デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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遂に六章だ~



六章:二亜ファイト
1話 生き倒れ少女


八月に入り、猛暑で若干の夏バテ気味になりながら、士道は精霊荘に来ていた。

エレンとの戦闘で千花との約束を破ってしまった真那は、あの翌日に千花による魔力処理を除去する手術を受け、約一か月間は安静にすることになり、療養期間の間は精霊荘の空き部屋を使っている。いろんな装置を入れるのに、空き部屋の方が楽だからという理由で五河家の真那が使っている部屋は却下、<ラタトスク>は信用していないからその手の施設も却下した結果、ここになった。

士道としても、<ラタトスク>の施設より行きやすいから問題は無い。

魔力処理除去後、真那の身体は健康体になっていた。千花に何をしたのか聞くも、秘密にされてしまい、誰も知らない感じだったが。

真那の部屋の前に着くと、ドアをノックする。もし着替えてたら困るので。

 

「真那、入るけどいいか?」

「……あ、はい、問題ねーですよ」

 

部屋の中からガタゴトと物音がして、すぐに真那が返事をする。

ドアを開けて入ると、寝間着姿の真那はベッドに座っていて、近くには暇だったのか『週刊少年ブラスト』と漫画の単行本が置いてあった。

 

「別に毎日来なくてもいいんですよ?DEMの魔力処理自体はもう完全に無くなりましたし、ただ安静にしているだけでいいんですから」

「分かってても、心配だからな。本当になんの後遺症もないんだよな?」

「えぇ、千花さんがそれを隠してなければですけど。たぶん、特には無いはずです。寝てる間に終わっていたんで何をしたのかは知らないですけど」

「そっか、それならいいんだけど。で、暇なのか?そんなに漫画引っ張り出して」

「暇なんですよー。いつもは洗濯や掃除とかしてるのに、学校が休みのせいで兄様と千花さんがやっちゃうし、外にも出れねーんですから」

 

士道は最新から十冊積まれたブラストと既刊分全部揃っている『SILVER BULLET』に目を向け、士道の問いに対いて真那は足をパタパタしてぼやく。

見た感じ、本当に暇らしく、漫画もほぼ読み終わっている感じだったが、士道は気になってしまった。

 

「シルブレ再開してたのか。てか、全部買ってたのか?」

「ブラストは耶倶矢さんが買ってたやつで、シルブレは前から買ってましたね。シルブレも一か月前に再開しましたし」

「そうなのか、でもなんでシルブレ?少女漫画とかは読まないのか?」

「……まぁ、読みはしますけど、どっちかといえばシルブレみたいなバトルものの方が好きですね。それに、顕現装置でのイメージの参考になるんですよね」

「……そんな理由なのか?」

 

真那のバトルものが好きな理由が、なんとも言えなくて士道は困ってしまう。そんな士道をよそに、真那は何か思いついたように手をポンと叩く。

 

「そうです、兄様。兄様が昔描いた設定資料集を見せてください。きっと顕現装置によって現実にできます!」

「いや、断る!って、どこでそれを知ったんだ?」

「いえ、幕間1で兄様の記憶の一部を見た時に……」

「あ、あぁ。……忘れてくれ」

「えー、何故ですか?いいと思いますよ?瞬閃轟爆破」

「うがぁー」

 

まさか、ここで士道の黒歴史が掘り返されると思っていなかったため、真那がそれを言った瞬間、士道は耳を塞ぎながらうずくまる。

 

「すいません、兄様。まさか、そこまでの黒歴史だったとは……」

「……いや、いいんだ。あれは俺が生み出してしまった負の遺産だから、それに真那はただの好奇心で言っただけだろ?」

 

士道の反応に、悪いことをしちゃったな、と思った真那は、うずくまっている士道に謝ると、士道は顔を上げてそう言った。

すると、士道は立ち上がり、

 

「じゃ、真那も元気っぽいし、俺は行くかな」

「ん?何か用事があるんですか?というより、まだ来て数分しか経ってないですよ」

「いや、俺が来た瞬間、なにかを大急ぎで隠したっぽいからな」

「あれ?ばれていましたか。でも、なにかは秘密ですよ」

「まぁ、深くは聞かないよ。じゃ、安静にしてろよ。あと、設定ノートは作り込み過ぎるなよー。後で後悔するから」

「いや、そんなもの作ってませんよ!兄様じゃないんですから!」

 

