漫画版GXで十代がM・HEROを作るきっかけとなった、デュエルアカデミアでのある日の出来事。

カードの効果は漫画版GX準拠です。
漫画版オリジナルカードもでてきます。
自家製オリジナルカードはありません。



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漫画版で最後まで出番がなかったノヴァマスターさんに出番をあげたい全国のE・HERO使いの願いが集まったので筆をとりました。ぜひ最後までおつきあいください。

初投稿です。


ノヴァマスターに出番を!

四方を海に囲まれた小さな火山島にある学園。ここデュエルアカデミアでは、実技の授業として毎日生徒同士の公開デュエルが行われている。

 

「さあ、楽しいデュエルをしようぜ!」

 

目の前に立つ赤い服を着たいかにも活発そうな少年の声がスタジアムに響く。

今日の実技で俺が対戦相手に指名したのがこの少年、遊城十代だった。俺より二つ下の1年生。オシリスレッドの落ちこぼれでありながら、オベリスクブルーの1年で入学以来負けなしだった万丈目準に初めて黒星をつけた男。他にも"キング"吹雪の妹、天上院明日香やラーイエローの秀才、三沢大地にも勝ち星をあげたらしい。入学前から注目されていたスーパールーキーたちを次々と破っていく彼が注目を集めるのにそう時間はかからなかった。今では誰でも名前は聞いた事があるくらいのちょっとした有名人だ。

そして有名人には噂がつきものだ。彼の強さの秘密について様々な噂が流れている。彼にはプロデュエリストの知り合いがいるとか。アカデミア入学前はプロデュエリストから手ほどきを受けていたとか。彼が使うデッキはそのプロデュエリストから貰ったものだ、とか。

俺は噂の真偽を確かめたかった。彼のデッキが本当にプロデュエリストのものだとしたら。そう思うと気になって仕方なかった。

それに強いやつは山ほどいるこのアカデミアの中で噂になる程の彼の実力も知りたかった。彼のことを運がいいだけ、引きが強いだけというやつもいるが、それだけで勝ち続けられるほどここは甘くない。

両方を確かめるためにはデュエルをするのが一番早い。だから俺は対戦相手に十代を指名した。

 

「ああ、楽しいデュエルをしよう」

 

十代の宣言に応えるとデュエルディスクを起動させた。すぐに展開し、お互いのライフポイントを表示する。その下には『後攻』の文字。準備は整った。

 

「「デュエル!!」」

両者 LP4000

 

「俺の先攻だな。ドロー!フォレストマンを守備表示で召喚!」

 

宣言と共にソリッドビジョンが現れる。大木を右腕に宿した深緑の戦士が飛び出し、十代の前で防御の構えをとる。E・HEROフォレストマン。守備力が高い下級のモンスターだ。

 

「カードを2枚セットしてターン終了!」

 

「お前、ヒーロー使いなのか」

 

「ああ、俺と戦ってきた仲間たちだ!」

 

「へえ。面白くなりそうだ」

 

十代のデッキは噂通りのE・HERO。まずは伏せカードと守備力の高い下級モンスターで様子見といったところか。定石通りの戦法だ。だがそんなものが通じるほど俺は甘くない。デュエルアカデミアで勝ち続け、プロデュエリストを目指すならセオリーに従うと同時に、セオリーに対する決定的なカウンターを用意する必要がある。特に悪役を演じるなら必要不可欠だ。

 

「ダークフュージョンを発動。手札のフェザーマンとバーストレディを融合する」

 

「フェザーマンとバーストレディ!?お前もヒーロー使いなのか?」

 

「ああそうだ。俺のヒーローをみせてやる。ただし、俺のは正義の味方じゃないがな。」

 

フェザーマンとバーストレディが背中合わせになってフィールドに現れる。だがすぐに足元から噴き出した渦巻く炎に飲み込まれてしまう。

強力なモンスターを召喚する時、通常の召喚とは違うソリッドビジョンの演出が入るのだ。何度見てもこの特殊演出はかっこいい。

 

