デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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2話 〈デビル〉

「おかえりー、士道。何か疲れた顔しているわね、大丈夫?」

 

家に戻ると、七罪がソファーに座ってテレビを見ていて、士道に気付くと、顔だけ士道に向けて声をかけた。

そして、士道の顔を見ると心配していた。

 

「あぁ、ちょっと色々あってな。ところで、なんでこっちにいるんだ?千花の家でもテレビは見れるんじゃ?」

「ん?今は無理。て言うより、避難してきた」

「……あぁ、そういうことか」

 

七罪の言葉で士道は察した。

千花の家では、たびたび新しく作った機械の実験が行われており、真那と七罪はそのたびに付き合わされているらしい。だから、時々士道の家に避難してくることがある。

 

「じゃぁ、真那は?」

「もう、とっくに逃げたわ。で、士道は何があったの?もしかして、精霊の誰かにあったとか?」

 

七罪は士道の質問に返すと、逆に質問した。

七罪は観察力が高いので、何か察しているようだった。

 

「さすがだな。そうだ、折紙が俺のクラスに転入してきた」

「あぁ、そういうことか。あ、そういえば、あの時の……。ねぇ、もしかして、霊装纏った折紙って黒い喪服みたいなの着てた?」

「え?」

 

七罪の発した言葉に驚く士道。

 

「どうやら、そうみたいね。じゃぁ、私一度襲われていたみたい。あの時は、黒い『羽』みたいな天使で顔を隠していたから、わからなかったけど……」

「そうなのか。折紙に一体何があったのやら?どうやら、自分が精霊ってことに気付いてないみたいなんだけど……」

 

二人が疑問に思っていると、突然声が響いた。

 

「二人の疑問には、私が答えてあげよぉ!」

「あの、そろそろ降ろしてくれねーですか?」

 

二人が声のした方――リビングに入るドアを見ると、千花が立っていた。何故か真那を背負って。

 

「どういうことなんだ?あと、なんで真那を背負っているんだ?」

「それはですね、逃げたのに捕まって、千花さんの実験に付き合わされたからです」

 

千花から降りた真那が説明した。

足元がおぼつかないのか、フラフラしていた。

 

「大丈夫?」

「はい……」

 

そんな真那を七罪が心配すると、真那はソファーに座った。

そして、立っていた士道と千花も椅子に座る。

 

「で、疑問を答えるって?知っているのか?」

「うん。だって、私何度も彼女と戦っているからねぇ。そして、今日会ってある程度の仮説は立ったよぉ」

 

うんうん、頷いて答える千花。

 

「その仮説と言うのは?」

「まず、彼女が精霊だということに彼女自身が気付いていないってことだねぇ。さらに言えば、精霊の霊力を見ると精霊化するみたい。私みたいに霊力を封印してあれば平気だけど、精霊の皆みたいに霊装を纏ったらアウトだねぇ」

「そうなのか……。ん?なんでそこまで詳しいんだ?精霊状態じゃない折紙見るの、今日が初めてだよな?」

 

そこまでの仮説を言った千花に疑問を持つ士道。

 

「たしかに、そうよね。詳しすぎない?」

「そうですよね」

 

疑問を持っているのは士道だけではなかったようで二人も疑問を持ったようだった。

 

『それについては、私が調べ上げたからです!』

 

その疑問に答えたのは、つけていたテレビに入り込んだ鞠亜だった。

 

『まぁ、士道が今日彼女の精霊化する瞬間をとらえてくれたおかげです。だいぶ前から<ラタトスク>も彼女のことを知っており、私も最近調べ始めていました。彼女の識別名は<デビル>。出現するときは決まって他の精霊に襲い掛かっていますね。しかし、ASTに攻撃もされているのでASTと協力関係にあるわけでもないです。できれば、もう少し情報を集めてから言おうと思っていたんですが……』

「じゃぁ、琴里たちも知っているのか?」

『いえ、天使で顔を隠していることで、正体はばれてはいないんです』

「そっか、どうするかねぇ。とりあえず、あの後琴里にメールしといたんだけど返信がないんだよなー」

 

士道がもう一度携帯を確認すると、家のドアが開き、誰かが入って来た。

インターホンも押さずに入って来たということはそういうことだろう。

 

「士道、新しい精霊が転入してきたって本当?もっと早くに言いなさいよ」

「お邪魔するよ。まぁ、書記だと思ってくれ」

 

そう言いながら、琴里と令音が入ってきた。

 

