デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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4話 七罪変身計画

「ん……」

 

翌朝、七罪が目を覚ますと、部屋の中にいいにおいが漂っていた。

体を起こすと、においは部屋の中心にある机のうえからしているようで、その机の方を向く。机の上には朝食が乗っており、そばにある椅子に座って本を読んでいる真那がいた。

七罪が起きたことに気づくと、栞を挟んで本を閉じる。

 

「おや、起きましたか。おはようございます、七罪さん」

「ん、おはよう。で、なんでいるの?」

 

七罪は挨拶を返したが、すぐに真那に聞いた。

 

「一緒に食べようと思いまして、朝食を持って来たんですけど」

『ピンポン』

 

真那の回答に、昨日おいて行ったウソ発見機が反応した。

 

「……付けっぱなしでしたか。でも、信じてはくれますよね?」

「なんで、そんなことするわけ?昨日も夕飯出たし。少し抜く分には問題ないでしょ?」

「いえ、監禁ではなく手当とか保護なので、三食出ますよ。とりあえず食べません?」

 

そう言って、朝食を食べるように促す。

七罪は頭を掻くと、椅子に移動する。

 

「……」

 

しかし、七罪は朝食に手を付けなかった。

 

「毒は入ってねーですよ」

『ピンポン』

「……うるさいんで、消しますね」

 

真那はなんで七罪が手を付けようとしないのか分かっているので、パンを食べながらそう言い、ウソ発見機の電源を切った。

真那が普通に食べているのを確認すると、七罪も朝食に手を付ける。

 

「……美味しい」

 

七罪は、ぼそっとそう呟いた。

 

「ところで、あなたたちの目的ってなんなの?」

「ん?ここの目的は精霊の保護らしいですよ。まぁ、私自身信用していませんが……」

 

七罪の質問に、パンを食べていた真那は飲み込んでから答えた。

 

「そう……というか言っちゃっていいの?」

「いいんじゃねーですか?口止めはされていませんし。他に聞きたいことありますか?わかる範囲でなら答えますが」

「ふーん。じゃぁ、私いつここから出られるの?」

「うーん。それは分かんねーですね。それを決めるのは、ここの人ですからね」

 

真那は部屋の隅のカメラに目を向けると、牛乳を飲んだ。

 

「まぁ、もうしばらくは、いてもらうことになりそうですが」

「そう」

「では、食器を片付けますか。行きますよ、七罪さん」

 

朝食を食べ終えると、そう言って真那は食器を持ち上げた。

 

「え?なんで?私は部屋出ちゃダメなんじゃ?」

 

七罪は真那の発言と行動に疑問を持つ。

 

「問題ねーですよ。ここは出口が一つしかないので……。それに、部屋に籠っているのも体に良くねーですし少しは歩きません?」

「そう、まぁいいわ」

 

七罪も食器を持つと立ち上がり、一緒に部屋を出る。

 

「少し歩きますか。私から下手に離れると、ここの人が捕まえようとするので」

 

食器を食堂?に返すと、歩きながら真那が伝えた。

 

「ふーん。まぁ、ついて行くわ。いまいち、ここの位置も分からないし」

「そうしてもらえると助かります」

 

二人は適当にぶらついて回った。

そして、特に何もない廊下を歩いている時だった。

 

「ここですね」

「どうしたの?」

 

真那がある部屋の前に立つと立ち止まり、ドアを開けると中に通された。

 

「目的の部屋に着きましたよ」

「ここは……」

「はい。お風呂です」

 

そこは、何処かの銭湯のような脱衣所だった。

 

「七罪さん、昨日お風呂に入っていないと聞いたので、朝来る前に頼んでおきました」

「ちなみに断ったら?」

「お風呂はなしで、部屋に戻されますね」

「はぁ、わかったわよ。入るわよ」

「そうですよ。それに挿絵はねーので、そのあたりの配慮もなされています」

 

真那はそう言って服を脱ぎ出したので、七罪も渋々服を脱ぐと、二人は浴室に入った。

十人は普通に入れそうな浴場だった。

 

「あ、二人ともおはよぉ」

 

そして、何故か湯船には千花がいて、リラックスしながら手を振っていた。

 