「現れろ、獄炎のE-HERO!インフェルノウィング!」

 

炎を切り裂き漆黒の翼が躍り出る。女性のように華奢な赤い身体。両腕には獣のような荒々しい爪。黒い仮面に隠された顔からは表情を覗けない。

これが俺のE-HERO。E・HEROが持つ悪の側面。邪悪の味方。

 

「すっげー!お前のデッキもヒーローか!そのヒーローもかっこいいな!」

 

十代が黄色い声をあげて飛び跳ねている。ヒーローならなんでもいいのかこいつは……。

一瞬ペースを持っていかれそうになるがすぐに気を引き締める。悪の戦士におちゃらけた雰囲気は似合わない。

 

「ああ。これが俺のE-HERO。悪のヒーローだ。お前の正義のヒーローとどっちが強いか勝負といこうじゃないか」

 

「よし、望むところだ。来い!先輩!」

 

フォレストマンの守備力を越えるインフェルノウィングを前にして来いとは大きく出たな。十代のセットカードは2枚。罠の可能性は十分ある。

ダークフュージョンで召喚したモンスターはこのターン魔法及び罠カードの対象にならない。この効果のおかげで伏せカードのリスクはある程度軽減できている。伏せカードは気になるが、リスクとリターンを天秤にかけるとここで攻めないのは悪手だ。

 

「インフェルノウィングでフォレストマンを攻撃。こいつは守備表示モンスターと戦闘をする時、攻撃力が守備力を越えていればその数値分ダメージを与える。インフェルノブラスト!」

 

インフェルノウィングは翼を羽ばたかせると防御の構えをとるフォレストマンに飛びかかる。大木でできた剛腕は迫り来る悪魔の爪を防ぎきれず、体を貫かれた。余波が十代を襲い、フォレストマンはうめき声をあげて消滅する。

 

十代 LP4000→3900

 

「まだだ!さらにインフェルノウィングの効果発動!相手モンスターを戦闘で破壊した時、破壊したモンスターの攻撃力か守備力のどちらか高い数値分ダメージを与える。フォレストマンの高い守備力が仇となったな。2000ポイントのダメージを受けろ。ヘルバックファイア!」

 

インフェルノウィングが両手に火球を生み出し、放つ。火球は十代の足元に着弾すると巨大な火柱となって十代を焼き尽くそうと燃え上がる。

 

十代LP3900→1900

 

「容赦のない追い討ち、悪者っぽいだろ?」

 

「ぐっ……。トラップ発動。ヒーローシグナル!デッキからE・HEROオーシャンを特殊召喚!」

 

十代の背後から信号灯が照射されスタジアムの天井を照らす。ヒーローを求めるサインに応えた水のヒーローが十代の場に現れる。

 

攻撃に対する罠がなにもなかったことがすこしひっかかっていたが、そうか。ヒーローシグナルを使うためか。

モンスターが戦闘で破壊された時デッキから新たなヒーローを呼びだすトラップカード。十代が呼び出したE・HEROオーシャンは大した強さを持たないモンスターだ。だからこそ気になった。普通のヒーローデッキならオーシャンを呼ぶメリットはない。だが、もし噂が本当なら話は違う。ここでオーシャンを選んだことにも納得がいく。ここは様子見のためのカードを伏せておくのが吉か。

 

「カードを1枚セットしてターン終了」

 

この様子見はセオリーに従ったわけではない。断じて違う。悪は慎重なのだ。

 

「俺のターン。ドロー!マジック発動、戦士の生還。墓地のフォレストマンを手札に加える!」

 

フォレストマンを手札に加えた。これで十代は手元にフォレストマンとオーシャンを揃えたことになる。こちらの場にインフェルノウィングがいることを承知であの2体を揃える理由なんて一つしかない。あの融合モンスターを呼び出すためだ。

 

「今度は俺がヒーローを見せる番だ!融合発動。手札のフォレストマンとフィールドのオーシャンを融合!」

 

