「おかえりぃ、そして初めましてかなぁ?鞠奈ちゃん」
「はぁー、君が千花ね」
「ただいま戻りましたよ。それで、すぐに次の行動に移すんですか?」
「うん。もちろんだよぉ。と言っても、二人は行かないけどぉ。今回はあの子たち自身にやってもらうからねぇ。といっても、あの子たちは士道君の
「そうですか。では、私はゆっくりしていますね」
「ちょっと、あたしを無視して話を進めないでくれない?」
「そう言う訳だから、それまでの間は、ロスタイムかなぁ?」
~☆~
「士道、起きて。朝だよ?」
「パパ、おきてー」
「ううーん」
目を覚ますとそこには肩口をくすぐる桃色の髪に柔和な雰囲気の顔立ちの少女と、桃色の長髪に幼さのある可愛い顔の少女がいて、士道を起こしていた。若干のラグの後、士道は本来ならもう会えないはずの二人がいることに気付き、勢いよく身体を起こす。
凜祢と凜緒。
「なんで、二人が?」
「久しぶりだね、士道」
「パパー」
凜祢はどこかはかなげな表情をすると、凜緒は士道に飛びついた。士道は凜緒の身体を抱きとめると、そのまますり寄られた。
「まぁ、聞きたいことは色々あるよね。でも。私もあまりよくわかっていないんだよね」
「そうなのか?」
「うん、気が付いたら私の家に凜緒といて、士道なら何か知ってるかなと思って来たから。でも、士道もわからないみたいだね」
凜祢自身、どうしてここに居るのか、ここが
「ふふっ、お腹は空いてるみたいだね。何か作って来るよ」
「だったら、俺が」
「いいよ。それより士道は着替えちゃって。キッチン借りるね。凜緒も手伝ってくれる?」
「はーい。ママについてくー」
凜祢はそう言うと、士道に反論させずに凜緒を連れて部屋を出て行ってしまった。何が起きているのか本格的にわからないが、わからないならわからないなりに士道は考えることにした。
(ここは
結果、千花が何かしたという結論に至った。しかし、この世界で何をすればいいのかはわからず、とりあえず情報を集める必要があると判断し、適当な服に着替えてリビングに降りる。
リビングに着くと、すでに朝ごはんが完成しており、凜祢と凜緒はソファーに座ってテレビを見ていた。
「あれ?もう完成したのか?」
「うん。と言うか、実際はすでに作ってあったんだよね」
「そうなのか?」
「うん。士道の家に入ったらこれがあったから」
凜祢はそう言って机に置かれた一枚の紙を士道に見せる。
そこにはこの世界が千花によって作られ、ほぼ天宮市と同じ造りになっていること、今日一日好きに過ごせば勝手に終わることが書かれていた。どうして、この世界を作ったかについては一切書かれていなかった。
「えーと、つまり?」
「うん、つまり私たちの好きに過ごせるみたい。琴里ちゃんは別の場所にいるのか見当たらないしね。さらには隣のマンションも無くなってるから、完全に私たちの時間を作らせる気みたい」
凜祢は書かれていた内容からそう判断したようだった。士道の予想が当たったと共に、なんでこんなことをしたのかという疑問が残った。
「まぁ、考えてもたぶん無駄だよ」
「それもそうだな。千花だし」
「いいんだ……士道に信頼されてるんだね、千花さんって」
千花だからいいやと士道が思ったら、凜祢は拗ねたような調子で何処か不機嫌な声を出す。
「パパ!ママとけんかしちゃだめー」
「あっ、別に喧嘩はしてないよ」
「うん、喧嘩はしてないよ。ちょっとあれなだけで」
空気が不穏になると、凜緒が慌てた様子でそう言い、二人して凜緒を落ち着かせる。その際に凜祢が後半に何か小さく言っていたが、士道には聞こえていなかった。
「それより、好きにしていいならどこか行こ?
