七罪と出かけてから数日が経過しており、士道たちは放課後になり、今は<フラクシナス>に居た。
結局あの後、小型カメラを飛ばして、七罪にばれた琴里は士道に謝ったが士道は許した。士道のことを心配していたんだし仕方ない。
そして、今<フラクシナス>のモニターには、郊外の廃園した動物のいない動物園が戦場と化した様子が映し出されていた。
「戦闘しているのは、七罪とASTの魔術師数人みたいね。真那にはASTの相手を任せていい?その間に二人は彼女を安全な場所に避難させて」
「わかった。真那も気を付けろよ」
「了解です。すぐ準備しますね」
「じゃぁ、行こぉ」
そう言って、それぞれ動き出した。
遊園地に転送されると、だいぶ地面がボロボロになっていた。
そして、AST達は、何処かに消えた七罪を個別に別れて探していた。
「
士道はキョロキョロ辺りを見回した。
「あー、あそこにいるよぉ」
一緒に見回していた千花は何かを見つけたのか、木陰を指差した。
そこには、誰かが倒れていて、足が少し見えていた。
そこに行くと、倒れていたのは七罪だった。
「これは……大丈夫なのか?」
「うん、傷は浅いし、気絶しているだけみたい」
七罪に駆け寄ると、千花は七罪の状態を確認してそう言った。
「そこの一般人、そいつを引き渡しなさイ」
すると、ASTの一人が士道たちを発見し、警告してきた。
その人は他のASTよりも重武装で、七罪を気絶させたのもその人のようだった。
「ふーん。あなたがやったのぉ?」
千花はそれに対して、逆に聞く。
「ん?えぇ、私がやったワ。他のASTは使えなかったけどネ」
「そうなんだぁ。じゃぁ、あなたには渡せないねぇ」
そう言って、ASTの要求を拒否した。
「じゃぁ、実力行使でいくかナ。嫌なら、その子をおいて行きナ、貧乳」
そのASTは調子に乗ってそう言った。
「ん?今なんて言ったぁ?」
千花の表情は穏やかだが、何かがおかしかった。
「ん?だからおいて行きなさいヨ、貧乳」
「士道君。七罪ちゃんのことよろしくねぇ」
ASTがもう一回復唱すると、千花の周囲に何かが起きた。
何というか黒いオーラ?
千花は士道に七罪を渡すと、髪にヘッドドレス限定霊装を出し、<死之果樹園>を顕現させる。
そして、ASTの方を見た。
「もう、遺言は無いよねぇ?」
千花は表面上では笑っているが、危険な感じがしていた。
「ちょっと……千花……」
「まさか、<ガーデン>?これはいい獲物が増えたわネ」
千花が精霊と分かると、やる気を出したようだった。
「あっそ」
千花は<死之果樹園>を種に当てて、その種を投げた。
相手はそれを回避した。
「そんな攻撃効かないわヨ」
「いや、もう終わりだよ。<
ASTが余裕ぶってそう言うと、千花は淡々と言った。
その瞬間、ASTの後ろを飛んでいた種が、空中で一気に発芽した。
グサッ。【剣木】がスラスターに刺さる音。
ボンッ。スラスターが爆発する音。
ドンッ。落下して、地面に当たる音。
グサッグサッ。地面から伸びた【剣木】が装備を破壊する音。
戦闘の継続が困難になったASTに<死之果樹園>を向ける千花。
「で、誰が貧乳で、なんだってぇ?」
「いえ、なんでもないでス」
あまりの恐怖で、怯えるAST。そして、千花は首に当て身をして意識を奪った。
(さて、ここで一つ言えば、千花は貧乳なのだろうか?確かに美九や十香ほど大きくはない。しかし、言うほど小さくもないはずだった。あえていえば折紙ぐらいだろうか?)
