今回はそんなテーマ。
神様はなぜ一人の人間に人生をやり直すチャンスを与えたのだろうか?
あと、執筆してて楽しかったです!
俺は金山良太。40歳の独身銀行員。俺はこのビルの屋上から飛び降りようと思っている。
まだ柵の内側だが猛烈なストレスで正常な判断が出来なくなっている。
今までなんのために会社に尽くしてきたのか。
なんで中年を迎えてもクビにおびえなくてならないのか?
上司からも年下からもこき使われている毎日。
母は他界して、仕事から帰れば父の介護の毎日だ。
そんなことを考えているうちに柵の外にいた。
キリストがはりつけにされた風に両手で手すりをしっかり握っている。
下を見たら昼時にも関わらず、車道が渋滞している。
この高さからは車がリモコンの大きさぐらいに見える。
屋上に20代の同僚二人がやってきた。
同僚たちに気づかず飛ぼうと決心した時だった。
「金山さん!!!落ち着いて!!!何があったんすか?」
ひとまわり年下の同僚たちは動揺していた。
顔だけを後ろに向け、怒鳴るように言った。
「お前ら東大出身の若造に何が分かる!!!」
そうだ、俺は普通の大学を出てこの銀行の筆記試験を受けて入った。
あいつらは日本のトップ学歴のコネを生かして試験はなし、面接のみ。
ハンコを押し札や小銭を数える毎日、一方あいつらは東大出身の社長と毎日職場放棄をしてキャバクラではしゃいでやがる。
「俺が死ねば、少しはお前たちの考えが変わるかもしらねーな。」
そう言い残し、手すりから手を放してとりのように下に飛び降りようとした時であった。
時間が止まって見えた。走馬灯ってやつだ。
小学校の時、体が弱くていじめられた。中学に入ればネガティブなオーラから人には避けられ、高校では完全に自分が人を避けるようになった。大学は国公立に行けず、私立に行き奨学金をもらってなんとか卒業した。この年齢になれば学生だった自分のことさえも思い出せない。まあ、嫌な学生時代だったから思い出す必要もないか・・・
そして奨学金を一か月前やっと返し終わった。
あれ俺の人生って要約したらしょーもない人生だったな。
はぁ・・・でもこれで生き地獄から解放されるならいいかもしれない。
だが体はまだ屋上で浮いた状態だ。
あれ?下に見える車は完全に止まっている。
なんなら、アリのように見える人々も止まって見える。
後ろを振り返ると若い同僚二人がこっちに走ってきているが写真の様に止まっている。
(ここであきらめるのか?)
突如聞いたことのない声が耳を通してでなく頭の中に聞こえてきた。
これは自分で自分に問いかけているのか?
否、もう遅い。この状態から助かるのは不可能だろう。
(金山良太、お前はまだ人生の時計が半分残っているぞ?)
なんだ?この声は自殺するやつだけが聞こえるのか。
(我は時間の神様、クロックだ。下界には暇つぶしできたがお前は運が良い。)
「え・・・俺は完全に死ぬ前におかしくなったのか?」
つい口に出してしまった。
この高さで強風のなかで発言出来たのが奇跡ともいえる。
いや、この高さだが風すら吹いていない。
(今、時間はこのクロックが止めている。)
「神様?なのか。」
こんなファンタジーな体験は生まれて初めてだ。
霊能力や超能力は信じてこなかったし、現に体験もしていない。
これは受け入れがたい現実だ。
いや、もう死んで天国か地獄かの査定をされているのかもしれない。
(お前の考えていることはすべて分かる。だって神だからな。)
じゃあ、お前が神様であることを証明してみるんだな。
そう思った瞬間、風に煽られビルから真っ逆さまに仰向けで落ち始めた。
やっぱり、神様じゃねーじゃねーか。何が時間の神クロックだ。
ったく早く死なせろよな。
屋上に若い二人の同僚が最後に見えた。
二人の同僚がだんだん遠く離れていく。
次の瞬間真っ白になった。
次に目を開けると世界はない・・・いや真っ白で360度に20インチの映像が映し出されていた。
それは幼いころから昨日の出勤前までの映像であった。
その中に人生で一番性格の良かった女の子が映っていた。
その女の子は噂で聞いたが今はシングルマザーでスナックで働いている。
その将来が予測できないほど、教室の隣の彼女(荒川桃花)は清純派であった。
あれ、荒川さん見て少し思い出しちゃったよ。
確かに高校の時人は避けたが、荒川の事を気にして・・・否、片思いしていた。
懐かしいと思い映像に触れるとまたあの真っ白が襲ってきた。
目を開けると一番後ろの運動場側の席に座っていた。
授業中であった。
「火を初めて使った原人は北京原人だ。次に旧石器について・・・」
なつかしの世界史の先生。名前が思い出せない。
その時クマのキャップがついたシャーペンが転がって来た。
そういえば、俺この時拾わなかったな。
クマのシャーペンを俺が拾ってあげた。
「ありがとう。金山君。」
隣の女の子に無表情で拾ったペンを渡した。
彼女はそう言って黒板に書いてあることや先生の言ったことを大学ノートにまとめ始めた。
自分の顔を触ると十代特有の張りがありしわがなかった。
これは現実なのか?それとも学生時代の理想なのか?
これが俺の理想ならしょうもない理想だ。
何事もなく授業は終わり、一番後ろの運動場側の片隅の席で弁当を広げた。
なつかしいな。母親の作ったものは何十年ぶりだろうか。
「ねえねえ?」
と隣の女の子が話しかけてきた。
あれ?俺、荒川とは高校一年の時クラスは一緒であったが話したことないぞ。
それはあきらかに過去が変わり始める出来事であった。
これは死ぬ前の走馬灯・・・何が起こっても不思議じゃないよな。
自分の置かれている状況が呑み込めない。
「何?」
走馬灯か現実か空想か妄想か、もうどうでもよくなっていた。
「そのタコ足のウインナーかわいいね。」
「ああ、母さんが料理するの好きだから。」
こうして会話ははずんだ。
放課後帰ろうとした時であった。
「金山君もう帰るの?」
「うん?そうだけど。」
そういえば俺帰宅部で高校の部活生活三年間過ごしたな。
てかシャーペン拾っただけでここまで好感度ってあがるのか?
「そっか・・・」
彼女は残念そうにした。
「分かった、じゃあ部活見学に行くよ。」
仕方なく、いやあの話したことない荒川さんと。
これは夢なのか?
「本当!」
彼女は笑顔を見せた。
その笑顔に思わず、俺も微笑んでしまった。
だがよく思い出してみると彼女は吹奏楽(ブラスバンド)に入る。
そして一学期に突然学校を辞めたことをふと思い出した。
ここで彼女の諸事情を知って中退を阻止しよう。
だが公立高校を三か月もしないうちにやめるんだ、慎重に接していこう。
頭で考えていると彼女に叩かれた。
「何、ボケっとしてんのよ。行くよ!」
いつのまにか彼女は髪をゴムでポニーテールに結び左肩に学校鞄を背負っていた。
彼女が教室を先に出て行ったとき、慌ててついていった。
廊下を歩く途中、ささいな疑問をぶつけてみた。
「なんで俺なんだ?」
すると小声で
「一人だったからよ・・・」
「一人?」
確かに俺は一人であったが、理由はそれだけ?そもそも今日は何月何日なんだ?
「荒川さんは友達作らないのか?」
「そんなことより、入りたい部活あった?」
はぐらかすように話題を変えた。
荒川さんは左肩の鞄から部活一覧の用紙を俺に見せてきた。
「囲碁・将棋かな。」
「うわ!おっさんじゃん!!」
「おい、それは偏見だ。若い女流棋士だっているんだぞ。」
と話しながら歩いていると体育館から吹奏楽部の演奏が聞こえてくる。
荒川さんがブラスバンドに後々入ることを知っていながらも聞いてみた。
「荒川さんは何部に入るの?てか中学は何部だったんだ?」
「中学はブラスバンドだったから高校も同じかな。」
と言っているが荒川さんは不安そうな顔であった。
「じゃあ、吹奏楽がんばれ。」
「うん・・・」
荒川さんの歩いていく姿はどこか儚く見えた。
俺は囲碁将棋部を訪ねた。
社会科室に囲碁将棋部の拠点はあった。
社会科室の中に入ると地球儀や文書が散乱していた。
あれ?廃部か?
