デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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4話 心性世界

「……んん」

 

目を覚ますとそこは士道の部屋だった。

昨日は夏コミコで二亜の同人誌を無事完売させて、コミコが終わり解散し、いつも通りの日常に戻った、というのが士道の記憶だった。何か重大なことを忘れている気がしたが、思い出せなかった。

昨日はコミコ会場も想像以上に暑く、士道自身相当疲労していたようで、朝の八時を回っていた。寝坊したかな?と思うが夏休みだし、琴里が朝食をたかりに起こしに来なかったから、たぶん平気なのだろうと判断すると、寝間着から適当な服に着替える。

部屋を出て一階に降りると、琴里はソファーに座って二人組の魔法少女が戦うアニメを見ていた。

 

「おはよう琴里。今からでも朝飯作るか?」

「ん、おはよー、おにーちゃん。今日は起きるの遅かったねー。朝ご飯を勝手に作って食べちゃったのだー」

「りょうかーい。じゃ、俺も適当に食べるかな」

 

琴里に挨拶すると、士道はキッチンに行き食パンをトースターで焼く。

焼き終えると、バターを塗って食べ始めた。

 

その後、特にすることも無かったので、夏休みの宿題に取り掛かっていた。やれる時にやっておかないと、夏休みの最後に慌てることになるのと、いつ精霊が現れるかもわからないからだった。

そんな感じでやっていたら、唐突に携帯が鳴った。

画面には“本条二亜”と映っていた。

 

『もしもし、しょうねーん。今暇?』

「ん、今は宿題やってるな。何かあったのか?」

『うん、重大なことを思い出してねー。少年、あたしのマンションに一人で来てくれない?無理ならいいけど……』

「まぁ、宿題なら夜とかでもできるからいいよ」

「ありがとねー。あ、動きやすい服装で来てね。じゃ、また後で」

 

結局要件はわからなかったが、とりあえず支度を整えてリビングに行くと、黒いリボンを付けた琴里が戸締りをしていた。

 

「ん、琴里も出かけるのか?」

「えぇ、ちょっと<フラクシナス>にね。も、てことは士道も出かけるの?」

「あぁ、二亜に呼び出されてな」

 

そう言うと琴里は納得していた。

そして、少し考えると、口角を上げて茶化す。

 

「そう、たぶん片づけの手伝ってとかでしょうね。まぁ、せいぜい頑張りなさい」

「まぁ、そうするよ。あと、いつ終わるか分かんないからお昼は各自ってことでいいか?」

「問題ないわ。どうせ私も<フラクシナス>に籠ってるでしょうし、夕飯までには戻るわ。じゃ、行くわね」

「おう、行ってらっしゃい」

 

玄関を出ると、<フラクシナス>に行くために人目のない所に行く琴里と別れ、士道も鍵をかけて二亜のもとに行く。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「やっほー。待ってたぜ、少年!じゃぁ、行こうか」

 

二亜のマンションに着くと到着早々二亜がそう言って出てくる。

二亜の格好はどこかに出かける気なのか、黒色のワンピースだった。

てっきり、片づけか何かだと思っていたので士道はキョトンとする。

が、すぐに気を取り直して聞き返す。

 

「ん?どこに行くんだ?てっきり、二亜の部屋で何かあるのかと思ってた」

「お、少年はそういうことをしたかったの?お姉さんびっくりだよ」

 

すると、二亜は士道の言葉の意味を履き違えていた。

まぁ、二亜の発言がどういう方向のものなのか分かってしまう士道も士道だが。

 

「まぁ、冗談はこれくらいにして、少年との約束があったからね」

「なんかあったっけか?」

「あー、忘れてるんだ。アシスタントになった日に言ったじゃん。デートしたげるって」

 

二亜に言われて、士道は記憶の海からその時のことを思い出そうとすると、意外とあっさりと思い出した。

てっきり、なんとなくノリで言っただけだと思い、忘れていた。

 

