デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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最後の番外の精霊、万由里のターンです。


6話 万由里と千花

「士道、そろそろ起きなよ」

 

翌日。ぶっきらぼうに声を掛けられ目を覚ますと、そこは凜祢の家ではなく士道の部屋の中だった。そして、布団で寝ていたはずだが、ベッドで寝ていたようだった。

士道がなかなか起きないからか、長い金髪をサイドテールで括った少女はのぞき込むように士道を見ていた。士道と目が合うと、士道から顔を遠ざける。

 

「やっと、起きた。おはよ」

「ああ、おはよ。万由里」

「……私の事覚えているんだ」

 

万由里は自分のことを士道が覚えていたことに驚く。しかし、<凶禍楽園>(エデン)のようなイレギュラーで現れたのではなく、士道の裁定の為に現実で会った訳だから、覚えているかと気づいた。

士道は身体を起こすと、状況の把握に努め……。

 

「昨日は凜祢と凜緒で、今日は万由里と過ごせってことか?」

「不服?」

 

そういう結論に至った。しかし、その言葉が万由里には面倒そうに聞こえてしまったようで、半眼を向けられる。士道は慌てて言葉を続ける。

 

「いや、また会えてうれしいよ。前の世界ぶりだな」

「直で会うのはね。でも、士道が改変後の世界で霊力暴走した時に私は見てたけど」

「えっ?あの時?」

 

士道は久しぶりに会えてうれしいことを伝えると、万由里はさっきのことを根に持っているのか、素っ気ない対応だった。それと同時に万由里はあの時何処かで見ていたことを口にする。

士道はあの時意識が曖昧だったこともあって首を傾げる。

 

「まぁ、あの時直接はあってないわ。千花と狂三にも自分たちで対処するって言われてたから。もしダメなら<雷霆聖堂>(ケルビエル)が消滅させてたしね」

 

万由里は普通に告げた。失敗していたら消滅させていたといった辺りで士道はツッコミそうになるが、実際に起きそうだったので何とも言えなかった。

 

「まぁ、いいや。それでどうするの?」

「どうするって?」

「この後。何も無いなら、私はフラフラしてくるけど」

 

万由里は素っ気ない調子でそう言い、士道は立ち上がる。たぶん、万由里は士道から誘ってほしいのだと思ったから。

 

「そうだな。だったら、一緒に出かけないか?」

「どうして?私とは別に居なくてもいいんでしょ?」

「いや、万由里と一緒に出掛けたいのは本心だ」

「……ふっ。もう無理。士道をからかうの限界。先に下居るから着替えて早く来てね」

 

万由里は噴き出すとそそくさと部屋を出て行った。結局、途中から万由里にからかわれていたようだった。万由里が本当に不機嫌だったわけではないと分かり安堵すると、さっさか着替えることにする。あまり、待たせると本当に不機嫌になるかもしれないから。

 

「ん、早いね。やっぱり、男だと準備もすぐできるんだ」

 

リビングに行くと、万由里はソファーに寝ころんでいた。士道が来たのに気づくと体を起こし、立ち上がる。

 

「来たし、早速行こっか」

「ああ」

 

こうして、万由里とのデートが始まったのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「士道、あれ見たい」

「洋服店?」

「ん」

 

万由里の行きたい場所は士道が暴走し、精霊達に連続で何かしらしたあの大型ショッピングモールだった。万由里がここを選んだ理由は口にせず、士道も聞かなかった。

万由里は手始めに洋服店を指差す。万由里が自分の格好を見たことで士道は察する。

今の万由里の格好は相変わらず、白い制服だった。

 

「だって、士道は私服なのに私は制服だし。だから、私も私服を着たい。だめ?」

「もちろん、いいよ」

 

万由里はそう言って首を傾げると、士道は頷き、二人は洋服店に入る。

しかし、万由里は基本的に制服でいたせいか、どんな私服が自分に似合うのか悩んでいるようで一向に服を手に取ろうとしなかった。その結果、万由里はあることを思いつく。

 

「そうだ。士道が私に似合う服を選んでよ」

「また急に無茶振りしてきたな。まぁ、いいけど」

 