だが散乱している文書の上に将棋盤と駒台があった。
俺は対戦相手のようにしばらく座って待っていると誰か来た。
その人物は世界史の先生であった。
「お!君は新入部員か。確か・・・1-Aの隅っこの・・・」
「金山良太です。」
世界史の先生のハイテンションとは裏腹に元気のない自己紹介をした。
「共に将棋で天下をとろうではないか!」
なんだこの先生、厳しい授業とは打って変わってキャラが濃いぞ。
だが俺の高校生活がかけがいのないものに変わろうとしていた。
「さあ、君は駒の動かし方を知っているか?」
「あ・はい、日曜の朝の将棋番組見てるんで大丈夫ですよ。」
こうして顧問と詰将棋を日が暮れるまでした。
校門から帰る時、荒川さんは男の先輩たちに囲まれていた。
なんだ、人気あるじゃん。でも、寂しいな・・・
だが他の場所に目をやると女子の集団が荒川さんを睨むように見ていた。
まあ、女子も同性が一人だけモテるのは許せないか。
男は縦社会、女は横社会だもんな。
急に銀行員であったことを思い出した。
てか、この走馬灯的な理想の妄想ってやつはいつまで続くんだ?
俺は死んで何を見せられている?
実家に帰ると懐かしの母親がいた。
母は台所で夕飯の支度をしていた。
亡くなった母の姿を見て泣きそうになったが、そこは我慢した。
「良太、友達は出来た?」
そういえばこの言葉、母さんが死ぬまで掛けてきたな。
「まあ・・・」
照れながら答えた。
「あれ?父さんは?」
「そこでファミコンしてるよ。」
リビングで父はゲームをしていた、懐かしい。
全てが懐かしい・・・懐かしさとうれしさで号泣しそうだ。
もういいよ・・・十分だ。天国でも地獄でも送ってくれ。
そう思えるくらい、いいもの見せてもらったよ。
それからタイムスリップした俺は楽しく荒川さんと青春を送っていた。
俺と荒川さんは友達のように接していたが、周りからは付き合ってると思われた。
その噂は吹奏楽にも広まり、男子で落胆する人もいたが、それでも荒川さんを異性の中でもえこひいきしていた。
それをよく思わない女子先輩は荒川に嫌がらせをし始めた。
ある日早く登校した時、荒川さんと同じブラスバンドで同じクラスの佐藤さんに言われた。
そこには二人だけしかいなかった。だが耳元で誰にも聞こえないように、
「金山君、荒川さんがかわいそうだよ。同じ部の男子は見て見ぬふりだし、直属の先輩の虐めはエスカレートするばかりだし・・・彼氏ならなんとかしてよ。私荒川さんと仲良くできないよ・・・」
「そうだったのか。分かった!!!俺がなんとかしてやるよ!!!」
守れない約束をした。どこかでまたあの奇跡に頼っていた。
退学の原因はこれか?まあ、いくら気が強い荒川でも病むか・・・
同じクラスの女子が自分の席に戻るとちょうど荒川が来た。
「おはよう、桃花。クラリネットは上達したか?」
「うん・・・」
荒川さんにはいつものような元気がなかった。
俺はこの時先輩のいじめが原因だと思っていた。
昼食時いつものように荒川は弁当を広げなかった。
そういえば、最近あまり弁当見てないな。
驚かせてやろうと思って購買に行くであろう荒川の後をつけてみた。
荒川は屋上に続く階段を上って行く。
あれ、なんで屋上に行くんだ?
俺は屋上に出ると荒川さんが柵がない場所から飛び降りようとしていた。
「桃花!!!何やってるんだよ!!!」
焦って大声で怒鳴ってしまった。
桃花の頬に涙が流れる。
「あなたが浮気してたなんて、一番許せない。」
桃花の声が震えている。
浮気?俺は浮気どころが友達はお前しかいないぞ。
思い出せ、俺!!!思い出すんだ。
・・・
と頭の中を張り巡らせる。
すると桃花は声の震えを止まらせて、
「佐藤さんとあんなに近い距離でひそひそ話するなんて・・・」
まさか、今朝佐藤さんと話したところを見たのか!!!
「待て!!!あれは違う。とりあえず冷静になるんだ!!!」
「佐藤さんと楽しそうに話しているのが一番ショックだった・・・」
そう言って飛び降りた。
と同時にものすごい勢いでダッシュして桃花の片腕を掴んだ。
だが俺も腰より下が空中に出て彼女と落ちそうになった。
ここまでか・・・
(いや・・・この時間を支配するクロックがバッドエンディングは許さない。)
そのテレパシーは時間の神様か。
(我は神、お前に自殺される側の立場を見せたかったのだ。)
これは神の遊びなのか。
(そうだ、これは我にとっては下界で言う映画にしかすぎんのだよ、まあゲームでもよい。)
じゃあ教えてくれ、なんで彼女はこうも簡単に自殺するんだ?
(それは自分で考えるんだな。)
クロックは俺にアンティークの金色に輝く懐中時計を首にかけた。
もちろん神は実体がないため、透明な何かが俺の首にかけているような感触がした。
(それで好きな時間に戻れる、ただし未来へは行けず、戻る場所も限定される。賢く使え、人間。まあ未来に行けないと言ったが自分が生きた年月までは戻れる。じゃあ頑張ってハッピーエンディング迎えろよ。)
そして荒川さんと学校の屋上から落ちて行った。
また真っ白な何かが俺を襲った。
目を開けると街が広がり自分が鳥のようだ。
「金山さん!!!落ち着いて!!!何があったんすか?」
若い男の声がする・・・
うん・・・!!!うお。
そこはさっきまでいた学校の倍ある高さで柵の外側に立っていた。
一体どうなってるんだ・・・
「金山さん、話聞きますから。落ち着いてください。」
片手で顏を触るとしゅわくちゃであった。
だが首に懐中電灯がぶら下がっていた。
自分の非現実的な体験に気をとられている間に若い同僚二人に柵の内側に引っ張り込まれた。
「心配かけてすまない・・・どうかしてたよ。さあ、仕事に戻ろう!!!」
きっと上には報告されるだろう。だがこの時計があれば人生をいくらでもやり直せる。
俺は永遠の命を手に入れたのか?いや、神のきまぐれで生かされてるのだろう・・・
若い同僚二人は俺の奇妙な行動に困惑していたが、説明しても精神病棟行きだ。
次の日自主退社を部長から強いられたが、快諾した。
部長は俺の態度に驚きを隠せていなかったし、同僚たちもそうであった。
なぜなら、俺は辞表を出す時いきいきしていたからだ。
まあ、会社もこんな精神的不安定な社員を置いておくわけにもいかないだろう。
俺は一応質屋に行き、黄金のアンティークの懐中時計を見せたが、値段がつけられないと言われた。
質屋の店員はみたことのない懐中時計に驚愕していた。
売る気はさらさらなかったが、この時計の価値を知っておきたかった。
次に現在の荒川桃花についての生活事情を調べた。
探偵に大金をはたいて調べてもらった結果、スナック『ピーチフラワー』で働いていることが分かった。
さっそくピーチフラワーに行ってみた。
夕方五時の開店と同時に入店してみると、店の雰囲気はいかにも裏社会って感じが漂う。
カウンターに座って店員を待った。
「あら、もうお客さん。早いね。公務員かい?」
出てきたのは髪は茶髪で化粧が濃く、煙草をふかしたスナックのママだった。
「荒川さん?」
俺は40のおっさんということを忘れ、十代の青年のような話し方をした。
「荒川さんね~。そう呼ぶのは借金取りぐらいだよ。スナックは初めてかい?ママでいいよ。」
煙草を叩いて灰皿に灰を落としてまたふかした。
「じゃあ・・・ママ。テキーラ頼むよ。」
人間はこうも変わるのだと初めて分かった。
いや、分かっていたが父が認知症になるのとはわけが違う。
父は俺が社会人になって管理職についてから急にストレスで若年性アルツハイマーになった。
だが一番の原因は高校二年に亡くなった母の死だ。その寂しさのストレスが一番の原因だろう・・・
こうも彼女は変わるとヤケ酒せざるおえなかった。
あのいつもポニーテールしていた高校時代の荒川さんと今のママ。
それだけが頭の中でエンドレスに考えていた。
二時間して客もちょろちょろ入ってきて気が緩んで話す気になった。
「ママさ~、俺一週間前会社クビになったんだぜ。」
べろべろに酔っていた。
「そうかい、話を聞こうじゃないの。」
ママはカウンターの俺の右横の席に座り、梅酒をついだ。
「あんときの荒川さん、きれいだったよ!紺色のセーター着ててポニーテールでクラリネット吹いててさ。」
するとママは驚いた。
「あんた、同じ高校かい。あたしは三か月で辞めたけど、同じクラスの同級生が来てくれるなんてうれしいね。」
「なんで辞めたんだ?異性からも人気あったのに。」
酔った勢いでデリケートなことを聞いてみた。
すると中から20代の女性が出てきた。
派手な格好であったが顔は昔の荒川ににて清楚だった。
「おう!!!桃子ちゃん。今晩相手してくれよな。」
「おれもこいつの後頼むぜ!!!」
二人で飲んでいたスーツの男が若い荒川似の女性に言い放った。
「分かったわ、予約いれとくから時間通りきてね。じゃあ、母さん行ってくるね。」
「ああ、痴漢に気をつけるんだよ。いってら。」
20代の女性は店から風のごとく急いで出て行った。
「あれは従業員?」
「いやあ、16で産んだ娘だよ。」
16で産んだ娘だよ。16で産んだ娘だよ。16で産んだ娘だよ。16で産んだ娘だよ。16で産んだ娘だよ。
その言葉がエコーで頭の中を何回もかけめぐる。
気持ち悪くなり、下に置いてあったバケツに戻した。
「兄ちゃん、大丈夫か?」
遠くに座っていたテーブルのおじさんが優しく気遣ってくれた。
「大丈夫です。すいません。ちょっと飲み過ぎかもな・・・」
なんで・・・高校中退の理由は妊娠なのか?