「あ、そういえばそんなことも言ってたな。この一週間ずっと描いてたせいで忘れてた」

「その節は助かりました。ってことで、無事完売した記念も兼ねて行こうぜ、少年」

「んで、どこに?」

 

思い出したことを口にすると、二亜は再びそう言って、結果最初の質問に戻ってしまった。

 

「そうだねー、まぁ、アキバにでも」

「え?」

 

そして告げられた行先は、何故か秋葉原だった。

 

「で、なんで秋葉原に?」

「一つはあたしが行きたいから。あとは……うん、あたしが行きたいから」

「二亜が行きたいだけだったー」

 

二亜は少し考える素振りをしたが、結局二亜が行きたいだけのようで、他に理由は無いのだろうか?と思うが、まぁいいかと思い承諾するのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「来たぜ!アキバー!」

「テンション高いな。それにしても、今日はなんか厄介事が多いよな」

 

秋葉原駅の電気街口を出ると、士道の数歩前に行き二亜は大きく伸びをしながらそう言った。

士道もそう言いながらついて行き、小さく呟いた。

二亜のアパートから秋葉原に来るまでに、財布が落ちていたり(交番に届けた)、坂の上からいくつものリンゴが転がってきたり(一緒に拾った)、迷子の子を見かけた(一緒に探したらすぐに母親を見つけた)のでだいぶ時間がかかってしまった。士道の性分としては無視することはできなかった。その際に二亜も一緒に探したりしたが、その度に士道に対して疑問を持ったような顔を向けていたが、士道は全く気づかなかった。

 

「で、何を買うんだ?」

「んと、小説とか漫画とかかなー。あと、グッズも」

 

そんな感じで時間はかかったが、二人がまず入ったのは、アニ○イトだった。

店内を物色している二亜に問うと、書籍やグッズを見ながらそう返される。

士道的には構わないが、あまりこういった物を買わないので、珍しい物もあるなー、程度に見ていた。

 

「てか、俺来る必要あるのか?」

「少し付き合ってよー。この後は少年が行きたいところ行くからさ。あ、いつの間にか新刊出てる」

 

士道が疑問を口にすると、二亜はそう言って一冊の本を手に取る。表紙には水晶のようなきれいな瞳の闇色の髪の少女のイラストが描かれていて、『帝都・ア・ライフ』というタイトルだった。

一体どういう物語なのだろうか?という疑問を持ち、裏表紙のあらすじを見ると、“帝都と呼ばれる国に住み始めた少年はある日、一人の少女と出会い、少年は少女と共に帝都で暮らしていく”というモノだった。

 

「なんだ?知ってる作者なのか?」

「うん、まぁね。この人は昔に『蒼宮の業』を出してたし、今は他に『いつか世界を救うために』とかも出してるね」

「そうなのか。俺はあんま買わないからわからん。あ、でも耶倶矢が買ってくるのを何冊か読ましてもらいはするか」

「なるほどねー。じゃ、ちょいと会計を済ませてくるね」

 

二亜は数冊の本を手に持って、レジに行く。士道は二亜が戻って来るのを待ちながら、グッズを見ていると、一枚のポスターが目に入った。

 

“宵待月乃 ニューシングル予約受付中!”

 

それは美九が芸能活動で使っていた名前で、新曲が出ることを今知った。士道自身、記憶が戻った後は美九(月乃)のCDを買って聴いていたし、皆もそんな感じだった。ここ一週間はあまりテレビも見ていなかったのでこの情報は知らなかったが。

 

「しょうねーん、買ってきたよ。お、宵待月乃のニューシングルね。やっぱり、少年は巨乳好きなの?」

「なぜ、そういうことになった?歌手で歌より容姿から先に来るってなんだよ」

 

