デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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連日投稿9日目


9話 千花の願い

士道と真那が穴から放り出されると、そこは樹の外で、妙なところから二人が出てきたことで、精霊達が集まる。

 

「妙なところから出てきたわね?で、どうなったの?」

「令音さんが現れたと思ったら外に放り出された」

「え?じゃぁ、どうなったのか分からないのか?」

 

中であったことを説明すると、精霊達はポカーンとしていた。結局どうなったのか誰にもわからないから。

だから、もう一度突入するために、樹に穴を開けようとすると、

 

『みなさん、自身の周囲に霊力を張ってください!樹の中から膨大なエネルギー爆発が来ます』

 

鞠亜がそう警告を出す。何が起こるかわからぬまま、皆鞠亜の言葉に従って霊力を張ると、樹の中から空間震が起き、樹を中から抉っていく。空間震の余波から身を護るだけで皆手一杯だった。

空間震は樹の幹を完全に呑み込んで、空間震が収まると、樹の上部が落下し、瞬く間に霊子に分離して消滅していく。多大な損傷が起きたためか、樹の修復は起こらず、地球のエネルギー吸収はやんでいるようだった。或いは中で決着が付いたのか。

そして、空間震が起きた中心には誰かが立っていた。

 

零奈と澪(私たち)の全て、零音()が確かに引き受けたよ」

 

黒髪に戻った零音はそう言って、大きく伸びをすると皆の存在に気付く。零音は皆のもとまで降りてくると、浮いている必要も無いので全員地面に足を付ける。

 

「やぁ、シンに真那。皆も待たせたね」

「令音さんでいいんですよね?」

「ああ、そうだよ」

「ふぅ、良かったです。これで零奈だったらもう一戦になりそうでしたし……」

「いやー、良かったよぉ。無事、令姉が戻って来てねぇ」

 

とりあえず、零音が令音の人格だったことに安堵すると、何故か千花も一緒に安堵していた。令音が背負ってきた千花の身体に入った感じの状態。身体がダメになっていた気もするが、誰もツッコまず、そのまま流れる。

 

「で、これからどうするんですか?」

「そうだね……ここに居るメンバーだけが霊結晶(セフィラ)を持っているから、このまま回収してしまおうか。真那、君の<月華狩人(サリエル)>で霊結晶(セフィラ)を回収してくれ。で、後はそれを隣界に置いておけば、もう誰も隣界に行くことはできなくなるから」

「ええ、了解です」

 

真那は零音の指示を聞くと<月華狩人>を振るって、精霊達と零音と士道の中にある霊結晶を回収する。<月華狩人>によって、身体に一切の外傷もなく、霊結晶を抜いても何も起こらなかった。そして真那の手には計十二個の霊結晶が収まり、続いて千花の霊結晶を回収しようと振るう。

しかし、千花は何故かひょいっと避ける。そして、自身と大気中の霊力を使って小さな龍を出して、真那の手から十二個の霊結晶を奪い、尚且つ千花自身が<月華狩人>を奪ってそのまま真那に振るって霊結晶を抜き取る。

 

「なにやってるんだ、千花?」

「なんなんですか、千花さん?」

 

千花の行動に疑問を持つ二人は、千花に問いかけると、千花は笑みを浮かべる。皆も千花の行動に疑問を持っている様子だった。

 

「ん?だってぇ、私は霊結晶(セフィラ)が無いと消滅しちゃうからねぇ。それに、時間切れだよぉ」

 

千花がそう言うと、精霊達と士道と真那の身体が消え始め薄くなる。【十二の弾】の効力が消え始めたからだった。各々自身の状態を見ていると、千花は再び口を開き、

 

「さらに言えば、あのままだと真那ちゃんは霊力を持ち続けることになっちゃうしねぇ。あとは……私には未来は無いからねぇ」

『『『えっ?』』』

「……ッ!」

 

遠い目をしながらそう言った。士道と精霊達は千花の言葉の意味を測りかねて声を漏らすと、真那は何か知っているのかハッとする。零音も知っているようで、しかし、特に何かする気が無いのか、何も口にしなかった。二人はただ暗い顔をするだけ。

 