桃花の10代の頃の清純な姿を浮かべるとまた戻しそうになった。
「大丈夫かい?悪いね。まあ、あたしを知ってる高校の男のOBはみんな戻したから気にしなくていいよ。」
俺は聞きたくないが彼女のこの記憶が別の幸せな記憶にすりかえれるならと思い、
「高校を辞めたのはその理由か?」
ティッシュで口のまわりをふきながら聞いた。
ママはまた煙草を咥えて、
「いや、母が家と私を置いて逃げたのさ。うんであたしゃあ、風俗に売り飛ばされたのさ。」
煙草に火を点けてふかしながら話し続けた。
「よくある話だよ。母はダメな男が好きでギャンブル依存症、そしていろんなところから借金して最後は誰の子かも分からないあたしを置いて逃げたのさ。」
本当によくある話であった、ゆえによくある話に巻き込まれている人の気持ちも少しは分かった。
そして新しく俺が作りなおした高校生活で荒川はいろいろなストレスを抱えながらも俺と会う事を楽しみに生きていたのだ。だが俺が他の女の子と二人でいるのを見たのが引き金だった。
だったらなぜ飛び降りた桃花はここにいるんだ?俺は未来でなく、過去に戻ったのか?
「そして娘も風俗嬢で子どももいる。あたしは33でおばあちゃんになったんだよ。」
ママは笑いながら話していた。
これが本当の社会の負のスパイラルか、いや彼女の家系の運命か。
「よ!最強の自虐ネタ!!」
と他の客から声が飛んできた。
いや、そんなバッドエンドは俺が変えてやる!!!
俺は札束をカウンターの上に置いて出て行った。
「ちょ、同級生君、こんなに支払わなくていいよ。」
ママの言葉が耳に入る頃には店のドアは閉まっていた。
服の中に隠していた首からかけた懐中時計を手にした。
12時の上にボタンのようなでっぱりがあった。
夜の繁華街のど真ん中でボタンに指を当てていた。
どこからやり直せばいい?
考えろ、考えるんだ。
ボタンを押した。
そしてまた真っ白が頭の中を襲った。
もうその真っ白には慣れた。
目を開けると一番後ろの運動場側の席に座っていた。
授業中であった。
そして世界史の授業。
戻れた!!!
「ノルマン人はデンマーク王国・ノルウェー王国・スウェーデン王国を建国したんだ。ここテストに出すかもしれないぞ。」
いや・・・北京原人の話じゃないぞ。
横を見ると佐藤さんが座っていた。
あれ、横に座っているのは荒川さんじゃない・・・
よくよく見てみると周りは勿論自分も夏服であった。
授業後、佐藤さんに話しかけた。
「あれ、荒川さんは?」
佐藤さんは拒否反応を示しながら答えた。
「え・・・一学期に辞めてるよ。てか話しかけないで、きもい。」
佐藤さんは逃げるように教室を出て行った。
今は一学期じゃない?
教室のカレンダーは9月になっていた。
どうなっているんだ。
将棋の顧問でもある世界史の先生が出て行こうとしたときである。
「先生、将棋部の大会今度いつですか?」
先生はポカンとしながらも、
「はぁ、金山は帰宅部だろ?それに授業中宣伝したが来なかったじゃないか。」
先生はそう言って教室を出て行った。
そんな、また一から桃花と青春を作りなおすのか・・・
俺は立ち尽くしていた。
すると後ろから誰かがぶつかってきて転んだ。
と同時に首に掛かっていた懐中時計が教室をまたいで廊下に落とした。
「ったく、じゃまなんだよ。金山。」
ぶつかってきたのは同じクラスの高校一の不良、鈴木だ。高校の時あまり鈴木にはよく思われていなかった。
きっと知っててぶつかったのだろう。
「お、良い時計持ってんじゃん。高そうだな、ぶつかり代でこの古い時計もらっとくわ。」
鈴木はポケットに廊下に落とした黄金の懐中時計を入れて食堂の方へ。
俺はご飯も食べず屋上にいた。
懐中時計は鈴木の手に渡った、あいつのことだ。
いつあの時計を売られてもおかしくない、あしたには取り返そう。
そして問題は正確な時間にタイムスリップすることだ。
クロックいわく未来に行くまでは40歳までか、戻るまでにこの時代のことを知っておこう。
だが、あの時計の時間操作は何回使えるのだろうか。
そんなことを気にしてもしょうがないか・・・
帰り荒川さんの住んでいた家に行くと、差し押さえとステッカーが貼られている。
しらないおばちゃんがこちらをちらちら見ている。
「あら、桃花ちゃんの同級生?」
隣の家の前で掃除していたおばちゃんが話しかけてきた。
これはチャンス。情報を搾り取ろう。
「何があったんですか?」
俺は汚れのない少年を演じた。
「大人の事情よ~。まあ、ガラの悪い人が来なくなって安心したけどね。」
「夜逃げってやつですか?」
「まあ、そうね。何千万って借金したら逃げたくなっちゃうわよね。まあ自業自得よね~。」
自業自得?何がだよ。桃花は関係ねーんだよ。
「そうですか・・・」
俺は残念そうな演技で家に帰った。
母はいつものように台所で夕飯の支度をしていた。
「良太、友達は出来た?」
「それより、人間ドック行ったほうがいいよ。」
母が悪性の腫瘍で亡くなる一年前だからなんとかなると思い言ってみた。
「あれま、良太ってそんな気を遣える息子だとは知らなかったよ。」
「冗談じゃない、母さん頼むから行ってくれ。」
俺はなぜか半泣きで母親に訴えていた。
母親は冗談のつもりであったが、
「どうしたんだい?嫌な事でもあったのか。」
「違うんだ、人間ドックに行ってくれればそれでいいんだ。」
俺は必死だった。そうなんだよ母さん。早期発見で金山家はハッピーエンドなんだ。
父さんも若年性アルツハイマーにならなくていいんだよ。
するとファミコンの電源を消して父が台所に、
「行こう、二人で行けば良太も安心してくれるさ。ありがとうな良太。」
父さん・・・どういう風の吹き回しか分からないが父が味方してくれた。
「そうだね、まったくどうしようもない金山の男たちだよ。」
その夜父の知り合いの病院のコネで人間ドックを両親二人で受けた。
翌朝・・・
母親に叩き起こされた。
目覚まし時計は朝の5時だった。
「なんだよ、母ちゃん。」
俺は不機嫌だった。
母は興奮していた。
「あんた超能力?預言者?かい!!!ほら、これこれ。」
母の人間ドックの診断書を見せられた、すると悪性の小さな腫瘍が見つかった。
「あんたに言われなきゃあ、来年にはここにはいなかったよ!!!」
母の見たことのない笑顔と後ろから父がにやついていた。
「そう、よかったじゃん。もう少し寝させてね。」
俺は布団にもぐった。
母親の見たことのない笑顔を見るのはなかなかできることでない。
ましてや30年後には自分もいないのかもしれないのだから・・・
だがうれしかった。父もそうだろう。
登校時・・・
また荒川さんのいない教室で一人早く来ていた。
すると佐藤さんが睨みつけながら俺の横の席に座った。
「昨日は話しかけてごめん。」
「だから話しかけんなよ。いちいち、謝るとか、きめーんだよ。」
俺はなんでこんなに嫌われているんだ?