「で、精霊が転入したって本当よね?」

「あぁ、転入してきたな。でも、返信が無かったけど、会議でもしてたのか?」

「ん?あぁ、確かに会議をしていたわね。士道たちの情報を隠しているから長引くのよね。まっ、あの人たちは士道を、皆を利用したいだけだから言わないけど」

「そっか、すまんな」

「で、何があったのか話してくれないかい?シン」

 

とりあえず、長い話になりそうなので琴里は椅子に、令音はソファーに座る。

 

「それと、そろそろ話してくれない?あなたたちが私たちに隠していることも含めてね?」

 

とりあえず話そうとすると、琴里が疑問の目を向けていた。

 

「え?なんのことだ?」

「いいわよ、白を切らなくて。士道たちが何か隠しているのは分かってるんだし。それとも何?私じゃ、士道の話が理解できるか不安?それとも、私も信用無いのかしら?」

「いや、そんなつもりは……」

 

士道が首を横に振ると、琴里少し拗ねた顔をして、小さな声をこぼした。

 

「……もうちょっと頼ってくれてもいいじゃない……おにーちゃん」

「……!」

 

琴里に言われて、士道は目を見開いた。

 

「……そうだな。悪かったよ、琴里」

 

琴里の事は士道自身信じている。だが、内容が内容だけに今までは隠そうと思っていた。

けれども、何も知らないのと、何かあるとわかっていて隠されるのでは大きく違う。隠されているのでは信じられていないと言っているようなものだから。

そばに座る皆を見れば、判断は士道に任せるというような目をしており、士道はどうするか決めた。

そして、士道は小さく頭を下げた。

 

「信じるのも難しいかもしれない話をする。でも、これは本当のことだ。それでも聞いてくれるか?」

「えぇ、もちろんよ」

 

士道の言葉に、琴里は顔を明るくするが、すぐに司令官モードの顔に戻って首肯した。

 

士道は、一周目の世界で狂三の力を借りて過去に飛んだこと、戻ってきたら違う世界にいたこと、千花とのこと。

そして、過去に飛んで救ったはずの折紙が精霊になっていたこと、さっきまで千花たちと話していたことも含めて二人に話した。

 

「……と、こんなところだな」

「……」

 

話を終えると、琴里は何かを考える素振りをしていた。内容が内容だけに頭で整理しているようで、まとまるのを待つ。

 

「世界の変化……なるほどね。だから士道は<ラタトスク>に会う前から千花と一緒に居たわけね。にわかに信じがたいけど、納得のいくこともあるわ。でも、今後は天使を顕現させないでちょうだい。あまり使い過ぎると士道の身体に何が起きるかわからないから」

「あぁ、分かってる。なるべく使わないようにはしたいけど、使う時には使うかもな」

「はぁー、まぁいいわ。その代わり定期的に検査はしてもらうからね」

「あっ、あぁ。わかった」

「それと、令音。なんで私に黙っていたのよ?」

 

琴里は妥協しながら、定期検査に来るようにくぎを刺すと次に令音の方を見て文句を言う。

(たしかに、令音さんは俺たちのこと知ってたんだよな)

すると、ここまでお茶を飲んで話を聞いていた令音が口を開く。

 

「ん?琴里の負担を減らそうと思ってね。そう言えば、<デビル>ことを鳶一折紙とシンたちが一緒に居るのを自立カメラがとらえていたから、だいぶ調べは進んでいるよ。まぁ、自立カメラを飛ばしたのも、<ナイトメア>が来禅に来ていたからだけどね」

 

令音はお茶を一口飲むと話を続ける。

 

「まぁ、シンたちの仮説はあっているだろうね。元々の世界の記憶を引き継いだのは<ナイトメア>だけのようだけど、シンもこの世界に少なからず違和感があったみたいだし、彼女にも何かあると考えた方がいいかもしれないね」

「何か、ですか。じゃぁ、折紙も記憶の一部があるかもしれないと」

「まぁ、そうなんじゃん。十香も言ってたわよ、折紙は精霊をすべて倒して、自分も死ぬ気らしかったって。今精霊を襲うのだってそれなら辻褄があうわ」

「つまり、精霊時の彼女は一周目の彼女の記憶が残っている可能性があるってことでいやがりますか。そう考えれば、精霊を襲うのにも納得がいきますし」

「そうなるねぇ。私も結構戦ったしねぇ。でも、あれ天使じゃないよねぇ。どっちかっていうと魔王?」

 

お茶を飲みながら話を聞いていた千花が何気なくそう呟いた。

 