十代の場にフォレストマンとオーシャンが現れ、光の渦に包まれる。

 

「現れろ、E・HEROジ・アース!」

 

十代の呼び声に応えるように白い巨人が現れ、跪く。惑星そのものと対峙しているかのような威圧感に押しつぶされそうになるのと同時に、腹の底から湧き上がる高揚感で飛び跳ねたくなる気持ちを必死に抑える。それでも抑えきれなかった気持ちが俺の口角を引き上げる。

 

「これが……アースか……!」

 

E・HEROジ・アース

融合・効果モンスター

星8/地属性/戦士族/攻2500/守2000

「E・HERO オーシャン」+「E・HERO フォレストマン」

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカード以外の自分フィールドの表側表示の「E・HERO」モンスター1体を生贄にして発動できる。

このカードの攻撃力はターン終了時まで、生贄にしたモンスターの攻撃力分アップする。

 

 

ジ・アース。世界に1枚しかない幻のヒーロー。第3回デュエル世界大会でE・HEROと共に世界を征した日本人デュエリストに贈られたカード。

 

「そのカードが出てくるってことは、噂は本当だったんだな。十代。お前のデッキが響プロのものだって」

 

「……あ、ああ。そうだよ。もらったんだ。紅葉さんから」

 

本当だったのだ。遊城十代のデッキは元世界チャンピオン、響紅葉のデッキだというあの噂は。世界チャンピオンになってすぐプロデュエル界から姿を消した響プロがある少年にデッキを預けたという都市伝説は。

 

「驚いたな。本当に響プロのデッキなのか。俺は小さい頃から響プロのファンでな。ヒーローを使い始めたきっかけも響プロなんだ」

 

気持ちの高ぶりを抑えられず思わず饒舌になってしまう。悪らしからぬ振る舞いだが、止まらない。

 

あの日、響プロが世界の頂点に立った時、俺は現地でその瞬間を見ていたのだ。最高にかっこよくて胸が踊った。そしてその時決めたのだ。俺もプロデュエリストになって戦うんだと。いつか、俺のヒーローで響プロと対戦するんだと。

それから数々のデュエルを重ねた。プロの舞台に立つためにデュエルアカデミアに入学した。アカデミアでの経験を経て組み上げたのがこの相棒、E-HEROだ。世界の舞台で響プロの使う正義のヒーローと戦うために。数あるHEROカテゴリの中から、俺は悪のヒーローを使うことを選んだ。

だが響プロは引退していた。俺がプロになったとしてももう対戦は叶わない。そう思っていた。だからこそ飛びついたのだ。「響紅葉プロのデッキを受け継いだやつが1年生にいるらしい」という噂に。

そして噂は本当だった。目の前にいる少年が使うアースがその証拠だ。

響プロが引退した今、響プロのデッキを使える唯一の人間が彼なのだ。例えまがい物でも、永遠に叶うはずのなかった夢を前にしてワクワクが止まらなかった。

 

「十代。俺はずっと響プロとの対戦を夢見てここまできた。響プロが引退して叶わぬ夢と諦めていたが……。世界の頂点に立ったヒーローと対戦できるなんて。ヒーロー使いとしてこれほど嬉しいことはない」

 

十代は少し驚いたような、戸惑ったような顔をしていたがすぐに笑顔になってああ、と相槌をうってみせる。少し舞い上がりすぎて困らせてしまったか。気を引き締め直さねば。

 

「響プロのデッキを使ってるんだ。がっかりさせてくれるなよ?」

 

「ああ、任せろ!ワクワクするデュエルをしようぜ!バトルフェイズだ!」

 

楽しそうな表情でそう宣言する十代。言われなくてももうワクワクしすぎてるくらいだが、もう顔には出さない。悪のヒーローは落ち着いていなくては。

 

「いくぜ!アースでインフェルノウィングを攻撃だ!アースコンバーション!」

 

