デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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連日投稿2日目。


2話 別れた始現

気が付くと零音を中心に半径数キロが消滅していた。それと同時に零音は全ての記憶を失っていた。

 

「ここは?」

 

一人呟くが周りには誰もいないので、その答えはわからないままだった。

そうして、零音は再び世界を放浪していた。自分が何なのかわからないから、いわゆる自分探しの旅だった。

そうして数年が経って、零音はおぼろげに自身が精霊になる前までの……あの日機械の事故が起きた日の前までの記憶を取り戻していた。しかし、その日から自身が記憶を失うまでの――精霊になって以降の約六年半の記憶は戻らなかった。まるで、無意識にその記憶を思い出すことを拒絶しているかのような感じだった。

零音はよくわからぬまま日本にたどり着くと村雨令音と名乗るようになり、とりあえず自身の持っていた知識からとある企業に入社して生活を始めた。

 

そうして、仕事をしながら生活をして数年が経ち、生活自体は安定していた。なにか足りないという違和感がありそれが何なのかと思うも、違和感が何なのかは令音にはわからなかった。

そんなある日。一人の来訪者があった。

令音が家のドアを開けると、そこには蒼い髪の高校生ぐらいの少女が立っていた。どことなく自分の面影があるような、それと同時に懐かしい感覚があるが、自分に姉妹などいなかったはずなので気のせいだと思った。

少女はそんな令音の考えてることなど知りもせず、令音の顔を見てパァーと笑顔を浮かべた。

 

「やっと会えた」

「ん?」

 

少女がそう言うが、令音にはなんのことかわからず首を傾げると、少女は口に手を当ててハッとする。令音は自分のことを知らないということに気付いたから。

 

「あっ、ごめん。私は澪……あなたの過去を知る者だよ」

「えっ?」

 

 

 

~☆~

 

 

 

零音が反転した時、零音は三人の少女に別れていた。

その内の一人が澪であり、澪には精霊になって以降の記憶と一般教養レベルの知識、真哉の最後の願いと十の天使の力が宿っていた。それ故、この世に現れた瞬間澪が最初にしたことは、零音から生じた霊力の爆発から真哉と士道と真那の身体を護ることだった。完全に消滅させることだけはするわけにはいかなかったから。

しかし、霊力の障壁を張っても護りきるのは困難であり、その為澪はまだ慣れない天使の一つ<封解主>の力を使って隣界に飛んだ。

結果的に三人の身体は護りきることができた。

とりあえずこの後、三人をどうしようと思いながら寝かしておいて、

 

「どうしよ?とりあえず、生活必需品はないとだよね。それに、零音のところに行かないとだし。あと、シン君はどうしよ?」

 

澪はそんな感じで短い時間で探しては戻ってこようと考えて零音探しに出かけることにした。しかし、隣界に飛べたのはいいのだが元の世界に戻ることができなかった。なぜだか<封解主>を顕現させても隣界から元の世界に戻ることができず、出られるようになる頃には半年が経っていた。真哉の遺体は<氷結傀儡>の氷で覆うことで真哉の身体を保存した。

その間に<贋造魔女>で適当な物を変換させて生活必需品をなんとかしつつ、澪はとりあえず自身の十の天使の扱い方を理解して、遂に隣界を出た。

しかし、時間の流れが異なっているのか数年が経っていた。というか、世界が滅んでいないこと自体に疑問を持った。

なんでだろ?と思いながら<囁告篇帙>の力でこの世界の状況と零音の居場所を検索し、早速零音に会いに行ったのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「それで、私の過去を知ってるって?」

「うん、私はあなただからね」

「?」

 

澪は家の中に通されて、二人は机を挟んだ形で座り令音が切り出したので、澪がそう返答すると、澪の言葉の意味がよくわからず令音は首を傾げていた。精霊になった後から反転するまでの約六年半の記憶を無くしているので仕方ないのだが。

 

「あなたが私って?私の記憶を知ってる……もしかして、私の思い出せない記憶の間に出会った腹違いの姉妹?」

「ううん、残念ながらあなたに姉妹はいないよ。いや、ある意味私はあなたの姉妹に近いけど……うん。とりあえずあなたの過去を話すね」

「あっ、お願い」

 

真剣な話が始まると察して、令音は姿勢を正すと澪は話し始める。

令音が誤作動した機械で隣界に飛ばされたこと、その半年後にこの世界に戻って来たが精霊として超常的な力を得ていたこと。さらに一年後に真哉という人間に出会ったこと。それから五年の間、二人で過ごしていたこと。二人の子供が居ること。

そして、令音をかばって真哉が斬られて、令音が絶望して反転したこと。その結果、三人に別れたことのすべてを話した。

 