シャーペンを拾う、拾わないでこうも人生が変わるのか?
昼時・・・
吹奏楽部の他の知らない男子生徒が来た。
「金山君?」
誰だよ。
「はい。」
同学年だがなぜか敬語になってしまう。
きっと今の自分の置かれている状況が分からないから怖いのだろう。
ましてや神にこれも遊ばれていると思う考え方を変えたらゾッとする。
耳元で、
「佐藤は君が好きなんだ。」
「気持ちわりぃ!!!」
男子に耳元でささやかれるのが気持ち悪くて反射的に絶叫してしまった。
他クラスの男子はパーソナルスペースを少し開けて、
「ごめん、ごめん。君が目をつけられてるのはそのせいじゃないかなと思って。」
「いやぁ、なにかの間違えだよ。俺気持ち悪がられてるし。」
そうだよな?俺荒川さんのいない学校生活になってから罵声と暴力しか受けてないぞ。
てか学生の時俺はこんな扱いを受けていたのか?
「いや、君のことは確かに悪く言ってるけど、その中に僕は愛情を感じたよ。」
もし、そうだとしたら荒川さんが屋上から飛び降りる前、事前に俺に耳打ちをしたのは計算だったのか?
いろいろ考えたいが、前の方から鈴木が睨んでくる。
男子が自分のクラスに帰って行ったあと鈴木が睨んだまま俺の席にきた。
顔と顔の距離数センチくらいで、なんなら鈴木のリーゼントは俺の頭の上に座るくらい、
「お前今日屋上来い、じゃなきゃあ、あの時計壊すぞ。」
そう言ったあと席に戻った。
売られるのは百歩譲って壊されたら荒川を助けられない。
荒川を守れる、いや変えられるのは俺だけだ。
だから、あの魔法の時計は誰にも悪用させない。
放課後屋上に行くと、
鈴木と不良4人がバットと鉄パイプを持って待っていた。
鈴木は煙草をふかして、
「来たのか、地味野郎。」
ああ、時計だけはなんとしてでも取り返したいからな。
「ああ、それより何が目的だ?」
鈴木は吸った煙草を屋上から捨てた後、ため息をしながら、
「俺は気に入らねーんだ。お前みたいな地味野郎を佐藤が好きってことがな!!!」
鈴木の回想・・・
ある夕暮れの屋上で、まだ短髪だったころ。
「俺お前の事甲子園に連れて行くから。佐藤さん・・・いや花ちゃん。付き合ってください。」
鈴木は45度おじぎして右手をピンと伸ばしていた。
「ごめん・・・あたし、あんたみたいないい加減な男大嫌いなんだ。だってこの後私に振られたから野球部やめるんでしょ?入学式の時、聞いてきたもんね。彼氏いる?何部の男子がかっこよく思う?みたいな。まあ、あんただから話すけど、実は今金山が好きなんだよね。率先して掃除・ゴミ出し。してくれるし、あいつの弁当すごいうらやましいんだ。家庭が温かそうでさ・・・だからあんたがあいつより心と体が強くなったら付き合ってもいいかな。」
「だから、なんかの間違えだよ。」
一体どうなってるんだ?これも時間操作のひずみなのか?
「いや、間違ってねーな。だから俺の性格の素晴らしさを佐藤に吹き込め。」
それは違うだろ。それって自分で勝ち取るもんじゃねーのか?
「な、なにが素晴らしさだ。5対1の時点でやってることは、く、く、クズじゃないか。」
恐怖心がありながらも、この状況で言っちまったよ。
鈴木は冷静でなくなった。
「野郎共!!!やっちまえ!!!」
4人が俺に殴りかかろうとした時、俺は目をつぶるしかできなかった。
ここはぼこられて時計を奪う好機を見出すしかない。
くそ。なんでこんな目に、てか全部佐藤が原因じゃねーか。
あれ、痛くない。殴られていないのか?
目を開けると5人は止まっていた。
クロックの力か?いや風は吹いているぞ。
後ろには元空手部の県代表の三年の佐藤力先輩が仁王立ちしていた。
「うわ!!!え?」
何この状況・・・
「俺の可愛い妹の彼氏はお前か?」
「いえ、僕じゃありません。」
俺じゃないよな。いいえ。で答えはいいよな。
すると佐藤力の背中の後ろから同じクラスの佐藤が、
「その一番ひょろいやつがあたしの彼氏、力くん守って。」
「ほぉ、見たところ一人で5人相手とは体には似合わない精神力!妹の花が惚れるのも分からんでない。」
なんだよ!この状況。てか俺にこんな記憶ないぞ?
ギャグアニメのバトル王道展開か!!!ってツッコミをすげーいれてーよ。
でもこの助っ人はまじでありがたい。佐藤さん、なんだかんだ本当は良い奴だったんだな・・・
これで鈴木も大人しく・・・
鈴木は猟師たちに追いつめられた猛獣のような顔をしていた。
「・・・まさか。そんな強力な助っ人を頼んでいたとはな・・・」
鈴木は黄金の懐中時計をポケットから取り出した。
よし!!!そうだ、渡せば許してやる。ってかなかったことにしてやるからよ。
まあ、どのみちこの時系列は消えるからな。
俺はこの優勢な状況にホッとしていた。
だが・・・鈴木は最後の手段に。
鈴木は懐中時計を地面に叩きつけた。
「やめろ!!!」
俺は一瞬で怒り狂った。
が佐藤先輩に止められた。
「こんなもの、破壊してやるよ。」
バットを振り上げた鈴木の目は完全にイっていた。
思いっきり殴ったが傷ひとつつかなかった。
俺はそれを見て冷静さを取り戻した。
さすが神様の時計、マグマにつけても溶解しないんじゃないか?
「なんで!!!壊れねーんだ!!!」
鈴木はやけになり、懐中時計を放物線を描くように屋上から投げ出した。
八人の中で俺一人は猛ダッシュで時計に向かって走った。
他の七人はただ突っ立って見ていた。
手すりのない場所を走り幅跳びの様に飛び、懐中時計を空中でキャッチした。
「金山君!!!」
佐藤さんの叫ぶ声が聞こえた。
最期に驚いた表情で鈴木がこっちを見ていた。
地面まであとどれくらいだ。
懐中時計のボタンを押した。
今度こそ死んだのか?
そこは黄緑の草原で奥には森ついで山岳が見える。
そして短髪の金髪の白人男性が普通のデニムに白いTシャツを着て川を挟んで向かいに立っていた。
距離は10メートルほどでTシャツには俺がクロックからもらった黄金の懐中時計の柄が入っていた。
「これは仮の姿だよ。改めて自己紹介させていただこう我はクロック、時間を操る神様だ。」
と身振り手振りで俺に言ってきた。
「これは神様になる試験なのか?それとも俺は貴様のおもちゃなのか?」
偽りの姿をしたクロックは顔を横に振りながら、
「まだ教えられないよ。」
と笑いながら森の方に向き歩いて行った。
「質問はまだだ!なんで過去が変わってるんだ。」
クロックは離れて行きながらも、
「自分で考えろ!!!」
そして目が覚めた。
ふかふかの立派なダブルベッド。広い寝室。大きな鏡。ペルシャ絨毯。
勝ち組の寝室か。
俺は荒川を救ったのか?
「パパ!!!」と二人の小学生の男の子が呼びに来る。
「ママが朝ごはんだって。わあ~~~~」
とまた寝室を出て行く。
やったのか。ついに!やったのか!!
