トメィト量産工場   作:トメィト

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内容は前に投稿したものと変わりません。


ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編
もしも仁慈がだんまちの世界に来たら


 

 

 

 

 

 数多のモンスターがうごめき、あらゆる冒険者たちが夢を抱いては死んでいく場所………ダンジョン。

 今、そのダンジョンの中でも極めて異例な出来事が起きていた。

 

 

 

 

 

 

 唐突に現れた、黒く変色したゴライアスは、その階層にいた冒険者たちをすべて結集して相手をした。

 しかし、黒いゴライアスの力は想像を絶し、圧倒的な力に加え、驚異的な再生能力も持ち合わせいた。この時誰もが思った。こんな奴に勝てるわけがないと。だが、それでも英雄を目指す少年を筆頭とする一部はくじけなかった、折れなかった。例え、己が吹き飛ばされようとも、ボロボロの体に喝を入れ、何度でも立ち上がった。何度でも立ち上がり、自身が持てるすべての力を出し切り、己が役目を果たした。

 

 

 そしてついに、その結果が身を結ぶ。

 格上殺しの異名を持つ白髪の少年が、全身を白銀色に染め上げて、鐘の音と共に、再生の暇すら与えない絶対の一撃を放ち、黒いゴライアスの上半身を食い破った。

 圧倒的な力をちっぽけな個人の集団である者たちが力を合わせて紡いだ、まさしく英雄たちの一撃。

 

 

 誰しもが、やったと思った。

 俺たちは勝ったんだと、思った。そう、神でさえも。

 

 

 

 

 

 

 ゴライアスは生きていた。

 上半身こそ失ったものの、モンスターの核となる魔石には傷一つついていなかった。

 核が無事であれば、黒いゴライアスが持っている再生能力が発動する。白髪の少年が放った一撃で消し飛んだ上半身が物凄い勢いで再生しようとしていた。

 それを許す白髪の少年ではない。彼は自分の腰に備えてあったナイフを引き抜き、再生した上半身で魔石が隠れる前に破壊しようとした。

 

 

 

 が、遅かった。

 先程の一撃で葬っておくべきだったのだ。自身の弱点が露見していることを悟った黒いゴライアスは再生と同時に一歩後ろへ下がった。それは生物が故の防衛行動。生み出された体に刻み込まれていた本能。

 

 

 黒いゴライアスの下半身は全体の四割と短いが、それでも魔石を砕こうと宙に身を躍らせた白髪の少年の一撃を回避するには十分な距離だった。

 目標を失った白髪の少年は地面で転がり、何とか衝撃を和らげる。しかし、彼が顔を上げると、眼の前には完全に復活した黒いゴライアスの姿が。

 

 

 

 

 今度こそ、思った。

 俺たちは終わりだ。遠くから見ても強烈だった一撃を受けて生きている奴をどうやって倒すのだ。

 周囲にいた冒険者たちの心は絶望一色に染め上げられる。

 

 

 誰しもが、白髪の少年の最期を……己の最期を悟った、その時……

 

 

 

 「GUOOAAAaaaaaaa!!!????」

 

 

 黒いゴライアスの体が大きく傾いた。それと同時にゴライアスの大きな叫び声も上がった。

 絶望の中に居た冒険者は皆一斉にゴライアスとその周囲に視線を向ける。するとそこで見たものは――――――一人の青年だった。

 

 

 

 

 

 

 髪の色と目の色は、先程ゴライアスの上半身を吹き飛ばす一撃を放った少年と同じような白に銀が混ざったような色に血のような赤目。

 服装は大勢が正気かと思えるほどの軽装備だった。プレートを含めた防具の類は一切身に着けず、背中に狼の顔が刺しゅうされたジャケットに動きやすさ重視のズボンだけである。

 しかし、彼が持つ武器は異様であった。

 

 

 大きさは、武器を持っている青年と同じくらいあるのではないかと思われるくらい巨大なもので、刀身は刀をイメージしているのか片方にしか刃がない。持ち手に近いところには半分に割れた円盤に、この世界では見ることのできない銃口のようなものも取り付けてあった。

 

 

 冒険者たちの頭は混乱を極めた。

 誰だアイツは。あの装備は正気か。どうやって黒いゴライアスをブッ飛ばしたんだ。

 

 

 さまざまな疑問が浮かんでは消える。

 けれど、結局行きつく先は一人でアレを相手取るのは無理だという考えだった。

 

 

 

 

 彼らは知らない。

 この青年が、日夜世界を喰らう化物と対峙していることを。

 

 

 彼らは知らない。

 この青年が、日夜世界を喰らう化物からも化物と思われている、よくわからない存在だと。

 

 

 彼らは知らない。

 この青年が、世界を救った正真正銘の英雄であることを。

 

 

 彼らはまだ、知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラケル博士とサカキ支部長の実験に付き合っていたらいつの間にか良くわからないところに飛ばされたでござる。

 

 

 

 

 

 ……いや、あの二人の実験ってところから嫌な予感はしていたわけですよ。だってさ、あの二人が開発したのはワープ装置だぜ?俺で試す前にものでやってみて成功だったから今度はヒトで……と言う発想は分かるけどさ。それ、控えめにいって人体実験ですよね?