士道は真那が隠したものを設定資料集と当りを付けて言い、真那が顔を真っ赤にして否定した。士道は右手をフラフラと手を振って、そのまま部屋を出ていった。

士道が精霊荘を出て行くと、真那は額を拭って、布団に隠していたノートを取り出す。そこには、『SILVER BULLETの設定集(ネタ帳)』と書かれていた。

 

「ふぅ、危うく見つかるところでした。しかも、まさか隠したものを当てるとは……と言っても、これは兄様と違って黒歴史になるタイプじゃないですけど。ただの案出しですし。あっ、ここに瞬閃轟爆破も入れときましょうかね?」

 

 

 

~☆~

 

 

 

精霊荘を出て、とりあえず家に戻ろうと曲がり角に差し掛かると、士道は困惑の表情で立ち尽くした。

何故かそこには灰色の短髪の少女が倒れていた。しかし、あまりにも不自然過ぎて千花の時のような狙いがあるかとも思い、慎重に近寄ってみると息はあるらしく事故った訳ではなさそうだった。その脇にはおそらく一週間分の食料が買いこまれた袋が二つあった。

 

「あのー、大丈夫ですか?」

 

士道が声をかけると、少女の指がピクッと動き顔を上げた。

少女は端整な顔立ちに赤い眼鏡をかけた、士道より一、二歳年上の少女なのだが、目元には隈があり、過労で倒れていた感じだった。

 

「お……」

「お?」

「お腹、空いた……ガクッ」

「はっ!?」

 

少女は言うだけ言うと、地面に突っ伏した。

士道が驚くと、少女のお腹から、ぐー、と鳴った。

 

「あの……地面に突っ伏したら、顔とか服とか汚れますよ」

「おー、意外と冷静だね。よいしょ」

 

士道が冷静に対処すると、少女は身体を起こして立ち上がると服についた砂をはたく。少女の格好はTシャツの上にパーカー、ジーンズと割とラフな格好だった。

そんで、少女は脇に置いてあった袋を両手に持ち、持ち上げようとするが、何故か持ち上がらない。

おそらくは、お腹が空いて力が出ないのだろう。

少女は何度も繰り返しあからさまに手伝ってオーラを出す。士道は、はぁーとため息をつく。

 

「持ちましょうか?」

 

士道がそう提案すると、少女は驚きながらも、目を輝かせるが、すぐに疑いの目になる。

 

「え、いいの?でも、見ず知らずの人を助けるって……お礼に何かさせる気?あたしは騙されないよ」

「そうですか、では、俺は帰りますね。荷物大変そうですけど頑張ってください」

 

士道はそう言って、少女を置いて歩き始めてしまう。

すると、少女は慌てて士道に声をかける。

 

「ちょっと待ってー、ごめんって。手伝ってもらえると助かります」

「じゃぁ、最初から厚意に甘えてくれ。よっと」

「ありがとねー」

 

戻ってきて、少女の持っている袋の片方を持つと、少女は歩き出す。

両方持とうとしたが、それは悪いと思ったのか、片方は手を離さなかった。ちゃっかり重い方を士道に持たせているが、士道は気にしない。

 

 

 

数分経つと、割と新しめなマンションの前で止まり、女性はオートロックの扉を士道がいる目の前でパスワードを打って開け、エレベータに乗るように促し、三階で降り、とある部屋の前まで誘導される。

 

「もう、ここまででいいですよね」

「んと、出来れば中までお願いしていい?あと、敬語はいいよ、むず痒いし」

「了解、じゃぁ、鍵開けちゃってくれ。これ意外と重い」

「ホイホーイ」

 

少女は首を横に傾けてお願いし、士道は荷物が重いからと、鍵を開けるように頼む。士道は少女の首を傾けた仕草にドキッとしたが、なんとか平常を装うことが出来た。

そして、鍵を開け、ドアを開けると、

 

「お邪魔しまーす」

「お邪魔されまーす」

「……」

「ありゃ?軽くスルーされた」

 

