デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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今回から第三章ですね~


三章:鳶一スマイル
1話 転校生


七罪の霊力を封印してから、半月ほど経ったその日。

 

「皆さん。今日はこのクラスに転校生が来ましたよぉ」

 

唐突にタマちゃん教諭が朝のホームルームでそう言った。

その言葉を聞いて皆ざわざわしていた。

 

「とりあえず入ってきてくださぁい」

 

そう言うと扉が開き、生徒が入って来た。

入って来たのは、背を覆う少し色素の薄い髪に、人形のように端整な顔をした、線の細い少女。

 

「え?」

「おやぁ」

 

士道と千花は少女を見て反応した。

見覚えしかない少女だったから。

 

「初めまして。鳶一折紙です。えっと、よろしくお願いします」

 

転校生の折紙は自己紹介をするとお辞儀をした。クラスの生徒たちは新たな美少女転校生にテンションが上がり、そんな生徒たちを落ち着かせる為にもタマちゃん教諭は口を開く。

 

「えっと、鳶一さんは家の都合で引っ越してきたそうで、分からないことが多いと思うので助けてあげてくださいねぇ。あっ、鳶一さんの席は窓際の一番後ろですよぉ」

 

タマちゃん教諭がそう言うと、折紙は席に移動する。

折紙は席に移動している中で士道に気付くと、足を止めて士道と目が合う。

 

「あ――」

「え……?」

 

折紙は士道を見るや立ち止まり小さく言葉をこぼし、それに対して士道もまさか反応があるとは思わず目を丸くした。

 

「――うそ。あなたは……」

 

まるで士道に見覚えがあるのか、折紙はそんなことを言ったが、クラスの視線に気づくやすぐに士道の後ろの席に腰を落ち着ける。

(今のは一体?俺のことを知っていた?)

その後は出席やら連絡をしてホームルームを閉じたが、士道は上の空だった。

 

「わぁ、こんな時期に転校生って珍しいねぇ、士道君?」

 

そんな状態の士道に千花は話しかける。

今後ろの席ではクラスメートたちが折紙を質問攻めにしている。無論、殿町も交じっていた。

 

「だな。千花は話しかけなくていいのか?一番に行くと思ったんだけど」

「私はまだいいよぉ。席も近くだから、チャイムが鳴って先生が来るまでの時間に話すよぉ」

 

千花は士道の問いにそう返す。士道は士道で疑問顔をする。

 

「それよりも、折紙が精霊になっているのかが問題だよな。見た感じは俺たちのことを知らないみたいだけど」

 

今の問題はそこだった。

一周目では折紙が精霊になっており、助けに行って【十二の弾】の効果が切れて戻って来てみれば、世界が変化したわけなので。

 

「だねぇ。今から<フラクシナス>に観測機回してもらう?」

「いや、琴里たちは折紙のこと知らないから止めておこう」

「まぁ、こっちで確認するしかないかぁ」

 

そんな感じの話をしていたら、チャイムが鳴った。

クラスメートも折紙から離れて席に座り、千花は先ほど言ったとおり折紙の方に向くと話しかける。

 

「おはよう、折紙ちゃん。私は木野千花。よろしくねぇ」

「おはよう。改めまして、鳶一折紙です。よろしくお願いします。木野さん。それで、あなたは……?」

 

折紙はそう言いながら、士道に視線を向ける。

 

「俺は五河士道だ。よろしくな。それと、分かんないことがあれば聞いてくれ。そういえば、鳶一さんさっき――」

「あ、先生来ちゃった」

 

士道が何か言おうとしたら教師が来てしまい、さっきの言葉が士道は気になったが、後にすることにした。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「ふわぁ。あ、よく寝ちゃったぁ」

 

四限のタマちゃんの授業を寝ていた千花がチャイムの音で起きると伸びをした。

 

