トメィト量産工場   作:トメィト

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いつにもまして意味不明なお話。


もう最後の王とか要らないんじゃないかな

 

 

 

 カンピオーネ。

 

 

 それは人の身でありながら、神々を殺しその権能を簒奪したもののことをさす。

 人の身で神々を殺したことから、カンピオーネとなったものに普通の人間は一切居らずどの人物も一癖も二癖もある人物である。

 その場にいるだけで災害を巻き起こすまつろわぬ神という存在を殺し、人類を守ることが出来る存在であるが、どいつもコイツもまつろわぬ神と変わらないような人物であるため、人類が守られているかというとどっこいどっこいであった。

 まぁ、強大な力をもった扱い辛いキチガイの総称とも言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 某日 日本

 

 

 日本国内の魔術師・呪術師を束ねる国家機関・正史編纂委員会がまつろわぬ神の出現を確認した。

 正史編纂委員会はすぐさま日本唯一のカンピオーネである草薙護堂にこれらを討伐してもらうために彼の近くに居る万里谷祐理に連絡を取った。

 万里谷祐理から連絡を貰った草薙護堂は出現したまつろわぬ神のことを心底恨みつつ、彼のことを好いており、ミラノの魔術結社《赤銅黒十字》に所属しているエリカ・ブランデッリ、同じく好いている《青銅黒十字》に所属するリリアナ・クラニチャール、ある意味日本の切り札とも言えた媛巫女、清秋院恵那を伴って連絡を受けた場所に向かった。

 しかし、その途中。もう一体のまつろわぬ神の出現を告げられる。場所は幸いというべきか不幸と呼ぶべきか、先にまつろわぬ神が出現していたポイントと同じであった。

 この知らせを聞いた草薙護堂一向はさらに足を速める。唯でさえその場に存在するだけで天変地異を巻き起こすまつろわぬ神同士が激突した際の被害を護堂は身をもって知っている。そのこともあり、自分の住む日本で好き勝手はさせないと心に誓いつつ向かうのであった。

 

 

 正史編纂委員会から報告を受けた場所に着いた一同は皆驚愕の表情を浮かべることとなった。何故なら、自分達が想定していた以上に被害が少なかったからである。木々は所々なぎ倒されているものの、戦場となったであろう森も吹き飛んだりはしていない。

 山の一つや二つ軽く消滅させられるくらいの力を持っている神々の激突にしては、あまりにも少なすぎる被害であった。

 それともう一つ。報告には2体のまつろわぬ神が出現したといわれていた。草薙護堂もカンピオーネ特有の獣じみた第六感でそれを事実だと知っている。

 しかし、今いるのは現代風の服装に身を包み、見たこともない武器を持っている銀髪の青年だけであった。

 

 

 呆然とその場に立ち尽くす青年にどうしたらいいのか分からない護堂だったがさらにわからないことがあった。

 何故なら、彼からは同属の気配とまつろわぬ神との気配が同時に来ているからである。カンピオーネは確かにまつろわぬ神の権能を簒奪した者だが、まつろわぬ神とまったく同じ気配を出すことはない。だが、目の前の青年はむしろまつろわぬ神の側面のほうが強くも感じられた。

 

 

 「…………いきなり、なんかピカピカした人が襲ってきたから返り討ちにしたんだけど、これでよかったのだろうか……」

 

 

 独り言で合っただろうその一言はしっかりと護堂達はこの人なんなのだろうかと誰もが疑問に思った。

 この青年がまつろわぬ神であることは多分間違いない。しかし、この青年は今まで会って戦ってきた神々とは何かが違う気がした。なんというか、今までなしえなかった会話での解決が可能なのではないかと自称平和主義者の護堂は思った。

 なので最低限の警戒だけしつつ、意を決して青年に話しかけた。

 

 

 「あーあー……そこのアンタ。聞こえてる?」

 

 

 「それは自分のことですか?って……なんだアイツ女の子侍らしてる……しかも四人」

 

 

 「人聞きの悪い事言うな!」

 

 

 心外だといわんばかりの態度で言い返す護堂だが、言い訳なんて出来ない。どっからどう見ても侍らせているようにしか見えないのである。

 このまま2人が言葉を交わしても脱線しそうなので自称護堂の愛人であるエリカが代わりに口を開いた。

 

 

 「貴方様をまつろわぬ神とお見受けしますが……」

 

 

 「まつろわぬ神?」

 

 

 エリカの言葉に対して返って来た反応は多くのまつろわぬ神が行う不遜な態度での肯定ではなく、困惑に困惑を重ねた返答だった。これには流石のエリカもどうしたものかと首を捻った。