と、士道は心の中で思っていた。怖いから言わないけど。
『そっちも終わりましたか。まぁ、こっちも済みましたけど』
すると、真那が他のASTを倒し終えたらしく、通信が聞こえてくる。
「おう、こっちも終わったな。琴里、頼む」
それで琴里に連絡をして<フラクシナス>に転送してもらうのだった。
~☆~
七罪を助けて<フラクシナス>の休憩室で待っていると、艦橋にいた琴里に呼ばれた。
「とりあえず、七罪は今医療用の顕現装置で治療を受けて意識も取り戻したわ」
「そうなのか、よかった」
「うん、無事でよかったぁ。で、その顔どうしたのぉ?」
とりあえず、七罪の無事に安堵する士道たち。
何故か、琴里には引っ掻き傷が顔にあった。
「えぇ、彼女と話をしようとしたら、引っ掻かれたわ」
「そうなのか、じゃぁ、俺も会いに行ってくるか」
「あぁ、まぁ気をつけなさいよ」
「わかった。行ってくるな」
千花と真那には一人で行くと言ってあったため、士道は一人で七罪の部屋に行く。七罪が千花たちを警戒しそうということ、大人数では話が出来そうにないという理由で。
電子ロックを解除して、中に入ると、ぬいぐるみが飛んできた。
「うおッ」
とっさに腕でガードして、中を見ると、机やベッドなどの生活に必要そうなものがあり、ベッドの上で布団にくるまって、ぬいぐるみで顔を隠して、目を覗かせている七罪がいた。その周りには、ぬいぐるみが大量にあった。
見た感じ、布団をかぶっている大きさから本来の姿のようだった。
「よう……七罪」
士道は笑顔を作ってそう言った。
しかし、その直後に七罪は手当たり次第にぬいぐるみを投げてきた。
「危ないだろ七罪!」
「こ……み……なッ!」
「ん?」
ぬいぐるみをガードして、七罪が言った言葉が聞き取れず、聞き返す。
「こっち、見んなー」
そう言って、クマのぬいぐるみが士道の顔に直撃する。
「グフッ!?」
「……」
それで弾切れになったのか、七罪は完全に布団をかぶってしまう。
「な、なんの用よ!」
布団に潜った状態で、七罪は警戒しながらそう聞いた。
「ん?回復したって聞いたから、会いに来ただけだが……」
「嘘よ。目的を言いなさい!目的を!なんで助けたのよ」
「傷は大丈夫みたいだな」
「うっ……」
士道が問いかけると、七罪が口ごもった。
布団をかぶっているせいで全く分からないが。
「七罪が危なそうだったからな」
「そ……う。でもそんな理由では助けないでしょ。喧嘩別れみたいに別れたのに」
「そうか?困っていたら普通助けるんじゃ?それに、あの時のカメラに関しては俺のせいでもあるし……」
士道は理由を言いながら、自分の非を認める。
「え?でも、士道君以外の人は私のこの姿を見ても、相手にしてくれなかったし……」
「そうなのかねー。まぁ、布団かぶってるから、今の七罪の姿見てないけど。という訳で、そろそろ顔を合わせて話さないか?」
「嫌よ、私の姿は見せないわ!ここの機関の連中に私の姿を見せるのが目的でしょ?」
「そっか。じゃぁとりあえず。……琴里、カメラの電源落とすぞー」
士道は入り口にあったカメラに触れ、電源の位置を探す。
「あった。電源」
『ちょ、何しているの――』
スピーカーから琴里が何か言っていたが、無視してそのまま電源を切った。
「……何をしているの?」
七罪は布団の隙間から目元だけ覗かせて聞く。
「いや、ただ七罪と喋りに来ただけだしな。こうすれば顔を見せてくれるだろ?あ、ついでだから……」
士道が携帯を出すと、声を出す。
「鞠亜、この部屋の会話とか外に漏れないよな?あと、この部屋のロック頼めるか?」
『問題ないですよ。そもそも、<フラクシナス>の管理は元々、私がしていますから。それより、士道。七罪と会話をしたいんですが……』
「そうだな。挨拶は重要だな」
すると、部屋のロックがされる音がして、士道が部屋にあったテレビをつけ、チャンネルをいじる。