「それもそうだな。凜緒はどこか行きたい場所はあるか?」
「うーん。りおはね、どうぶつさんがみたーい」
「そっか。じゃぁ、朝ご飯を食べたら動物園に行こうな。凜祢もそれでいいか?」
「うん。いいよ。じゃぁ、食べちゃお?」
凜緒の提案で動物園に行くことになり、士道たちは色々話ながら凜祢の作った朝ごはんを食べ、家を出た。
~☆~
「あるぱかさん、もふもふー」
「うん。モフモフだね」
動物園にやってきた三人。まず、何処から回ろうかということになり、凜緒はアルパカに会いたいということで、アルパカのいるエリアに来ていた。
凜緒は近づいてきたアルパカを触り、凜祢も一緒に触っていた。
「凜緒はアルパカが気にいったのか?」
「うん!もふもふー」
凜緒はアルパカの毛触りを気にいったのか、ずっと触り続ける。そうして、数分経つと凜緒は満足したのか、アルパカから離れる。そして、別の動物のもとへ行く。
続いての動物はライオンだった。
「りお、らいおんさんもさわりたーい」
「りお、危ないから無理だよ」
「むー。じゃぁがまんする」
「凜緒、えらいぞ」
凜緒がライオンもアルパカ同様触りたいと言い出し、二人は焦るが、無理なことを伝えるとあっさり引き下がったことで安堵する。
そもそも、昼間な為ライオンは奥で寝ているからどちらにしても触れないのだが。
「つぎは、ぱんださんみたいなー」
「あれ?もうライオンはいいのか?」
「うん。らいおんさん、ねてるんだもん」
凜緒はつまらなそうにそう言うと、パンダのいるエリアに移動する。パンダは人気だからか人が多く、凜緒の背じゃ見えそうになかった。
「うぅ、みえない……」
「そうだな……そうだ!」
「ん?何する気?」
「あぁ、こうするんだ」
凜緒が見れないことを残念がっているので、なんとかしたいと士道は考え、凜緒がパンダを見られる方法を思いつく。そんな士道の反応から凜祢は疑問を口にする。
士道は一度しゃがむ。
「凜緒、肩車だ」
「かたぐるま?うん!」
そして、凜緒に伝えると凜緒は素直に従って士道の両肩に座り、士道は立ち上がる。
「わぁ、ぱんださんがみえるー」
「ふふっ、よかったね。凜緒」
パンダを見られたことで、はしゃぐ凜緒に凜祢も微笑む。凜緒は士道に肩車されながらパンダを見ていると、何故か首を傾げた。
「ぱぱ、なんでパンダさんはこんなににんきなの?」
「それはな、人気者だからだよ」
「そうなんだー」
「答えになってなくない?」
士道の答えに凜祢はそう言うが、凜緒はパンダにくぎ付けになってもう聞いていなかった。
凜緒は肩車を気にいったのか、その状態でその後も三人は様々な動物を見て回った。
~☆~
「さて、なんでこうなった?」
「まぁ、凜緒が食べたいって言ったからね」
士道たちはお昼の時間で動物園内のレストランに来ていた。
凜緒の前にはオムライスが置いてあり、普通に考えて凜緒一人で食べきるのは無理そうな量だった。といっても、別に凜緒一人で食べる訳では無く、机の上にはハンバーグとパスタもあり、三人で分けて食べるのだが。
「凜緒、食べられる量だけでいいからな」
「うん!」
「凜緒、よそってあげるね」
凜祢が凜緒の分を小皿に別け、食べ始める。
「それで、この後はどうする?」
「あぁ、一通りは見て回ったからな。凜緒はどうしたい?まだここに居るか?それとも別の場所に行くか?」
「うーん。りおはねー。あれにのりたーい」
食べながら、この後のことを話していると、凜緒は外に見えるある物を指差した。それは動物園に併設された少し小さめな遊園地にある観覧車だった。動物園の入園料に含まれているから問題なかったので、士道としては凜緒の提案に賛成だった。
「そうだね。凜緒が行きたいのなら、行こうか」
「だな」
凜祢も同様のようで賛成し、喋りながら昼食を食べ終え、遊園地に三人は行った。
ジェットコースターは凜緒の身長的に乗れず、とりあえず凜緒がメリーゴーランドに乗りたがった。レストランでは観覧車に乗りたがったのだが、人が結構並んでいたからあとで乗りたいとのことだった。
「俺は外から見ていればよかったのにな」
「いいでしょ?それとも凜緒と一緒に居たくないの?」
「うー。そう言われると弱いな」
士道は高校生にもなってメリーゴーランドはちょっとと思って外で待っていたかったが、凜緒に「一緒に乗りたい」と言われた為、士道は乗らざるを得ない状況になり、渋々乗ることになった。
そして、メリーゴーランドを乗り終えると続いてコーヒーカップに乗った。士道と凜祢は凜緒が目を回すといけないからとハンドルには触れない方向でいたのだが……。
「りお、まわすー」