アースが胸元にある赤い結晶からビームを放つ。

ここでインフェルノウィングを失うのはこちらとしても辛い。伏せておいた様子見リバースカードを発動する。

 

「やらせない!速攻魔法、攻撃の無力化。攻撃を無効にしバトルフェイズを強制終了させる」

 

空間が歪み、発生した時空の渦がアースの放った光線をどこか異空間へと飛ばしたことでインフェルノウィングは破壊を免れる。

 

「くっ、カードを1枚セット!ターン終了だ」

 

「アースには驚かされたが、所詮はステータスの高いモンスターでしかない。セットカードには無力だったな」

 

アースは強力な攻撃力アップ効果を持っているが、魔法や罠に対する効果を持っていない。また、攻撃力アップ効果も使えるのは自分のターンだけだ。こちらの場にモンスターが残っていれば十分反撃はできる。

 

「俺のターン。インフェルノウィングを生け贄にE-HEROマリシャスエッジを召喚」

 

生贄にしたことでインフェルノウィングが光となって消滅する。かわりにフィールドには漆黒の魔人が現れる。全身から棘が生え、背中には刃のような半円状の翼。手の甲からは鋭い針が伸びる。顔は黒い仮面に隠されているが、わずかに覗いた口元は邪悪に釣りあがっている。

 

E-HEROマリシャスエッジ

効果モンスター

星7/地属性/悪魔族/攻2600/守1800

相手フィールド上にモンスターが存在する場合、

このカードはモンスター1体をリリースして召喚できる。

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、

その守備力を攻撃力が超えていれば、

その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

「目の前の敵を倒せないなら融合モンスターだろうが生贄にしてより強力なモンスターを召喚する。いかにも悪のヒーローってかんじだろ?いくぞ。マリシャスエッジでアースを攻撃!ニードルバースト!」

 

「トラップ発動。ヒーローバリア!ヒーローへの攻撃は無効になる!アースは破壊させない!」

 

マリシャスエッジが全身の棘を飛ばしてアースを攻撃するが、アースはバリアを生み出してそれを防いだ。ソリッドビジョンが生み出すそれはさながらヒーロー映画のワンシーンだ。

 

「ここでヒーローバリアか。カードを1枚セットしてターン終了」

 

効果を使った時の攻撃力を考えるとできればアースは破壊しておきたかったが、贅沢はいえない。それに今伏せたカードを考えるとアースが残ったのはむしろ好機といえる。

 

「俺のターン。ドロー!強欲な壺を発動。カードを2枚ドロー!E・HEROフラッシュを召喚し、アースの効果発動。フラッシュを生贄にしてその攻撃力1100ポイント分、自分の攻撃力をアップさせる!」

 

十代が効果の発動を宣言するとフラッシュはアースに吸収された。アースの身体は赤く輝きだし、腰についている2本の突起を引き抜くとそれを構える。突起からは勢いよくマグマが噴き出し続け、まるてま剣のようになっている。

 

「さらにフラッシュの効果発動。墓地に送られた時、墓地の魔法か罠を手札に加える。俺は強欲な壺を選択する」

 

生贄にしたフラッシュの効果で墓地の魔法を回収。しかもそれが強欲な壺ときた。こちらのモンスターを倒すための攻撃力を用意しつつアドバンテージの回復も行う。隙のない戦術だ。響プロのデッキを使いこなしている。だがーー。

 

「攻撃力3600になったアースでマリシャスエッジに攻撃だ!アースマグナスラッシュ!」

 

さっきのターンもそうだが、十代はこちらのセットカードを処理する術を持たない時、とりあえず攻撃してくる。だからそこに罠を張る。もし相手が響プロだったとしたら通じない程度の罠だが、ヒールは手段を選ばない。

 

「こちらの伏せが1枚だからといって、無視して突っ込んでくるのは感心しないな。リバースカードオープン。ヘイトバスター!自分の悪魔族モンスターが相手モンスターから攻撃された時、戦闘に参加したモンスターを全て破壊し相手モンスターの攻撃力分ダメージを与える」

 