「なんでいるの?」

「ん?お風呂があって、気持ちよさそうだったからぁ?あとはちょうど私の家の菜園で作業してたからぁ」

「ただ単に、見張りの目を増やしただけよ」

 

疑問に疑問で返す千花に、七罪の後ろから琴里が入ってきてそう言った。

 

「体洗っちゃいましょう」

「まぁ、いいや。浴びよ」

 

真那は真那でシャワーを浴び始める。七罪もそう言って、隙を伺っている千花に警戒しながら、シャワーを浴びた。

身体を洗い終えると、七罪は湯船に浸かりながら呟く。

 

「ふぅ、疲れが取れる気がする」

「まぁ、あれだけ警戒していれば、それは疲れるでしょ」

「こんな大きなお風呂はいつ振りでしょうか」

「あぁー、毎日入りたい気分だねぇ」

 

四人は湯船に浸かって、落ち着いていた。

 

「ねぇ、琴里だっけ?私はいつになったら、ここを出れるの?」

「そうね。あなたの傷が完治して、安全が確立した時かしら?」

「つまり、未定、か」

「まぁ、近いうちに出られるよぉ」

 

七罪の質問に琴里が答えたが、七罪の望む答えではなかった。千花は千花で、希望的観測を言った。

その後、無言の時間が続いた。

 

「私、もう出ますね」

「もう、無理ぃ。のぼせるから出るねぇ」

「あ、私も出る」

「そう。じゃぁ、私も出ようかしら」

 

四人が浴室から出ると、身体を拭いて服を着た。

カサカサに乾燥気味だった七罪の肌は、だいぶ元に戻っていた。

どうやら、美白とか、肌を潤わせるとかの効能があったようだった。

 

「じゃぁ、行こぉ」

「どこに?」

「とある部屋よ」

 

千花に聞くと、琴里が答えた。

歩くこと数分。目的の部屋に着いたようで三人が部屋の前で止まる。中に入ると、七罪は部屋を見渡す。壁には大きな鏡があり、そこに向き合う形で大きな椅子があった。

 

「ここは……?」

「美容室だよ」

 

椅子の近くには士道がいて、その隣には黒髪の長い女性がハサミなどを準備していた。

士道が言った言葉に混乱した七罪。

 

「ちょっと待って何で、美容室?――」

 

そこで、ハッとすると、士道たちの狙いに気付いた。

 

「は……ははっ。そういうことね。勘違いブスの滑稽な姿を笑おうって事ね?いい趣味しているわね、あなたたち性根が……」

「ていっ!」

「いたっ」

 

七罪の言葉の途中で、琴里がチョップを食らわした。

七罪は思わずうずくまり、抗議の目を向ける。

 

「なにするのよぉ!」

「これは、ネガティブと被害妄想を何とかしないといけないわね。とりあえず座りなさい。この後も予定があるから」

「嫌よ。なんで笑われるってわかっていてそんなことを。どうせ笑いものにする気でしょ?」

「そんなつもりねーですよ」

『ピンポン』

「「「「「……」」」」」

 

唐突に響いた、最近聞いた音。

音源の扉を見ると、ウソ発見機を持った千花が立っていた。

 

「でも、後から笑う可能性があるわよ。未来はそれでは測れないんでしょ?」

「うん、そうだねぇ。未来は変えられるねぇ」

『ピンポン』

 

千花は嘘をつくことなく言った。そして、士道は頭を掻く。

 

「じゃぁ、俺たちは今日、七罪に考えられるだけの『変身』をさせる。それで、七罪が納得したら俺たちの話を聞いてほしい。もし、失敗したら七罪の好きにしてもらう」

「……どういうこと?」

「そうだな。おまえがここを出られるってとこか?」

「……!」

 

士道の言葉に驚いた。琴里も意外だったのか、

 

「ちょっと、士道」

「いいだろ?無理強いするのもかわいそうだし。どうだ、七罪。悪くない話だと思うけど」

「……」

 

士道の腹を探るように目を細めた。

(どうせ、もう逃げられるけど、霊力を封印された精霊二人に魔術師一人を振り切るのは難しい。だったら、この話に乗って安全に出た方が……。どうせ向こうに勝機は無いし)

七罪は逡巡する。

 

「……わかった。それならいいわ」

「そうか。――じゃぁ、椅子に座ってくれ。椎崎さんお願いしますね」

 