二人は中に入り、士道は玄関に荷物を置く。

 

「さすがに中まではいけないから、ここでいいよな?」

「あたしは気にしないから、入ってきてもいいんだよ」

「さすがに――」

 

士道が、ダメだろ、と言おうとすると、部屋の奥の扉が開き、緑の長髪の少女が出てきた。まぎれもなく七罪だった。

 

「二亜、おかえりー。遅かったわね……って士道?」

「……七罪?なんでこんなところに?」

「ふむ、二人は知り合いだったんだね」

 

士道と七罪が驚いていると、七罪に二亜と呼ばれていた少女は顎に手を置き納得すると、荷物を持って奥に置きに行った。

 

「私は二亜のアシスタントしてるだけ。で、士道こそ、荷物なんて持ってどうしたの?まさか、二亜の手伝いをしてお礼に何かさせる気だった?」

「発想が同じか。そんなんじゃないよ。それでアシスタントって?」

「あぁ、それは私から説明するねー。でも、その前に……ご飯食べたい」

 

二亜が戻って来るや否や、お腹に手を置くと、グゥー、と腹の音がなる。

七罪はさもありなんという感じにため息をつくと、士道の置いた荷物を手に持って奥に行く。

 

「あ、そうだ、君も食べていっていいよ。これがお礼ってことで」

「いや、これ七罪が作る流れになってないか?まぁ、今から戻って昼作るのも面倒だし、お言葉に甘えておくよ。それに七罪との関係も聞きたいし」

「おー、そうしてーそうしてー」

 

士道が同意すると、二亜も七罪を追いかけて奥に行く。士道も靴を脱いでついて行く。

結論から言えば、すぐに昼食を食べるために、七罪と一緒に手早く炒飯を作った。

 

「んー美味しいね、この炒飯」

「そりゃどうも。で、そろそろ話してくれないか?」

「あ、うん。そうだね」

 

士道が催促すると、二亜は最後の一口を食べ、姿勢を正す。

士道と七罪も食べ終えると、二亜は話し始める。

 

「まず、あたしは本条二亜。一応、本条蒼二ってペンネームで漫画家やってるよ」

「ん?本条って、シルブレの?あ、俺は五河士道だ」

「五河君ねー。それにしても、シルブレ知ってるんだ。一時期休載してたから、最近の子は知らないと思ってたけど。そういえば、なっつんもマッチも知ってたっけか」

 

二亜は若干驚きながらも、それでも知ってることに喜んでいる感じだった。

 

「まぁね、と言ってもあの頃は偶然テレビで再放送してたのを見てただけだけど。それで、マッチって誰だ?」

「でも、その後原作も読破してきてくれたわけだしねー。まさか、少年も読破してるクチ?」

「あ、スルーか。まぁ、一応休載前までは読んでたけど、再開したのを知ったのは今日だな。妹がちょうど読んでた」

「あ、今日も真那のとこ行ってたんだ。士道ってシスコンなんじゃないの?」

「妹を心配するのは普通だろ?それとも、これってアウトなのか?」

「いや、普通だとは思うけど。ただ安静にしてだけだから、毎日行くのはそろそろやめた方がいいかも」

「そんなもんかねー?」

「ちょっと待って!少年ってマッチのお兄さん?でも名字違うし……それに、今更ながらなっつんとの接点も分からない」

 

唐突に二亜は士道と真那と七罪の関係に困惑する。

 

「待て、マッチって真那のことなのか?」

「うん、そうだよ。あっ、そういえば言ってなかった」

 

士道としても七罪と真那と二亜の関係が気になるのだが。

 

「複雑な事情があるのよ。それで、私との関係も真那発信ってとこ」

「なるほどね。あ、二人と出会ったのは一か月と半月ぐらい前だね。そう、あの日も今日のように徹夜明けで外に出た日だった」

「あ、これ回想に入る流れだ。ってことは複雑なのか?」

 

二亜の回想に入りそうな気配を感じて、士道はそう呟いた。

すると、

 

「外に出て、貧血で道端に倒れて、偶然通った二人に助けられて、ここに運ばれて、二人とも家事能力も画力もあったから、アシスタントになるように頼んだ。以上」

 