 

 

 そんなことを言いつつ抗議してみても、

 

 

 「大丈夫よ」

 

 

 「そうだとも。我々を信じなさい」

 

 

 と言われて押し切られた。

 その結果がこれだよ!

 

 

 なんか宙に放り出されたし、どこか広い洞窟っぽいところに来たし、周囲にはボロボロの雑巾みたいになった人たちがたくさんいるし、その辺にはクリスタルやら木々やらが生え渡っているし、何より……下半身だけの状態から上半身を再生して元気にしてる黒い巨人みたいなやつが目の前に居た。

 

 

 もう、あの人たちの言葉は二度と信用しないわ……。

 

 

 そんなことを考えつつ、俺は目の前にある巨人の顔に八つ当たり気味の蹴りをお見舞いする。すると、意外や意外。巨人は蹴られたところを押さえながら馬鹿でかい声で騒ぎ出した。

 

 

 そのなりで俺の蹴りが効くとかどんだけひ弱なんだよ……。

 

 

 トンと地面に着地すると、黒い巨人の方も体勢を立て直したらしく、グルグル唸りながら俺の方をジッと見てきた。

 と言うかホントにでかい。首が疲れる。

 神機を二、三回その場で振り回して特に異常がないことを確認するといつでも戦えるように重心を低くする。

 とりあえず足元に行ってみるかと、走り出そうとしたその時背後から声がかけられた。

 

 

 

 「ひ、一人で行く気ですかッ!?」

 

 

 「そうだけど……?」

 

 

 振り向いてみればそこにいたのは十代半ばかと言うくらいの幼い顔立ちをした少年だった。髪の色は白髪で目の色は赤目とか、ちょっと親近感湧いちゃう。

 

 

 「そ、それはあまりにも無謀すぎますよ!いくら自分のステータスに自信があってもアレは普通の階層主じゃないんですよ!?」

 

 

 白髪少年が何やら焦った風に俺を止める。ステータスとか階層主とかいろいろ聞き捨てならない言葉が聞こえたような気もするけど……

 

 

 「グウウォオオオアアアアア」

 

 

 黒い巨人がこっちに向かって腕を振るっているのでとりあえず退避。

 着ている服とか、体のあちこちに傷がある白髪少年を神機を持っていない左腕で咄嗟に抱え込み、大きく後ろに下がる。

 ……とりあえず、この子を安全な場所に置きに行かなくちゃいけないな。

 

 

 「すみません、突然ですがお名前は?」

 

 

 「え?ベル・クラネルって言いますけど……」

 

 

 「それではクラネルさん。貴方の仲間はどこに居ますか?」

 

 

 「へ?えっと……あそこです」

 

 

 「わかりました。今から貴方を仲間のところまで運びますね」

 

 

 その前に目くらましだな。

 俺はクラネルを抱えつつポーチの中にあるスタングレネードを取り出して、クラネルに忠告する。

 

 

 「ちょっとばかし耳と目をふさいでてくださいね」

 

 

 「え?あ?ちょっ」 

 

 

 「それ!」

 

 

 逃げている途中に体を反転させると、俺達目掛けて歩いてくる黒い巨人に向かってスタングレネードを投げる。

 あの巨体でも、音と光は効果があるようで黒い巨人は両手で目を抑えていた。

 

 

 「うぁあああ!目がぁあああ!!」

 

 

 ………こっちも効果があったらしい。

 黒い巨人と同じような反応を示すクラネルを華麗にスルーし、彼が示してくれた仲間のところまで一時撤退する。

 そこには奇抜な服を着た黒髪のツインテールや、女版リンクと言えるような服装をした女性。赤髪の男性や青い髪にメガネをかけた女性などが居た。……カラフルなことだなと思ったのは内緒である。

 

 

 「クラネルさんの仲間であってますか?」

 

 

 「そうだけど……ベル君はどうしたんだい?」

 

 

 唐突に現れた俺に警戒しつつ、奇抜な衣装の黒髪ツインテールの子が俺の質問に答えた。しっかりしてるね。そこで剣を抜き放っている女版リンクさんにも見習ってほしいぜ。気持ちは分かるけど。

 

 

 

 「あー……不幸な事故です。そのうち収まると思うので」

 

 

 状態異常:ムスカなクラネルを奇抜な衣装の子の横に下ろすと、踵を翻して未だにムスカ状態の黒い巨人に向かっていこうとする。

 

 

 

 「ちょ、ちょっと待ちたまえよ!君、もしかしてあれに一人で挑むつもりか!?」

 

 

 「そうですけどなにか?」

 

 

 よほどあの巨人は強いらしい。

 俺が即答すると、クラネルの仲間らしき人達は皆信じられないようなものを見る目でこちらを見てきた。

 

