トメィト量産工場   作:トメィト

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なんか冒頭だけみたいな感じになってしまったのですが、久々の息抜き話です。
いつも通り頭を空っぽにして呼んでくださいね☆


つまりアラガミってことだな!

 

 

 

 

 

 

 

 IS……正式名称インフィニット・ストラトス。当時女子高生だった日本人の少女、篠ノ之束が作り出したと言われているパワードスーツ。絶対防御という機能を始めとしたとんでもスペックを誇るそれは既存の兵器を軽く凌駕していたらしい。その結果、この世界をひっくり返すという言葉がこれ以上になく合うくらいにはこの世界の情勢を変化させたようだ。

 なんでもこのISという兵器、女性にしか扱うことができないらしい。で、何が起こったのかと言えば既存の兵器を使いこなす(可能性がある)女性=強い、偉い(小並感)ということになってしまったのだという。特にIS開発(正確には兵器や機体の類)が盛んな国ではそれに比例して女尊男卑が広まっていったのだという。まぁ、この手の輩は何処の時代にでも出てくるし別にいいんじゃないだろうか。むしろ俺がこの話を聞いて一番気になったのはこの兵器ISを作り出した人についてである。

 

 当時女子高生だったその子は一体何を思ってこのような兵器を作り出したのだろうか。いや、そもそも本当に兵器を作り出そうとしていたのだろうか?ダイナマイトみたいな例だとするとそれはそれで中々悲惨なことだと思うんだけれども。……その辺は部外者である俺が何を思ったところでどうしようもないか。本人に直接きいたわけではないし、なんだったら俺はつい数分前まで()()()()()()()()()()()()()()んだから。

 

 今までの思考をカットし、頭を切り替える。そしてそれと同時に今俺の目の前でただのガラクタと化した件の兵器―――ISとその操縦士に視線を向けた。ISということで操縦士は当然女性なわけだが、彼女は身体を思いっきり震わせ、こちらをしきりに見上げていた。

 

「お、お願い……殺さないで……」

 

 傍から見たら俺の方が悪役に思えるかもしれないが、ところが残念。こちとら完全に被害者である。いきなり機械を纏った人間に襲われた俺が完全な被害者、そしてここで泣きついているのは哀れにも返り討ちを喰らった加害者に過ぎないのだ。攻撃してきたのが俺でよかったな。別人なら今頃殺人犯にされているところだ。

 

 はぁ、と溜息を一つ吐き、目の前で転がっているISを踏みつぶして空を飛ぶ部分であろう場所を完全に破壊した。流石に空を飛ばれると俺としては困る。オラクルだって無限に湧いてくるわけではないのだ。半分アラガミだから半自動で生成することはある程度可能だけれどもそれも完全というわけじゃないし。

 スラスターを破壊した俺にさらにおびえる女性ではあるが、残念ながら慈悲はない。他人を殺すのであれば殺される覚悟を持つべきである。

 

「この役立たず!なにやってん……!?」

 

 次は何を聴こうか、それを考えているとどうやら女性の仲間と思わしき人物が現れた。ボディ以外は装甲に覆われており、蜘蛛のような形をしているISを使っている人物だ。彼女は壊されたISとその前に立つ俺を見て一瞬だけ動揺したような動きを見せた。けれどもそれも一瞬ISがないと分かった瞬間、こちらに対して殺意を向けてくる。

 

「ちっ、こんなやつの尻ぬぐいなんて面倒くせぇが、仕方ねえ。ここで死ね」

 

 ここの世界は喧嘩ぱやっ過ぎると思う。

 蜘蛛を思わせる―――というかまんま蜘蛛の足に見える部分を使って俺の身体を貫こうと操作する。どうでもいいけれど、ISの操作は思考で行っているのだろうか。もしそうであるならば人間には本来ない部分である足を動かす感覚とかどうなってんだろう。

 機械に対する考察を交えつつ、襲い来る足を回避する。ここいらで速度と反応の鋭さ、ついでに質量等を見ておこうという算段である。

 

「はぁ!?」

 

 どうやら生身で攻撃を避け続ける俺に驚いたのか蜘蛛女は甲高い声を上げた。その声を無視し、ひとまず向かってくる足の一つを蹴り上げてみる。すると、固い装甲の感触とどしっとくる重さを感じ取った。やはり相応の質量はあるようだ。……しかし、完全に防げないほどではない。まぁ、大体アラガミと一緒だ。そこまで問題ではないだろう。一応殺してはいけないと神機は使わないように意識しながら八本の足を潜り抜ける。途中足が伸びた気がしたがきっと気のせいだろう。

 八本の足を操っている当たり、かなりの集中力を使っているのではないかと俺は睨んでいる。その予想に従い八本の足を潜り抜けたのちに俺は全力全壊の蹴りを放った。すると、バチリッとシールドのようなものが発動し、操縦者にはダメージが行くことはなかった。一応衝撃だけは伝わっているらしく、僅かに後退していたがまだまだ戦えそうだ。

 

「成程、あの程度じゃあだめなのか……」

「こ、このクソ野郎!」

 

 蹴り上げた方の足首をぐりぐりしつつ、再び蜘蛛女に視線を合わせてみればどうやら向こうはブチ切れたらしく、足と同時に銃火器も使用してきた。成程、触手で逃げ場を塞ぎつつ銃弾でとどめを刺すと、そういうことなのだろう。実に有効な手段である。

 が、残念なことに――――

 

「化け物かよ!」

 