七罪の答えに士道がそう言うと、髪の長い女性、<藁人形(ネイルノッカー)>椎崎がハサミを持った。

 

「えぇ、任されました。とりあえず、切りますね。その枝毛や、多くなった髪は切らないと、髪が痛みますよ?」

 

そう言いながら、ハサミで髪を切っていく。

数十分すると、枝毛だらけの七罪の髪が、きれいに整えられていた。

 

「うそ……すごい」

「ふぅ、切るのはこんなところでしょうか」

 

椎崎はそう言うと、ドライヤーと櫛で、七罪の髪をブローしていく。

すると、寝癖だらけの髪が信じられないくらいふわりと軽くなっていた。

 

「椎崎、お疲れさま。助かったわ」

「いえ、お役に立てたのなら何よりです」

 

そう言うと、椎崎は本来の仕事に戻って、部屋を出た。

 

「さて、次の部屋に行くわよ」

 

次の部屋、七罪は眉をひそめた。

 

「じゃぁ、いきますか」

 

真那が七罪の手を掴むと、そのまま歩き出す。

七罪も渋々ついて行く。

その後ろに琴里と千花もついてくる。

士道はここの片づけをしていた。

次の部屋には、たくさんの服やスカート、ズボン、帽子などがあった。

いわゆる、セレクトショップと呼ばれる店に似ていた。

 

「じゃぁ、着せる服選ぼうかぁ」

「真那はあまり、選り好みしないんですけどねー」

「さぁ、あなたも選びなさい。早くしないと着せ替え人形にされるわよ」

 

そう言って、千花と真那は服を物色し始める。

琴里もそう言って、服を見始めた。

 

「これは、どうかなぁ?可愛いよねぇ」

 

千花がとったのは、フリルの多い服だった。

 

「いえ、動きやすさも重視するべきです」

 

真那は、いつも着ているようなシャツやパーカーを手に取っていた。

 

「でも、今の時期には少し寒いんじゃないの?」

 

そう言って、琴里は上着を手に取る。

 

「まぁ、冗談はこれくらいにして、これかなぁ?」

 

千花はさっき持っていた服を戻して、長めの紺のスカートを手に取り、

 

「とりあえず、この辺の着てみるのはどうですか?」

 

そう言って、三人が持っていたのを七罪に渡した。

 

「え……でも……」

「うん、やっぱりさっきのもいいよねぇ」

 

七罪の煮え切らない態度を、違う服がいい、と受け取った千花はフリルの服を手に取った。

 

「……」

 

七罪は無言で服を持って、更衣室に入る。流石にフリルの付いた服は着たくなかった。

 

「はぁ、なんでこんなことに……」

 

七罪は来ている服を脱いで、シャツとスカート、その上に上着を羽織った。

 

「まだぁー」

「渋っているなら、強硬策を」

 

千花と琴里の声が聞こえてきた。

七罪も覚悟を決めて、そろそろとカーテンを開けた。

 

「う……」

 

七罪は目をきゅっと瞑り、奥歯を噛みしめた。やがて、三人の嘲笑めいた声が――

 

「いい感じですかね」

「うーん、もう少し、明るい感じの方がいいかしら?」

「似合ってはいるけど、確かに明るい色の方がいいかなぁ」

 

――聞こえてこなかった。

 

「……ん?」

 

七罪が恐る恐る目を開くと、真剣に七罪の服を考えている三人がいた。

 

「えっと……」

 

反応に戸惑っていると、千花が白いロングスカートを持って来た。

 

「次これねぇ。それとも七罪ちゃんも選ぶぅ?」

「えっと。うん」

「では、選びましょう」

 

それから、一時間ほど七罪の服選びが行われた。

 

「こんなところでしょうか?」

「いいんじゃない」

「うん、これだねぇ」

 

三人が納得したように言った。

今の七罪は、オレンジのT‐シャツの上に黒いパーカー、紺のスカートという恰好をしていた。

すると、扉が開き令音が入って来た。

 

「琴里、悪いが後はみんなに任せて、こっちに来てくれ。DEMに動きがあったようだ」

「そう。……じゃぁ、後は任せたわ。何かあったら、連絡してね」

「わかりましたよ。任せてください」

 

真那がそう返すと、琴里は部屋を出た。

 