「ってことがあなたの失われた記憶の話なんだけど……」

「……うっ」

 

結果、令音は頭を抑えてうずくまった。失われた記憶が澪の話を聞いたことで徐々に戻り始め、それによって大量の情報、情景などが頭に流れ込んだためだった。

 

「そうだ……私がシン君を……」

 

その為、真哉の死にゆく光景も思い出し、令音は涙を流す。それと同時に精神が不安定になっていく。

 

「あなたのせいじゃないよ」

「ううん。私があの時油断しなかったらあんなことに……それに、士道と真那はあの時の霊力暴走で……」

 

澪は令音の精神が壊れないように声をかけるが、令音は泣き続けた。令音は真哉が死んだことで起きた霊力爆発で二人も死なせたと思い込んでいた。

澪は二人が巻き込まれて本当に死んでいたらこうなっていたんだと思いながら令音の背をさする。

(どうしよ……完全に二人が生きていることを言うタイミングを逃しちゃったよ)

 

「んとー……まだ話は続くんだけど……」

「……うぐっ……な、に?」

 

こんな状態の令音に言ってもいいものかと思いながら頬を掻く。

(と言うか、泣き止むのを待った方がいいのかも……)

そんなことを考えていると、令音は泣きながら澪の方を見る。

 

「で、なに?」

「あっ、うん。実は士道と真那は私が助けたから生きてて……」

「……え?」

 

聞いた直後令音の涙が止まり、死んだと思っていた二人が生きていると聞いてポカーンとする。澪の言葉の意味を測りかねていた。

 

「まぁ、今は私と暮らしてるんだけどね」

「えーと、ちゃんと教えてほしいんだけど……」

「んと、カクカクシカジカ――って感じなんだけど」

「はぁーそんなことが……でも、良かった二人が生きてて」

 

二人が生きていることを伝えると、令音は二人が生きていることに安堵して笑みを浮かべる。

そして、目元を拭うと何かに気付いたのかハッとした後、澪に向かってジト目をする。なんでそんな目をされているのか分からず首を傾げると「はぁー」と令音はため息をついた。

 

「なんで、こんなに大事なことをすぐに言ってくれなかったの?」

「あー、そういうこと。って、令音が泣き出しちゃったから言うタイミングを逃しちゃったんだよ」

「……」

「ちょっ、本当のことだからね。そんな目で見ないでよ」

 

言わなかった理由を聞いて自分のせいだとわかり、恥ずかしさから澪に責任転嫁しようとジト目を続けたため澪は慌てた。

令音は「ふぅー」と息を吐いて気持ちを切り替えてジト目を向けるのを止める。

 

「まぁ、いいや。それで、二人に会うことはできないの?」

「できるよ。というか、やっとこっちに戻ってこれたし、あとでこっちに連れてくるね」

「うん、お願いね。で、これからどうするつもり?」

 

令音が顎に手を当ててそう呟き、急に雰囲気が変わったことに対して澪は首を傾げた。すると、澪の反応を見て令音は「ああ」と納得したような声を漏らす。

 

「仕事とかのまじめな話をするときはこんな感じの話し方をしてるからついね。変かな?まじめな話だしね」

「いや、いいんじゃないかな?私は一部の記憶しか持ってないし、あっちに半年いただけでこっちは数年経ってるから、なんか年が離れちゃった気分……」

「まぁ、それは仕方ないんじゃない?私とあなたで過ごしてきた時間も環境も違うんだから」

 

二人の性格というか雰囲気の違いに澪が途方に暮れる。令音が言った通りなので「そっか」と納得すると、腕を頭の上に伸ばして大きく伸びをする。

 

「さて、これで令音の無くした記憶の話は終わったね」

「ああ、これで終わったね、たぶん。それで、他に要件があるんでしょ?“記憶の話は”って言ったんだから。それに、三人に別れたとも」

「うん、そうだよ。私たちは三人に別れちゃったんだよ。令音は肉体を、私は精霊の時の記憶と天使、そして三人目の零奈は私たちの霊力のほとんどと……人間に対する怒り・憎しみをね。まぁ、今どこいるのか知らないけど、たぶん今は人間を滅ぼそうとか考えてるんだろうね」

 

澪はあの時のこと思い出しながら遠い目をしていた。といっても、澪の体感時間だと半年前のことなので割と覚えているし、<囁告篇帙>を使えば居場所は一発で分かるのだが。

 

「ふーん。で、その零奈はなんで決行しない訳?というか、始める前に止めないと……」

「あれ?令音はいいの?人間助けて。シン君が死んじゃったのは人間のせいなのに」

「それは一部の人間が原因であってほとんどの人は関係ないでしょ?」

「まぁ、そうだけど……あの時は世界終らす勢いだったし……まぁ、いいや」

 