心の中でうれしさがこみ上げてくる。
若い時の二人の写真があるが、目を悪くしていて見えない。
近眼になったのか・・・まあ、ハッピーエンドなら悪くない。
机の上に置いてある眼鏡をかけるとピントが合う。
寝室を出ると吹き抜けで一階の長机が見える。
一階に降りるとアイランドキッチンでポニーテールをした女性が、
「良太さん、おはよう。」
その声に違和感があった。聞いたことはあるが荒川とは違う。
「おはよう。」
すると老いた父が便所から出てきた。
「良太、おはよう。」
俺は認知症じゃない元気な父を見て泣きそうになった。
「父さん、おはよう。」
「良太、なんで泣きそうなんじゃ?花粉症?」
「あ、うん。」
次に母が来た。
「みなさん、おはよう。」
俺は号泣してしまった。
「良太、どうしたんじゃ?」
「いやいや。心配しないさ。」
俺は幸せだ。両親が元気なだけでいい。もうなにも望まない。
ハッピーエンドだ。あの神の時計もないのだから。
「人間ドック行った方がいいんじゃないのかい?」
母は冗談で言った。
「そうするよ。」
子どもたちがアイランドキッチンの周りを走り回っている。
すると野太い声が、
「こらこら、母ちゃんの邪魔をしたらダメだぞ。」
そうやって知らない男は二人を片腕づつで抱きかかえ食卓に座らせた。
「おはよう、良太君。そしてみなさん。」
「力君、オリンピックに行きそうな子どもはどれくらいいるのかね?」
力君?
「そうですね、父さんが愛した女性の数くらいですかね!」
「はははは!!!」
母は大爆笑。
質問した父は苦笑い。
「兄さん、そんな下品な話。朝からやめてよね。」
ちょくちょく朝食を運ぶ女性の腕がさっきから見えるが受け入れたくない・・・
顔を見たくない。嫌な予感がした。
そして妻は前に座った。
その時高校時代セミロングだった佐藤さんはポニーテールをしていた。
一瞬頭の中で白黒映像でポニーテールをしていた青春時代の荒川さんを思い出す。
「良太さん、大丈夫?」
「う、うん。」
こんだけ家族に恵まれていればハッピーエンドじゃないか。
だが荒川さんの事をどうしても気にしてしまう自分が心のどこかでいたのだ。
「良太君、汗がすごいぞ?」
「良太?どうしたんじゃ。ばあさんが来たら泣いたりして、やっぱり病院行った方がいいぞ。」
「みんな、大丈夫だよ。さあ!!!楽しく朝食を取ろう。」
そうだ、これはハッピーエンドなんだ・・・そう自分に言い聞かせる。
スーツを着て大きな玄関を出て行く時であった。
「待って!!!」
妻がスリッパのまま駆け足で玄関に来た。
「ああ、鞄か。」
でも妻は鞄を持っていない。
「何ボケてるのよ。行ってきますのヤツちょうだい。」
妻は甘えてきた。
俺は頬にくちづけをした。
「違うでしょ!こ・こ。」
妻は口紅で染めた唇を尖らした。
俺は仕方なく唇にぎこちなくした。
「ふふ、まるで高校時代のファーストキスみたいね。」
え?
頭にフラッシュバックした。
誰もいない夕暮れの教室で佐藤さんとキスしたことが。
「そ、そうだな。行ってきまーす。」
外に出ると広大な庭がそこに一人メイドが庭掃除していた。
「朝から仕事おつかれ。」
「いってらっしゃいませ。良太さん。」
とこちらを向いた女性は桃花の娘であった。
その場所はどこかのホテルであった。
「あんた、娘の事頼んだわよ。」
「ああ、お前の娘は大事に俺が育ててやるよ。」
ベッドの横には少し大人の桃花がいた。
「社長、お車の準備が出来ました。」
「ああ、ありがとう。」
いつのまにか家の前まで車が来ていてドライバーが後部座席のドアを開けてくれていた。
俺はまた何かが白黒でフラッシュバックしていた。
会社までの送りの途中、
「社長、今回は採用していただいてありがとうございます。」
「あ、ああ。」
俺社長なのか?役職まで変わってるのか?
だがすべてを受け入れるしかなかった。
ビル群の中に入ると急に人口密度が増加した。
俺はこんないい場所で働いてないぞ?
もっと郊外の銀行だ・・・こんな都市部じゃない。
車は急に止まり、ドライバーに降ろされた。
「なあ、俺の鞄しらないか?」
「鞄?社長は普段、携帯電話と財布しか持ち歩いていませんよ。」
ドライバーは俺を降ろした後、車を走らせていった。
車はベンツであった。
俺はそんなに金持ちなのか?
スーツの上着を調べ、携帯と財布を確認した。
財布の中から名刺を見ると『株式会社・ゴールド・マウンテン・代表取締役員・金山良太』と書いてあった。
「おはようございます、社長。」
「社長、おはようございます。」
と自分の前に立っているビルに入って行く人や出て行く人が俺に向かって挨拶する。
これ俺の会社?
首が攣るぐらい上をポカンと見あげた。
とりあえず最上階に行った。
そして案内板で社長室に行った。
社長室の前にはスーツをした体ががっちりした180cmの大男が2人いた。
「君たち元空手部だよね?」
当てずっぽで聞いてみた。
「はい!社長。おはようございます。」
二人同時のおじぎで若干風がきた。
「ああ、今日も良い身体してるね!警備頼むよ!!」
「はい!私たちが守ってみせます!!」
どうやら社長室に鍵はないらしい。
ドアノブをひねり社長室を入ると、想像通りであった。
当たり前だ、自分が社長なのだから。
外はガラス張りでどのビルよりも高かった。
この会社はいったい何をしているんだ?
社長椅子の真上にはスローガンが、
『弱者を強者に。弱者を一人も見逃すな。』
我ながらにいいスローガンだ。
社長椅子に座ると机の引き出しを開けた。
そこにはSNSについての報告書や決済などいろいろな大事な資料がまとめられていた。
そして一番下の大きな引き出しは指紋認証と暗証番号4ケタが必要だった。
生年月日かな?でも俺社長だぞ。まさか・・・
指紋認証してから、とある人物の生年月日を入れると空いた。
するとそこには黄金色の懐中時計があった。
やはりまだハッピーエンディングは迎えていないようだ。
何が起こるか分からない・・・それに今の状況次第じゃあ再び戻ることもある。
俺は再び命の次、いや、命と同等の価値である懐中時計を首に掛けた。
すると桃子が来た。
スーツを着た桃子は綺麗にお辞儀して、
「遅刻して申し訳ございません。」
俺の秘書もやっているのか?
「あ、ああ。いいんだよ、メイドもやってるしな。それより母さん元気か?」
桃子の表情が曇った。
「おい、質問してるんだぞ?」
「母は死にました。飛び降り自殺で。」
死にました。死にました。死にました。死にました。死にました。
頭の中を桃子の言葉が駆け巡る。
桃子はコップから水をこぼしたように感情が、
「私はあなたが憎いです。風俗嬢の母に結婚しようと言っておきながら高校から付き合ってる佐藤花さんと結婚したんですから・・・それにあなたの事業は空前の大成功。一家全員を恨みました。名字も名前も変えてあなたの系列の企業に入り、クーデターを起こしてやろうと思いました。でも・・・あなたの秘書・メイドに抜擢されてからあなたを愛した母の気持ちが分かりました。あなたは努力家で母を救おうとしていたのだと・・・そして私はあなたに気が付いたら抱かれてました。それはいいんです、でも許せません。・・・約束を守らなかったことが。守っていれば母さんは生きていたのに。」
桃花と関係を持ったことも白黒でフラッシュバックした。
全然弱者を救えてないじゃないか・・・
こんなスローガンただの表向きの詐欺じゃないか。
俺は親子二代相手に渡って妻子持ちでありながら、浮気・不倫をしていたのか。
前職の銀行員の上司よりクズじゃないか。
「すまなかった。すまなかった!」
俺はどけ座して泣いて謝った。
「いえ、あなたの事は許せませんがあなたを愛してしまったのです。憎しみが愛に変わった私が負けたのです。」
顔をあげると桃子からも頬に涙がぽろぽろと。
「君には悪いけど、もう僕はハッピーエンドに出来ない・・・」
俺は桃子に時計を委託した。
桃子は俺の言動が理解できない。まあ、当たり前だ。
「このアンティークな懐中時計はなんですか?」
俺はもう説明できなかった。いや説明できない体験をしてきたから彼女に託して体験してもらうことにした。
「一緒にこの12時の上のボタンを押してくれ。」
俺と桃子は同時に押した。
主人公(体験者)が変わります。
私は頭が真っ白になった。
次に目を開けると世界は真っ白で360度に20インチの映像が映し出されていた。
そこには母の青春時代や私が15でマウンテン社を受けた面接などが流れていた。
母さん?綺麗な人。私は母の十代の写真すら見たことがなかった。
急に真っ白が襲う。
目を開けると運動場側から数えて二列目の一番後ろの席に座っていた。
左には社長の子どもが少し成長したような生徒が座っていた。
「火を初めて使った原人は北京原人だ。次に旧石器について・・・」
右には今も変わらない社長の奥さんが座っていた。
そして高校生活に見とれていた。
私は施設で育ったために義務教育をうけていない。
この状況が新鮮に感じた。
すると隣の男子が話しかけてきた。
「なあ、この落としたシャーペンって君のだよね?」
「あ、ありがとう。」
このクマのシャーペン、母さんがよく使ってたな・・・
てことは、今私母さんなの?いや、でも女子高生だし。あれ?