万由里が思いついたのは、士道に選んでもらうというもので、士道は困りながらも了承する。万由里に合いそうな服をいくつか選ぶと、士道は万由里に渡す。

 

「こんな感じかな?あとは、万由里自身が選んでくれ。流石に万由里の好き嫌いはわからないし」

「うーん、まぁいいや。じゃ、ちょっと待ってて」

 

万由里は士道にこれだって思う物を一つ選んで欲しかったからから微妙な反応をするが、まぁいいかと割り切ると士道の選んだものを持って試着室に入って行った。

待つこと数分。万由里は着替え終わると試着室から出てくる。万由里が着ていたのはシャツの上に青いパーカー、下は膝丈ぐらいのズボンといった少しボーイッシュ目な格好だった。万由里の趣味があまりわからなかったから、選んだものだが、士道はてっきりワンピースとかを選ぶと思っていたので少し意外だった。

 

「どう?」

「あぁ、いつもと雰囲気が違ってこれはこれでいいよ。似合ってるよ」

「そう……じゃぁこれで。これ戻しといて」

「いいのか?」

「うん」

 

万由里は頬を赤らめてこれに決めると、士道に他の服を返して試着室に引っ込む。士道はその間に服を戻すと、元から持っていた鞄を肩にかけて出てくる。

 

「これ着たまま過ごしたいから、買ってタグ切って来る」

「ん、わかった」

 

万由里はそう言ってレジに行ったのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「さて、次はどこ行こうかな……うん、あっちかな?」

 

洋服店を出た二人は次に行く場所を考え、万由里は士道の手を取って何処かに向かって歩き出す。士道はそれについて行く。

そして、着いた場所は少し離れた位置にあったアミューズメント施設だった。万由里は動物園や水族館といった無難な場所や美術館のような静かな場所を好むと思っていた為、またしても意外だった。

すると、万由里は中に入って行き、士道も追いかける。

 

「まずは、ボウリングかな?」

 

万由里はそう言ってカウンターに行くと手続きを済まして士道を引っ張ってボウリングエリアに入った。二人はそれぞれボールを取ってくると一度席に座る。

 

「どうしてボウリングなんだ?」

「ん?やってみたかったからだけど。それに、こういうデートはあまりしてなかったみたいだし」

「もしかして、洋服店でもそう考えてその恰好を選んだのか?スカートよりズボンの方が動きやすいし」

「うん。それに士道も似合ってるって言ってくれたし」

 

どうしてここにきたのか聞くと、万由里はそう言った。士道の記憶でも改変前の世界で七罪探しで耶倶矢とボウリングをし、改変後の世界でも耶倶矢とのデートでやっていた。それ以外でもときどきみんなとやっていた。しかし、今更ながら、耶倶矢とボウリングやってるなーと思う士道だった。

 

「まぁ、そう言う訳だから興味もあったし」

「そうか。とりあえず、やってみるかな」

「じゃ、私から」

 

万由里は立ち上がってボールを手に取ると、数歩かけてボールを放る。万由里は初めてやったとは思えないほど綺麗なフォームであり、ボールは吸い込まれるようにピンにぶつかると結果はストライクだった。

 

「よしっ!」

「いきなりストライクかよ」

「うん、これくらいは割とできる。だから、士道も本気でやってね」

「ああ、任せとけ」

 

万由里がストライクを取ったことで士道も負けてはいられないので、意気込んでボールを手に取る。

そして、何度もやってきた技術を活かしてボールを放る。ボールはピンをしっかりとらえ、結果はストライクだった。

 

「さすが。でも、私もまだまだいけるよ」

「ああ、俺もだ」

 

二人はそう言って白熱した。ピンが隣に飛んでストライクしたり、ボールに触れていないのに風圧で倒れたりと、どこかおかしいボウリングが繰り広げられた。この世界が千花によって作られた世界だから他の人は干渉してこなかったが、もし現実なら間違いなく人だかりができるレベルではあった。ちなみに結果はストライクを取ったり取らなかったりして僅差で士道の勝利となった。

 

「次はこれかな?」

 

ボウリングの次にやってきたのは、ゲームセンターのコーナーで、万由里はエアホッケーを指差す。つまり、今度はこれで勝負しようということだった。士道がお金を投入するとパイが出てくる。

 