「木野さん、寝ちゃだめだよ。テストで赤点になっちゃうよ?」

「いざとなったら、誰かに教えてもらうよぉ」

「それでいいのかな?」

 

折紙は疑問に思いながら、教科書をしまい、代わりに弁当箱を出す。

士道と千花も弁当を出す。

 

「じゃぁ、屋上行かない?今日は暖かいしぃ。学校案内するよぉ」

「あぁ、いいかもな。鳶一さんもどう?どこに何があるかわからないだろ?」

 

士道も同意すると、折紙に聞く。

 

「うん。行ってみたい……かも」

 

折紙も頷くと三人は立ち上がって、屋上に行った。

屋上に着くと適当な場所に座り、お昼を食べ始める。

 

「ところで、鳶一さん。朝、何か言いかけなかった?」

「え?あぁ、実はね。五河君によく似た人に昔あったことがあってね。それで驚いちゃったの。もう五年も前の話なのにね」

「え?」

 

少し時間が経つと士道は朝の疑問を口にしたのだが、その答えに士道は驚いた。

 

「もしかして、その人に会ったのって、南甲町の大火災の時か?」

「……え?」

 

士道がもしかして?と思いそう言うと、折紙は驚き目を丸くした。

(あ、これは言わない方が良かったか?もしかしたら変に思うかも)

 

「なんでそれを……もしかして、あの人は五河君のお兄さんですか?」

「へ?」

 

折紙の予想外の言葉に、士道は間の抜けた声を上げていた。

士道は折紙が勘違いしていることが分かったが、もし、真実を言っても信じられないと思い、そのまま進めることにした。

 

「鳶一さんの言ったことはあってるよ」

 

士道がそう言うと、折紙は今にも泣きそうな表情になった。

 

「鳶一……さん?」

「……!」

 

そんな表情を見て言葉を投げ掛けると、折紙は深々と頭を下げた。

 

「あなたのお兄さんは、私の両親をあの時助けてくれました。あの人がいなかったら、どうなっていたか。どれだけ感謝の言葉を並べても足りませんが言います。本当に――ありがとう……!」

「あ、ああ……」

 

士道は面食らい、曖昧な返事になってしまった。

そして、士道は安堵した。五年前のあの時助けることが出来たことに。

しかし、同時に疑問があった。

 

「えっと……鳶一さんの両親は助かったんだよな?」

「はい」

「ふ-ん。じゃぁ、今も一緒に住んでいるのぉ?」

 

すると、今まで聞き役に徹していた千花が質問をした。

 

「いえ。両親は三年前に交通事故で……」

「え……?」

 

士道はそんな反応をしてしまった。結局助けられなかったと。

しかし、折紙はその反応を別の意味に受け取っていた。

 

「あっ、ごめんなさい。せっかく五河君のお兄さんが救ってくれたのに」

「いや、そんな」

「でも……五河君のお兄さんが助けてくれたことで、約二年、私は両親から多くのものを貰いました。だから、感謝しているんです」

 

折紙の顔には嘘偽りが一切なかった。

 

「そ、そう、か……」

 

士道は視線を逸らして、そう言った。

折紙の両親が無くなってしまったのは残念だが、今の折紙の言葉を聞いて、ずいぶん救われた気がした。

 

「ん?じゃぁ、鳶一さんは今までどこに暮らしていたんだ?」

「この前までは遠くに住んでいた叔母と一緒に住んでいて、叔母の仕事が急に忙しくなったのか、家を空けることも増えてきてね。私もだいぶ負担をかけていたから、私は叔母に頼んでこっちに戻って来て、一人暮らしを」

「そうなんだぁ」

 

そう相槌を打ちながら、弁当を食べる千花。

 

「じゃぁ、今週の休みのどっちかに遊びに行かない?折紙ちゃんのいない間に結構お店も変わったと思うよぉ」

「いいの?ちょっと予定がないか確認してからでもいい?」

「わかったぁ。ところで、士道君も来るぅ?」

 

