設定は士道と七罪は一個違いの設定です。
「はぁー。どうしてこうなっちゃったんだろ?」
クリスマスイブ。私は駅前の植え込みに身体を預けて、スマホの画面を見ながら呟いていた。
高校一年になり、士道さんのいる高校に無事入学できて、とりあえずこの一年は楽しかった。クラスメートの皆も優しいからいじめられたりしなかったし、士道さんの妹の真那と一緒のクラスだからペア系でボッチになる、あの苦痛にさらされることが無かったのが大きかったかもだけど。
で、私が駅前にいるのは士道さんと千花さんと真那を待っているから。明日がクリスマスだからクリスマスパーティをしようってことでその食材の買い出しが今日の目的。
クラスではあの二人の仲が良すぎるから付き合っていると噂されるほどで、正直気まずい。と言っても、二人が付き合ってると言う訳ではないけど。
しかしながら、二人にすればさっさかくっつく気がして、やっぱり今日は二人っきりにさせた方がいい気がしてきた。真那と一緒に途中で別れればいいわよね。
「よし。とりあえず、真那に連絡しよう」
「ん?何をどうするって?」
「うわっ!」
「おっ!」
スマホを鞄に入れて決心を決めた直後、士道さんがいきなり声をかけてきたことで変な声を上げてしまった。というか、タイミング悪すぎ……。
「あれ?千花さんと真那は?」
「ああ。なんか急用とかで来れなくなったって」
「え?でも、私が出る時にはそんなこと言ってなかったけど?」
「なんか、新しい機械の案が閃いたから買い出しは任せたってさ。真那はその手伝いに連れて行かれたよ」
まさかの二人の離脱により士道さんと二人きり。正直まずい。二人が一緒だから平気だったのに……。
ピコンッ
「ん?」
『七罪。ご武運を(・ω・)ゞ』
ちょっと、真那ー!!私の気持ちを知ってるでしょー!
~☆~
「さっさか行かないと、兄様に彼女ができちゃいますよ?」
「うぅ。でも、私が告白したところで振られるオチしか見えないし」
「はぁー。この相談も何回目ですか?そろそろ、真那も限界ですよ!」
私は基本的に人見知りが激しく、小学校の頃はいじめにもあっていて、ひどい生活だった。その一端が、両親を生まれてすぐに事故で失い、親戚からはたらい回しにされて、元の家で一人住み続けていたことだと思う。生活費だけは親戚同士で少しずつもらえたからどうにかなったけど、料理もまともにできないからコンビニ弁当で済ませ、栄養が偏っていたこともあって、成長は著しく遅く、不健康そうな身体になっていたのが原因だと思う。
進級してクラス替えをしてもすぐにいじめに遭う生活。いじめをしない生徒たちは、助ければ自分もされると恐れて誰も助けず、先生に言っても取りあってもらえない始末。そう言う訳で心を閉ざしていた。一時期は不登校にもなったけど、そういう時だけ親戚が介入して来て無理やり行く羽目になった。
それから学年が上がった四年生の頃。またいじめの日々が始まるのだと思っていた。そんな時、私の後ろの席に座っていたのが真那だった。
崇宮さんは誰に対しても分け隔てなく接し、私にも声をかけてきた。最初は対人恐怖症で崇宮さんのことを避けていたけど、崇宮さんはそれでも私に声をかけてきた。クラスで人気者の崇宮さんに声をかけられても素っ気ない反応をする私に他の子たちは嫌な視線を向けるようになった。
そして、崇宮さんが帰った後に私はいじめられていた。上履きを隠される、机にいたずら書きをされるなどは日常茶飯事。でも、崇宮さんがそれを知ることは無かった。崇宮さんは始業ギリギリに教室に来るのでその前にいたずら書きは消し終えていたから。
そんな生活が一か月ほど経った頃。いつもは始業ギリギリにやって来る崇宮さんがどういう訳か早くにやってきた。
教室には早めに机を綺麗にしに来た私だけ。
「あっ!」
だから、私はあわててランドセルを机の上に置いて隠す。たぶん崇宮さんに知られれば、崇宮さんはいじめをしてくる人に文句を言うと思ったから。そのせいで、崇宮さんまでいじめに遭ったりしたら嫌だから。
「七罪ちゃん、その机……」