「本気で来ていいから」

「言われるまでもなくちゃんとやるよ」

 

万由里はそう言ってパイを弾き、エアホッケーが始まる。最初こそ、普通のエアホッケーなのだが、この二人な訳だからすぐにおかしくなった。

 

「万由里、おまえその技をどこで?」

「ん、士道の中で見てた。それに、みんなから見えてなかっただけでフラフラしてたことあるし」

「そんな理由かよ。というか、見てただけでできるモノなのか?」

 

万由里は千花がやっていたいつしかの返されたパイが自分の元に来るようにする技を使っていた。それ故に士道はそんな質問をした感じだった。しかも、千花の時はゆっくりめだったのに万由里の場合はやたらと速い為、打ち返すのも一苦労だった。

ならばと士道はあえて横に振ってパイを壁に当てることで跳弾させてノーコンで打つと、万由里のリズムが崩れた。

 

「あっ」

「どうやら、その技は敗れたみたいだな」

「みたい。でも、普通にやるだけ」

 

万由里はそう言って、普通に打ち始めると、それはそれで士道的には辛かった。力をセーブせずに打つ万由里の攻撃はやたらと速いから。

しかし、それを抜きにしても万由里は楽しそうだから、士道的にもよかった。そして、点を取っては取られてを繰り返し、点数が並んだ状態で、残り時間もわずかになり、ここで取った方が勝ちという状態になる。士道は勝ちに行こうと思い、全力で行き、万由里も負けじと打ち返す。

 

「秘技、ちゃぶ台返し」

「パイを空中に飛ばすな!」

 

 

 

~☆~

 

 

 

「士道、あれ欲しい」

 

二人はゲーセンコーナーのクレーンゲームの場所にいた。エアホッケーの結果は万由里の勝ちとなった。万由里はパイの一点を上から叩いてその反動でパイが宙を飛び、ポケットの前に落ちてそのまま入って行って決着が付いた。

そして、今に至る。

万由里が指差したのはライオンのぬいぐるみだった。万由里がそういうものを欲しがるのが意外と士道は思った。

 

「あっ、今私が欲しがったのを不思議に思ったでしょ?」

「まぁな。でも、いいだろ?万由里って、なんだかクールに振る舞うことが多いから大人みたいなイメージがあったし」

「そっか。大人っぽく見えてたんだ」

「あっ、別にイメージの問題だからな。別にぬいぐるみを欲しがるのも可愛いと思うぞ」

「……可愛い。そっか……で、取ってくれるの?」

 

士道に可愛いと言われると、万由里は頬を赤らめる。そして、ハッとすると士道にそう問う。士道はそれで困った。はっきり言ってそこまでクレーンゲームが得意という訳でもないから。しかし、ここで断るのもあれなので。

 

「わかった。やってみるよ。でも、取れるかわかんないからな」

「うん」

 

士道はそう前置きしてからクレーンゲームを始める。クレーンをライオンの真上で止めることに成功し、これはもしかしたら?と士道は思った。そして、クレーンがライオンの身体を掴み持ち上げ、

 

「「あっ」」

 

ライオンの頭の方に重みが合って前のめりに回転して落下して失敗した。その際に顔が真下を、後ろ足が上を向き(しゃちほこ)状態になった。

 

「あーあ。取れなかったね」

「だな、悪い」

「ううん、いいよ。じゃっ、私も」

 

士道が謝ると万由里はさして気にせずに、クレーンゲームを始める。鯱と化しているライオンを取れるのか?と士道が思うが万由里は集中しているのか反応が無かった。クレーンはまっすぐにライオンの真上に動き、万由里はそこで止めた。クレーンが降りるとライオンのたてがみに刺さり、引っかかったまま持ち上がる。

(刺さってるけど、いいのか?これ?)

