「「おかーさーん」」
「ん?どうしたの?」
「たぶん、おやつじゃないの?」
令音が住んでいる家に二人が連れてこられたのはその翌日で、それから令音は二人と一緒に過ごしていた。二人が連れて来られた日に、真哉の遺体もちゃんと墓に埋められた。そうして、生活して気づけば五年の月日が経っていた。
二人が令音を呼んだことで聞き返す令音に対して、机の上に突っ伏して澪が二人の思っていることを察してそう言った。澪は不定期ではあるが令音と情報交換するために来たりしていた。それと、二人に懐かれているから顔を見せに来ている感じだった。なんで澪が突っ伏しているのかと言えば、いろんな場所を見て回ったのにもかかわらず、一向に零奈の居場所はおろか痕跡すらも見つからず、疲れたから休んでいる感じだった。また、完全に手詰まりになっているから、一度情報を整理して徹夜気味になりながら、零奈がいそうな場所の目星を付けようとしていたからだった。
令音がおやつを取りにキッチンに行こうと椅子から立ち上がる。
しかし、それ以上はできなかった。
「邪魔するよ、私たち」
「……このタイミングで来る?普通」
「はぁー」
唐突に空間に穴がこじ開けられて、そこから黒い髪の
「で、何しに来たの?さんざん探したんだけど」
「知ってるよ。近くに現れるたびに認識疎外をしていたからね」
「はぁー、だから見つからなかったのか」
「うん、そうだよ……ん?この二人って」
零奈は今気づいたかのような反応をして、二人に視線を向ける。少しの間があってから、二人が誰なのか察する。
「なんだ、二人とも生きてたんだ」
「うん、そうだよ。ところで、世界を滅ぼすのを止める気になった?」
二人を見たことで、気が変わると思う澪は零奈に確認の意味を込めてそう問う。零奈を探していた目的を果たすことができるから。
しかし、澪の問いを聞いた零奈は首を横に振った。
「残念ながら気は変わらないよ。たしかに二人が無事だったのはよかったけど……私は人間に対する負の感情でできてるから」
「ふーん。それで?」
「だから、世界を滅ぼすことに変わりはないよ。一度終わらせることに決めてるから」
「……そっか。じゃぁ、あなたを止めないとね」
澪は手をパンッと叩くと影から何人もの澪が現れる。
「行くよ、みんな」
「了解だよ」「ここで逃がすわけにはいかないかからね」「やっと出番が来たね」
澪の号令で澪の分身が零奈を包囲し、零奈は自身の周囲に霊力を放ち、それを爆破させて包囲した澪たちを吹き飛ばす。
ここまでは澪の想定していた通りに事が運んでいた。
(そもそも霊力の量に差があり過ぎるので勝ち目はないしね)
「<
澪は<封解主>を顕現させて空間に穴を開けると、澪は零奈の身体を押して穴をくぐって場所を移し、すぐに穴を閉じ、
「【
もう一つ穴を開けて零奈を押し込んで、その上から澪の作り出した隣界だと思っていた空間――【心性世界】の機能というか空間ごと閉じた。
(さて。この間に安全な場所に移して、零奈をちゃんと止める方法を考えないとなー)
そう思っていると、澪の前の空間にひびが入った。
「……最悪。普通やるかな?」
澪はそう毒づくと自身の前に氷の壁を張った直後、ひびの入った場所が吹き飛んで霊力の爆発が周囲に生じた。氷の壁によって澪たちは爆発の被害に遭わずに済んだが、爆発音で誰かが来そうなので<封解主>で別の場所に移動した。
~☆~
「いつまで繰り返すつもりかな?」
「……なんでいるの?」
澪が何処かわからない原っぱに着くと、何故か零奈が先回りをしたのかそこにいた。澪は零奈がいることに対して疑問に思いそう口にする。そもそも、澪自体適当な場所と考えて適当に空間を繋げたので、訳が分からなかった。
「そんなことはどうでもいいんだよ。それよりも二人とも話したんだけど?」
「今のあなたには会わせる訳にはいかないかな?……さてと。で、世界崩壊を企んでるってことでいいんだよね?」
「崩壊じゃないよ。終焉だよ」
「うん、わかった。あなたはここに野放しにはできないみたいだね」
澪は<鏖殺公>を顕現させて握ると、零奈は手をかざして霊力を収束させて剣を形成させる。
「あなたは邪魔をするのならここで消しておくね。というか、天使は貰っておくかな?」