凜緒はハンドルに触れると、ハンドルをひたすら回した。子供の力なら回転速度もそこまで行かないだろうと思い、二人はまだ止めようとはしなかった。しかし、この選択が間違いだと凜祢はこの時思っていなかった。
このコーヒーカップは普通のとは違く回転し易かったようで、瞬く間に高速回転になる。
「凜緒、ちょっと回すのやめない?」
「ぐーるぐる、ぐーるぐる」
「たしかにグルグルだな」
「士道!感心してないで止めてよ!」
凜祢は凜緒に声をかけてハンドルを回すのを止めさせるように言うが、凜緒は楽しくなったのか歌いながらグルグル回す。凜祢としてはこれ以上速くなるのは危ないと思ったからだった。士道はまだこの回転では問題なかったので、呑気にそう言い、凜祢は士道に抗議する。
「大丈夫だよ。ここは動物園に併設されている遊園地なんだから、これが最高速度だよ」
「本当にそうなの?気のせいじゃなければ、係員の人が慌てているように見えるけど……」
「ぐーるぐーる」
士道は呑気にそう言い、凜祢は心配そうな顔をする。凜祢は回転した状態で係員に目を向け、士道も見てみると確かに慌てていた。それと、他のコーヒーカップはもう少しゆっくりと回っていた。しかし、凜緒は回し続ける。
すると、次第に回転速度が落ち始める。そして、ハンドルの回転が止まり、こちらからは動かなくなった。
「あれ?ハンドルが回らなくなった?」
「たぶん、時間切れだろ?もうすぐ終わるから速度を落としてるんだろうし」
「ふぅー、たのしかったー」
凜緒は満足したようで、士道は安心するが、凜祢は途中から心配していた為か疲れた顔をしていた。そうしてその後もいくつかのアトラクションに乗ると、最後に観覧車にやってきた。いくらか人が減り、すぐに乗ることができた。
~☆~
「観覧車の景色もよかったけど、やっぱり私はここからの景色が好きかな?」
「ああ。俺もここからの景色が好きだよ」
「うぅん」
士道たちは遊園地を出ると、なんだかんだで精霊とのデート後によく訪れた高台公園にやってきた。凜祢は柵に身体を預けて街の景色を一望する。
凜緒ははしゃぎ疲れたのか今は士道の背ですやすやと眠っている。
「士道……」
「なぁ、凜祢。そこのベンチに座らないか?」
凜祢が何か言いたいのか寂しげな表情をすると、士道はベンチを指差しそう言った。凜祢は静かに頷くとベンチに座り、凜緒を膝枕する。
「今日は楽しかったよ。もう、士道と会えないって思っていたから」
「俺もそうだよ。凜祢と凜緒に会えないって思ってたから、また会えてうれしいよ」
二人は夕陽を見ながらそう口にする。
「でもさ、たぶん今日が終わったらまたお別れになっちゃうんだよね?」
「ああ。どういう意図があって、今日の時間があったのかは千花しか知らないからな」
「そうなんだね。士道、その千花さんってどんな人なの?こんな世界を作ったのに、すぐに受け入れちゃって」
凜祢は士道が千花のことをどう思っているのかを疑問に持ってそう質問した。士道に信頼されているから。
「そうだな。千花は何を考えているのか時々わからなことがあるけど、そばにいるとなんでか落ち着くんだよな。あっ、凜祢も近くに居ると安心感があるんだよな。それで、千花は普段はふざけたようなことをするけど、何をするにもちゃんと意味があるんだよ。だから、この世界を作ったのにもちゃんと意味があると思ってる。だから、信頼できるんだよ」
「そっか。士道は千花さんが好きなんだね」
凜祢は寂しげな表情でそう言った。士道は凜祢に「千花のことが好き」と言われて反応に困った。千花のことはずっと友達としてしか見てこなかったから。だから、恋愛感情がどうかについては考えてこなかった。七罪と行った遊園地や修学旅行で千花と話した時に、精霊全員を救うまではそういうことは考えないと伝え、ずっとそうしてきた。よくよく考えれば、全てが終わった以上もうそれは終わっているのだが。
「さぁ?よくわからないんだよな。ずっと友達と接してきたから」
「そうなんだ。じゃぁ、ちゃんと選んであげなきゃね。十香ちゃんたちはみんないい子だから」
「ああ、そうだな」
「うーん……ママ?パパ?」
すると、凜緒が目を覚まして目をこすりながら身体を起こす。寝起きだからか寝ぼけていた。
「おはよ……て時間でもないか」
「だな。よく眠れたか?」
「うん!」
「じゃぁ、帰ろっか。まだまだ、今日はあるんだから」
凜緒が起きたことで話は終わり、凜祢は帰ろうと口にした。
「ああそうだな」
~☆~
「士道、それ取って」
「はい。これをよそってと」