そんなことを思っているうちに、排出口まで戻って来て、止まった際の衝撃で抜けてライオンが排出口に入ってゲットした。

 

「よし、ゲット」

「普通に取れるのかよ」

「ううん。士道が立てたおかげで刺せたから士道のおかげ。まぁ、立てなくても刺す方法はあるけど」

 

万由里があっさり手に入れたから、士道はそんなことを言ったら、万由里は平然とそう返した。士道のおかげと言いながらも、別に取れなくはなかったと言われて、そう言えばと士道は今更ながら思ったことを口にする。

 

「もしかして、万由里って。みんなの霊力で生まれたから、みんなができることはできるのか?」

「なんでそう思うの?」

「いや、ボウリングの時は耶倶矢の技使ってたし、ゲーセンでも千花のあれやってたから」

「まぁ、一応そうなるのかな?でも、士道たちからは見えないだけで、近くから見ていたのも本当のことだよ」

「そっか」

「そういうこと。じゃっ、次はあれやろうか」

 

万由里はそう言って士道の手を引いて次のゲームに向かって歩き出したのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「そして、最後はやっぱりここなんだな」

「うん。みんなここの景色を見てたからね。だから、私も見てみたかった。士道と一緒に」

 

アミューズメント施設で片端から遊んでいると気づけば夕方になっていた。ダーツやらビリヤード、レースゲームと本当にある物全部をやる勢いだった。

そして、万由里が満足すると、二人は最後にいつもの高台公園に来ていた。万由里が最後にここに来たいと言ったからだった。

 

「私もここからの景色は好きかな」

 

万由里はそこから一望できる景色を見てそう呟く。万由里はここからの景色が見られたことに満足すると、柵に背を預け士道を見る。

 

「今日はありがと。他の皆は士道と遊んだりできたのに、私は裁定者だから士道を一定の距離から見ているしかできなかったから、今日は一緒に居られてよかったし、楽しかったよ」

「そっか。俺も楽しかったよ」

「なら良かった。私が行きたい場所ばかりだから士道が楽しめてないんじゃないかって今更思ってね」

「そんなこと思っていたのか?そんなこと気にしなくてもいいのに」

「まぁ、士道ならそう言うよね」

 

お礼を言う万由里に士道がそう言うと、万由里はどこか納得したような表情をする。そして、寂しげな表情をする。

 

「……これで終わりなんだね」

「ああ。そうだな」

「できればもっと一緒に居たかったな」

「俺もそうだよ。せっかく会えたのに、もう別れだしな」

「うん。でも、この世界も一日限り。だから、諦めるしかないよね?」

 

万由里は士道とまだ一緒にいたいからそう言うが、その反面この世界のことを理解しているから諦めていた。士道も万由里ともっといたいと思うが、士道にはどうすることもできなかった。

 

「でも、何か方法は無いのか?」

「無いよ。ある訳無いでしょ」

「そっか……」

 

もしかしたら何か方法があるのではと士道は思うが、万由里は首を横に振って否定する。そんな方法はそれこそ奇跡でも起きない限りありえないから。

 

「士道も私と一緒に居たいと思ってくれてうれしかった。だから、これで私も満足。だから、ここで別れよっか」

「えっ?」

「これ以上一緒に居たら別れが辛くなるから」

 

だからこそ、万由里はこれ以上一緒に居ても寂しい気持ちが募るだけだからと、そんな提案をする。士道は万由里の提案だから受け入れたいとは思うものの、でもそれはそれで寂しいと思う。

 

「いいのか?それで?」

「いいの……うん」

「そっか……本当にいいんだな?」

「いいよ、これで……あっ、士道のこと、生まれた時から、愛してたからね……ありがと。じゃぁね」

 

万由里はそう言って笑みを浮かべると、士道から離れ、士道はまだ万由里と別れたくないと思い、万由里の手を掴もうと手を伸ばし……

 

「えっ?」

 

万由里の手に届くその瞬間。時間切れが来たのか唐突に世界は閉じた。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「やっほぉ、みんなぁ」

 

隣界の中で千花はそう言った。そこには鞠亜、鞠奈、凜祢、凜緒、万由里がおり、それ以外の誰もいない。

 

「ここは?」

 

唐突にここに呼びだされた凜祢は、ここが何処なのかと首を傾げる。いつの間にかここに居た感じだった。そんな凜祢の質問に千花は答える。

 

「ここは隣界だよぉ。そして、みんなのおかげで無事隣界の中心に行く道が開かれたよぉ」

「そっか。じゃぁ、これで本当に終わりなんだ」

「うん。そうだねぇ」

「じゃぁ、もう〈凶禍楽園〉(エデン)で士道と会うことも無いから、本当に終わるんだね」

 