回想に入ることも無く超簡潔に説明をした。驚くほど簡潔で、なんでそんな状態で外に出たとか、どうして二人の画力が分かったとか、二人がアシスタントになった理由とか、気になることばかりだった。

 

「まず、なんでそんな状態で家を出たんだ?」

「食材の買い出しだぜ!」

「今日と同じかよ。じゃぁ、どうやって画力を知ったんだ?」

「二人が持ってたスケッチブックを見たからねー」

「そうなのか?」

 

士道が首を傾げ、七罪を見て確認を取ると、七罪はダメだったのかな?と首を傾げて説明する。

 

「まぁ、二亜に会ったのは偶然真那と動物園行った帰りだったし……それで、動物のスケッチをしてたの」

「なるほどな。じゃぁ、なんでアシスタントになったんだ?七罪人見知りじゃなかったっけ?てか、なんで俺たちにも秘密にしてたんだ?それとも、知らなかったの俺だけ?」

「まぁ、色々あるのよ。知ってるのは真那と四糸乃だけよ。それに、意外と絵の勉強になるから」

「そういうことー。それにしても秘密にしていたとは。……ふむ、マッチの兄か……」

 

すると、二亜は何か考える素振りを見せる。

この瞬間、士道は嫌な予感がした。

 

「少年って、絵描ける方?」

 

士道はこの質問の返答次第で大変なことになる気がした。話を聞く感じだと、再開した頃に二人がアシスタントになったこと、今は真那が来れない状態。そして、士道が真那の兄であること。これらから、士道は慎重に答え方を考えていた。

 

「OK、沈黙は是と取るよ。それに、見た感じ描けそうな気がするし……家事スキルも高いと見た。炒飯美味しかったし」

「待て!そんな簡単に決めちゃ――」

 

士道は慌てて止めようとするが、

 

「と言う訳で、少年。君をマッチが帰還するまでの代打アシスタント兼メシスタントに任命します!」

「断る!」

「アシスタント時間は九時五時でどう?」

「公務員か!」

「あっ、朝九時朝五時ね」

「しかも、おぞましいブラック!?」

「面倒だね……瞬閃轟爆破(ボソッ)」

「グッ!なぜそれを……だが」

「腐食した世界に捧ぐエチュード(ボソッ)」

「グハッ!」

 

士道はあまりのダメージ(精神的)で机に突っ伏す。何とか、顔を上げ二亜に何故知っているという目線を送る。

ちなみに、七罪と真那が言った可能性は全く考えなかった。二人ともそういうことはしないと信じているから。

しかし、二亜は士道の視線を変な方向に解釈していた。

 

「やだ、少年。そんなに熱い視線を向けられたら恥ずかしいよ」

「いや、完全に違うでしょ」

「うん、まぁ冗談だけど。情報のルートは言えないかな?条件に来週の夏コミコの同人誌作りを手伝ってくれたら教えてあげる。ちなみに、拒否したら少年の黒歴史を流出させるねー」

 

二亜はニコニコしながらとんでもないことを言う。完全に脅迫だった。七罪に助けを求める視線を向けるが、七罪は諦めてと言うように、首を振る。おそらく七罪も脅迫されたんだと士道は思った。

 

「あ、アシスタントの時間は少年が来れる範囲でいいし。もちろん、アシスタントになってくれたら、給料も出すよ。これで、気になるあの子にプレゼントも!それとも、あたしがデートしたげよっか?」

 

どうやら、二亜は士道をアシスタントにしたいらしく、そんなことを言う。

士道は諦め、頭を掻く。

 

「あー、もう、分かったよ。アシスタントやるよ」

「お、ありがとねー。じゃぁ、早速始めるよー」

「わかったー。にしても、なんか大変なことになったわね」

 

士道は半ば自棄になってそう言うと、二亜は嬉しそうに喜び、七罪は若干呆れ(内心士道と居られる時間が増えて喜び)ながらそう言うのだった。




二亜登場、真那戦線退場?回でした。
七罪の出番が多いのは、個人的に好きなキャラだからですね~。二亜も好きだけど。


さて、十五巻の表紙のイラスト出ましたね。反転十香がでるってことなのか?そして、あらすじが。気になって夜しか寝れなそうですね~


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