「っ……!マジック発動!残留思念。墓地にいるモンスター2体をゲームから除外することでそのモンスターの思念がプレイヤーを守り、このターン受けるダメージを0にする!」

 

初めのターンから伏せてあったあのカードがまさかあんなカードとは。ヒーローシグナルや戦士の生還を使ってアースを召喚する前提の動きをしていたから、アースをサポートするカードかと思い込んでいた。俺が出し抜かれたのか。それともただの偶然か。

どちらだったとしても大きな問題ではない。結果的にこの場での駆け引きには負けたが大勢に変わりはない。このターンでの決着こそつけられなかったが、それならプランを切り替えるだけだ。

 

「ダメージは0になってもモンスターは破壊される。マリシャスエッジと心中してもらうぞ。アース!」

 

マグマの剣で斬りかかってくるアースにマリシャスエッジが突進する。マリシャスエッジを斬りつけようと両腕を振りあげたアースの懐に軽やかに飛び込むとカカカカ!と笑い声をあげながら爆発した。直撃をうけたアースは烈火の輝きを失い、その場でぐらりと倒れこむと光となって消えていった。

 

「くそっアースが……!」

 

十代が苦しげな表情をみせる。切り札を失い、召喚権はもうつかっていて場を開けた状態でターンを渡すのだ。次の自分のターンまで命がけの綱渡りだ。誰でもあんな表情をするだろう。

 

「強欲な壺を発動。カードを二枚ドロー。カードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

「俺のターンドロー。強欲な壺を発動。2枚ドロー」

 

現在、残りのライフポイントでは俺が有利だが手札やセットカードの枚数では向こうが有利。十代にとってここが最大の難関なのと同じく、俺にとってもここは正念場だ。十代は強欲な壺を2回使ったにもかかわらず伏せたカードは2枚だけ。つまりあとのカードは守るためのカードではなく攻めるためのカードということだ。十代に次のターンを渡すわけにはいかない。

 

「いくぞ十代。マジック発動。ダークコーリング。このカードはダークフュージョンとして扱い、融合を行う時、手札、墓地のカードを使用できる。墓地に眠るマリシャスエッジとインフェルノウィングを融合。現れろ、最凶のヒーロー!」

 

俺たちの立っている舞台が割れた。大地の裂け目から闇と焔が溢れ出す。黒と赤の間から覗く溶岩。その中から悪がゆらりと姿を現す。

 

「E-HEROマリシャスデビル!」

 

地上に這い出る悪魔。マリシャスエッジの面影を残しながらもその姿は大きく変わっていた。身体は肩の部分が突出した黒い鎧に覆われ、手の甲についていた針は禍々しい巨大な爪に変化している。背中の翼はそれぞれが身の丈ほどもある刃になり、顔を隠す仮面からも6本の刃が生え、唯一変わっていないのは口元に張り付いた邪悪な笑みだけだ。

 

E-HEROマリシャスデビル

融合・効果モンスター

星8/炎属性/悪魔族/攻3500/守2100

「E-HERO マリシャス・エッジ」+レベル6以上の悪魔族モンスター

このカードは「ダーク・フュージョン」による融合召喚でしか特殊召喚できない。

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手ターンのバトルフェイズ中に

相手フィールド上に存在するモンスターは全て表側攻撃表示になり、

相手プレイヤーは全てのモンスターでこのカードを攻撃しなければならない。

 

十代の場にセットカードはあるが俺の手札には我が身を盾にがある。ライフポイントと引き換えにモンスターのカード効果による破壊を防ぐカードだ。破壊をせずに攻撃を防ぐヒーローバリアはヒーローが攻撃された時しか使えないため、ダイレクトアタックは防げない。

2枚ともモンスターを破壊するカードだった場合俺の負けだが、その時は諦めよう。悪には潔さも大切だ。

 

「悪は死んでも地獄から這い上がり、蘇る。さあ、終わりだ十代!マリシャスデビルでダイレクトアタック!」

 