隣界の中心への道が開かれたということは精霊の存在が無かったことになるから、本当に終わりなのだと実感する。それはこの場にいる全員な訳で、みんな暗い顔をする。凜緒はよくわかっていないのか首を傾げていた。

そして、もう一人。

 

「まぁ、ただ開くだけなら皆をここに呼ばないんだけどねぇ」

「ちょっと、どうゆうこと?私は報告の為に呼んだんだと思ってたんだけど?」

「そうですよ。私は他の目的なんてあるなんて聞いてないですよ」

 

千歌の意味深な発言に鞠奈と鞠亜が問う。しかし、その反応も予想していたのか千花はいつも通りの調子で続ける。

 

「ん?別にいいでしょぉ。だって、私の目的は……願いはずっと一つだもん。精霊全員を救うってねぇ」

「どういうこと?」

「うん。だから、五人はこれから士道君たちと同じように時空の中に行ってもらうよぉ。そうすれば、ちゃんとした人間としての概念になって存在するからねぇ」

「つまり?」

「うまくいけば、士道君たちと再会できるよぉ」

「ほんと!?」

 

千花の言葉はそれこそ夢物語のようで現実味が無い為、にわかに信じがたいのか四人とも千花を見る。しかし、嘘を言っている風には見えなかった。

 

「そうなんだ」

「うん、そんな感じだよぉ。まぁ、ある意味成功するかわかんない賭けではあるけどねぇ。うまくいけば士道君に会えるかもしれないけど、士道君が生まれるのはまだ先だから、みんなが生まれる時間とずれがあるかもしれないしぃ。それに、記憶は保持できないかもしれないからねぇ。だから、後は自分で決めてぇ」

 

千花はそう言いながらも、五人の選択に委ねた。これはある種の賭けであり、千花自身どうなるかわからないから。士道より年上として生まれるかもしれないし、年下として生まれるかもしれない。はたまた、一切士道とのかかわりが無いかもしれない。だからこそ、どうするかは五人次第。

 

「ママ、りおにはよくわからないよー」

「うん、またパパに会えるかもってことだよ」

「そうなの!りおパパにまたあいたい!」

「そうだね。私も士道に会いたい」

 

そして、凜祢と凜緒は士道に会いたいという意思を示した。

 

「私は千花の案に乗るかな?こうして裁定者としての役目から解放されるわけだしね。それに、また会いたいって言って別れたから、また会いたいし」

「私は……えぇ、千花の賭けに乗りますよ。士道にはまた会いたいですし。それに、九ヶ月とはいえ近くで千花を見て来ましたから信じます」

 

万由里と鞠亜も千花の案に乗り、残すは鞠奈だけとなった。すると、全員の視線は鞠奈に集中する。

 

「はいはい。ここで、私が拒否するのは空気が読めないわね。それに、みんなが乗るなら、私も乗るわ。その方が面白そうだし、士道にまた会いたいしね」

 

鞠奈は肩を竦めてそう言い、こうして全員の了承が得られた。

 

「よかった。みんな了承してくれてぇ。と言う訳で<刻々帝>(ザフキエル)――<封解主>(ミカエル)――【複合】(コネクト)

 

千花は五人が了承したことに安堵すると、刻々帝(ザフキエル)<封解主>(ミカエル)【複合】(コネクト)させて杖を顕現させる。

 

「そう言う訳で、士道君によろしくねぇ。<刻々帝>(ザフキエル)――【十一の開】(ユッド・アレフ・ラータイブ)

 

そして、未来に飛ばす弾を無理やり歪めて、未来に戻りつつあるみんなの元へ空間が開くように改変し、空間に穴を開けた。

 

「これに入れば、みんなと同じ時間軸に行けるからぁ」

「そう。千花、後は任せます」

「うまくやりなさいよ」

「じゃぁね、千花ちゃん」

「ばいばーい」

「じゃっ」

 

五人は千花にそう言って穴に入り、こうして五人は士道たちと同じところに向かった。

 

「さて、これで精霊を知る者は私だけになったねぇ」

 

空間の穴を閉じて、隣界に一人だけになった千花はそう呟いた。

千花は五人にも嘘を付いていた。本当は記憶を保持できる可能性は0であることを。

 

