デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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6話 転曲

「やっほぉ、みーちゃん、会いに来たよぉ。……あれぇ?誰もいないねぇ」

「千花、いちいちドア開けるたびに声出さなくていいだろ」

 

ドアを開けるたびに千花はそう言うので、士道はツッコミを入れていた。この部屋で四部屋目。しかし、誰もおらず、机やら棚しかなかった。

そんなこんなで<囁告篇帙>の情報を解読した士道と千花は地下に来ていた。

 

「士道君がすぐに調べてくれてれば、遠回りにならなかったのにぃ」

「あれって結構霊力使うから仕方ないだろ。てか、あってるのか心配になってきた」

「“誘宵美九の居場所はDEMインダストリー日本支社本館研究棟地下一階ほにゃらら号室”のことぉ?」

 

地下室を歩きながら二人は最後の部屋の前に着く。

部屋番号以外はなんとなくわかったので、二人は今に至っている。

精霊荘の千花の工作部屋も地下にあるため、その手の研究室とかも地下かと思った。そもそも、精霊の研究とかするなら秘密裏に行うはずなので。

 

「と言う訳でレッツゴォ」

「何が、と言う訳なのか分かんねー」

「やっほぉ、みーちゃん、会いに来たよぉ」

「だから、声出さずに入らないか?」

 

千花は最後の部屋のドアを開けながら、またしても声を出す。そもそもいちいち声を出す必要性が無いのでは?と思う。

そんな感じで部屋に入ると、その部屋は他の部屋より大きく、中心には大きな機械というかよくわからない物体があった。

そして、その近くに人間がいた。

 

「おや?こんな場所に他所者が来るとは意外だね。それにしても防犯について考え直すべきかな?」

「……」

「はぁ、相変わらず君は無反応だね。それで君はどう思うかな?タカミヤ……いやイツカシドウだったかな?」

「……アイザック・ウェストコット」

 

ウエストコットは機械?の中にいる美九に声を掛けるが反応が無く、肩をすくめると士道に話しかけた。

美九は眠っているようで、これといった外傷は無かった。

 

「おや、私のことを知っているのだね。まぁ、私も君のことは知っているけどね。それで、そちらのお嬢さんは?」

「ありゃ?勝手に<ガーデン>とかいう的外れな識別名付けてるのにそんなこと言うんだぁ。それで、みーちゃんに何したのぉ?」

「あぁ、君がエレンに勝ったとかいう精霊だったのか。これは失礼。エレンは必死に否定するから詳細は聞いていないんだ。<ディーヴァ>に関してはただ寝ているだけだよ。さすがに街中の人間の洗脳となると、消耗するようだからね」

 

ウエストコットは額に手を当ててそう言うと、千花は<死之果樹園>を向ける。千花はいつでも動けるようで、なにか動きがあれば地を蹴りそうな勢いだった。

すると、千花は何かを感じたのか、振り返り様に<死之果樹園>を振るった。

そして、武器同士がぶつかる音が響く。

そこには空色の碧眼にハーフアップの金髪の少女が立っていて、その手には片刃のレーザーブレイドを握られていた。

 

「アイクさん、こんな時ぐらい一人でいないでください。何かあったら私がエレンに怒られちゃうんですから」

「あぁ、悪いね、アルテミシア。でも厳重な警備だと相手も警戒してしまうだろうからね」

「それでもです!」

 

アルテミシアと呼ばれた少女は、千花と距離を取ると、ウエストコットの隣に行き、文句を言う。

ウエストコットの部下のはずなのに、何故かエレンと違い柔らかい物腰だった。

 

「ほら、アルテミシア。彼らが困っているよ」

「あ、しまった!ん、んん。……私はアルテミシア・ベル・アシュクロフト。あなたたち侵入者を倒しに来ました」

 

アルテミシアはハッとすると、咳払いをして気を取り直すと、さっきのことなど無かったかのような振る舞いをした。

 

「あ、これはどうもぉ。私は木野千花ですぅ」

「あ、精霊を護ってる精霊の。じゃぁ、隣の彼が天使を扱えるっていう五河君、か」

 

千花の自己紹介に、アルテミシアは納得したような返答を返す。士道のことも知っているようで、そんな反応だった。

 

「さて、そろそろ始めるとしようか。彼女は君に任せるけどいいかな?」

「まぁ、いいですよ。精霊との戦闘なんて久しぶりですけどね。アイクさんはどうするおつもりで?」

「そうだね、私は戦闘なんてこれっぽっちもできないからね。彼と対話でもしているさ」

「はぁ、危なくなったら言ってくださいねッ!」

「結局戦うのかぁ。じゃ、士道君はみーちゃんの方をよろしくねぇ、とッ」

 

千花は地を蹴ると、一気にアルテミシアに迫り<死之果樹園>を振るう。対してアルテミシアもブレイドで攻撃をいなす。

そのまま両者は戦闘をしていく。

ウエストコットはそんな二人を眺めていた。

 

