なので、前の話『聖戦・耶倶矢ルート』を読んでいない場合はそちらからになるです。
「夕弦、おはよう」
「挨拶。おはようございます、今日は早いんですね」
翌日。士道は駅に三十分前に来ており、その十五分後に夕弦も駅に着いた。夕弦はピンクのカーディガンに青いスカートという落ち着いた格好だった。
「んと、昨日は耶倶矢が先に来ていたからな。あ、夕弦の服装似合っているよ」
「御礼。ありがとうございます。では、少し早いですが行くとしましょうか」
夕弦が一瞬頬を赤らめたがすぐに気を取り直し、話を変えたのだった。
「そうだな。ところでどこに行くんだ?」
「案内。それは秘密ですが、付いてきてください」
そう言って、夕弦は士道の手を引き、駅の方に歩き出す。
~☆~
「到着。目的地に着きましたよ」
そこは、大きめな水族館と遊園地が併設された場所だった。
休日ということもあって、少し混んでいた。
「つまり、ここで今日は遊ぶと」
「肯定。そういうことです。では、行きますか」
夕弦は士道の手を引き、水族館の入り口に入って行った。
「では、私たちも行きますか」
「だねぇ、私ここ初めて来たやぁ」
「そうね。まっ、もしもの際に動けるようにだけしておけば、私たちも遊んで行っていいんでしょ?」
「えぇ、そのはず。では、そろそろ」
そう言って、士道たちをつけていた四人も水族館に入ったのだった。
~☆~
「感嘆。大きな水槽に、こんなにたくさんの魚がいるなんて、驚きです」
士道たちはまず水族館の中にある、一番魚がいるエリアに来ていた。
「そうなのか?夕弦たちは今までに来たこと無かったのか?意外だな。耶倶矢と何かの勝負で来てそうだけど……」
「説明。確かに勝負も考えました。しかし、内容が思いつきませんでした」
夕弦の話を聞き、士道は辺りを見回す。
たくさんの魚が見える水槽、イルカと触れ合えると書かれたポスターなどが視界に入った。
「ふーん……交互に魚の名前を当てていくとか、イルカにどちらが長く乗っていられるかとかできそうだけど」
「思案。確かにできそうですね。まぁ、今日中に決着がつくので、もういいですよ。それよりも今日は楽しみましょう」
夕弦はそう言って、歩き出してしまうので士道もついて行く。
一通りこのエリアを回ると、別のエリアに行く。
次はイルカのショーの時間だったこともあり、そこに行った。
「疑問。何故前の方の席にはレインコートを着ている人がいるのですか?」
二人は割と前の方の席が空いていたこともありそこに座ると、夕弦が周りを見てそう質問した。
「たしか、イルカがジャンプした前後で水がかなり飛んで、場合によっては濡れるらしいぞ。まぁ、ここはぎりぎり濡れないらしいから、たぶん濡れる心配はないと思うぞ」
「納得。そういうことでしたか。では、心置きなく楽しめるのですね」
「そういうことだな。おっ、始まるみたいだ」
すると、ショーが始まるようで、奥のプールからイルカたちが入って来る。
飼育員が先導して、イルカたちが各々動き始める。
まずは、プールの中を自由に泳ぎ始め、続いて飼育員の指示が飛ぶ。
すると、イルカがプールからジャンプして、吊り下げられているボールを尾で蹴ったり、輪をくぐったりした。
「感嘆。まさかイルカにあそこまで見事に指示を飛ばし、ちゃんと理解して行動するとは。イルカは賢いのですね」
「まぁ、イルカはかなり賢いらしいな」
途中で夕弦が感想をこぼすと、士道がそう返した。
すると、ショーの終わりが近づいたのか、イルカたちが再び大ジャンプをした。
今までよりも高く飛び、空中で回転しながら、イルカたちが同時にプールに飛び込む。
そのせいなのか、今までにないほどの量の水が客席に飛ぶ。
士道たちは一応、水がかからないはずの席だったが、量が量なだけに二人の方にも飛んでくる。
「防御。はッ……大丈夫ですか?」
その飛んできた水を、夕弦は風を出すことで周囲の地面に軌道を逸らす。
ちなみに他の客はショーに夢中であまり気にしていなかった。
「あぁ、助かったよ。まさか、こっちまで飛んでくるとは」
「同意。確かにそうですね。おそらく、イルカたちが同時にプールに飛び込んだことが原因でしょうね」
そんな話をしながらショーを見終え、二人は出口を出た。
~☆~
続いて、二人は小さな鮫やら亀やらを触れるというエリアに来ていた。
「鮫って、意外と肌がざらざらしているのだな。初めて触った気がするな」
「同意。これが鮫肌というやつですか」
二人はそんなことを言いながら回っていて、他の魚なども見ようと、士道があまり横を見ずに動こうとすると、隣にいた人にぶつかってしまう。
少女は魚をカメラで撮ろうとしていたらしく、ぶつかった衝撃で手からカメラが離れてしまい、そのまま水の中に沈んでしまう。
士道は慌てて水没したカメラを回収し、
「あっ、ごめんなさい。ぶつかって、カメラ水没させちゃって……って七罪?」
「いえ、こちらこそ呑気に写真なんて撮っていて、すいません。……そうよね、結局、皆に会ったからって私が変わるわけじゃないものね。私がこんなデートスポットにいたこと自体が間違いだったわ」
士道がぶつかった相手は何故かいた七罪で、士道が七罪に謝り、何故か七罪も謝ると、どんどんネガティブなことを呟いていく。
「疑問。これは一体?」
二人はこの時七罪の頭の中で考えていることはわからなかった。
七罪の頭の中では、