しかし、バッチリとみられていた訳で崇宮さんに詰め寄られる。私は目を泳がせてどうしようかと考え込むと、崇宮さんはため息をついた。
「はぁー。いつからなんですか?」
「……一か月くらい前から」
「なるほど」
崇宮さんは小さく呟くと、自分の席にランドセルを置く。そして、雑巾を手に取ると、バケツに突っ込み、水を絞る。崇宮さんは絞り切ると広げて私の机を拭き始める。
「何してるの?」
「掃除ですよ。汚い場所は掃除しないと。あー、油性とか質悪いですね。普段はどうやって落としてるんですか?」
「んと、ロッカーの中のクレンザーで」
「なるほど」
崇宮さんは言われてパタパタとロッカーまで走るとクレンザーを取り、机に撒く。そして擦り始める。
「なんで、手伝ってくれるの?」
「まぁ、見て知らんぷりはしたくねーんで」
崇宮さんはそう言いながら机を擦り、私も逆側から擦り始める。
「たぶん、真那のせいですよね?」
擦っていると、唐突に崇宮さんはそう言った。私は急に言われて反応はできなかった。それで、崇宮さんは判断する。
「はぁー。真那のせいでこうなった以上は、やっぱり手伝うのが筋ですね」
「いいよ。別に、もう慣れてるから」
「慣れるほどって……」
そうして、二人で掃除磨くと、いつもより早く終わった。他の生徒が来るまではまだまだ時間があり、暇な時間になる。
「さて。では、そろそろ始めますか」
「え?何をする気なの?」
「もちろん。いじめ撲滅ですよ」
崇宮さんは子供っぽい笑みを浮かべてそう言い、その瞬間私は背筋が冷えるような感覚に襲われたのは言うまでも無かった。
それから一週間後。私に対するいじめは無くなり、私が卒業するまでいじめが起きなくなった。具体的なことはあまり思い出したくない。いじめをしていた生徒が私に土下座をして謝るレベルだった訳だし。
それからは、真那と普通に喋るようになった。
真那にどうしてあの頃構っていたのか気になり聞けば「真那と似ていたから」と言われ、その時は意味が分からなかったけど、その後に知った。
真那の両親は二人とも海外出張でいない日が多くて、授業参観も運動会とかも一度も来たことは無かったことで、同年代との距離感がよくわからなくなっていたと。そんな時救ってくれたのが真那の兄の士道さんとその友達らしく、その結果今のような感じになっただとか。
で、その頃の自分と同じだったから、自分にしてくれたように私にもしようとしたらしかった
それからの日々は真那と一緒に基本居たおかげで、真那経由で話す子は数人増えた。
士道さんと会ったのはそれからすぐだった
とにかく始めて会う人に対してはあれで、最初は士道さんにも話しかけることは無かった。
でも、士道さんはそんな私の状態を察してくれて、グイグイ来ることは無かった。貧相な私の身体を見れば大体の人は笑うのに、士道さんは笑うなんてことは無く、普通に接してくれた。
それからも度々真那の家に遊びに行っては会い、だんだん打ち解けられるようになっていた。私が一人暮らしでコンビニ弁当などばかり食べていることを知れば、一緒に夕飯を食べて行かないかとごちそうになった。
士道さんの事が好きなのだと理解したのは、中学三年の頃だった。
その頃は、真那と一緒の高校に受かりたかったから毎日のように真那の家で一緒に受験勉強をして、士道さんとその友達の千花さんに教えてもらい、夕飯をごちそうになる日々を繰り返していた。
士道さんは私がわからないところをわかりやすく教えてくれ、とにかく優しくしてくれた。
たぶん、士道さん以外の男の人とは全く接点が無かったこと、私に対して優しくしてくれたというだけの割と簡単な理由だったのだと、今に思えばそう思う。
で、真那にそのことを相談する日々も続いていた。士道さんは誰にでも優しく、家事も万能と非の打ちどころがなく、真那の言う通り彼女ができてもおかしくはなかった。というか、千花さんがその筆頭だと思う。
「ほら、千花さんが兄様と付き合っちゃいますよ」
「うぅ。でも、私よりも千花さんの方が士道さんと釣り合うだろうし……」
「じゃぁ、兄様のこと諦めますか?」
「それは……」
~☆~
絶対に真那の差し金よね?