「さてと、イツカシドウ。君はなんの為に精霊を救っているのかな?それもあんな組織で」

「知った風な口なんだな。俺はただ精霊達が傷つくのを許容できない。だから、霊力を封印して普通に生活してほしいだけだ」

 

士道は目を見てそう言い放つ。すると、予想していた反応だったのか肩をすくめる。その間にも二人の戦いは続いており、武器同士がぶつかる音が響いていた。

 

「なるほど、君の想いは分かったよ。では、なぜ<ラタトスク>側に付いているのかな?」

「それは、精霊を保護するのが<ラタトスク>の目的で、俺たちと目的が一致しているからだ」

「ふむ、ちなみにDEMの目的が精霊の保護だと言ったら、君はどうするかな?」

「え?」

 

ウエストコットの言った言葉に、士道は疑問を覚えた。

(DEMの目的が精霊の保護?そんなはずはない、二亜は現に捕まってなんらかの研究をされていたと言ってたし。それに、目の前でも美九は捕まっている。保護が目的ならあんな機械の中のわけがない)

 

「そんな嘘は止めろ!」

「あぁ、なるほど。君は人の言葉をなんでもかんでも鵜呑みにするわけではないようだね。では、こちらも訂正をしよう。私の目的は精霊の霊力を転用させて、より効率のいいものを生み出すことだ」

「つまり、精霊達を利用する、のか」

「ああ、ありていに言えばそういうことになるね。だが、<ラタトスク>だって保護だけが目的のボランティア団体ではない。過半数はおそらく利用するのを目的にしているはずだ。創設者も最初は精霊を利用するのが目的だったからね」

「え?創設者っていうと、ウッドマンとか言う人がか?でも琴里はそんなこと一言も……」

 

士道は今までの記憶を引き出すが、そんな話は一度も聞いたことは無かった。その為に混乱すると、ウエストコットは士道の混乱の原因が分かっているようで、口を開く。

 

「なるほど、なるほど。彼からは何も聞いていないのか。では一つ昔話をしようか。これは私と<ラタトスク>創始者――エリオットとの関係を。そして、精霊が初めてこの世界に出現した時のことを」

「……精霊が初めて出現した時?それって、三十年前の……」

 

ウエストコットの言葉を反復させ、士道はそう呟いた。

 

「ああ、ユーラシア大空災のことだよ。その数年前にDEMインダストリーを私、エレン、ウッドマンで立ち上げたからね。精霊という存在の力を利用することにして、様々な準備を整えていった。そして、無事出現させること成功した」

「そんな、なんで……」

「仕方のないことだ、あの頃は日々戦争だのテロだのと世界は荒れていた。だから、そんな世界を壊そうかと思ってね。あの頃は楽しかった。目的を持って生きていたからね」

 

昔を思い出しながら話すウエストコットは、懐かしむような目をしていた。士道は今の話を信じられず、ウエストコットが士道の気持ちを揺らがそうとしていると考えた。

 

「どうやら信じられないみたいだね。だが、真実だよ。まぁ、ユーラシア大空災の後はウッドマンがDEMを出奔して<ラタトスク>機関を作ったのを機に会っていないが」

「それが本当だという証拠もないだろ。だから俺はそんな話信じることはできない」

「だろうね。たしかに証拠を提示できないが、一つ言っておこう。やましいことが無かったらウッドマン本人から説明されているはずだよ。だが、この話は初めて聞いたのだろう?はたして、今まで一切接触してこない人間と危険を承知で君に話した私。どちらの方が、説得力があるかな?」

 

ウエストコットの発言に士道は思考した。

(<ラタトスク>の創始者が精霊を利用しようとしていた?琴里はそんなこと言ってなかったし、琴里が隠してるとも思えないんだよな。だから、多分知らないよな?でも、ここで嘘を言うとも思えないから真実なんだろうか?)

 

「それは――」

 

ドーンッ

 

士道が言葉を紡ごうとすると、いきなり士道のそばに天井を突き破って何かが落ちてきた。

すると、砂煙が吹き飛び、開いた穴から降り注いだ月明かりの下には、

 

「痛いなぁ。もーう」

 

体を起こしてぼやく千花がいた。途中から会話以外音がしないと思ったら、どうやら部屋の外にまで戦闘範囲が広がっていたようだった。仕舞いには今いる部屋の真上の建物の外の広場で戦っていたようだった。

 

「一体何があったんだ?てか、大丈夫か?」

「うん、一応はねぇ。でも、正直色々厄介だよぉ。屋内でもCRユニットを十全に使えるなんてぇ」

「そうなのか?でもCRユニットって本来は狭い場所に向かないんじゃ?てか、この上外だよな?」

「アイクさん、すいません。彼と話している最中に」

「いや、いいよ。ちょうど一区切りついたところだったからね。それで、どうだい?久しぶりの精霊は」

 

士道が千花を起こすと、ウエストコットのそばにアルテミシアも戻ってきた。

 