人とぶつかる。
↓
相手に喧嘩を吹っ掛けられる。
↓
損害賠償を要求される。
↓
お金をあまり持っていないので、皆に迷惑がかかる。
という感じのことを考えており、そのせいで七罪は顔を上げられずにいた。
「えっと……」
「困惑。これは……」
七罪の予想外の反応に困惑していく二人。
そんな少女に別の方向から声がかけられた。
「いやぁ、七罪ちゃんは悪くないでしょぉ。悪いのはよそ見して歩きだした士道君なんだからぁ」
「でも、私がすぐに写真を撮り終えて、あそこを離れていればよかったはずだし……ん?士道って言った?」
七罪に声をかけたのは、いつの間にか居た千花で、その言葉を聞いて今まで俯いていた七罪が顔を上げる。
そして、士道だと分かると安堵した表情になる。
「うん、悪いのは俺だから……ところで、これって弁償?」
で、士道は士道でカメラの弁償について聞く。
七罪がカメラを受け取ると、少しいじり、
「うん、動く。さすが防水仕様」
「千花ちゃん印のカメラは防水、望遠、暗視、サーモ、スタンガンと多種の昨日を搭載してるから、これくらいの水没なんて問題ないよぉ。バッテリー入れるとこ開けてたら無理だけどぉ」
カメラが動作することを確認し終えた。
士道はカメラが壊れていなかったことに安堵する。
「質問。千花さん、あなたにはこの前会いましたが、そちらは何者なのですか?どうやら二人と面識があるようですが」
夕弦は状況が呑み込めず、七罪にどういう関係か尋ねる。
「あ、私は七罪。千花の家に居候中な関係。で、そこから知り合った感じ」
「なるほどな、そういうことでしたか」
「まぁ、私たちは遊びに来ただけだしねぇ。あっ、もうすぐショーが始まるぅ。行くよぉ、七罪ちゃん。じゃぁねぇ、二人ともぉ」
すると、千花が腕時計で時間を確認して、七罪にそう言うと、ショーのやるエリアに向かって歩き出す。
「うん、わかった。じゃ、二人とも」
七罪もそう言って、千花を追いかける。
「質問。で、あの二人のどちらかが士道の彼女ですか?」
すると、夕弦が士道に半眼を向けながらそう聞いた。
「いや、二人とも彼女じゃないよ」
「疑念。そうでしょうか?いくらなんでも仲がよさそうでしたよ。あんなに怯えていた七罪さんも、士道だと分かるとは安堵していましたし」
「それは知り合いだったからだと思うぞ」
「了解。まぁ、そういうことにしておいてあげましょう」
夕弦は半ば納得がいっていないようだったが、そういうことになった。
~☆~
「……質問。なんで、こんなに上っているのでしょうか?」
「まぁ……ジェットコースターだからな」
士道たちはその後、水族館のエリアを全て回っていき、昼食を取り、遊園地のエリアにいた。
今、二人はジェットコースターに乗って、絶賛最初の上り中。
「で、なんで二人がいるんだ?」
「それは、偶然ですよ。私たちはただ遊びに来ていただけですから」
「そういうこと。だから、こちらに気にしなくていい」
で、何故か士道たちの後ろの席に、真那と折紙がいたのだった。
「把握。真那さんは士道の妹なのですね。確かに似ていますね」
ジェットコースターに乗る前に二人に気付き、夕弦が挨拶をしてこうなった。
なかなか上り切らないため、その間に夕弦が士道たちの関係を把握していた。
そして、ジェットコースターが頂上まで来て、一気に下り始めた。
想像以上に坂は急で結構負荷がすごく、上下左右に動き回り、縦回転もあった。
あまりジェットコースターに乗った経験のない士道には辛かった
そんなこんなで、出発地点まで戻ってきた。
「困惑。なんですか?全く怖くもありませんでした」
「やはり、この程度では物足りない」
「飛行訓練の時の方が辛かったですかね?」
三人はあまり怖く感じたりしなかったのかそんな感想を言っていた。
「では、私たちは他の場所に行く」
「そう言う訳で、さらばです。お二人はお楽しみくださいねー」」
そう言って折紙たちはどこかに行った。
「質問。結局彼女たちは何を?」
「ただ遊んでいただけだろうな。とりあえず俺たちもどんどん回って行くか」
そんな感じで士道たちは遊園地エリアを回っていった。
~☆~
「御礼。今日は楽しかったです」
二人が水族館と遊園地を回り終えると、辺りは夕焼けに照らされていた。
そして、二人で入り口のゲートの方に戻っていると、夕弦がそう言った。
「そうか、俺も楽しかったよ」
士道もありのままの感想を言葉にすると、夕弦が一呼吸おいて真剣な顔で、士道に向かってそう口を開いた。
「請願。士道、あなたにお願いがあります」
「はぁ、何か嫌な予感するけど、一応聞いておくよ」
士道はそれに対して頭を掻く。
「請願。この後、どちらがいいのか選ぶとき、耶倶矢を選んでください。耶倶矢こそ、真の八舞にふさわしいと思います」
「いいのか?そんなことしたら、夕弦は消えちゃうんじゃ?」
「説明。確かにそうなりますが、耶倶矢の幸せが一番です。耶倶矢は私よりかわいいですし、面倒見もいいですし、耶倶矢なら私がいなくても何とかやっていけると思います。耶倶矢の幸せが私の願いですから」
「そっか……でも、二人の今後に関わるからちゃんと考えないとな」
「了解。そうですね。ですが、もう一度頼みます。どうか耶倶矢を選んでください。そうしないと――」
「「士道。あんた(あなた)の知り合いもろとも、辺り一帯吹っ飛ばしてやるんだから」」