「士道君は何をしているの?」
士道の謎の行動に疑問を持つ七罪。
『ふぅ、やっと会えましたね、七罪。私は或守鞠亜です』
その答えは、テレビから鞠亜が現れ挨拶をする、という形で返された。
「え?」
七罪は突然のことに驚いていた。
「鞠亜はここのセキュリティーの全般をいじれる、人工AIだ。と言っても、ほとんど人と変わらないけどな」
『まぁ、そういうことです。とりあえず顔を見せてくれませんか?』
鞠亜は七罪に頼んだ。
七罪は何か考えているのか間があった。
「……はぁ、もういいわよ。どうせ士道君には見られたんだし、あなたも私のこと知ってるんでしょ。それに、ここのセキュリティーをいじれるんだったら何されるかわからないし」
七罪はそう言うと、布団から出てきた。
寝癖だらけの緑の髪、不健康そうな白い肌。エメラルドのような緑の瞳は士道を睨みつけるように細めており、背は琴里や真那ぐらい。
今は病衣を着ていて、一瞬重い病の患者にも見えた。
(確かに、健康的とは言い難いが、七罪が卑下するほど見た目が悪いわけではないと思う。ちゃんと髪の手入れとかすれば、七罪は十分可愛くなると思うけどなぁ……)
「なによ、やっぱり口だけなんじゃ?」
士道が七罪をじっと見ていると、目を細めながら七罪がそう言った。
「ん?いや、今の七罪って、そんなに悲観するほどか?」
『そうですね。まず、髪の手入れはちゃんとすべきですね』
「そんなこと言ったって、騙されないんだから。それに、そんなことを言って笑いものにするつもりなんでしょ!」
二人の言葉を信じられない七罪はそう言った。
「どうせ、この部屋の何処かに、まだカメラがあって撮っているんでしょ?どうせ最後に『ドッキリ』とか書いた看板があるんでしょ?」
『そんなもの、無いですよ』
どんどんヒートアップしていく七罪。
「こんなブスが綺麗な女の皮をかぶってキモイ、と思っているんでしょ?自分で分かっているわよ。他にどうしろっていうのよ」
「お、落ち着け、七罪!」
「うるさぁーい。あんたみたいなやつが裏で、こそこそSNSに書き込みまくるんでしょ!写真付きで悪口書いて投稿するんでしょ。あぁぁぁぁぁ!炎上させてやるぅ!魚拓取って、退学に追い込んでやるぅ!」
「随分社会に詳しいな!おいッ!」
ツッコミを入れてしまった士道はとりあえず落ち着かせようとする。
『そうですか……では、士道。プラン2に移行します』
「プラン2って何だ?」
鞠亜の発言にもツッコミを入れる士道。
プシュー。
そして、唐突に開くドア。(鞠亜がロックしたはず)
「ふぅ、鞠亜ちゃん。ロック硬すぎだよぉ。だいぶ時間がかかっちゃったよぉ。お邪魔するよぉ」
「本当にいいんですか?兄様には来ないよう言われていたのに……」
「いいんだよぉ。もう待てないからぁ。鞠亜ちゃんお願いねぇ」
そう言って部屋に入るタブレットのような物を持った千花と謎の機械を持った真那。
同時にドアが閉まり、再びロックされる。
閉まる直前に、機関員が部屋に向かって走ってくるのを士道は見たが間に合わなかったようだった。
「ひっ!」
千花を見た七罪は怯えていた。
(まぁ、初めて会ってすぐに抱きつかれたからな)
「千花さん、抑えてくださいね」
真那は千花が行動に起こす前にくぎを刺す。
「わかっているよぉ、話に来ただけだからねぇ」
千花はのほほん、とそう言った。
「で、プラン2ってなんなんだ?」
「それはですね、これを使うんですよ」
そう言って、真那が持っていた機械を置くと、スイッチを押す。
「これはねぇ。ウソとホントを区別して音が鳴る、ウソ発見機だよぉ。例えばぁ、士道君はロリコンであるぅ。イエス?ノー?はい、答えてぇ」
「え?俺はロリコンじゃな――」
『ブー』
士道が言い終える前に音が鳴る。
「俺はロリコンじゃない」
『ブー』
「だから俺は……」