「そうですね……まだ、一、二割といったところなのでなんとも言えませんね。だから、彼女がもっと本気になったらまずいかもしれません」

「そうかい。それにしても、君は慎重なんだね。エレンなら余裕って言いそうだけど」

「私はそんなこと言いませんよ。だいたい、それ言うと負ける気がしますよ」

「さてと、私も本気を出すかなぁ」

 

千花は服を叩いてそう言うと、九割出力の霊装を纏う。アルテミシアはウエストコットを護るように前に出ると、ブレイドを構える。

千花はピョンピョンとその場で跳ねる。

 

「士道君、なに聞いたか知らないけど、今はみーちゃん優先ねぇ。後で相談があれば聞いちゃうから、今は士道君がしたいことをしてねぇ」

 

そして、千花は士道に伝えたいことを一方的に伝えると、何度目かの着地で膝を曲げ、一気に飛び出した。

アルテミシアは千花の突進を受け止めようと随意領域を張るが、千花はそのまま随意領域を突き破りアルテミシアごと部屋の外に出て行ってしまった。

士道はさっきまでの悩みはあったが、千花の言った通り今は美九のことに意識を向ける。

(まだ気になるけど、今は美九。それに、終わったら琴里に聞けば済む話だよな)

 

「さてと、色々聞きたいことはあるけど、とりあえず美九は連れて帰らせてもらう。あんたは邪魔をするのか?」

「いや、残念ながら私はそういう戦闘は不慣れだからね。餅は、餅屋だったかな?ともかく下手に藪はつつかないでおこう」

「そうかい、<灼爛殲鬼(カマエル)>」

「ほう、こうも簡単に天使を出せるのか」

 

ウエストコットは肩をすくめ、特に何かする気は無いことを示すと、士道は<灼爛殲鬼>を顕現させ、美九が入っている機械に攻撃をした。機械の装甲は意外と脆く簡単に壊れた。

機械の中に入り、眠っている美九を背負って機械から出ると、地面に降ろしたのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「……んん」

 

肩を揺らされる感覚で、私は目を覚ますと、そこは知らない場所で、目の前には五河さんがいた。

たしか今日は新曲のレコーディングで午前中は過ごしていた。そしてそれを済ました後からの記憶が無かった。思い出そうとしても思い出せない。

なんだか身体が重いのだがゆっくりと体を起こし、状況を掴もうと周囲を見回す。見た感じはどこかの部屋のようで私自身体が重い以外は特になかった。

そして、私は五河さんに状況を聞こうと声を

 

「――――」

 

出せなかった。

なぜだか、声が出ずに喉からは息が漏れるだけ。

 

「――――」

「え?大丈夫か?」

 

私に起きた異変に五河さんは気づいたようで驚き、心配そうな顔をしていた。

なんで私の身にこんなことが起きたのかはわからないが、分かることが一つあった。

私には歌しかない。

ただでさえ、あの偽造スキャンダルの時にファンは平然と裏切った。ライブに来てくれた人だって、私の歌目当て。

そして、今私は歌を歌うこともできなくなった。歌を失った私にはもうなんの価値もない。

両親も一年前の事故で死んでしまった。その時もあまりの悲しさに声が出せなくなり、その頃に私は姿がよく見えないモヤモヤした人?に出会い精霊になった。精霊になったことで、声は出るようになり、何かあれば洗脳することで全てなんとかなった。ちーちゃんも家の事情か何かで会うことも無くなり、故に人との関わりも希薄になっていった。だから、私のことを想ってくれる人なんてもう誰もいない。

 

歌が無ければ誰も私に興味を抱かない。

声が無ければ誰も護ってくれない。

音が無ければ誰も私を信じてくれない。

 

歌が無ければ今まで親しくしてくれた人も離れて行ってしまう。

 

もう、私には――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――何もない。

 

 

 

その瞬間、美九は絶望し、美九の世界が暗転した。

 

 

 

~☆~

 

 

 

美九の異常に士道は声を掛けるが、美九にはもう届かず、美九の身体から黒い光と霊力が溢れた。

士道は霊力の余波に飛ばされ、尻餅をつきながらも美九から目を離さなかった。

 

「私は言ったはずだよ。私は戦闘に不慣れだと。私は研究者だ。故に研究した」

 

美九と士道の両者から、微妙な距離を取って、ウエストコットは言った。

 

「一体何を?」

「君は考えなかったのか?あの機械に何か仕掛けが無いか?例えば、間違った開け方をすれば、或いは無理に開けたら中にいる者に何か影響はないかと」

「……まさか」

「故にこう言おう。ありがとうと」

 

ウエストコットはそう言うと、腕を大きく広げた。

 

「控えろ人類――」

 

美九からの光が収まり、そこには黒系色の霊荘に身を包んだ美九が俯いて立っており、ウエストコットは自身が望んでいた展開になったことに心を躍らせながら宣言した。

 

「――魔王の、凱旋だ!」




美九が反転したのと、状況が転じたから、タイトルは転曲です。

次回、反転した美九が暴れます!?
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