澪がここに来た最大の理由は令音が今現在人間に対してどういう想いを持っているのか知りたかったからだった。そして、どう思っているか確認で来たわけだから、これで目的を果たすことが出来たわけだった。

 

「あと、あの時は人類滅ぼすんじゃなくて、世界を終わらすつもりだったからね」

「はいはい、苦笑いを浮かべながらとんでもないこと言わないの」

「えー、本当のことでしょ?」

「てか、また喋り方変わってるし……」

 

令音は足をパタパタさせてそう言い、澪は令音のキャラを掴みかねてため息をついて、半眼を向けた。

 

「正直あなたも結局私なんだから、軽いノリでいいでしょ?」

「……たしかに自分に敬語で話す必要は無いか」

「でしょ。それで、零奈だっけ?はなんですぐに世界を滅ぼそうとしない訳?」

「さぁね。残念ながら記憶の共有はできないから何を考えてるかわからないし……私の予想だと霊力が不安定になったんだと思うの。それで、安定させるのに時間がかかっていると思うの」

 

澪の予想を聞き、令音も考えるとそれが一番ありうるかと思うののだが、そこで重大なことに気付く。

 

「ん?というよりも零奈を見つけて止めないと世界滅ぼしちゃうんじゃないの?」

「かもね。といってもどこにいるのか分かんないんだよね。<囁告篇帙>で調べようにも、実際ほとんどの霊力を持っていかれているからあんまり多様できないのが現状なんだよね」

「はぁ、ということは足で探すしかないのかぁー」

 

澪の天使があてにならないと分かり令音はため息をつくと、嫌そうな顔をするのだった。

それから、澪と令音は情報交換をした。

 

「それにしても、まさか令音がアスガルドに就職してたなんてね」

「完全に偶然なんだけどね。それに、髪もこの通り白っぽくなっちゃったから知り合いでも一目じゃ私だってわからないよ。皆それなりの歳になってるだろうしね」

 

零奈の消息を知る方法(<囁告篇帙>を使わないで)を考えながら、そう言えばと澪が令音の勤め先のことを呟いた。そこはウッドマンが創設した会社であるため、なんだかなぁ、といった感じだった。

令音もそういえばそうだなーといった感じで反応をすると、昔会った人たちのことを思い出す。

 

「ところでどうする?すぐにでもここに連れてくることもできるけど……」

「そうだね……お願い。二人に会いたいし」

「うん、了解」

 

令音はそれでいいようなので、それ以上は言わずこの話を打ち切ると、澪は時計の時間を見てそろそろ切り上げることにする。

 

「じゃぁ、令音はアスガルドで調べてみて。あの人が創設したんならまだ精霊のことを諦めてるとは思えないしね。それに、会社員なら表向きな情報はいっぱい得られると思うし」

「うん、それとなく調べてみるね。そっちはどうするの?」

「こっちは……まぁ、空飛んだりできるからその要領でいろんな場所を回ってみるよ」

「わかった。じゃっそんな感じで」

 

こうして、さしあたっての情報交換が終わり澪は椅子から立ち上がった。そうして、部屋を出ようとすると、ハッと何か思い出したかのような顔をする。

 

「そうだ。連絡手段無いとダメだね。てことでこれ渡しておくね」

 

そう言って、ポケットから一枚の紙を取り出して机にあったペンで何かを書いて机に置いた。

 

「私に連絡したいことがあったらこの番号かアドレスに連絡してね」

「……携帯持ってるの?」

「あっ、それは平気。だって、携帯番号でもメアドでもないからね。じゃ、またあとで~」

 

澪はそう言って、ひらひらと手を振って外に出て行った。そんな澪を見送って令音は紙を見ながら結局何だったのだろうと首を傾けたのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

零奈はこの世界に蔓延る怒り・憎しみ・哀しみといった負の感情を蓄積し、零音が真哉を失ったことで生じた反転をトリガーに生まれた存在しないもの(イレギュラー)。それ故、零奈の中には負の感情しかなく、ただ人間を憎み、蹂躙する存在になり人類殲滅が起こるはずだった。

しかし、不安定になっている今の自身の霊力では困難だと理解し、さしあたって自らの状態を安定させるようと、自身の霊力を十一分割した。これによって、零奈の中にある霊力が少量になって一時的に安定化することに成功する。続いて体外に出した十個の霊結晶を適合する少女に与えて霊結晶の中の霊力を完全に安定させて、その後に霊結晶を取り戻すという計画をする。

 

それから数年が経ち、澪が隣界から出て来て令音と会っている頃。

半数の霊結晶は適合する少女に渡して、完全に安定するのを待つが、残りの半数は適合する少女が見つからない現状が続いていた。

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