私は頭の中でパニックが起きた。
授業が終わりみんな弁当を広げたり、どこか行きだした。
あ!私の母さんいや祖母かな?
わくわくして鞄の中から弁当を広げた。
この感じはきっと母さんが作ったんだ。
と同時に横の男子が弁当を広げる。
うん?社長の学生時代の弁当か!これは少し興味がある。
たこ足ウインナーやばい!
「そのタコ足のウインナーかわいいですね。」
「ああ、母さんが料理するの好きだから。てかなんで敬語?」
社長ってこんなに無表情だったんだ。
こうして社長の家庭事情を探った。
放課後社長が帰ろうとした時であった。
「社、金山君もう帰るの?」
やっぱり社長って、言っちゃうよね。
「うん?そうだけど。」
「せっかくだから見学していきませんか?」
「だからなんでちょいちょい敬語出るんだよ。」
社長はあきれ顔だった。
私は忘れ物がないか机の中の物を調べるとアンティークの時計が出てきた。
「おーい、荒川さーん。先行きますよー。」
社長は顔だけ廊下側から出して私に言った。
社長って結構学生時代はとぼけてたんだ。
その頃天界では
ウォッチ「クロック、貴様のしょうもない遊びのせいで下界が変わり始めているぞ?」
クロック「兄さん、そう熱くならないでさ。もう少し遊ばせてよ。」
ウォッチ「そうだな、天界にまで影響が及べばお前を下界の動物に転生かこの天界で消し去ってやるよ。」
「良太さん、高校くらい部活入りましょうよ!」
「大丈夫だ、大学でも部活は入れるぞ!」
私は平手で殴った。
「そうだな、青春を楽しもう。彼女出来るかもしれないしな。」
「そうですよ。青春!青春!」
そう言って私は部活一覧の用紙を鞄から出した。
「俺は囲碁将棋かな。」
その時体育館からブラスバンドの演奏が聞こえてきた。
なぜか、体がクラリネットを奏でたい気分になった。
「私はブラスバンドかな。」
「へえ、中学は吹奏楽?」
うわ、その質問・・・中学行ってないしな。
「それはねえ、教えてあげない。それより社会科室行くよ。」
「え!お前も囲碁将棋好きなの。」
好きなわけないじゃん、母と社長をくっつけるための作戦よ。
社会科室に囲碁将棋部の拠点はあった。
社会科室の中に入ると地球儀や文書が散乱していた。
「あれ?廃部か?」
「社、良太さん、それはないと思うよ。ほら。」
散乱している文書の上の将棋盤と駒台に指を差した。
私は社長と将棋で対戦してみた。
「え、ええ!お前なんでそんな渋い囲いと攻めが出来るんだ。」
「なんででしょうか。」
まあ、秘書だったから取引先のおじさん相手に暇つぶしで将棋やらさせられればそれなりの棋力はつくよねー。
こうしてしばらく二人で座って待っていると誰か来た。
その人物は世界史の先生であった。
「お!君たちは新入部員か。確か・・・1-Aの隅っこの・・・」
「金山良太です。」
「同じく荒川桃・・花です。」
危ねえー。間一髪。
世界史の先生のハイテンションとは裏腹に元気のない自己紹介をした。
「共に将棋で天下をとろうではないか!」
なんだこの先生、厳しい授業の時とは違ってキャラが濃いな。
「さあ、君たちは駒の動かし方を知っているか?」
「あ・はい、日曜の朝の将棋番組見てるんで大丈夫ですよ。てか荒川さんヤバいっす。」
十分後顧問が、
「参りました。ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
これって目上の人に勝ったらダメだったよね?でも接待じゃないしなー。
すると顧問が震えはじめた。
「これならいけるぞ!この高校発の女流棋士が排出できる。再び将棋黄金時代が来た。」
ああ、よかった。どうやら喜んでるみたい。てか先生の感情が理解できない。
「よかったですね、顧問。」
社長、棒読みだし。
夕暮れ時に二人で帰る時、たまたま吹奏楽の集団がいた。
一人がこっちを見ている、そのひとりは後の金山婦人だ。
ここで私が母さんの代わりに立ち切れば・・・
「なに見てんだ?」
「ううん、なんでもないよ。行こっか。」
分かれ道で、
「じゃあ、またね。荒川さん。」
「お、うん。バイバイ。」
危ない危ない。お疲れ様でしたって言いかけた。職業病か。
家に帰ると玄関前でそれ風の男の人二人が立っていた。
「お、娘さん。期限までに金返せなかったら、あんたに働いてもらうぞ。」
「良い店紹介してやるよ。」
もう一人の男はにやにやしていた。
二人の男はその言葉だけを残して帰った。
え・・・まさか。
家の中はもぬけの殻であった。
そっか、祖母が母を捨てたんだ・・・私の中でなぜ母があんなにも貧困していたのか、理由が解明できた。
じゃあ、私は社長を逆恨みしてたってこと。
てか、私どうなるの?元の時代に戻りたい・・・
涙と寂しさがこみ上げてきたが・・・そこは母親ゆずりの強さで考えを変えた。
そうだ!お金を増やして借金返済すれば母さんはつらい体験せずにすむんだ。
私は持ち前の行動力と知識で動いた。
自分名義であらゆる銀行や金融機関から借金をしまくった。
なかには、
「未成年にはお金をかせません。それも100万だなんて。」
「風俗、いや、命かけて稼ぎますから!」
私が風俗という言葉を口にした時、同性の窓口の係りだったが嫌な顔をした。
とある金融機関では
「おう。金はいくらでも貸したるわい、そのかわり返せんかったら知らんぞ!」
とにかく借りまくり、生活費以外はすべて株に費やした。
奇跡的にこの年の株価変動は職業上そこそこ覚えていた。
はあ、取引先のおっさんの株の話がここにきて生きてくるとは。
株もバカにはできないな~。
そして数日後登校してる時、
「桃花!」
「は、佐藤さん、何?」
母上様って言いかけた、はやく治さないと。
「鈴木君にさ、今日の放課後に屋上に呼ばれてさ。でも金山君も気になるんだよね。」
えええ!!!学生時代の奥様見てるとそんな風には思わないよ。
桃子の回想・・・
掃除時間の奥様が社長に対して
「金山、超きもい!超きもい!こっちみんなよ。」
「見てないって。」
確かに社長はずっと黒板の方向いてたし、奥様も後ろの方でほうきで掃いてたし。
「佐藤かっけーな!な!荒川。」
「鈴木君と違って私はそうは思わないよ。」
休み時間の奥様が社長に対して、
「桃花、内緒ね。」
「もう~やめなって。可哀想だよ・・・」
そう言って隣でばーかと机に書いていた。
が、私も興味があった。
数分後お手洗いから戻ってきた社長は無反応だった。
「決めた!やっぱり金山君に告白しよ。」
いや、待て待て。気になるレベルから告白レベルになってんじゃねーか。学生の時はツンデレか。
「それに金山君は精神的に強いから。多分全国行った兄さんと精神力は変わらないくらいね。」
私は奥様の少女の部分をかいまみた。だが社長いや父さんは譲れない、母さんのものだ!