「千花……今のはどういう意味なんだ?」

「うん、これは士道たちには話してなかったんだけどぉ。私は澪ちゃんが何度もタイムリープしたことで士道君を中心に因果律が集中したのと、それらの世界での精霊達の願い、この二つが収束したことで生まれた存在なんだぁ。だから、精霊という概念が無くなれば、私はそもそも生まれることは無いのぉ」

「なんで、黙ってたんだよ。だったら千花も生きられる方法を……」

「そうだ!何かしらあるはずだ!」

 

千花の身体の真実を知って、士道は千花が生き続けられる方法を探すことを提案する。精霊達も士道と同じ考えの為、士道の言葉に同意を示していた。

 

「ううん、私のことはいいよぉ。私は精霊を救うために生まれた存在だからぁ。それに、精霊が本当の意味で救われるのは、精霊じゃなくなることだと、私は思っているからねぇ。それは、霊力を宿してる士道君と真那ちゃんも例外じゃないからぁ」

 

しかし、千花はいつも通りの調子でそう言い、十三個の霊結晶を自身の中に取り込む。これで、もう千花以外は霊結晶を手にすることが出来なくなった。皆、千花の行動に困惑し、

 

「さてぇ、これでみんなとはお別れだねぇ。まぁ、色々言いたいことはあったけど、それを伝える時間は残ってないしぃ」

「いいのかい?おそらくもう皆に会うことは無いのだよ」

「いいよぉ。別れが辛くなっちゃうでしょぉ」

 

零音が気にするも、千花は全く気にしておらずそう言う。そして、少し考える。それで、少しだけ話すことにする。何も言わずには味気が無い気がしたから。

 

「狂三ちゃんとはいろんな場所で会ってたねぇ。皆を影ながら助けてくれてありがとねぇ。それとごめんねぇ。狂三ちゃんの悲願をこんな形にしちゃってぇ」

「いえ、いいですわ。それに、わたくしの計画では間違いなく挫かれていたでしょうし」

「そっかぁ。あっちに戻ったら、もう復讐なんて考えずに普通の生活を送ってねぇ。あと、隠れて猫をモフらなくていいからねぇ」

「ふふっ。ええ、そうしますわ。それと、ありがとうはわたくしの方ですわ」

 

「六喰ちゃん、出会ったのはだいぶ前だけど、私は六喰ちゃんとあの時出会えて楽しかったよぉ。私的には六喰ちゃんは妹のように思ってるからねぇ」

「むくとしては、千花のことは姉のようには思えなかったのじゃ」

「ありゃ?これは手厳しいやぁ。六喰ちゃんは向こうじゃ、ちゃんと学校行きなよぉ」

「気が向いたら行くのじゃ。あっ、今思えば千花は姉というより、いい友達だったのじゃ」

 

「十香ちゃんはこの世界だと修学旅行の時だったねぇ。その前にあった時は問答無用で斬撃飛ばされたしぃ」

「あれは、仕方ないだろ!いつもはASTだけだったから、千花もその関係者かと思った訳だし」

「まぁねぇ。十香ちゃん、士道君のことよろしくねぇ。士道君はすぐ無茶をするからねぇ」

「ああ、任せておけ!」

 

「みーちゃんと会ったのは私が中学生の頃だったねぇ。みーちゃんがアイドルになって別れた時はあれだったけど、あの頃は楽しかったねぇ」

「はい!私もですよ。実際、ちーちゃんがアイドルを進めてくれたから今こうしてアイドルをしているんですから」

「そうだったねぇ。私はみーちゃんの歌大好きだから、向こうでもアイドル続けてねぇ」

「当たり前ですよ。ちーちゃんも聴いてくださいね」

 

「二亜ちゃんと始めて会ったのはコミコの時だねぇ。私がもっと早くに精霊の力に気付いてたら、DEMに捕まるのを防げたかもなのにぃ。それと、漫画の連載で忙しいのに、面倒に巻き込んじゃってごめんねぇ」

「ううん。あたしとしては面白いことばかりだったから、全く問題ないよ。DEMの件も、その時は普通の人間として生きてたのだから仕方ないよ」

「そう?なら、良かったよぉ。これからも頑張ってねぇ」

「うん。任しといて!超大人気作家になっちゃうからさ」

 