「速攻魔法。クリボーを呼ぶ笛!デッキからハネクリボーを守備表示で特殊召喚する!」

 

『クリクリ〜!!』

 

どこからともなく聞こえてきた不思議な笛の音がハネクリボーを呼び寄せる。こちらのモンスターを破壊するタイプのカードであれば手札の我が身を盾にでかわせたが、これは止めようがない。

 

「ちょこざい真似を!ハネクリボーをひねり潰せ、マリシャスデビル!」

 

マリシャスデビルがハネクリボーを串刺しにする。クリクリ〜……と悲しげな声をあげてハネクリボーが消滅する。

 

「サンキュー相棒。助かったぜ」

 

ハネクリボーに感謝の声をかける十代。俺はそいつに恨み言でもこぼしたい気分だが。このターンで決められなかったのは痛い。だが不幸中の幸いとしてマリシャスデビルは場に残っている。そして我が身を盾にともう1枚のトラップがある。ここからはジリ貧だが、まだ十分戦える。

 

「カードを2枚セットしてターン終了」

 

「俺のターン!ドロー!壺の中の魔道書を発動!互いにカードを3枚ドロー!」

 

「いいのか?俺に3枚もドローさせて」

 

「ああ。俺はこのターンで決着をつけるからな!」

 

手札が3枚増え返しのターンでの展開の幅が広がった。この手札ならターンが回ってくれば確実に勝てる。十代もそのリスクは承知のはずだ。宣言通り、このターンで決めに来るだろう。なら俺は全力で迎え撃つだけだ。

 

「さあいくぜ!マジック発動、魂の帰還。墓地の戦士族を2枚デッキの一番上に戻す。フラッシュをデッキの一番上に戻し、アースを融合デッキにもどす。さらにフュージョンバースを発動!自分の山札の上から5枚を墓地に送り、その中に融合素材が揃っていれば融合モンスターを召喚できる!」

 

十代が山札の上から5枚をめくってみせる。墓地に送られるカードはフラッシュ、進化する翼、ライオウ、ザ・ヒート、エアーマンの5枚。

かつて見た響プロの試合を思い出す。響プロが使っていたヒーローでかつ、この中のカードを素材にして出せるヒーローを考える。さらにその中で、マリシャスデビルを倒せるモンスターは……。

1体、思い当たるものがあった。

 

「よしっ、来た!墓地に送ったザ・ヒートとエアーマンで融合!現れろ。渦巻くヒーロー!E・HERO Great TORNADE!」

 

スタジアムのあちこちに大小様々な竜巻が起こった。俺たちのいるスタジアムを一際大きい竜巻が包む。嵐がやむと、十代の場には灰色のマントをなびかせた風のヒーローがいた。

TORNADE。確かにこいつならマリシャスデビルは倒せる。

 

「TORNADEの効果発動。召喚に成功したとき相手モンスターの攻撃力と守備力を半分にする。ダウンバースト!」

 

TORNADEが両手を空にかざすとマリシャスデビルが竜巻に包まれる。暴風雨にさらされ鎧や爪がどんどん錆びついていく。

攻守ダウン効果の演出だ。これでマリシャスデビルの攻撃力は1750。これでは高い下級モンスターにも負けかねない。だが十代の展開はまだ止まらないようだ。

「さらにフラッシュの効果で墓地の強欲な壺を手札に加えて発動!2枚ドロー。平行世界融合を発動!除外されているオーシャンとフォレストマンで融合!」

 

平行世界融合は除外されているヒーロー同士で融合するカード。オーシャンとフォレストマンは残留思念を発動するときに除外していたのか。だがもうアースは破壊されて墓地に……いや、そうだ。魂の帰還でアースは融合デッキに戻っている……!