 他の人たちもおおむねそんな反応である。

 誰もが首を傾げるという不可思議な状況になってしまった。

 

 

 「あ、すみません。ここ何処ですか?」

 

 

 「え?日本の××だけど……」

 

 

 唐突に掛けられたなんの脈絡もない問いかけに反射的に答える護堂。それを聞いた銀髪の青年は小さく、また異世界か……と呟いた。

 そんなもう色々取り返しがつかない感じの空間に膨大な力を伴った存在が出現した。しかし、それはまつろわぬ神のものとは違い、もっと護堂に近しい存在……すなわち、カンピオーネである。

 しかも、この気配には覚えがあった。ここ最近、護堂が祐理を守る際に戦った、世界でも最古のカンピオーネ、サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンである。

 

 

 「―――なっ!?何しに来やがった!」

 

 

 「愚問だな小僧。このウォバンの目的は唯一つ。闘争よ」

 

 

 護堂は自分の背後にエリカたちを隠すとヴォバンに食って掛かる。しかし、ヴォバンのほうは護堂なんて意識もせずにその緑色の瞳を銀髪の青年に向けていた。

 一方イイ年した爺さんであるヴォバンから熱い視線を向けられた青年は物凄く吐きそうな顔をしていた。

 

 

 「そこのまつろわぬ神、おとなしくこのヴォバンと闘争を演じるがいい」

 

 

 「なんだこのお爺さん。すっごくえらそう」

 

 

 ヴォバンが自身の権能の一つである『死せる従僕の檻』を発動させる。これは冥界の神オシリスから簒奪した権能で、自分が殺した人間を生ける死者として永久に使役する(生前の知識・技能は保持したままで)というかなりえぐい能力である。また、この死者は何度でもよみがえるという厄介な性質も持っている。

 能力の効果だけでなく見た目もえぐいため、護堂の後ろに隠れている祐理は自身のトラウマも相俟って完全に怯えていた。

 青年のほうも自身の武器を構えて戦闘態勢を整える。

 

 

 「ここは俺のシマだぞ。好き勝手してんじゃねぇ!」

 

 

 

 ついでに今まで静観していた護堂もカンピオーネの本能とかヴォバンのこととか、祐理が怯えたことなどが作用して三つ巴のバトルに発展した。

 

 

 

 

 

 

           ―――――――――――――――――――― 

 

 

 

 

 

 結果

 

 

 

 「嘘、でしょう!?」

 

 

 「なん、だと……!?」

 

 

 「これは、まずいね」

 

 

 護堂は倒れ、ヴォバンは上半身を喰われるという惨状が出来上がった。

 

 

 戦いの流れはこうだ。

 まず最初に何故か青年と護堂が共同してヴォバンをボッコボコにした。護堂だけでは相性と経験の差から難しかったが、そこは青年がカバーした。というか青年とヴォバンの相性が悪かった。その結果マミったのである。

 乱入者ヴォバンを倒した後はその流れのまま護堂と青年が激突。

 なんで戦うんディスカ!?と今まで協力してきた護堂の攻撃に困惑した青年に対して、カンピオーネの本能ゆえに止まらなくなってしまった護堂は権能の攻撃で返事をした。

 そのことで完全に堪忍袋の緒が切れた青年はそのまま相手をし、自身の能力を全力で振るって護堂を地面に沈めた。

 

 

 「あの共闘も、こうして俺を油断させるための罠だったとは……善人そうな人相しているのに、侮れないな」

 

 

 青年の呟きにエリカを含めた全員はやっぱり護堂は平和主義者なんかじゃなかったと思った。

 その後、彼は護堂に止めを刺すようなことはせず、スッとその場を立ち去った。

 神相手ではどうすることも出来ない彼女たちは護堂の治療を行いながらその後ろ姿を見送ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらくして、全世界の魔術組織はある一通の知らせに驚愕した。

 極東のカンピオーネ草薙護堂と最古のカンピオーネ、サーシャ・デヤンスタール・ヴォバンがつい最近現れたまつろわぬ神に返り討ちにされたという知らせが出回ったのである。

 神からも避けられる最古の魔王がやられたという報告は多くの人間を喜ばせると共にそんな神どうすればいいんだという嘆きの声も上げられた。

 ちなみに彼らと同じカンピオーネたちはそのまつろわぬ神に興味をもち、比較的自由に動けるカンピオーネは一斉に行動を開始したのだった。

 

 

 

 

 

 後に、この神を殺すために多くのカンピオーネたちが手を取り、協力して討伐に乗り出すことになるのだが、この段階では誰も知りえなかった。

 

 

 

 

 

 


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