「話が早いわね。そうなのよ、彼女何でか反転しているのよね」

「それで、どうするのぉ。折紙ちゃん、精霊の自覚がないけど霊力の封印するのぉ?」

「えぇ、封印してもらうわ。これはチャンスでもあるわよ。霊力を見なければ精霊にはならないみたいだし、一応の安全は確保できるわよ」

「つまり、兄様が彼女をデートに誘うと?」

「そうよ。いつも通り、デートしてデレさせなさい」

 

琴里は士道の顔を見てそう言った。

(まぁ、それしかないんだろうな。それに、折紙が絶望したっていうんなら助けたいし……)

 

「そうなるよな」

「そうなるよねぇ」

「そうなりますか」

『そうなりますね』

「そうなるんでしょ」

 

士道たちはそんな反応をした。

すると、琴里は何か困惑した顔をしていた。

 

「ねぇ、今一人多くなかった?」

「ん?なんのことだ?」

 

この部屋には、士道、千花、真那、七罪、琴里、令音、鞠亜がいる。

士道は部屋を見回して、特に何もないことを確認する。

 

「とくに、問題ないな」

「いや、誰よ。あなた」

 

琴里はテレビの中にいる鞠亜に向かって聞いた。

 

『やっと気づきましたか、琴里。私は或守鞠亜。一周目の世界で<フラクシナス>のAIをしていましたが、今は士道の携帯に間借りしています。今の<フラクシナス>には、私が作ったプロトタイプを入れてあったり私が赴いたりしていますね』

「はぁー、よろしく。まさか、AIがここまで進化していたとは」

『いえいえ、これも皆のおかげですので』

「そう。まぁ、とりあえずは精霊の件を片付けないとね。と言う訳で、士道は明日にでも彼女を誘いなさい」

 

琴里がそう言うと、千花の携帯が鳴った。

 

「あ、メールだぁ」

 

千花がメールを確認すると、

 

「士道君、折紙ちゃん土曜の午後からなら空いてるってさぁ」

「そっか、わかった。予定開けておく」

「うん、そうだねぇ。あ、返信しとかなきゃ」

 

千花は携帯で返信の文を打ち始めた。

そして、折紙と出かけることを聞いていなかった三人は士道に問う。

 

「えーと、ちょっと状況が呑み込めないんだけど、説明してくれない?」

「そうよ、なんでいきなり誘ってんのよ。まぁ、いいけど……」

「兄様は手を付けるのが早いんですね」

「おい、人聞きの悪いこと言うな。千花が折紙にこの町の案内をして、俺はただの荷物持ちだよ」

「はいはい、そう言うことにしといてあげるわよ。じゃぁ、ちょっと<フラクシナス>に行ってくるわね。まっ、夕飯前には戻って来るわ」

「おう、いってらっしゃい」

 

そう言うと、この話は終わってしまった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

琴里は<フラクシナス>に戻ると、指令室に来ていた。そして、席に腰かけるとノートパソコンを開き、テレビ電話である人と連絡を取る。

 

「ご無沙汰しております、ウッドマン卿」

「あぁ、モニター越しとはいえ顔を会わせるのは久しぶりだね。五河司令」

 

ディスプレイには、半ば白くなった髪と髭の五十前後の優しそうな顔つきの老人、円卓会議議長のエリオット・ウッドマンが映っていた。

 

「先ほどの会議でも話したが、彼らのことを伏せるのもそろそろ限界かもしれないね。だいぶ、身辺調査を進めているようだけど、平気かい?」

 

ウッドマンは、士道たちのことを心配しているようで、そう問いかけた。

 

「はい、こちらにはネットワークにおいては鉄壁の人がいるので問題は無いですよ。まぁ、先ほど分かったのですが……」

「そうかい、ならいいのだが。一応彼らにも伝えておいてくれ、そろそろばれそうだと」

「はい、後で伝えておきます。それで、再び私を呼んだのは?」

 

琴里は、本題とばかりに姿勢を直す。

 

「あぁ、君のお兄さんは二回も天使を顕現させたみたいだけど、問題は無いかい?」

「はい、今のところ問題は無いようです」

「そうか。もう本人に聞いていたか。……もしもの時は、あれを使ってもらうことになる可能性もある。でないと、また精霊達に再び災いが降りかかることになる」

「承知……しています」

 

琴里は静かに目を細めると、ウッドマンが声を発した。

 

「……嫌な役を押し付けてしまってすまないね」

「いえ、仕方がないことです」

 

琴里は小さくうなずいてから、覚悟を持った目で言いきった。

 

「その時は私が士道を止めます!」

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