 

「まさか……全てはこのためか!?」

 

十代は何も言わず、ただニヤリと笑って1枚のカードを高くかかげた。

 

「甦るのは悪だけじゃない。正義のヒーローだって何度でも立ち上がる!舞い戻れ!E・HEROジ・アース!」

 

空間がひび割れ、そこから白い巨人が飛び出てくる。蘇った不屈の戦士がTORNADEの横に並び立つ。巨人はなにもせずともそこにいるだけで俺に重圧を与えてくる。

ジ・アース……。響プロのヒーローの中で最大の攻撃能力をもつヒーローが蘇ってしまった。

 

「さらにサイクロン発動。伏せカードを1枚破壊する!」

 

少しでもトラップカードをくらうリスクを減らすために使ったのか。我が身を盾にを破壊されてしまった。危険は高まるがこのカードはあくまで保険だ。もう1枚の方を破られていたら終わりだった。運は俺に味方している。

 

「さあ、いくぜ!先輩!アースでマリシャスデビルに攻撃!アースインパクト!」

 

アースがエネルギーをまとってマリシャスデビルに突進してくる。

アースの効果を使わなかったのはこちらのセットカードを警戒してのことだろうか。まあつかっていてもいなくても変わらない。どちらにせよこれで終わりだ。

 

「速攻魔法発動。決闘融合・バトルフュージョン!自分の融合モンスターが相手モンスターと戦闘する時、そのバトルの間相手モンスターの攻撃力分だけ攻撃力をアップさせる!」

 

マリシャスデビルがアースを迎え撃とうと大爪を構える。

決闘融合。条件は少し厳しいが、バトルする相手の攻撃力分だけ攻撃力をアップさせるため絶対にバトルに勝つ。さらには自分の攻撃力分の戦闘ダメージを絶対に与えることができる。ヘイトバスターとともに俺が愛用するカードだ。あとこのカードすごく悪っぽい。

 

「相手のパワーを吸収してバトルに勝つ。悪っぽいだろ?」

 

「ああ。すげー悪のヒーローだ!かっこいいぜ!」

 

十代は子供のように目をキラキラさせている。だがそれだけではない。その瞳の奥には確かに、デュエリストの闘志が宿っている。

 

「だけど、最後に勝つのは正義のヒーローだ!手札から速攻魔法!コンストレックエレメント!自分フィールドの融合E・HEROを同じレベルの別E・HEROに再構成する!」

 

「なっ!?リリースエスケープだと!?」

 

リリースエスケープ。カードの効果の対象になったモンスターをフィールドから離れさせることで対象を失ったカードの効果を無効にする基本戦術のひとつ。アースの効果を使わなかったのもコンストレックエレメントを使ったあとにモンスターが減らないようにするため。つまり初めからこちらのリバースカードを読んでリリースエスケープでかわすつもりでいたのだ。

アースで無警戒に攻撃した時から侮っていた。さっきのターン、ヘイトバスターをかわされた時に意識を改めるべきだった。遊城十代の強さは本物だ。

 

「TORNADEとアースを再構成!現れろ!焔と氷のヒーロー!E・HEROノヴァマスター!アブソルートZero!」

 

TORNADEとアースが光の粒となって散っていく。アースを迎え撃とうとしていたマリシャスデビルの爪が空を切る。

光は十代の元に集まると再び形を作り始めた。

ひとつは燃えるような赤いマント。全身を覆う同じ色の鎧には揺らめく炎を思わせる金色の装飾があしらわれている。爆炎のE・HEROノヴァマスター。

もうひとつは凍てつくような純白のマント。白銀の鎧からは冷気が漂う。響プロの最強ヒーロー。E・HEROアブソルートZero。

2人の正義のヒーローが悪を倒さんと現れた。

 

「いくぞ先輩!Zeroの攻撃!Freezing at moment!」

 

Zeroのマントが踊る。

セットカードを全て失った俺にこれを防ぐ手段はない。

マリシャスデビルが氷像となって砕け散り、飛んできた破片でダメージを受ける。

 

LP4000→3250

 

「よっし!次だ!ノヴァマスターの攻撃!スーパーノヴァ!」

 

ノヴァマスターがスタジアムの天井近くに巨大な火球を作り出すとそこから無数の火球が降り注ぐ。

 