思い出すとそうとしか思えない。となると、千花さんがここにいないのも真那が本当は何かした可能性も。まぁ、千花さんがただ単に機械作りをしようとしてるだけかもしれないけど。
「ねぇ、士道さん。本当に良かったの?私と二人で」
「いいんだよ。俺一人だと偏っちゃうから、女の子の意見も欲しいし」
「そう?ならいいんだけど」
士道さんと二人きりでショッピングモールを歩く。いつもは真那も一緒だけど、こうして士道さんと二人だと緊張してしまう。でも、せっかく来た士道さんとの距離を縮めるチャンスではあるから、勇気を出してみないと!
「食材はまだいいから先にみんなへのプレゼントを買うか」
「うん。私もそれでいいと思う。となると、あそこがいいのかな?」
プレゼント交換をするからプレゼントが必要で、近くに見えた雑貨屋を指差すと、士道さんは頷き一緒に中に入る。中は大きな棚がずらりと並んでおり、その中に小物がたくさん置かれていた。小さな小物からカーテンなどの大きめな物などなど色々な物があり、値段も手ごろだからちょうどよさそうかな?
「とりあえず、お互いに何を買ったかは隠した方がいいし、一旦別れるか」
「あっ、うん」
士道さんと離れるのは嫌だけど、これは仕方がないから割り切る。別に買えばまた一緒に買い物をする訳だし。
そう言う訳で、いったん別れる。
小物を見て行くと、私はどれにしようか悩む。誰かにプレゼントなんてあまりしたことが無いし、士道さんに当たる可能性もあるから女の子向けの物を買う訳にもいかない。無難なところならハンカチとかかな?でも、今の時季なら手袋とかマフラーもありか。
「うーん」
私はお店の中をフラフラし続け、チェック柄のマフラーを手に取る。これなら男でも女でも問題なく使えそうかな?
そして、マフラーを持ってレジに向かう。その道中で目を引く小物を見つけ手に取ると、一緒に買う。これをどうするかは決めてないけど、出来れば……。
「こんなにのんびりしてていいのかな?」
「いいだろ?まだ時間はあるし、せっかく来たんだから少しくらいいいだろ?」
雑貨屋でプレゼントを買い終えた私たちはクレープを食べていた。本来ならさっさか食材を買って帰るところだけど、合流してすぐに私のお腹が鳴ったことでこうなってしまった。好きな人にお腹の音を聴かれるとか恥ずかしすぎる。士道はそれ以上何か言って来ることは無かったけど。
私はキャラメルソースと数種類のフルーツの乗ったクレープで、士道さんは生クリームにフルーツがいくつか乗ったオーソドックスな物を食べている。
さっきのこともあって、私はちびちび食べながら士道さんの話に相槌を打っていた。
「それで、次はどこ行くか」
「食材買って帰るんじゃないの?」
「まぁ、そうだけどな……」
どういう訳か歯切りの悪い士道さん。いつもと違うからどうしたんだろうという疑問を思うも、特に原因は……いや、私のせい?やっぱり私と二人というのは嫌で、だからストレスをため込ませちゃってる?士道さんは優しいからそれを外に出すことは無いだろうし。
「うん。やっぱり、食材買って早く帰ろ?売り切れちゃったら嫌だし」
「……そうだな」
士道さんの表情はあいかわらず変わらず、でもとりあえず私の提案に乗ってクレープを食べ終えると食材売り場に行くのだった。
~☆~
「七罪ちゃん。少し寄り道していいか?」
「あっ、うん」
「こっちだ」
「あっ」
食材を買い終えて士道さんの家の方に向かう途中で士道さんはそう言って、私の手を取る。自然な流れで私の手を握ったから声を漏らすも、士道さんには聞こえていなかったのか特に反応は無かった。
そして……。
「わぁ、綺麗」
たどり着いたのはショッピングモールのそばにある大きな公園で、そこの広場には巨大なクリスマスツリーが立っていて、イルミネーションで輝いていた。私はその光景に言葉を溢す。それくらい綺麗だった。
「よかった。ここのイルミネーションはこの辺りだと一番だからな」
「そうなんだ。もしかして、千花さんとも来たことあるの?」
「いや。千花とも来たことは無いな。誰かときたのは七罪ちゃんが初めてだよ」
「そうなんだ……」
千花さんとも来たことが無いと聞いて、私は少しうれしかった。初めてが私だということに。やっぱり、私って簡単なのかな?