三人は凜祢の家にいた。士道は家の前で別れようとしたが、この時間がいつまで続くのか分からず、終わるまで一緒に居たいというのが凜祢と凜緒の意見だった。士道も一緒に居たいと思ったから凜祢の家に上がり、今は夕飯を作っていた。二人で同時進行で作っている為要領よく進み、すぐに夕飯が完成した。
そして、食べ終えて、士道はリビングでゆっくりしていた。凜祢と凜緒はお風呂に入っている。凜緒が「パパもいっしょにー」と言ったが、流石にそれはまずかったので士道はリビングにいる。
「千花、いるんだろ?」
「よくわかったねぇ」
士道は洗い物を終えて、ソファーの背もたれに頭を預けて呟くと、いつの間にか千花がそこにいた。千花は霊装姿ではなく私服姿で、椅子に座っていた。士道はなんとなく千花がそばにいる気がしたから呟いたが、出てくるとは思っていなかった。
「なんで、驚いた顔をしているのぉ?」
「てっきり、見ているだけで出てくるとは思ってなかったからな」
「そうだねぇ。まぁ、凜祢ちゃんたちが今はここにいないから出てきただけだよぉ。二人がいたら出てくる気は無かったしぃ」
「なんで、出てくる気が無かったんだ?もしかして、何か不都合が?」
「ううん。別にそう言う訳じゃないよぉ。まぁ、三人の時間をなるべく多くとってあげたいのが理由かなぁ」
千花はあいかわらずののんびりとした調子でそう言い、そんなモノなのかという疑問を持ちながらも、士道は納得する。
「ありがとな。凜祢と凜緒にまた会わせてくれて」
「ん?なんのことぉ?」
「だって、どうせ俺と会わせなくても、良かったんじゃないのか?凜祢と凜緒の霊力は俺の
「うん、実際はそうだけど、出来るなら会いたかったでしょ?だから、これはサービスだよぉ。いままで頑張ってくれた士道君の為にねぇ……ともう時間だねぇ」
「時間?」
本来ならこの時間は無くても一切千花の目的には影響しないのでは?と士道は思ったからそんな質問をした。鞠亜と鞠奈みたいに、士道の
士道の予想は正しく、この時間が
そして、千花は何かに気付いて時間を気にした。
「うん、もう時間だから、じゃぁねぇ」
「士道?誰かいるの?」
そして、千花は唐突に消えた。それと入れ替わるように凜祢と凜緒がリビングに戻って来た。どうやら、本当に千花は二人と会う気は無かったようだった。
「ん、なんでもないよ」
「そう?」
「そうだよ」
「そうなの?」
凜祢は疑念の目を向けるが、士道はそう言い通す。ここで、千花が居たと話しても意味が無いから。凜緒はこのやり取りに混ざろうと、よくわからないながらも混ざる。
(どうせ話しても、もう千花は出てこないだろうしな)
「まぁ、いいや。それより、士道もお風呂入っちゃいなよ」
「あぁ、そうだな」
凜祢は気を取り直すように士道にお風呂に入るように促すと、士道もお風呂に向かった。
~☆~
「……ぅ」
「凜緒、寝ちゃったね」
「だな」
士道と凜祢は布団を並べて二人の間で眠る凜緒を見ていた。
本来なら、家に戻って寝ようと思っていたのだが、やはり凜緒に一緒に寝ようとお願いされてなんだかんだでこうなった。最初は凜祢のベッドに三人で寝ようと言われたが、流石にそれは厳しかったので、布団を二つ並べての形で落ち着いた。
「もうすぐこの時間も終わりなんだよね?」
「ああ、たぶん日付が変わると同時にだろうな。今日までならな」
凜祢はこの時間がもうすぐ終わることが寂しいのかそう言う。士道もそうであり、もうすぐ終わるであろう時間を惜しむ。
「それにしても、ちゃんと付けててくれたんだね」
凜祢の視線の先には士道の家の鍵があり、そのカギに付いた勿忘草のキーホルダーを見ていた。二回目の〈
「本当はね。朝、士道を起こす時心配だったの。あの時も士道の記憶に定着してなくて私のことを忘れていたから。だから、起きた士道が私たちを見て覚えていないんじゃないかって」
「それは……」
「でも、士道は覚えていてくれた。そして、大事にキーホルダーを持っていてくれた。もう一個の鍵にも別のキーホルダーが付いているけど、付け換えないでおいてくれて。だからね、うれしかったんだ」
どこか
「だから、この時間が終わっても私たちのことを覚えていてほしいな」
「あぁ、覚えているよ。きっと」
「うん、そうだったらいいな」
すると、士道は今日の疲れからか眠気が来て、
「眠かったら寝ていいんだからね」
ウトウトし始めると、凜祢は優しげな声でそう言った。士道はまだ起きていようとするが眠気に負けて寝てしまった。
そんな士道を見て、凜祢は微笑むと士道の髪を撫でる。
「もう、ずっと気を張ってたのかな?こういう時ぐらいは私にも頼ってくれればいいのに……まぁ、それが士道のいいところではあるんだけどさ。士道、ありがとね。大好きだよ」
たぶん、明日も投稿します。きっと。
では、ノシ