カウント0
「夏コミコ、来たー >ω</」
二亜はコミコの会場に着くなり、開口一番そう叫んだ。
「二亜、ちょっとは抑えよう。周りの人がこっち見てる……」
七罪はキョドリながら、キョロキョロしていた。二亜が叫んだことで周囲の視線が集まってしまったので、七罪としては最悪な状況と化し、居心地が悪そうな表情をする。
このままでは七罪のネガティブスイッチが入って、面倒なことになる気がした。
「二人とも、早くいかないと準備が間に合わなくなるぞ。それに、ここにずっといたら邪魔になるだろ?」
「そだね、レッツゴー」
士道の催促を受けた二亜はまた大声を出して、歩き出す。
そんな二亜に呆れながら、士道はビクビクしている七罪の手を取ると、七罪は顔を上げ、二人は二亜を追いかける。
「うわぁ、結構広いし、同人誌販売の人も多いな。それで、今日やるスペースってどこなんだ?」
会場の受付の人と話している二亜に追いつき、無事建物の中に入ると、外観から分かっていたが、やはり大きくてそう呟いた。そんで、疑問を口にする。
「うんとねー、事情があって応募がギリギリだったから奥の方だね。前来た時はもうちょい手前だったから、集客が大変になるかも」
「てか、こんなに大きいってことは、人多いのよね?で、集客も困難と。ねぇ、私みたいなブスが接客したら客寄り付かなくならない?」
あまりの広さとこれから何倍にも増えるであろう人の多さに七罪は圧倒され、ネガティブなことを言いだす。
「ハッ、そうだ。私ちょっと調子悪いから帰るわね。じゃぁ、頑張ってね」
「させるかー」
「ウヘッ」
七罪は二人に迷惑をかける前に、会場からの脱出を図る。
しかし、事前に察知していたのか、二亜は七罪の服の襟首を掴み、逃亡を未然に阻止する。
「なっつん、逃がさないよー。ただでさえ三人で接客という無茶な状況なんだから。それに、なっつんブスじゃないし。可愛いんだから、そんなこと言っちゃだめだよ。ね、少年?」
「ん……あぁ、そうだよ。七罪は可愛いんだから、問題ないよ。それでも、接客が嫌なら、帰ってもいいよ。さすがに無理はさせられないし」
突然士道に話を振ったことで、士道は困惑するがなんとか七罪にそう言う。
すると、七罪は諦めたように、ふぅー、と息を吐くと、
「分かったわよ。二人だけにするのも悪いし、ここまで来たら最後までちゃんとやるわよ。」
帰るのを止めてくれた。
三人はまず、自分たちのスペースに行くと、配置されていたスペースの机にクロスを掛け、昨日作ったポップとポスターを配置する。
「で、同人誌は何処にあるんだ?そろそろ手元にないとまずいだろ?」
「うん、そうなんだよねー。一応、遅くても、一般開場の十五分前には着くはずだけど。そんで、ここに運んでくれるはず」
二亜は言いつつ、腕時計を確認する。今の時刻は九時四十分で、一般開場が十時なので、時間的にはギリギリな感じだった。
士道と七罪は、同人誌が来ないというBAD ENDを想像し、入り口の方に目を向けていた。
「へー、ここがあの本条蒼二のブースなんだねぇ」
「はい、ここが販売ブースでいやがりますよ」
「それにしても入り口から結構遠かったですね」
『わー、人多いねー』
すると、知っている声が見ていた方とは別のもう一方から聞こえてきた。
三人がその方向に顔を向けると、そこには千花と真那と四糸乃が立っており、段ボールを積んだ二台の台車があった。で、段ボールの上によしのんが乗っていた。
「やっほー、同人誌持って来たよぉ。あ、初めましてだね、木野千花ですぅ」
「あ、これはどうも、本条二亜です。それで、なんで千花さんたちが?」
軽いノリで千花は初対面の二亜に挨拶すると、二亜も挨拶を返し、どうして業者でなく三人が持って来たのか問う。真那、四糸乃と一緒に来たので千花は二人の知り合いと判断したようだった。
「それは、こっちに持って来たのはいいんですが、業者さんが迷っていたんで私がその場で受け取ったって訳です」
「それで、私たちで運んできました。ちょうど、販売のお手伝いに来たところだったので」
二亜の疑問には、真那と四糸乃が答え、納得する。ついでに、三人が来た目的も分かった。
「なるほどねー。たしかにありがたいけど、いいの?」
「うん、面白そうだし、コミコにも興味はあったからぁ」
「じゃ、その御厚意に甘えとこうかな?」
こうして、店員数が六人になり、だいぶ捌けることになった。
しかし、士道は聞かないといけないことがあった。
「真那は外出ていいのか?真那って絶対安静じゃ?」
「うん、それは昨日までの話だよぉ。今日で無事一か月経過したし、普段の生活に戻っても十分大丈夫そうだったしねぇ」
「そういうことです。やっと外に出られましたよ。……それよりも、そろそろ開場しますよ?」