LP3250→650

 

ギリギリだが、なんとか耐え切った。危なかったが耐えた。悪は不滅なのだ。

 

「凄い攻撃だった。バトルフュージョンをかわされたことにも驚いたが、悪を滅ぼすにはあと一歩及ばなかったな」

 

「何言ってんだ先輩。このターンで決着をつけるっていったはずだぜ。リバースカードオープン。バックドラフト!炎属性モンスターが相手ライフにダメージを与えた時、その攻撃力分のダメージを与える!」

 

「んなっ!?」

 

ノヴァマスターが攻撃の時生み出した巨大な火球の本体が降ってくる。

リバースカードだと?十代はさっきのターンの、あの場面で次のターンの攻撃の準備までしてたというのか。

 

「ははっ……」

 

悪者っぽい捨て台詞でもはいてやろうかと思ったが、乾いた笑いしか出てこなかった。このデュエル、俺の完敗だ。

 

LP650→0

 

ビーッとデュエルディスクからライフポイント0を知らせるブザーが鳴る。ライフポイントの下には『LOSE』の文字。

よっしゃあ!とガッツポーズをしている十代のところへ歩み寄る。対戦後の対戦相手との会話もデュエルの醍醐味だ。

 

「おめでとう。俺の完敗だ」

 

「先輩も強かったぜ。意地の悪いトラップカードはもう勘弁だぜ」

 

「はははっ。俺も強欲な壺3連発はもう相手にしたくないな」

 

お互いデュエル中は倒すべき相手だが終われば同じ学園ですごす生徒だ。笑いながらデュエルを振り返ってお互いにあそこがよかったとか、ここは改めるべきだったとか、アドバイスをしあった。

振り返りが終わったあとも十代と話していた。主に俺ばかりが話していたが。数ある噂の真偽についてひとつひとつ解き明かしていったり、響プロの話をしたりして盛り上がっていった。

 

 

 

 

 

 

チャイムの音で話から意識が逸れる。『本日の実技』も授業のひとつなので、終礼のチャイムが鳴れば次の授業の準備をしなければならない。残念だが今日はここまで。楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。

 

「今日はここまでか。話の続きはまた今度だ」

 

「ああ。またデュエルしような。先輩!」

 

「ああ。受けて立つ。次は悪が勝つがな」

 

負け惜しみではない。悪は負け惜しみなどしないのだ。次は俺が勝つ。

 

「次も負けないからな!」

 

ニッと笑う十代を見て少し先輩風を吹かせたくなった。

 

「次はデッキ作っとけよ」

 

「えっ?どういうこと?」

「響プロのヒーローとの再戦も捨てがたいが、俺はお前が作ったお前だけのヒーローとも戦ってみたい」

 

心からの言葉だった。十代のデュエルには人を惹きつける面白さがある。それはきっとこいつが自分自身のデッキを作った時にもっと面白くなる。響プロのデッキが大切な気持ちもわかるが、そこにとらわれすぎて欲しくない。先輩として、そんな風に思ったのだ。十代から少しだけ響プロとの話を聞いていただけに言おうかどうしようか悩んでいたが、結局言ってしまった。悪は自分に正直なのだ。

 

「……ああ!じゃあ俺が俺のデッキを作ったら真っ先に先輩のところにいく!」

 

「おう。楽しみにしてるぜ」

「その時はまた楽しいデュエルをしような、先輩!」

 

そう言って十代は走っていった。

卒業まであと1年を切っているが、まだまだ楽しいことが待っていそうだ。これでもオベリスクブルーの3年。オシリスレッドの1年に負けたままでは終われない。

 

「楽しいデュエルね」

 

次やる時はボコボコにしてやると誓い、悪は真面目に次の授業の教室へ向かった。

 




お疲れ様でした。最後まで読んでくださってありがとうございます。
ルールミス、テキストミス、ライフ計算ミスなど、多分なかったと思いますが、見つけたらご報告お願いします。

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