「それは嫌だよ。それに、私は三人と一緒に暮らすんだから」
そう言って二人の戦闘が始まった。
~☆~
「で、唐突に現れたエレンに襲われて真那は連れ去られたと。それで、令音が追いかけて行ったと」
令音の家に戻って来た澪は士道の前に立って、澪は頭を抱えていた。零奈はなんとか退けたのだが、その間にエレンによって真那は拉致られてしまっていた。令音の機転で士道は隠れていて無事だったが。
「まぁ、過ぎたことをぼやいても仕方がないから、この辺にして二人を探しに行かないとね。士道は……どうしたものかな?一人にしておくわけにもいかないし……」
「おねーちゃん。おかーさんと真那を助けて!」
「うん、そうしたいんだけどねー。士道を連れて行くのは危ないし……」
澪はどうしたものかと頬を掻くと、唐突にインターホンが鳴る。誰かわからず警戒しつつ出ると、そこには一人の女性が立っていた。
「あれ?あなたは?」
「ああ、私は村雨令音の妹ですよ……で、あなたは?」
「ああ、村雨さんの……私は同僚の五河です。仕事の話で来たんですけど……。なんでか連絡が付かなくて直接来たんですけど……」
来客は令音の同僚の五河遥子で、澪は初めて会う遥子に対して、どう接したらよいか悩んでいた。
「村雨さん、今いないんですね……じゃぁ、出直しますね。あれ?ところでその子は一体?」
遥子がそう言って出直そうとすると、家の奥を見て首を傾げていた。澪が振り返るとそこには士道がいた。
士道は令音が帰ってきたのかと思って来たようだった。澪はどう説明したものかと悩むと、一つの名案を思いつく。
「この子は姉さんの子で……もしよければこの子預かってもらえませんか?」
「えっ?……あっ、数日なら平気ですけど、なんでですか?」
澪のお願いに遥子は困惑しており、聞き返される。聞き返されるのは当たり前なので、澪は最もな理由をでっちあげる。
「実は姉さんが新たなひらめきを探しに行って、そのまま行方をくらましちゃって……私はすぐにでも探しに行きたいんですけど……。でも、この子を連れて行きたいんですけど、厳しそうなので」
「えっ?村雨さんが?届け出は?」
澪の話(半分嘘)を遥子は何故か信じていた。澪は内心驚くが、この人はいい人っぽいなぁ、と思う程度だった。
「本人の意思で消えたから出してなくて……」
「……はぁ。まぁ、いいですよ」
「えっ!?いいんですか?」
「なんで驚いてるんですか?」
まさかの了承に澪は驚くと、遥子は苦笑いを浮かべてツッコむ。澪は士道のもとによると、
「私は探しに行くから、士道はこの人の家に居てね」
「……うん。お姉ちゃん頑張ってね」
「うん、すぐに連れ帰るからね」
こうして、士道は五河家に引き取られることとなった。
しかし、約束が果たされることは無かった。澪は身体を失い、誰にも視認できなくなったから。
~☆~
士道を預けた澪は、二人がどこにいるかわからないので<囁告篇帙>で検索しようとするが、出力低下というか霊力がそもそもそこまで残っていない為顕現することができなかった。
澪は仕方がないのでいろんな場所を見て回り……一週間後、令音と零奈を見つけた。そして、澪は零奈と戦うことになる。
零奈との戦いに関しては、全ての天使の力を使う勢いで進み、結果から言えば、隣界に零奈を押し込みその上に十の天使を使った結界を張って零奈を封印することに成功した。しかし、封印の代償に天使の出力が弱まったりしてしまったが。
令音はそばで意識を失っていたが、気が付き辺りを見回す。令音が無事で安堵するが、ここで零奈の封印の代償があった。
澪の姿が人間には見えないということ。
澪の中の霊力がわずかしかない為、霊力を感知できる人間でないと澪を見ることができなかった。それは、霊力を失っている令音も例外では無く見ることが出来ず、尚且つ令音の記憶の一部が封印されていた。士道と真那のことが。
澪にはどうすることもできず、分身に令音を見張らせて、澪は真那探しに乗り出した。
しかし、一向に真那は見つからず、気づけば五年の月日が経った。
真那を探し始めて一年経った頃に士道に会いに行ったが、士道も例外では無く澪を見ることが出来ず、尚且つ士道は一年近く澪と会っていないことで捨てられたのだと何故か勘違いしていた。その為、士道に向けての手紙を書いた。