「琴里ちゃんとは<ラタトスク>の司令官としてあったのが出会いだったねぇ。それとお仕事お疲れさまぁ」

「ええ、そうね。あの時は、突然士道と一緒に現れたから驚いたわよ。それに、まさか、真後ろに住んでいたのにも驚いたわよ」

「そう?私は……あっ、そう言えば挨拶回りした覚えはないから、一方的に知ってた感じだねぇ。まぁ、これからは普通の中学生として生活だねぇ」

「そうね。本当にそうなればいいけど」

 

「四糸乃ちゃんとよしのんとの出会いは、ASTに襲われてた時だったねぇ」

「そうですね。あの時は、いきなり現れたから驚きましたよ」

『そうだよ。てっきり、ただのASTの増援かと思っちゃったんだから』

「えへへぇ。でも、助けたかったんだからねぇ。これからは、二人ともいろんなことに挑戦してねぇ」

「がんばります!よしのんと一緒に」

『……そうだね』

 

「耶倶矢ちゃん、夕弦ちゃん。二人は現界したらすぐに何処か行っちゃうから、初めて会ったのはあのゲームセンターだねぇ」

「ああ、そうであったな」

「思案。そう考えると、割と会ったのは最近なのですね」

「だねぇ。霊力を封印してからは、学校生活も楽しかったし、二人はいつまでも仲良くねぇ」

「無論。当たり前ですよ。耶倶矢と夕弦は切っても切れませんよ」

「そうだとも。ずっと、夕弦と共にあるさ」

 

「オリちゃんとは、転校してきた時だったねぇ」

「そうなるね。私自身、最初は精霊だって知らなかったわけだし」

「そう考えると、私たちは似たもの同士だねぇ。向こうでは士道君にあんま変なことはしないでよぉ」

「うん。善処するよ」

 

「なんだかんだで私が精霊の力を自覚して最初に会ったのって七罪ちゃんだったね。それに、付き合い一番長いしぃ」

「そういえば、そうね。あの時は、逃げるのに必死だったから全く千花のことを見てなかったけど。こっちじゃ、千花の次に霊力封印したわけだしね」

「うん、うん。向こうじゃ、四糸乃ちゃんと六喰ちゃんと一緒に学校行ってよぉ。結局学校行かなかったんだからぁ」

「はいはい、気が向いたらね。今まで楽しかったわよ。あと、色々教えてくれて、ありがと」

 

そう言って、千花は十一人と一匹に挨拶を済ませると、一足先に未来の世界に戻され、この場から消えていった。

 

「さて、真那ちゃん、色々ありがとねぇ。それと、治療のためとはいえ、精霊の力引き出しちゃって……本当はあの時、精霊の力を引き出さなければ普通の女の子になれたんだしねぇ」

「いえ、別に気にしませんよ。むしろ、千花さんのおかげで兄様たちと会えましたし、助けることもできたんですから」

「ふふっ、そう言ってもらえると救われるよ。まぁ、この通り、士道君は無茶するからちゃんと助けてあげてね」

「ええ、わかってますよ」

 

真那は胸を張ってそう言い、士道はそんなに無茶してたっけ?と思い首を傾げていた。そんな士道に視線を向けると、続いて士道に向かって話しかける。

 

「士道君。色々あるけど、皆をちゃんと助けてくれてありがとねぇ。私だけじゃ、精霊皆を助けることはできなかったからさぁ」

「ん?そうか?俺としても千花がいなかったらここまでできなかったよ」

「そう?まぁ、いいやぁ。あと、皆と仲良くねぇ。あとは……うん。私のことは忘れてくれていいからぁ。いつまでも、私のことを引きずられたくないしねぇ。あっ、これは真那ちゃんもだからねぇ」

 

千花が笑顔でそう言うが、その裏では本当は忘れないでいてほしいと思っていそうだった。だから、二人はその笑顔が無理に作っている作り笑いだと分かり、

 

「忘れないよ」

「忘れないですよ」

「……うん。そうだったらいいなぁ……」

 

二人の言葉を聞いて、はかなげな表情をしながらも、何処かうれしそうな声音で言い、背伸びをして士道に顔を近づけると、そのまま士道の額にキスをする。

千花のまさかの行動に士道は一気に顔を真っ赤にし、真那は呆れた顔をする。

そして、千花は士道から離れると、一瞬で消え……

 