「まぁ、いいのかな?最後の最後に五人がちゃんと士道君に会いたいって意思を示したことで、士道君たちのそばに行けたはずだしねぇ。みんななら、一から士道君と関係を築くでしょぉ」

 

千花は笑みを浮かべると、道を歩く。そして、中心にたどり着きそれは見つかった。身の丈がどれくらいあるのかが全く測れないほど大きな樹がそこにそびえ立っていた。

 

「ほへぇ。こんなに大きいとはねぇ。さてぇ。これをどうやって壊すかなぁ。これが無くならないと、隣界の存在を消滅させられないしねぇ」

『そんなの始源の精霊の力があれば、時間をかけてそのうち破壊できるもんだよ』

「え?」

 

千花は一人呟くと、それに反応するものがいた。しかし、この隣界には千花のみのはずなので、反応するものが居ることはおかしかった。だから、千花は驚きの声を漏らして周囲を見るが誰もいなかった。

 

『見回しても、私は見つからないよ。だって――』

「――私はいつも千花の中にいたんだからさ」

 

そう言った直後、千花の中から霊力が溢れ、千花の中の霊力を全て持ってサマエルが千花の中から現れた。霊力を全て持っていかれた結果、千花の霊装は消えて私服に戻る。

 

「サマエル、これはどう言うことぉ?私の中の霊力を持って行くなんてぇ。霊力が無くなったら、私は存在が……」

「ううん、もう君は霊力が無くても問題ないよ。確かに精霊がいなくなれば千花の存在も無かったことになるけど、それは千花が言ったからね。同じく存在しなくなるはずだったあの子たちに」

「なにが言いたいのぉ?」

「うん。だからさ、千花も隣界から出な?こんな樹は天使の疑似人格の私だけで十分だからさ」

 

サマエルは千花の目的を引き継ぐという旨を伝えると、霊力を一点に集める。

 

「集合!」

 

サマエルが空に手をかざしてそう言うと、全天使がサマエルの周囲に顕現する。そして、

 

【全複合】(オール・コネクト)

 

全ての天使とサマエルが一つになり黒龍になる。

 

「これで準備はできた。そう言う訳で、千花とはここでお別れだね」

「なんで、そんなこと言うのぉ?私とサマエルは一緒だったでしょ?だいたい、サマエルは私でしょ?」

「あっ、気づいていたんだ」

 

千花はサマエルに後を任せるなんてできずにそう言った。そして、サマエルが自分自身であるとも。サマエルは千花が気付いていたことに対して驚いた声を漏らす。

(最初は、サマエルは〈死之果樹園(サマエル)〉の疑似人格って話を信じていたけど、実際は私のもう一つの人格だった。そもそも、天使に疑似人格なんて機能は備わっていないしぃ。よしのんはただ単に動物形態の時に四糸乃ちゃんのもう一つの意識が移動してただけだしぃ)

そういう理由で、千花はサマエルが自身のもう一つの人格なのだと思った。

 

「でもダメだよ。もう霊力は全部私がもらったから。それに、私が千花のもう一つの人格だと分かっているのならわかるでしょ?さらに言えば、本来ならすでに消えているはずの私が存在しているのはこの為だったんだよ。だから、千花にはちゃんと人間として過ごしてもらう。これが私の最後の願いだよ」

「サマエル……」

「そういうことだから、千花は行って。千花がいかないとあれを壊せないからね」

「……サマエル、ずるいよぉ。最後の願いなんて言われたら、拒否なんてできないじゃん」

「ふふっ、知ってるよ。でも、千花だって皆にそう言ったんだからお互い様だよ」

「うん、わかったぁ。サマエルの分まで生きるねぇ。じゃぁね、(サマエル)

「うん。じゃぁね、(千花)

 

千花はサマエルに別れを告げると、サマエルは千花に銃弾を当て、千花は隣界の外へ飛ばされたのだった。そして、サマエルは全天使の力を使って樹を破壊させ、隣界は崩壊して、世界から本当に精霊という概念は消失した。




次回、ほんとのほんとに最終回。と言っても、本編の『パラレルIF』を書き換えたバージョンですけども。
では、また明日。ノシ
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