真那に言われて気付くと、今はもう五十分になっていた。
とりあえず、ブースの後ろに段ボールを置き、段ボールを開封すると、机の上に何冊か置き、準備万端となる。
残り一分を切ると、二亜は唐突に口を開いた。
「ついにこの時が来たー。じゃぁ、今日一日頑張っていこー!」
「「「「「『おー』」」」」」
二亜は腕を高らかに上げ号令すると、五人(+1匹)も腕を上げる。
こうして、夏コミコは開幕した。
~☆~
『夏コミコの販売終了時間です。開場にお残りのお客様はご退場ください。ブース販売の方々はゴミを所定の場所に捨て、綺麗な状態にして撤収してください』
こうしてコミコは閉幕した。
「いやぁ、本当に助かっちゃったよ。まさか、完売するとは。久々だったから、売れ残ると思ってたんだけどねー」
「そうなの?じゃぁ、完売できてよかったわね」
無事、二亜の描いた二冊(3000×2)は両方とも完売し、二亜は喜んでいるようで、士道たちも安堵する。
本条蒼二の名はこの業界に知れ渡っていたこと。
可愛い少女たちが店員をしていたことが口コミで広まったこと。
この二つが大きかったと士道は思っている。
現に、何割かは口コミで聞いたようだったし、皆の姿を見て多少なりとも興味を持ったようだったと士道は記憶していた。
で、コミコに耶倶矢、夕弦は普通に客として来ていて、琴里と折紙は士道たちのことを冷やかしに来ていた。結果、今現在封印した精霊は全員そろっていた。
「じゃ、そろそろ出ようよ。正直、私あんま寝てないから、帰ってちゃんと寝たい。二亜と士道もでしょ?」
「そうだな、休養は大事だよな。俺も寝れるなら寝たい」
「そうであるぞ、休息はちゃんと取らんといけないぞ。あと戦利品多いからすぐにでも持って帰りたい」
「嘆息。耶倶矢は何も考えずに買い過ぎなんですよ。自業自得です」
「うん、そうだねー。ま、あたしは皆と同じ精霊だから、そんなに寝なくてもいいんだけどねー。あ、少年……はうん、精霊じゃないか」
「は?」
唐突に二亜は、自身が精霊だと告白した。そんで、どうやら千花たちが精霊ということも知っているようだった。
士道は突然すぎて困惑していると、どんどん二亜は話していく。
「一応約束だったからね。コミコが終わったら、少年の情報を得た秘密を言うことになってたし。あたしの天使は知りたいことを知るって能力だから。ついでに言えば、少年が霊力を封印する力を持ってるって知ってるからねー」
「待ってくれ。二亜は精霊だったのか?じゃぁ、なんだ。俺のことを知ってて接触したのか?あんな不自然な形で」
「ううん、あれは偶然。まぁ、あの時よりも前から知ってはいたけど」
二亜はあっけらかんとしており、士道は士道で疑問が生まれていく。
「……それで、あなたはどこまで知っているのかしら?」
そんな中、二亜の話を聞いていた琴里がそう問うと、二亜は本題に入るようで真面目な顔をする。
「どこまでねー。精霊を保護することを目的としている<ラタトスク>機関、キスで霊力を封印できる少年、あとはー、魔王で何か企んでるDEMってとこかな」
「OK、大体把握はしているようね。それで、あなたは霊力の封印に関しては承諾してるってことでいいのかしら?」
「まぁね、少年とキスすれば霊力が無くなって、普通に生活が送れるんでしょ?」
「そう、それでなんだけど、一つ問題があるのよね。あなたの士道に対する好感度が足りていないのよね……」
二亜の返事を聞き、琴里はタブレットをいじり、暗い顔をしながらそう言った。二亜としては一瞬意味が分からなかったが、すぐにその意味を理解した。
「え?マジで。あー、じゃぁ封印無理だわ。あたしに問題があるから」
二亜は額に手を当てて、そんなことを言った。皆頭に“?”を浮かべるが、七罪と真那はすぐに、なんで二亜がそう言ったのか分かったような顔をする。次いで、士道も二亜の部屋の状況を思い出した。
「もしかして、二亜。……二次元しか愛せないってタイプの人なのか?」
二亜の部屋には大量の二次元のキャラグッズがあったこと。士道を部屋に止めることを全く問題なく敢行させたことからそんなことを思い、そう問うた。
すると、どうやら当たっていたようで、二亜は首を縦に動かす。
「ついでに言えばあたしは、現実の人に恋愛感情持てないんだー」
「え?なんでなんだ?まさか、過去に何か……」
二亜の言葉に、士道は何かあったのかと、心配をする。
「そう、あれは数年前だった……」
「あ、やばいよぉ。回想シーンに入る展開だぁ」
「でも、二亜は前にそう見せかけて簡潔に話したし……」
皆、このまま回想に入りそうな雰囲気を感じていた。
「『
「あれ?普通に進んでる」
「それからもいろんな作品のゲームをして、気づいたら現実の男を見ても一切ときめかなくなったとさ」
「あ、やっぱり簡潔に終わった。……で、本当にそれだけが理由なのか?」