「ちょっ!!」

 

真那の額にもなぜかキスをしていた。

真那は声を上げるが、千花は全く気にせず、サッと離れると笑顔を向ける。

 

「これは願掛けだよぉ。と言う訳で、じゃぁねぇ」

 

千花がそう言って手を振ると【十二の弾】の効果が切れて二人は消えた。

残されたのは千花と零音だけ。

 

「はぁー、結局あの事は告げなかったね。それに、嘘もついているし……」

「いいでしょぉ。別にぃ。それに、嘘ついたのは令姉でしょ?まぁ、訂正はしてないけどぉ……」

 

零音はため息をついて千花に半眼を向ける。千花は最後に全員に対して秘密と嘘をしていたから。

秘密に関しては、過去自体を改変するため、三十年後の元いた時間軸での出来事は無かったことになり、誰も記憶を保持することができないこと。

そして、霊結晶を隣界に置くというのは大嘘だから。

 

「本当にいいんだね?」

「うん、いいよぉ。別にぃ。今の令姉も無かったことになるんだしねぇ。令姉には本当にお世話になったねぇ。澪ちゃんの頼みとはいえ私の事を育ててくれてぇ」

「何を言ってるんだい?精霊達の願いと霊力で生まれた君は、私の子供だよ。だから、親として当たり前のことだよ」

 

そう言って、千花の身体を抱きしめる。

 

「本当は、千花に任せずに私がやるべきことなんだけどね」

「ダメだよぉ。これは、私がやるのが一番なんだからぁ」

「まぁ、言って止まるようなら止めるけど、止まらないだろうからね。後は任せたよ。千花」

「うん、任せてぇ」

 

千花は最後までいつもの調子でそう言うと、零音にかかっていた【十二の弾】の効果が切れて零音も消える。

こうして、この場には千花だけとなって、千花は大きく伸びをするのだった。

 

「さてぇ。じゃぁ、最後の大仕事の“隣界の消滅”を始めるかなぁ。もう、私みたいな子が生まれないのが願いだしねぇ」

『そうですね。隣界自体を無くさないと、何が起きてこの世界とつながってしまうかわかりませんからね』

「……ん?なんで鞠亜ちゃんいるのぉ?士道君と一緒に帰ったんじゃ?」

 

千花の独り言に対して、いつの間にか千花のスマホに移っていた鞠亜がそう言い、千花はスマホを出して驚いた。士道のスマホの中にいるものとばかり思っていたから。

千花の最終目的“隣界の消滅”だけは真那にすら話していなかった。零音に関してはなんとなく察していたりするが。

 

『精霊がいなくなれば、<ラタトスク>も無かったことになるので私も消えるんですよ。だから、千花と居ることにしました。一人で消えさせたりさせませんよ』

 

鞠亜は簡潔にここに残った理由を言う。鞠亜の生まれた訳や存在のことを考えると、口にしたことは事実だとはっきりとわかってしまうので、千花は拒むことはしなかった。

 

「でもさぁ、鞠亜ちゃんは別に【十二の弾(ユッド・ベート)】の効果の対象外だから、このままネットの世界にいればそのうち生まれる士道君達と会えるよぉ?」

『私を知らない士道たちに会うのは、結局他人と会ってるのと同じですよ』

「まぁ、そうだねぇ」

『それに、隣界がどれだけ広いかわからないのですから、私がちゃんとナビしてあげますよ。真那と行った時に情報収集はしておきましたから』

 

鞠亜は自身がついていくメリットも提示すると、千花はもう何を言っても無駄な気がした。

 

「ふぅー、頼もしいねぇ。まぁ、鞠亜ちゃんが来たいのならいいけどねぇ。長い旅の始まりだねぇ」

『えぇ、そうですね。これが終わった時はどうなるのでしょうね?』

「さぁ?どっちみち隣界からは出られなくなるんだし、終わった後なんてないんじゃないのぉ?一つ分かってるのは、精霊が存在しない世界になることぐらいかなぁ?」

『そうですね。だからこそ、こんな計画を立てた訳ですから』

 

二人はそう言って、千花が<封解主>で隣界に続くゲートを開くと、そのまま中に向かって歩き出すのだった。




次回、最終回です。
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