってもいいと誓ったこと。
あの子たちを守り、人間でなくなったこと。
そして、太郎丸と胡桃さんを襲ったこと…。
その瞬間、今までの違和感が消え、すべてを理解した。
今、私がいるのが、部室前ではなく、避難区画のシャッターの前だということ。
そして、胡桃さんを助けるためには、私がここにいてはならないことを。
私はシャッターを叩くのを止め、しゃがみ込み(倒れ込み)、美紀さんが覚悟を決められるよう、彼女の足をつかんで、シャッターから首をだした。
「…ゆっくり、休んでください。」
こうして、私の命は尽きた。
私は、ウイルスに侵された身体という牢獄からようやく解放されたのだ。
「ごめん。みんな。先生先にいくね…」
私はふわふわと天に昇り始めた。
地上が遠くなり、巡ヶ丘学院高校も小さく見えなくなってきた…。
「……駄目だ。まだいけない。あの子たちを守るためならどうなっても構わないって覚悟したじゃない。戻らなきゃ!」
私はあの子たちを助けるため、由紀さんの元に向かった。
「どうしたの?」
「わたし、行かなきゃ。
行かなきゃ、学園生活部が終わっちゃう気がするんだ。」
「そっか。
じゃあ、放送室を目指しなさい。」
「放送室?」
「そうすれば美紀さんを…、いいえ、みんなを助けられるかもしれない。」
「うん。わかった!」
魂だけの私の言葉が由紀さんに届くか不安だった。だが、同時に、ずっと私のことを思い続けてくれていた彼女にならきっと大丈夫だという自信もあった。
彼女は、私の言葉を受け止め、信じてくれた。
途中で何度も、挫けそうになりながら、必死に進んでくれた。
弱い自分に打ち勝ち、下校の放送をやり遂げ、みんなを助けてくれた。
本音を言えば、下校の放送で、全てが上手くいくと確信があったわけではない。
だが、私がそうだったように、ウイルスに侵された生徒達は、生前と変わらない偽りの学校生活を送っているに違いない。
そして、美紀さんの言葉で、私が真実を取り戻したように、現実からの働きかけは偽りの世界にも影響を及ぼすのではないか、という自信はあった。
私のその自信は的中し、あの子たちはみんな、助かったのだ。
その後、巡ヶ丘学院高校のライフラインが壊滅したこと、備蓄品が足りなくなってきたことも相まって、あの子たちは、この学校から巣立って行った。
最後の行事となった卒業式は、みんなから私へ感謝の言葉を記した色紙が送られ、部長である悠里さんの感謝の言葉で締めくくられた。
「ありがとうございました。」
「いいえ。感謝するのは、私の方。みんなの先生で本当に良かった。これから先、どんな苦難があっても、みんななら乗り越えていける。たとえ、みんなで過ごす日々が思い出になったとしても。」
fin.
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
学園生活部の4人がそれぞれ大きく成長し、巡ヶ丘学園高校から巣立っていくという、感動的なフィナーレを迎えた、TVアニメ「がっこうぐらし!」ですが、DVD&BD6巻特典のドラマCDで、めぐねえが偽りの日常生活を過ごしたまま終わってしまい、どうしてもそれを乗り切って、卒業を見守って欲しくて、創作してみました。
初めて創作したため、読みづらい箇所等もあったかと思いますが、暖かい目で見ていただけるとありがたいです。
ご感想、ご意見などおまちしております。
いつかまた、私の行く道の先で、TVアニメ「がっこうぐらし!」と出会えますように。