 

 

 「それは無謀ってものだ!アレは君一人でどうにかなる相手じゃない!」

 

 

 「平気ですよ。過去にあのような輩は相手したことがあります」

 

 

 ウロボロスとかアマテラスとか。

 あいつら超でかいし、固いしで狩るのが物凄く面倒なんだよね。その分、あの黒い巨人は相手にしやすそうだ。

 弱点もさっきのやり取りを見てて大体分かったし。

 

 

 「えっ?嘘は………ついてない……君は一体……」

 

 

 黒髪ツインテがなんか言ってるけど、黒い巨人がこっちに気付いたんでとりあえず無視。

 再び重心を低くして、俺は一気に力を解放して地面を蹴り上げ、木々をつたいながら黒い巨人に向けて疾走した。

 

 

 気分は進撃の巨人である。

 

 

 

 

 

 

 

             ―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 冒険者たちは、その場に居合わせた二人の神は、その光景が信じられなかった。

 

 

 「グォオオオオオオオ!!」

 

 

 「耳栓つけといてよかったぜ」

 

 

 絶望の中突然現れた青年は、咆哮を放つゴライアスを完全にスルーして、一気に足元へとその姿を寄せた。そして、手に持っている大剣でゴライアスの足を切りつける。

 

 

 今まで、多くの冒険者がやってきた行動だったが、効果は全く違うものだった。まるで紙でも切り裂くかのように黒いゴライアスの足を両断して見せたのである。

 足を切られたゴライアスはその巨体を地面に横たえたが、すぐに足を再生させると立ち上がろうと両手で自身の巨体を持ち上げた。

 

 

 「おっとそれは困る」

 

 

 しかし、いつの間にか手元まで来ていた青年が今度はその腕に向けて武器を振るい体を支えている腕を切り飛ばす。

 支えを失ったために黒いゴライアスはその顔面を地面へとぶつけた。

 

 

 あまりにも一方的だった。

 その場にいた冒険者が皆そう考えた。俺達でもきれなかった手足を簡単に切り裂き、あの再生能力を前に余裕すら見せている。

 

 

 こんなことができるのはかなりの高レベルになるのだが、そこまで高いレベルであれば、自分たちが知らないわけがない。高レベルの者は神々が宣伝し、オラリオにおいてかなりの有名人になっているからである。

 そんなことを考えているうちに、戦いはもう終わりに近づいていた。

 

 

 腕を再生しつつ、青年に襲いかかろうと地面をはいながら大きな口を開けて突っ込む黒いゴライアス。

 それに対して青年は真っ直ぐゴライアスの口に向けて走り出し、中へと入ってき、飲み込まれる。

 

 

 

 その光景に冒険者たちは唖然とするも、すぐに青年の狙いが分かった。

 

 

 

 青年を食べて満足そうに立ち上がったゴライアスが突然絶叫し始めたのだ。そしてしきりに自身の腹を叩いている。まるで中に入って暴れているものを出そうかというような動きだった。

 

 

 だが、その行動も虚しく、黒いゴライアスはしばらくしてから灰になってその場から消え失せた。

 

 

 残ったのは巨大な武器を肩に担いだ、銀髪赤目の青年だけ……。

 

 

 こうして、ダンジョンのイレギュラーは同じくこの世界のイレギュラーによって特に見どころもなく淡々と倒された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ちょっと待ちたまえ」

 

 

 黒いゴライアスを倒したその後、青年の元にベル・クラネルを筆頭としたパーティーメンバーと神ヘスティア、かつて疾風の名で恐れられていたリュー・リオン、そしてヘルメスファミリアのアスフィ・アル・アンドロメダが件の青年に話しかけていた。

 

 

 「?」

 

 

 神ヘスティアに呼び止められた青年は首を傾げながら彼女たちに振り返る。その様は自分がいったいどのようなことをしたのかまるで理解していないようなさまであった。

 色々と聞きたいことがあり、逆に何て話したらいいのかわからないヘスティアよりも早く、ベルが一歩前に出て青年にお礼を言った。

 

 

 「あ、あの。助けてくれてありだとうございました!」

 

 

 「ん?あぁ……別に大したことじゃありませんよ」

 

 

 何の澱みもなく言い切って見せる青年にヘスティアがようやく何を聞くのか決めたようで口を開いた。

 

 

 

 「なぁ、君は言ったい何者なんだい?あのゴライアスを単独で倒すくらいだし、かなりの高レベルなんだろ?」

 

 

 「レベル……というのは分かりませんが、そういえば自己紹介してませんでしたね」

 

 

 ここで一回言葉を区切ると、

 

 

 

 「どうも、樫原仁慈と言います。何者かと聞かれれば……神喰らい(ゴッドイーター)をやっています」

 

 

 

 と、この世界の神々が絶叫するようなことを平気な顔して口にした。

 

 

 

 

 ここから仁慈の冒険者生活が始まる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続きません。

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