「兄様、諦めて下さい」
挫けずに否定を続けようとする士道の肩に、もう諦めてください、と言いたげな表情で手を置く真那。
「こんな感じにねぇ。もっと、確認するぅ?」
千花は千花で士道をスルーして七罪に確認をする。
「……まだ、信じられない。もしかしたら、誰かが操作しているかもしれないし」
「そうですよね。では、七罪さんが答えてください。あなたの情報ならこちらは知らないので、操作もできねーはずです」
まだ、信じられない七罪に真那が提案する。
「そうね。それなら確認できるわ」
「そうですか。では、あなたの身長は百五十である」
「違うわ」
『ピンポン』
「あなたの好きなものは、犬のぬいぐるみ」
「そうよ」
『ブー』
それからもいくつか質問をし、いつの間にかだいぶ時間も経っていた。
『そろそろいいのでは?時間もあれですし、これがウソ発見機なのだと分かったのでは?』
「そうだな。いいか、七罪?」
鞠亜の提案に士道が乗り、七罪に聞く。
「えぇ。これは本物みたいね」
「と言っても、だいぶ話しましたが、七罪さんも安静にしないといけないので、そろそろ出ますか?」
「あ、夕飯作らないとぉ……」
「結局プラン2ってなんだったんだ?」
それぞれそう言うと、立ち上がる。
「待って!」
三人が部屋のロックを開けて出ようとすると、七罪が呼び止める。
「私のことどう思う?」
どこか恥ずかしげな表情で若干下を向きつつ、三人にそう聞いた。
「ん?さっきも言ったが可愛いと思うぞ」
『ピンポン』
「ん?可愛いかと」
『ピンポン』
「抱きつきたいぐらい、可愛いよぉ」
『ピンポン』
三人とも嘘は言っていないようだったことに、七罪は顔には出さないが内心で安堵していた。
「……そう」
「じゃぁ、行くな」
「では、また明日来ますね」
「また来るねぇ。これは置いて行かないと」
千花がウソ発見機を部屋におくと、三人はそう言って部屋を出た。
「かわいい、か」
一人になると、七罪はベッドに横になってそう呟いた。
『ふふ。彼らなら認めてもいいと思いますよ』
「うわッ!」
突然の声に驚き、身体を起こす七罪。
未だにテレビにいた鞠亜が謝る。
『すいません。驚かしてしまいましたか』
「あれ?一緒に部屋出なかったの?」
『はい、一人にしておくのもあれですし、私は人間ではないので、気にする必要もないですよ。と言っても、あなた的には一人の方がいいのでしょうか?まぁ、そろそろカメラを戻さないと怪しまれるので士道たちの元に戻りますが』
「そう」
七罪がぶっきらぼうにそう言い、鞠亜が画面から消えた。
~☆~
部屋を出た士道たちは琴里たちの元に来ていた。
「で、カメラを切ってまでやった成果は?」
士道たちが来るなり、琴里はそう聞いた。
「それは、精神状態で分かるんじゃないのか?」
「ああ、精神状態はまだ封印はできないが、安定はしているよ」
「そう。で、中で何してたの?」
「ウソ発見機を置いて、話していたんですよ」
真那がそう言うと、琴里は納得した。
「なるほどね。ウソか分かれば話せる、か」
「で、うまくいくかは、わからないけど。こんなのはどうだ?」
「?どんなのよ」
琴里が首を傾げ、士道は思いついた案を説明した。
「なるほどね。たしかに彼女のコンプレックスを考えると、有効かもね。必要な物はこっちで準備するわ」
「あぁ、俺たちもできる準備はしておくよ」
「では、明日決行ですか?」
「そうなるわね。朝食が終わり次第決行するわ」
「じゃぁ、私の方も準備しないとねぇ」
「じゃぁ、そう言うことで――」
琴里がチュッパチャプスを指で挟み、ニット唇の端を上げた。
「さあ――私たちの
次回は、原作のあれをやる回です。
更新ペースをあげたいけど、ここ最近あまり書けていないから、ペースをあげられない感じになっていたり。
というか、主にデートと描写があまり思い付かず、手間取っている感じですね~。