確かに美九は胸が大きいが、士道としては別に胸の大きさで判断したりしない。というか、おそらくここで肯定したりしたら、面倒なことになりそうだと思った。まぁ、否定もしないのだが。

 

「ふむ、否定はしないっと。まぁ、彼女の歌は私も好きだけどね。よく聴いているしね」

 

二亜も月乃のことは知っているようで結構聴いているようだった。んで、二亜は何処からか出したメモ帳に何か書き込んでいた。おそらくは漫画のネタ帳だろうけど、何故このタイミング?と思う。

 

「何してるんだ?急にメモ帳なんか出して。漫画のネタでも思いついたのか?」

「ん?あぁ、ちょっとねー。少年の情報をまとめてるだけ。少年は巨乳好きだけど、貧乳もいけるってわかったしね」

「おい、誰もそんなこと言ってないだろ」

 

二亜の漫画のネタ探しも兼ねているのだと思ったが、二亜による士道の観察のようだった。しかし、書いている内容が内容だった。何故俺の性癖を記しているのだろうか?と士道は思う。

言っても二亜は聞く耳を持たないだろうし、茶化されるだろうと思い言わずに二人は店を出て、次の店に向かうのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「いやー、話には聞いていたけど面白かったね」

「あぁ、原作は読んだことあったけど、まさか多少の改変を入れるとは思わなかった」

「あたしとしては敵対店との言い争いの辺りはすごかったね。不毛な争いではあったけど」

「争いなんて、そんなとこからも始まるだろ。でも、その争いを経て二人は和解したんだから、よかったんじゃないか?まぁ、あのウサギは謎だけど」

 

その後、何件かアニメショップを回り、喫茶店で昼食を取り、士道はある映画の原作を読んで、その映画を見たいと思っていたため、二人でその映画を見た。

二亜もこの映画のことは知っていたらしく、興味深々で即了承してくれたのでそのまま入館。

で、映画も見終わり二人は映画館を出て、だいぶ日も傾いてきたので、そろそろ帰ろうということで二人は駅に向かいながら映画の話で盛り上がっていた。

 

「あぁ、あのウサギは謎だよね。なんでみんなウサギが喋っているのに気付かないのか分からないよね。腹話術は無理かと思う」

「そうだよな。普通は気づきそうだけど……。それとも、何かあるのかねー?」

「だねー。……?」

 

電車に乗っている問いもそんな感じで話していると、時間が時間のせいで混み始める。そして、二亜は何か違和感を持ったような顔をした。

混んでるから、足でも踏まれたのかと思ったが、痛みという感じでは無かった。そして、士道の精霊の霊力で多少強化された耳はある音を捉えた。それはとても小さな音。普通なら聞こえない音。

 

「おい、あんた。何してんですか?」

 

士道は混雑している微妙な空間から一人の人間の腕を掴んだ。二亜の真後ろにずっといた男の腕を。

 

「ん?何かね?私は何もしていないが」

「そうですか。じゃぁ、気のせいですか」

「うッ!」

 

周りの客たちも士道たちの会話から何かを察したようで、男に侮蔑の目を向け、女性たちは距離を取る。

士道は白を切る男の腕を強く握ると、男は苦悶の表情を浮かべ、腕の中から何かが落ちる。それは小型カメラだった。

その瞬間、男はもう諦めたように抵抗をやめた。

 

「二亜、嫌かもだけど、それを拾ってくれ。証拠になる」

「ん、りょうかーい。あ、すいませんねー」

 

士道が二亜にカメラ回収を頼むと、あまり気にしていなかったかのように、軽い感じで返事をして、近くの人に退いてもらってカメラを拾う。

 

「んと、電源はどこかなー。……お、あった」

 

尚且つカメラの電源を探し、何のためらいもなく電源を付けて中身を確認する。

いじっている時間が長いことから、常習犯のようだった。

 

「ふーん、結構やってるんだね。あ、ちょうど次の駅か。少年、降りたら引き渡しちゃおうね」

「あぁ、そうする」

 