女子二人で出かける話になると、蚊帳の外になっていた士道に話を振った。

 

「ん?いいのか?女子二人じゃなくて?」

「いいよね、折紙ちゃん?」

「私はいいけど」

「じゃぁ、よろしく」

「やったぁ。荷物持ちゲットぉ」

「ちょっ、それが目的か!」

 

荷物持ちをゲットした千花が喜び、士道はツッコミを入れていた。

 

「あっ、連絡先交換しておかない?」

「う、うん」

「だな」

 

そう言って携帯を出す三人。

連絡先を交換した後は、たわいのない話をして昼休みを過ごした。

 

 

 

~☆~

 

 

 

その後、授業も進み放課後になった。

士道は一人、屋上に来ていた。

五限は体育で、校舎に戻ってきたら下駄箱の中に、放課後に屋上に来るように、と書かれた手紙が入っていたからだった。

(もしかして、ラブレターだったりして。まぁ、無いよな)

そんなことも考えたが、すぐに無いなと自己完結した。

千花は用があると言って、先に家に帰っている。

 

「で、誰なんだろ?」

 

誰もいない屋上で、ぽつりとつぶやいた。

 

「それは、わたくしですわ」

「うおっ」

 

耳元でいきなり声がして、士道は驚きながら二、三歩前に出て、振り返った。

 

「ふふ、面白い反応ですわね。士道さん」

 

そこには見慣れた赤と黒の霊装に、左右不均等のツインテールの狂三が微笑んでいた。

 

「狂三、おまえだったのか。久しぶり、でいいんだよな?」

「えぇ、お久しぶりですわ。三人の霊力を封印している士道さん」

「……ッ。おまえそこまで知ってんのか?」

「もちろんですわ。世界中にわたくしたちはいますので。まぁ、記憶を保持しているのはわたくしと鞠亜さんだけのようでしたが……しかし、今は士道さんも真那さんも記憶が戻っていらっしゃるようですし。とりあえず座りませんこと?」

 

そう言い、近くの石段を指差す。

 

「そうだな」

 

二人は石段に近づき腰を下ろす。

 

「で、ここに呼び出したのは?」

「まぁ、情報の交換と久しぶりに会おうかと思いまして。というかぁ、この距離感は何ですか?」

 

二人の間には微妙な距離が開いていた。

 

「いや……一応、前の世界だと命を狙われたし……」

「そんな風に思っていたんですの?悲しいですわ、泣いてしまいますわ。えーん」

 

そう言って顔に手を当てる狂三。

士道は慌てて弁明をする。

 

「いや、信用はしているけど……その気恥ずかしくて……」

 

途中か恥ずかしくて声が小さくなっていた。

 

「ふふ、冗談ですわよ」

 

そんな士道を見て、狂三はウソ泣きを止めて笑っていた。

狂三といると高確率でこんなやり取りをしている気がした。

 

「ところで、この世界はどうなっているんだ?なんで、狂三に撃ってもらった時の半年前にいるんだ?」

「そのことからですわね。わたくし自身あの弾は初めて使ったのでこんなことになるとは思いませんでしたわ。しかし、この一ヶ月でいろいろ調べられましたわ」

「そうなのか」

 

そう言うと、一息おいて言った。

 

「まぁ、士道さん自身目の当たりにしていることが多いのですが……。まず、異なる時間に飛ばされた、又は呼び込まれたと言った方が正しいのでしょうか?おそらく前者なら歴史を変えたから、後者なら何者かがなんらかの目的で、と言えるでしょう。わたくし自身、歴史を変えるのは初めてですので仮説ですが……」

「やっぱり狂三でもよくわからないのか。変化は真那がもういるとか、折紙が今日転校していたとかか?」

「はい、ほとんどの変化はもう士道さんが確認しておりますわね。ですが、一番の違いは千花さんですわね」

「千花が?どういうことなんだ?」

 