「いや・・・鈴木君にした方がいいよ。金山君ああ見えて精神的にすごい弱いんだよ。強がってるだけなんだよ。」
これで断ち切った。完全に!!!
「なんだ、やっぱり桃花も金山が好きなんじゃん。スケバンの血が騒ぐわ。」
騒がなくっていいっつーの。
じゃあ放課後のうちに強引にケリをつけないと。
てか、なんで私がこんなことしてるわけ?母の役割じゃないの?
放課後社会科室で、
ここで勝負しないと、父さんはツンデレで落ちるかもしれないから。
そう考えていると金山君が入って来た。
「おう、荒川。早いな。」
こうして二人だけで黙々と将棋を指した。
そして夕日が沈みかけているとき。
「あのね・・・好きなんだ。」
「え?告白か。」
「うん、良太のことが好きでたまらないんだ。今も心臓がキュンって鳴ってるよ。」
すると声を出さずに父さんは抱腹絶倒し笑いだした。
そして第一声が、
「お前まで俺をバカにし始めたか。はあ、俺ってそんなに可哀想か。」
笑いながらもどこか残念そうな顔をしている。
「本当だよ!」
「なんで俺なんだ。俺はずっとお前の事片思いでいたかったのにそのハラハラ感を無くすのか?彼氏はいるんだろ?」
「いないよ、一度も付き合ったことない。良太が初恋。」
そうだ男子高校生が喜びそうなごたくを並べるのよ。
「じゃあ、近寄ってくるエースストライカーや150km投げる先輩ピッチャーよりも俺を選ぶのか?」
いや出来れば私だって金持ちのイケメンを選びたいし。てか私も一体何をしているの?
「俺なんか、いつも佐藤さんや鈴木にバカにされてるんだぜ。俺なんか、俺なんか・・・」
最終兵器!!!
私は桃花として将棋盤の上で良太の頬にキスした。
「これでもバカにしてるって言えるの!!!」
私はキスした後、怒ってみた。
「いや・・・なんというか。」
父さんは動揺していた。
どうやら桃花としての本気度は伝わったようだ。
「いいよ、これで両思いだね。」
私は優しい言葉をかけた。ツンデレ?それとも飴と鞭かな。
「俺もごめん。」
「なんで謝るの?」
「お前の気持ち完全に無視してたからさ。なんか毎日多くの人に嫌がらせされると嫌になってくるんだよ。」
そっか、父さんは心を閉ざしてたんだ。
今度はキスをせがむよな顔を見せた。
すると父さんは母さんに寄ってきている。
そこに顧問がドアを開き入って来た、
「誰か将棋指すか?」
あきらかに高校生が恋愛している場面であった。
「あ!そういえば・・・」
と言って再び出て行った。
「そういえば金山って将棋やってるんだっけ。ここか。あれ、世界史の・・・」
「あ!佐藤!!今は見てもいいが、入ったらだめだぞ。雰囲気が台無しだ。」
「はあ。」
佐藤花は夕暮れでキスの影を見てしまった。
「なんだ、そうだよね。私優しくなかったもんね・・・」
夕暮れの屋上で、鈴木はけなげに待っていた。
「俺お前の事甲子園に連れて行くから。佐藤さん・・・いや花ちゃん。付き合ってください。」
鈴木は45度おじぎして右手をピンと伸ばしていた。
「入学式の時、聞いてきたよね。彼氏いる?何部がかっこよく思う?みたいな。まあ、あんただから話すけど、実は金山が好きだったんだ。率先して掃除・ゴミ出し。してくれるし、あいつの弁当すごいうらやましいんだ。家庭が温かそうでさ・・・だからあんたがあいつより優しくて心が強くなったら付き合ってもいいかな。だから友達からならいいよ。」
佐藤は鈴木の手を柔らかく握ってあげた。
「金山のことさっきまで好きだったんだ、でもなんで急に俺を選んでくれたんだ?」
「あいつに彼女が出来たんだ。はあ、ごめんね。あんたを受験の併願みたいな扱いしちゃって。」
「いいぜ、俺は学校でお前に一番優しい男になってやるよ。」
鈴木は複雑な気分だったが、少し受け入れてもらえたことがうれしかった。
一か月後・・・
「おはよう、鈴木。」
「おう、金ちゃんおはよう。」
私はなぜか安心した。
Wカップルの仲良し4人組みになったのだから。
「バッティングとか投げ込んだりしてんの?」
「まあな、一応一年で捕手までのぼりつめたからな。」
「あの、おっかねー兄貴とか怖くないのか?」
「ああ、一緒に筋トレしてるからなんていうか、なんだろう。佐藤先輩とは息が合うんだよ。」
「そうだよ、兄さんとさあ、鈴木君が休日も来るから・・・臭い。」
私は抱腹絶倒しそうになったが耐えた。
そして取り立ての期限日の放課後。
私は強引に金山君を連れてきた。
「ここがお前の家?どうなってるんだ?」
差し押さえのステッカーを見て父さんは驚いた。
私は首にかけていたアンティークの懐中時計を服の中から取り出した。
「なに、やらしい目で見てんのよ!」
「わ、悪い・・・」
12時の上のボタン押せば戻るかな・・・
いや、父さんの指と一緒に押さないといけないか。
私は父の親指を強引に持った。
「え?なに?なんなの。」
「いいから。」
私と父さんは同時に押した。
あれ?なにも変わらない。
「うわ。桃花。」
そして父さんは辺りを見回して察した。
「成功か?桃花?」
「いえ、わたしは秘書の桃子です。」
「え?容姿は似てるが桃花じゃないか。」
「説明している暇はありません、てか無理です。」
てか社長こんな体験してたんだ。そりゃあ最先端の事やりたいほうだいだ。
でも母への気持ちが変わらなかったのがうれしかった。
気持が変わっていれば私に何て託さないのだから・・・
「そういえばお金どうするんだ?」
「頑張りましたよ。父さんのせいだけど。」
庭に行き、二人で穴を掘り始めた。
「父さん?俺が父さんになったのか?いや、考えても無駄か。クロック!早く終わらせろ!!」
父さん?何言ってるの?