そう言って、電車が次の駅に着くと電車を降り、駅員は連絡を受けていたようで、扉のそばに待機して待っていたのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「ありがとね、少年。盗撮犯捕まえてくれて」

「んと、どういたしまして。できれば、二亜が被害を受ける前になんとかできればよかったけど……」

 

二人は盗撮犯を駅員に引き渡すと、その時の状況等を聞かれ受け答えを終え、駅を出た。

その後、二亜が最後に行きたいところがあると言い、高台公園に来ていた。時間的にちょうどよく、夕日によって空は真っ赤に染まっていた。

 

「いや、さすがにそれは無理だと思うよ。その為には少年が人の心を読むぐらいできないと」

「だよなー。で、なんで二亜は盗撮されたのに平然としてたんだ?普通は落ち込んだりするだろ?」

「えー、少年その話ぶり返すのー。ひどい、心の傷を広げようだなんて。うぇぇーん」

 

士道の質問に二亜はそう言い返し、顔に手を当てて泣き真似をする。

泣き方が完全に演技感があったので、半眼を向けていると、二亜はウソ泣きを止めて話し始める。

 

「ただ単に、ワンピースの下に半ズボン履いてたからってだけ。あ、半ズボン履いたのは電車乗る前にお手洗いに行った時ね。何か嫌な予感があったから」

「……なるほど。にわかには信じがたいけど、本当っぽいな」

 

それはもう予知能力ではと思うが、なんか二亜ならできそうな気もした。まぁ、二亜は謎が多いので。

 

「それで、少年こそなんで盗撮されたって気付けたの?ほとんどシャッター音はしてなかったけど」

「それは……二亜の表情が変わったのと偶然シャッター音が聞こえたからな」

「ふーん、少年って耳いいんだね。普通そんなの聞こえないよ。まぁいいけどさ――」

 

二亜は柵に背を預けて、士道に訝しい目を向ける。まるで、何か重大なことをこの後に言うかのような。

 

「――それで、少年はなんで困った人を見ると絶対に助ける訳?家族とかなら普通だと思うよ。でも、今日助けた人は今日初めて会った他人。なのに、助けた。なに、いい人アピール?それともいいことをしたっていう自分に浸ってるの?そんなのただの偽善だよ」

 

二亜は士道にそう問い、偽善だと切り捨てる。その時の二亜の目には侮蔑のような怒りのようなものがあり、士道は困惑の表情を浮かべた。なぜ、二亜がそこまで言うのか分からず。

 

「……二亜は困っている人を見ても助けないのか?」

「まぁ、状況とかにもよるけど、片っ端からはしないと思うよ。それにあたしとのデート中だったのにー」

「結局そこかよ!二亜だって、一緒に探してくれてたろ?それに、これは俺の性分なんだよ」

「それはそれ、これはこれだよー。まさか、あんなに厄介事があるとは思わないでしょ。なに、その性分?イミワカンナイ」

「元から俺はそんな感じなんだし、これは変える気は一切無いからな――」

 

二人は数分間、言葉の応酬を繰り広げた。

なんで二亜はそんなに士道を否定したいのかわからなかったが、士道としても引く気は無かった。

二亜はもうこれ以上の会話は必要だと思い、これを最後の問いにしようと口を開く。

 

「じゃぁ、なに?少年……士道はもしあたしが困ってたら、迷わず助けてくれるっていうの?」

「当たり前だろ!」

 

そして、二亜の問いに士道は一切の迷いもなく即答した。

 

「え?……あぁ、そっか。じゃぁ、少年ならもしかしたら――」

 

二亜はまさか即答されるとは思わず驚いて、数瞬すると何か納得したような表情をした。その顔にはもう怒りとか侮蔑のようなものは無かった。

そして、二亜が何か言おうとした瞬間、

 

 

 

世界は唐突に砕け散った。

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