「じゃぁ、最後の部屋に行こうかぁ」

 

そして、千花がそう言った。

 

「一体何が……?」

 

そう言いながら、最後の部屋に行った。

そこは七罪が元々いた部屋だった。

そして、長い髪を四つ葉のクローバー型のヘアピンを付け、首にチョーカーを付けた少女がいた。

 

「よく来ましたね。ここが最後の部屋です」

「何をするのよ」

「それは――私のメイクで変身させます」

 

そして、少女が七罪にリップグロスを突きつける。

 

「そんなんで、変身できるわけ……」

「いえ、できますよ。ね、兄様」

 

七罪が否定しようとしたのを、さらに真那が否定した。

 

「何言って……ん?兄様?まさか、士道君?」

 

少女を凝視する七罪。

なんとなく士道の髪が伸びたら似ている気がした。

 

『いえ、私は士織です』

『ブッブー』

「……」

 

少女が否定したが、それをウソ発見機が否定した。

 

「……そうだよ。士道だよ」

『ピンポン』

 

士道は首に付けていたチョーカーを取ると、自棄になって言い、ウソ発見機の電源を切った。

 

「へ、変態……ッ!?」

「……」

「おお、兄様が傷ついています」

「まぁ、否定はできないよねぇ。一人でやったわけだしぃ」

 

二人はそんなことを言っていた。

 

『ふぅ、士道に頼まれたとはいえ面倒ですね』

 

若干呆れながら、鞠亜の声が響き、テレビがついて現れた。

 

「あぁ、そうだな、鞠亜。とにかく、俺の技術なら、男を女と誤認させるレベルになった。だから、七罪に自信を持たせることが出来る!」

「まぁ、いいわ。でも、私が納得できなかったら、あなたたちの負けだからね」

「ああ、分かっているよ」

「とりあえず、その姿でその声出さないで……」

「……」

 

士道は無言でチョーカーを首につけた。

 

「始めるぞ」

 

女っぽい声になり、七罪のメイクが行われていった。

 

「ふぅ、こんなところだな」

 

少し時間が経つと、士道がそんなことを言った。

 

「もう完成なの?あっさりしているのね」

「ん?だって、元がいいんだから、そんなにする必要は無いからな。それに完璧だ!ほら」

「なによ」

 

七罪が振り向くと、真那と千花と鞠亜が驚いたような顔をしていた。

 

「な、なんなのよ?」

 

動揺した声で、七罪が言うと、千花が部屋にあった鏡を指差した。

鏡を見て、七罪は驚いた。

 

「これが、私?」

「はい、間違いなく七罪さんですよ」

「うん可愛いねぇ」

『私もそう思います』

 

皆も、肯定した。

 

「どうだ?七罪?」

(これが私?可愛いと思う。でも、こんなの嘘よ。……そう、これは夢なんだ。だから、私が可愛くなったんだ。うん、そうだ。これは夢。よし、一回外の空気を吸おう)

「……う、あ、あぁぁぁー」

 

すると、何が何だか分からなくなり、頭がパニックして、七罪は大声を上げて部屋の外に走っていった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

あの後、七罪は部屋を出てすぐ、パニックしていたこともあって転び、頭を壁に打ち付け気を失った。

 

「ん……」

 

ふと目を覚ますと、七罪はベッドに寝ていたが、今日あったことを思い出した。

 

「夢じゃないの、か」

 

七罪は辺りを見回す。

壁際には、簡易の机があり、いつ起きても食べられるように、パンが置いてあった。

 

「本当に何がしたいのやら。ん?」

 

一人呟くと、七罪は立ち上がり、自分の身体を見ると傷が完治していることに気付いた。

 

「もう、ここにいる必要もないよね?裏切られる前に出よう」

 

七罪はここからの脱出を決心すると、行動に出た。

 

「<贋造魔女(ハニエル)>」

 

ベッドにぬいぐるみを詰めて変わり身を作ると、<贋造魔女>でロックされた扉を鍵のない扉にして、七罪は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

機関員が、七罪がいなくなったのに気付いたのは、翌日の朝のことだった。




タイトルの通り、九巻のあれを今いるメンバーたちでやるという回でした。(マッサージの部分は文量の問題でカットというか、お風呂の部分ということで)

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