そんな疑問が浮かびながら、私はイルミネーションを見ながら、士道さんの横顔を盗み見る。士道さんの頬は寒いからか赤く染まっていた。
「そろそろ帰ろ?あんまり外にいると体が冷えちゃいそうだし」
「ああ、そうだな。っと、その前に、一ついいか?」
「あっ、私も一つ……」
私と士道さんはそういって鞄から同時に小包を取り出す。
「今日の思い出といつものお礼に」
「今日の思い出ってことで」
「え?」
「ん?」
そして、同時にそれを相手の前に出したことで、同時に疑問の声を漏らす。とりあえず、互いに小包を受け取ると変な沈黙になる。まさか、士道さんから何かもらえると思っていなかった。
「えーと、開けていい?」
「ああ。じゃぁ、こっちも」
私たちは互いに封を開けて中身を見る。そこには、ピンクの星のキーホルダーが入っていた。それを見て私は驚いた。私があげた物はこれの青色バージョンだから。あれを見た時、どこか懐かしさがあるのと同時に、これがいい気がしたから。
「ありがと。七罪ちゃん」
「あっ、こちらこそ。ありがとう」
「それでなんだけど……」
同じような物を送りあったことで何とも言えない空気になる。そして、士道さんは何か言いたげに言ったので次の言葉を待つ。
「七罪ちゃん」
「はい!」
「実は、俺は七罪ちゃんの事が好きだ!」
「えっ?」
いきなり士道さんにそう言われて、私は驚いた。なに?ドッキリ?そうよね。こんな都合のいい事なんてある訳。
私は信じられなくて頬をつねってみるけど、頬は痛いだけで夢ではなさそうだった。だから現実だと理解する。
「七罪ちゃん!?」
「あっ」
そして、私はいつの間にか目から涙が流れていた。悲しいわけでは無くて、嬉し涙。でも、士道さんから見れば、いきなり泣き出したようにしか見えず、困らせてしまう。
「あはは。なんで、涙が出てくるんだろ?」
「とりあえず、これで涙を拭いて」
「うん」
士道さんからハンカチを受け取ると、私は涙を拭く。そして、
「私も士道さんの事が好きです」
士道さんに気持ちを打ち明ける。士道さんはその言葉で驚いた表情をする。
「でも、私のどこが好きなの?」
「それは……」
「それは?」
「実は人目惚れだったのかな?初めて会った時に、七罪ちゃんを見て護ってあげたいなぁって」
「えっ?そんな前から?」
「まっ、好きだって気づいたのは最近だけど」
士道さんに好きと言われたことがうれしくかった。それも、初めて会った時から意識されてたなんて。どうしよ?絶対顔真っ赤になってるよね?
「えーと。ちなみに、七罪ちゃんは俺のどこが?」
「うぅ……私に優しくしてくれたから。それに、私を見ても一人の女の子と接してくれて……とにかく全部!」
「あっ、うん」
私は勢いで言うと、士道さんはその返答を予想していなかったようだった。で、勢いで言っちゃったことでまた恥ずかしくなる。
そんな状態で気まずい空気が流れ。
「これで、俺たちは付き合うってことでいいんだよな?」
「うん。そうだね」
「とりあえず、いつまでも外にいるのは寒いし帰ろっか」
「うん」
そう言って、家に向かって歩き出し、私は何も持っていない士道さんの手を見ると、
「えい!」
何も持っていない私の手で握った。せっかく付き合うことになったんだから、これくらいは普通だよね?
士道さん。ううん、士道。大好きだよ!
次は誰でいこう?書くかは未定ですけども。