狂三の言葉に反応して、聞き返す士道。

 

「はい。千花さんは、前の世界にはいませんでしたわ。いえ、もしかしたら存在していたのかもしれませんが、彼女が精霊ではなかったことは確かですわ」

「そうなのか?……でも、霊力封印しちゃったし、問題ないよな?」

「まぁ、確かに問題はないですわね。ですが、この変化には彼女が関係している可能性もありますので、悪しからず」

「千花が、か。覚えておくよ。たぶん心配はないと思うけど」

「そうですか……では、私はそろそろお暇しますわね。あ、そうでした――」

 

狂三が何か言おうとした瞬間、屋上の扉が開いた。

 

「あ、こんなところにあった。……え?」

 

扉からは折紙が入って来て、何かを拾っていた。

見た感じ、ヘアピンのようで、昼休みの時に落としたようだった。

そして、ヘアピンを拾うと、士道たちに気付いたようで驚いていた。

そして、折紙の表情が曇り、呟いた。

 

「精、霊……」

 

その瞬間、折紙の瞳が虚ろになり、周囲に蜘蛛の巣のように漆黒の闇が広がった。

まるで、折紙の周りだけが一瞬にして夜になったような光景だった。

その異常に、士道は思わず目を見開いた。

そして、その闇が渦巻くように折紙の身体を絡めていき、まるで喪服のようなドレスの霊装を形作った。

 

「言い忘れておりましたわ。折紙さんは<デビル>と呼ばれてい精霊ですわ」

 

そんな折紙を見ながら、狂三はさっき言い損ねたことを補足した。

 

「なんで、精霊に?」

「……」

 

沈黙していた折紙の周囲にいくつもの黒い塊が出現し、膨張し、巨大な『羽』のようなものを作った。

 

「……<救世魔王(サタン)>……」

 

折紙が小さく呟くと、『羽』のようなものから黒いビームが放たれた。

 

「士道さん、そこは危ないですわよ」

 

そう言うと、士道の手を引いて数歩移動する。

そして、さっきまで二人がいたところをビームが通り過ぎた。

 

「狂三、助かったよ。ありがとな」

「いえ、それにしても随分と手荒いご挨拶ですわね。彼女と戦うつもりもありませんわ。では、失礼します」

 

狂三は士道の手を離すとスカートを翻し、屋上のフェンスにジャンプしてフェンスの上に立つ。

すると、折紙の天使が狂三に攻撃をする。

 

「では、またいつか」

 

そう言って攻撃を避けると、そのままフェンスから飛び降りて屋上から消えた。

 

「え――」

 

そして、士道は折紙を見ると、呆然と声を発した。

狂三が消え、折紙は力なくその場に膝をつくと、周囲の『羽』が粒子状になって消えていった。

それに次いで、折紙の纏っていた漆黒の霊装が解けていき、先ほどと同じ制服姿に戻る。

まるで、目的を達したといわんばかりに。

 

「これは、一体?」

 

士道が理解できずにいると、折紙が顔を上げた。

 

「あれ、五河君?どうしてここに?」

 

士道を認識すると、あっけらかんとしてそう言った。

 

「え?」

 

予想外の反応に困惑する士道。

今しがた、狂三を襲った同一人物とは思えないような感じだった。

士道が困惑しているのを受けて、折紙も困った顔をした。

 

「もしかして、私また……」

 

折紙はそう言って、膝に着いた砂を掃いながら立ち上がった。

 

「また?なにがだ……?」

「実は最近、意識が途切れることがあって……たぶん貧血なんだけど」

「意識が?」

 

折紙は、バツが悪そうに頭を掻いてそう言い、士道は眉を寄せてごくりと息を呑んだ。

 

「あ、もう帰らないと。じゃぁね」

 

そう言って、折紙は早足に屋上を去っていった。

そして、士道はポツンと立ち尽くしていた。

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