二亜は時々茶化すことがあったので確認する。嘘っぽくは無かったが、何か他の理由がある気がして、士道はそう無意識に聞いていた。
ハッとして、訂正しようとすると、二亜も若干驚いた表情から戻って、先に口を開く。
「少年は勘がいいね。さっきのも本当のことではあるけど、半分ってとこ。あたし、人間を信用できないんだ。こんな力があるから、その人のことも知れちゃうしね。そんで失望しちゃうって訳。どんな人間にも、一つや二つ秘密があるもんでしょ?」
「まぁ、そんなもんだろうな。でも、それでも友達になれたりしないもんかね?」
士道は何気なくそう呟くと、二亜はムッとする。
「それは無理でしょ。あたしの能力は考え方によっては、超高性能監視カメラでその人を覗くようなものなんだよ。そして、過去のこととかまで知れちゃうんだよ。わざわざそんなあたしと友達になりたい人なんていないでしょ?」
「うーん、まぁ、そうだよな?」
「歯切れの悪い返答だね。じゃぁ、君は四六時中、トイレやお風呂まで好き勝手に覗けて、過去のことまで知れる奴と、友達になれるっていうの?」
「たしかに、それは大変だよなぁ」
士道は歯切れの悪い反応を続けて、
(うーん、ちょくちょく<ラタトスク>製の小型カメラは飛んでるし、前の世界では折紙にストーキングされててやたらと情報を知ってたけど友達になってる。で、過去のことは琴里に握られてるし、千花に関しても【記憶樹】で俺の記憶を知ろうと思えば知れるよな。つまり、二亜の友達になれない条件って両方俺には関係ないよな)
なんてことを考えていたために、曖昧な返答をしていた。
「でも、俺その条件で言ったら、この中のメンバーで仲良くしていけない人出てきそうだ。だから、俺的には二亜の心配事一切関係ないな。てか、逆に俺のことを心配してくれてる点でうれしいかな?」
折紙や琴里の方をちらっと見てそう言うと、二人は一切心当たりがないかのように平然としていた。少しは表情に出してほしかったりした。
「んー。とゆうか、二亜ちゃんは友達欲しいのぉ?聞く限りだとそんな感じがしたけどぉ。それと、私も二亜ちゃんの友達になれるよぉ」
「確かにそうであるな。大体、相手が考えていることが分からないから知りたいと思うのは普通だし、私的にはその力があれば、夕弦と百戦もすることも無かっただろうし、それに相手のことを知る力とかなんかかっこいい!」
「同意。耶倶矢の言う通りです。私たち的にはそんな力がうらやましいですよ。それに結局は、どう自身の力と折り合いをつけるかということだと思いますよ」
千花も二亜と友達になれると言い、耶倶矢と夕弦は二亜の力をうらやましがる。(耶倶矢は中二的な意味で)
すると、二亜の言葉を聞いてから表情が暗かった、前から面識があった七罪と真那と四糸乃が口を開く。
「てか、人のことを勝手に愛称で呼んどいて、実は友達じゃなかったって点が不満なんだけど。それともあれ?私は友達にする価値もないって意味?」
「ですよね。散々、アシスタントとしてこき使っておいて結局赤の他人と思っていたとは。てっきり、漫画を描く仲間と思っていましたのに、そんなことを思っていたなんて」
「二亜さんは私たちのことが嫌いだったんですか?なのに、無理して私たちに付き合ってくれていたなんて……なんか悪いことをしていたみたいですね。ごめんなさいです」
ついで、二人はそう文句を言い、四糸乃は二亜に負担をかけていたことを謝る。
「というか、その力を使って士道のことを全て知ることが可能になる……二亜、協定を今すぐ結んで!士道の観察を」
「あなたの能力があれば、士道の弱みがさらに握れてこき使える……どうかしら、情報量は払うわ」
「おい!二人とも、自分の私利私欲のために二亜を利用しようとすんな。しかも、被害受けるの俺じゃねーか!」
さらに、折紙と琴里は不穏なことを言い、士道が突っ込む。
二亜は全員なんだかんだで、二亜といることを全く問題視しないこと、なんで平気そうにしていられるのか分からず、ポカーンとしていた。
しかし、すぐに表情を戻すと、
「そんなこと言って、本当のところは無理して言ってるんでしょ!」
「ん?なんでなんだ?皆本心だと思うけどな」
「そんなの嘘だよ。結局、人間なんて皆、表面上でしか付き合っていけない生き物なんだよ」
「そうか?俺はそう思わないけど」
「先生、しつもーん。精霊って人間と判別していいんですかぁ」
二亜の言葉を士道が否定すると、二亜はもう限界なのかキレる。千花がボケを挟んだが、空気的に流された。
すると、二亜の周囲が光り、シスターのような霊装を纏い、その手に一冊の本が握られる。
「そんなこというのなら、証明してみてよ、少年!<
そして、二亜がその言葉を言うと、手にしていた本型の天使<