掘っていると取り立てにいつものガラの悪い男二人がきた。
「おうおう、お前ら墓穴でも掘ってるのか?」
「早くしねーと、すぐ売り飛ばすぞ。」
「ちょっと待ってください、もう少しで掘れますから。」
「この下にありますから。」
掘っているとゴツっと音がした。
「父さん、引き抜いて。」
「え?俺?まあそうだな。」
男二人も興味がそっちに行った。
「おい、ぬけねーぞ!」
「パパ、信じてる。」
父さんは力を振り絞って取っ手を引き抜くとキャリーバックが出てきた。
「おい、まさか。そのなかに銃火器が・・・」
「違います!とりあえずあがりましょう。」
男二人と対面して父さんと座った。
私以外の男三人はびくついている。
男なのにだらしがない。ましてや自分の父親なのに。
「開けますよ。」
泥まみれのキャリーバックの蓋を開けると、
男二人は内ポケットに手を入れた。
ガチャ、バサバサ~~~。
大量の一万円札がピン札で出てきた。
男二人は内ポケットからハンカチを出して汗を拭いた。
「これで借金は全部返せますよね?」
私は強気に言った。
「ああ・・・だからと言って家も土地も帰って来ないぞ?」
「大丈夫です!今日中に出て行きますから。」
「まあ・・・返してくれりゃあいいんだよ。」
男たちはキャリーバックごと持って引き上げた。
「終わったのか・・・」
父はかなり苦労したらしい。まあ私もそれなりに苦労した。
「あんな大金どうやって獲得したんだ?」
「父さん、私は未来の資産家たちと話をしてきたのよ。」
「そうだったな、立派な娘だよ。」
主人公(体験者)が戻ります。
俺は嘘の事情を家族に話して彼女と同棲し始めた。
もちろん人間ドックのことも言った。
そして一か月後二人で誰もいない学校の屋上で神様の落とした時計のボタンを押した。
再びこの黄緑の草原で奥には森ついで山岳が見える場所に来た。
「父さん、きれいだね。」
「ああ、前来た時はそんな感情これっぽちもなかったがな。」
そして短髪の金髪の白人男性が普通のデニムに白いTシャツを着て川を挟んで向かいに立っていた。
同じく距離は10メートルほどでTシャツにはクロックからもらった魔法の懐中時計の柄が入っていた。
「良太君久しぶり、そして初めまして桃子さん、これは仮の姿だよ。改めて自己紹介させていただこう我はクロック、時間を操る神様だ。」
と身振り手振りで言ってきた。
「なんで母の体に私がいるの?」
「それは人間の未知なる能力・想い(思い)がそうしたんだ。」
「つまり神の想定外ってやつか?」
「そうだよ、良太君。だが一つ君たちは思い込みをしているようだ。」
「なんだ?思い込みって。」
「君たちは実の親子でもない、赤の他人なのだよ。」
「そんな、じゃあ私は消えるの?」
桃子は悲しげに聞いた。
「はははは、それは君たち次第さ。」
するとクロックの真横に、同じ服装をした短髪の金髪の白人男性がテレポートしてきた。
「クロック!貴様!!神の時計を持ち出したな。」
もう一人の男は激怒していた。
「さあ、その黄金銃でどちらかを撃てばいい。」
「下界の者、偽りの神を撃て!」
「ウォッチ、やけに冷静じゃないか。」
「クロック、お前は下界で遊び過ぎた。」
良太と桃子は相談して良太が銃を二つの神に向けた。
「もう一人の神の言う通りだ。クロック、お前にとどめがさせるなんて、これも巻き戻せたらいいな。」
「よせ、人間に神を消せるわけがない、やめろ!!!!!」
引き金を引いた瞬間クロックは消え去った。
「はぁ、よかったよ。君たちが悪人じゃなくて。俺が消えてもあいつには天界で罰が下される予定だった。」
「結果オーライってやつか、俺達みたいな時間被害者は二度とださないでくれ。」
「そうだな、天界から君たちへのお詫びが決まったよ。言えないけど。」
もうひとつの神は森に歩いていく。
「父さん、血は繋がってなくても父さんだから。」
「ああ、俺はお前を娘の様に大切にしなくちゃな。」
良太と桃子はハグした。
世界は真っ白になった・・・
窓の外の桜はきれいだ。
俺は金山良太。高校一年で一番後ろの運動場側の席に座っていた。
世界史の授業はとても暇だ。
「火を初めて使った原人は北京原人だ。次に旧石器について・・・」
顧問がんばってるな。てかキャラがやっぱり部活と違いすぎる。
その時クマのキャップがついたシャーペンが転がって来た。
クマのシャーペンを拾うと桃花は感じよく、
「ありがとう。金山君。」
「ああ、だって幼なじみだろ?」
顧問が、
「金山!!!王手だ!!!」
といきなり俺に怒号が、
俺は立って、
「参りました。」
と頭を下げると、
クラスが爆発的にウケる。
放課後・・・
将棋を指しながら、
「辞めてもらえませんか、団体のキレ芸。あれいきなりされると結構怖いんですよ。しかも月1で。」
「えーだってウケるし。お前のクラスでしかできない唯一のキレ芸だし。」
「だったら芸人になればよかったじゃないですか。王手。」
「さすが中学制覇しただけあるな。お前とやっても100手もいかないからな。」
社会科室前で・・・
「桃花、告白しなよ。」
「やめて、押さないでよ!ちょっと花!!」
すると社会科室のドアが開いた。
「おう、桃花に花。なにやってんだ?」
いきなり桃花に手紙を渡された。
花ははしゃぎながら桃花は恥ずかしがりながら小走りで去った。
一体なんだったんだ?
社会科室に戻った。
「なんだ、金山、ラブレターか?」
「いやあ、でも幼なじみですよ?しかもなんで今・・・」
「読め、読め。」
顧問の顔がやらしい。
「なんで高校教師がそんないやらしい笑顔になれるんですか。」
「バカ野郎!お見合い結婚の俺の気持ちがお前にわかってたまるか。」
そう言って慌ただしく機嫌を損ねて出て行った。
なんであんなのがのうのうと教師になれんだよ。
封を開けると、
『金山良太君へ、十年以上の幼なじみなのに口で面と向かって言えないって変だよね。でも女の子って意外と幼なじみでも好きな男の子に想いを伝えられないで後悔するって聞くから・・・話ずれたけど、先日花に良太君のことが好きだって言われた。だから私も好きだって伝えたら花がチャンスをくれた。花はすごくいい友達でなんでもしてあげられるつもりだけど、良太君への想いは譲れなかった。だから花の分も告白する!王手!!!』
なんだこのラブレター。
と思いつつも顔は笑っていた。
暗くなり街灯が点き始めた頃。
「うわ、暗!」
「そうだね、体育館で閉めきって演奏してたら外が分からないよね。」
すると校門前で良太が立っていた。
「これは!!!・・・」
花は走って校門に、
「良太、バイバイ。」
「おう、気をつけてな。」
逆に二人にされたら緊張するだろ!
桃花はゆっくり校門に近づいてくる。
「良太、待っててくれたんだ。」
「ああ、せっかくだから一緒に帰ろうかなと・・・」
クラリネットとトランペットの音色ですぐ分かったよ。
たまに二人で一緒に帰っているがいつもより口数少なく、
「はあ~はあ~」
良太は巻いていたマフラーをさりげなく桃花に巻いてあげた。
すると桃花は距離をだんだんと縮めた。
「参りました。」
「え?なに言ってるの。」
「王手されたから俺が負けたんだよ!負けるの四年ぶりだよ。」
良太は桃花の片手をやさしく握ってつないで歩いた。
「じゃあ、私勝ったんだ。やった、うれしい。」
桃花は照れを隠していたが頬が赤かった。
だがその赤さは良太は寒さで赤いと勘違いしていた。
「そんなことより寒くないか?」
「そんなことよりってひどい!」
と桃花は良太に体を小さくぶつけた。
賃貸マンションに二人は入り、エレベーターに乗った。
「待って、ごめんね~。」
急いで駆け込んできた同じ住民が共通の知り合いで思わず二人はエレベーターの中で手を離す。
二人は一緒に降りてそれぞれの賃貸マンションの部屋に、
「また、明日。」
「うん、またね。良太。」
桃花は部屋に入るのを見てから良太も入った。
「おかえり、良太。」
良太の父は台所でパスタを作っていた。
「なんだ、帰ってたんだ。」
「たまには、俺も料理しようと思ってな。」
良太の母は良太を産んですぐ亡くなり、父子家庭となった。
桃花は暗い部屋の明かりをつけて、学生服のままエプロンをする。
桃花の母はパートでまだ帰っていないようだ。
桃花の父は蒸発して、母子家庭で育っていた。
高校三年の二学期の始業式に表彰で俺と桃花は代表で・・・
桃花は校長に呼ばれ、表彰台へ。
「全国音楽コンクールを優勝し、学校を代表として・・・」
校長が読み上げる。
次に俺が呼ばれる。
「高校将棋杯を見事優勝し、高校将棋連盟から・・・」
同じく校長が読み上げる。
俺たちは舞台上で見せつけるように堂々と手をつないでいた。
それをカメラマンが一眼レフで撮る。
10年後・・・
「これパパとママ?」
と4才の娘が聞く。
「そうよ~右がパパで左がママだよ。」
高校の卒業アルバムを桃花と桃子が見ていた。
俺はスーツ姿で家を出て行くとき、
「桃子、桃花!!!」
二人の天使にキスをして出て行った。
俺はローンで一軒家に住み、普通の家庭を築いた。
ミニクーパーで会社向かう途中、車道を走っている時であった。
突然信号無視で横からトラックが良太の運転しているミニクーパーについとつしてきた。
そして金山良太の人生は幕を閉じた。
その頃天界では・・・
太陽神「ウォッチ、残念だがこれが精いっぱいだ。」
太陽神は太陽系すべての神を統率した神様。
ウォッチ「いえ、彼が望んだ時間です。人生は短くなってもきっと有意義だったでしょう・・・」
太陽神「まあ、人間がまた新たな未知の力を我々天界に示したのは大きいかもしれないな。」
ウォッチ「そうであるなら、クロックは消してよかったのかもしれません。奴は人間の新たな力を引き出したのだから。」
太陽神「まあ、天界のものを使ってだがな・・・」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
久々に書いてて楽しかったです。
時間をテーマにしたすべてフィクションの小説は初めて書きました。
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