 体の半分がアラガミ細胞で形成されている俺に、銃弾の類は効果がない。四方八方から襲い来る足を回避しつつ作り出した手刀で銃弾をはじき返していく。機械に搭載されているだけあって経口がは大きいが問題は特になかった。

 

「隙あり」

 

 動揺による動きの揺らぎ。そこをついて、制御の甘くなった足を二、三本ほど拝借し、遠心力の力を借りて蜘蛛女を振り回す。最後の仕上げとしてそのまま地面に叩きつけた。すると再びバチリッという音が鳴る。もしかしてこれが絶対防御というものなのだろうか。

 とりあえず、これ以上襲われても面倒なので、地面に叩きつけた拍子に持っていた三本の足を引きちぎって壊すと同時にそのまま移動。残りの足も本来ついているであろう部分以外は全て引き千切る。千切った部品に関しては神機で処理しているために環境にも優しいのだ。

 

「さてっと……」

 

 なんだかんだで二人とも無力化したわけだけれども、ここから先どうしようか。()()()()がどんなところなのか―――は大体わかったが、ここがどこなのかはわかっていない。そもそもこんなにあっさりと人を殺そうと思えるくらい命が軽い世界の可能性も無きにしも非ず。科学技術はだいぶ進歩してそうだけど情勢自体は中世とかその辺レベルなのだろうか。

 

 必死に頭を回していると、唐突に閃光が目の前を覆った。どうやら先ほどのどちらかが俺から逃げるために閃光玉を投げて逃走を図ろうとしているようだった。

 

「おーっと逃がさないぞ」

 

 ここで彼女たちを逃がしてしまったら俺の存在が公表される可能性がある。あの機械はこの世界に置いて最強に近い位置に居るらしいし、それを生身で倒すことができるとなれば研究対象にされるくらいの可能性は十分にあるだろう。それに、逃がせば確実に愉快な仲間たちを引き連れてお礼参りに来ることも考えられるしな。

 

 地面を蹴りつけ、一歩目で全速まで持っていく。そして、そのまま飛んで逃げようとする蜘蛛女の機械をぶち壊そうと思ったその時――――唐突に横やりが入った。俺の攻撃を受け止めることはせずに横から力を加えることにより進路を変更させたのだ。急に横からの力を受けた俺は当然体のバランスを崩すが、そこは神機使いの意地として耐えた。が、俺を襲撃してきた人間は一撃では足りなかったようで間髪入れることなく二撃目を叩き込んでくる。

 音だけでわかるのは直撃すれば命の危険が訪れるレベルの攻撃である事、尚且つこれが生身の人間が出しているということだけであった。なんということでしょう。先程の兵器ニ連ちゃんよりも確実にこの拳の主の方が強敵というありさま。世界最強の兵器が木陰で泣いている気さえする。

 

 二撃目の拳を掴み、そこから腕をこちらに引き込む。そして、勢いよく身体がこちらに向いてきていることを読んで蹴りを放つ。この場合は足を置いておくという表現でもも間違ってはないだろう。

 だが、向こうはこちらの引っ張る力に抗うことはない。むしろその逆で自分でも俺の方に向ってくる。そして俺の足に接触する瞬間地面を蹴って跳び上がりそのまま頭上を通り過ぎ、逆にその時に発生する勢いを利用して投げ返して来た。

 

 後方に跳んでいく俺ではあるが、すぐに宙返りからの着地を果たし不意打ちかまして来た人物の外見を把握する。

 どうやら俺を襲ってきたのは女性のようで、腰にまで届く若干紫がかった髪が艶めかしい。実に大人の女性という感じであった。しかし、その恰好はしわだらけのエプロンドレスに機械のうさ耳を装着しているという奇怪な恰好である。そして何よりも雰囲気というか生き物としての在り方がラケル博士に似ている気がする。この段階で俺の警戒心はMaxを通り越してもはや迎撃態勢を整えるレベルである。

 

「………」

 

 正面切って対峙するものの、痛い恰好のラケル博士(失礼)は特にアクションを起こすことなく棒立ちをしていた。いや違うな思いっきり俺のことを値踏みしている。頭のてっぺんからつま先までくまなく見られているようだ。

 

 唐突であるが、俺の勘は鋭い方である。元々半分アラガミで他の人よりも五感が鋭いということも関係しているかもしれないが、それ以外にも結構早い段階から鬼畜ゲーよろしくの環境に叩き込まれたからではないかと考えている。何はともあれ、俺の勘は十中八九当たるのだが、その勘が現在俺に警告を鳴らしていた。対象は当然目の前の女性。そして警報の種別は――――ラケル博士に呼び出された時のモノである。

 

「――――脱兎!」

 

 こういう時には逃げるに限る。

 本能のままに、考えるよりも早くその場から脱出を図る俺であったがもう既に遅かったらしい。目の前の女性は今までの無表情が嘘と思える位の笑みを浮かべた。あの顔はどう考えても素敵な実験素体を目の前にしたラケル博士の顔である。もはやいい予感なんてしない。このままダッシュで逃げる。

 

 声をかけられようとも、後ろの方で爆音が響こうとも俺は振り返ることはなかった。只ひたすらラケル博士の幻影を醸し出すあの女性から逃げるために必死に身体を動かした。

 

 

 

 

 

 

――――まぁ、この数時間後には見事に拉致られたんですけどね。後で理由を聞いてみると世界中の監視カメラの映像と自分で作り出した機械たちによる人海戦術で見つけたのだと言っていた。これは酷い。


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