そして、零奈によって精霊にされた精霊たちと、それを駆逐しようとするASTの光景を見て澪はなんとかして精霊達を救いたいと思った。しかし、澪にはその手段が無かった。
それと同時に、不完全だったのか何処からか綻びが発生したのか、零奈が隣界から出て来てしまった。
しかし、澪はそのことを知らず、零奈は<灼爛殲鬼>の霊結晶を無理やり自身の霊力でねじ曲げて安定化させ、美九と折紙に霊結晶を渡して、その後精霊達から霊結晶を回収して零奈の下に全ての霊結晶が戻った。その間に力も完全に戻り零奈は世界を包む霊力爆発を起こし、世界は一度滅びた。
世界が終わる直前、澪は残りの霊力を使って【六の弾】で精神のみを過去に飛ばした。しかし、霊力がわずかだったからか、戻ったのは滅びる一週間前だった。
そして、澪は“零奈を止めるため”何度も世界を繰り返した。滅びては直前に過去に意識を飛ばすことで。
最初の五回ほどで零奈の計画を見極め、計画の穴を探した。結果からいえば精霊達が零奈に霊結晶を奪われないようにすれば済むので、精霊達に協力してもらい零奈に勝つという方法を選んだ。
精霊たちは澪の話を聞き、何とか協力を得て琴里を除く十人と共に零奈と戦ったが、勝つことが出来なかった。零奈の行動を読んでは次の機会と繰り返し、気づけば二百回ほど繰り返していた。
二百一回目の世界で、澪はどうすればいいか分からなくなり、<灼爛殲鬼>の霊結晶を零奈の隙をついて奪い、それを自身の中に入れて隠した。
その結果、滅びるのは先延ばしにはできたのだが、結局零奈に襲われて奪われてしまい、世界が滅んだ。
それから十回ほど<灼爛殲鬼>の霊結晶を奪った時を起点に繰り返し、奪った霊結晶を奪われないように零奈から逃げまくり、中学生になった士道はたまたま出会った十香に恋をし、そして二人は付き合い、キスした結果十香の霊力が封印された。
零音の子供である士道には普通の人間とは違う特異の能力が備わっていた。そう理解した澪は、霊力を封印してしまえば零奈の計画は頓挫できると考え、澪は士道と十香を零奈から護っていった。しかし、他の霊結晶を集めた零奈に敗れ、二人は襲われ、<灼爛殲鬼>の霊結晶も奪われて、やはり世界は終わった。
士道には複数人分の霊力封印を行うことができる能力があることが分かったので、全員の霊力を封印できれば、士道の身を護るだけで済むので、霊結晶も奪われずに済むと考えた。その為、士道の妹の琴里に霊結晶を渡してその場で封印させた。
しかし、全員を恋に落とすのは至難で途中で精霊たちにキレられ、士道が怪我をしたり、死んだり、と何度も世界を繰り返した。
それからは士道一人では色々困難なので、士道のサポートをする組織を立ち上げることにした。そして、次第に精霊達と士道が打ち解け、霊力封印ができた。
それからは、霊力を封印した精霊たちのケアや、士道たちへの危険の排除などをしていった。それでも、精霊の反転やDEMの邪魔といった様々な要因で零奈の力が戻り、世界は終わった。
そして五百回ほど繰り返した世界で、遂にすべての精霊の霊力の封印を成功させた。しかし、士道は自身に封じた霊力が暴走し、巨大な霊力爆発が起きて世界が滅んでしまった。
澪はまさかの事態にどうしたものかと思いながらも、同じようなことをして、士道に霊力封印をさせていき、エレンに途中で襲われ、士道は十香を護ろうとして天使を顕現させた。澪は士道が天使を顕現できることを知り、次の策を考えた。
個々で勝てないのなら、十の霊結晶を一つに纏めれば零奈に勝てるのではと考えて行動する。士道が暴走するのを回避するためにシステムケルブを用意した。しかし、零奈に澪の暗躍がばれて対策を撃たれ、何度も失敗をした。
それから、<ラタトスク>を作ってサポートさせたり、零奈の邪魔をしたりしていき、その度に何処かで失敗をしていった。また、真那がDEMに居ることを知り連れ帰ろうとしたらが、やはり澪の姿が見え無い為、泣く泣く断念した。
そうして澪は九百九十九回繰り返し、千回目の世界で澪は千花と出会った。
次回はやっと千花の過去です。
澪が繰り返した九百九十九回の世界はダイジェスト形式で。そうしないと大惨事ですしね。