デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

57 / 146
7話 独奏

美九のいた部屋から飛び出した千花とアルテミシアは高速戦闘を繰り広げていた。

今出せる最大限の力を出す千花と、それに対してCRユニットをフル稼働させて対抗するアルテミシア。両者は一歩も引かず、

 

「それで、あなたはなんの為に戦うのぉ?」

「私は私の願いの為に戦う。それだけッ」

 

<死之果樹園>とブレイドが常にぶつかり合いながら、会話をしていた。

 

「願いは何か聞かないけど、DEMに就くことで本当に願いに近づけるのぉ?」

「えぇ、私はそう信じている!それで、あなたはなんの為に戦うの?」

「私の願いは、精霊を救い叶えることだよぉ。だから、私も引かないし引けない!」

 

千花は確固たる意志を瞳に宿し、アルテミシアにそう返す。

 

「そう……あなたの意思も確固たるものなのね」

 

千花の瞳を見たアルテミシアは何を言っても千花は引かないと悟る。

二人の武器が再び交わろうとすると、直後にまがまがしい霊力を肌に感じ、二人は攻撃の手を止め、霊力を感じた場所――士道たちのいる研究室の方に目を向ける。

 

「まさか、アイクさん……」

「……これって反転?」

 

二人は即座に状況を把握した。

 

「この勝負一時休止ぃ」

「この勝負預けます」

 

そして同時に地を蹴り、研究室に戻るのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「士道君、無事ぃ?」

「アイクさん、無事ですか?」

 

二人はそれぞれのもとに着くや否やそう言い、心配していた。

 

「あぁ、俺はなんともないよ。でも、美九が」

「私は平気だ。それよりもついに悲願に一歩近づいた」

 

士道は一切けがを負っていないが、美九の反転を目の当たりにして、動揺していた。ウエストコットも怪我はないが、反転を目の当たりにして気分は高揚しているようだった。

そんな四人の視線を受け、黒系色の霊装に身を包んだ美九は顔を上げる。

そして、四人を一瞥すると、

 

「……童に何か用か?人間共」

 

静かに、はっきりとそう言った。一切の感情を感じさせない、或いは興味が無い視線で。

今までのことなど記憶にないようで、一切の感情の変化を感じなかった。

 

「ここまでの反転体に出会えるとは。私は今気分が高まっていることを実感しているよ」

「そうなんですか?……はい、了解です」

 

ウエストコットは目元に手を当ててそう言うと、アルテミシアは途中で片耳を抑える。何処かから連絡があったようで、数言やり取りをするとウエストコットの方に目を向けた。

 

「アイクさん、エレンからの連絡です。なんでも、<フラクシナス>と相打ったらしく、別の所で精霊の相手をしていた部隊も全滅したとのことで、おそらくはここに集まりだすかと思われます」

「そうなのかい?ちなみに全員相手取ることはできないかい?」

「残念ながら、反転体と数人の精霊を同時に相手取るのは無理です。それにアイクさんを護りながらになるので、ここは引くべきかと」

「そうかい、わかったよ。ここは引こう。反転体も見れたことだし……今日の収穫は上々だよ」

 

ウエストコットは途中士道を一瞥し、それからアルテミシアの意見に同意をした。

すると、二人の周囲に随意領域が展開され、二人は空に浮かぶ。

 

「もう()くのか?ゆっくりして()けばよかろうに。あー」

 

しかし、美九はそんな的を見逃す気も無く、声を響かせた。

声が響いた瞬間、美九を中心に音の波が生まれ、四人に襲い掛かる。

 

「それぇッ!」

 

士道の前に来た千花は、<死之果樹園>を振り下ろして波を斬り、アルテミシアは随意領域を厚くして耐えきった。

 

「では、さらばだ。イツカシドウ、<ガーデン>。またいつか会うことだろう。その時は敵としてではないことを願おう」

「じゃぁね、二人とも」

 

アルテミシアはウエストコットの手を取ると、随意領域の範囲を最小限にして、一気に飛んで行った。何故か、アルテミシアは二人に手を振っていた。

 

「待てっ!」

「士道君ストップぅ。今はみーちゃんでしょぉ。それにもう追いつけないよぉ」

 

彼方に消えた二人に声を出すがもう届かず、追いかけようとすると、千花が士道に抱きついて止める。

千花に言われて、ハッとすると、美九の方に目を向けた。

美九は何故か顎に手を当てて、そんな二人を見ていた。

 

「そうだな。考えてても仕方ない。今できることを」

「そうだよぉ、士道君」

「……あのさ」

「ん?なぁにぃ」

 

とりあえず、今すべきことを確認し気持ちを落ち着かせようとするが、問題があった。

士道は頭を掻くと、

 

「千花のその……当たってるんだけど……」

「アテテンダヨォ」

 

千花の胸が当たっていることを伝える。しかし、千花はわざとらしくそんな反応だった。そんなことしている場合ではないので士道は声を上げようとする。

 

「千花、今はふ――」

「イチャイチャしてんじゃねーよ。てか、そんなこと他所でやるのじゃー」

 

そして、士道が言い切る前に今まで静観を貫いていた美九がブチギレた。

 

「なんなのじゃ、気づいたら知らない場所だし、周囲は知らない人だし。しかも、なんかすぐに逃げてくし。はい、そこの女、ここはどこじゃッ!?」

「んと、日本だよぉ」

「日本?喧嘩売ってるの?範囲広すぎなんだよ!

「あれぇ?間違ってたぁ?」

「そうじゃよ!じゃぁ聞くが、魚を見せられて魚と答えるのか?魚の種類を答えるだろ!これだから最近のゆとりは。はい、そこの男、何に対して童が怒っているか分かってるか?」

「んと、分からないことだらけだからか?それとも千花の答えが不服だったからか?」

 

美九の問いに、士道は考えて答えると、しばしの静寂が周囲を包む。

(あれ?何この静寂?なんか怖いんだが……)

そして、美九は何かを言おうと息を吸う。

 

「ぶっぶーだ。そんなこと些末なことじゃ。それよりも……」

「「それよりも(ぉ)?」」

「なんでイチャイチャしてるのじゃ。普通に考えて常識が欠如してんじゃないの?」

「「は、はぁ」」

 

確かに美九を置いて、千花と喋った士道だが、イチャイチャはしていないはずだった。士道的には。

(んー、美九から見たらイチャついているように見えていたのだろうか?というか、千花の答えはどうでもいいのかよ……)

 

「つまり、目の前でイチャついていたから怒ってたんだぁ」

「そうじゃ……」

 

美九は一息ついて、

 

「なんで、男女でイチャつく。普通に考えて男×男じゃろっ!なんで男女のイチャイチャを見ないといけないのじゃ!」

「「……」」

 

美九は怒りとかの感情をあらわにしてそう言った。二人は美九の文句を甘んじて聞こうと思ったが内容に難があった。その為、美九の文句を理解するのに時間がかかった。

 

「なんで無言なのじゃ。せっかくお主の質問に答えてあげたというのに」

「いや、ちょっと理解に時間がかかってな。なんかBL発言があった気がして」

「そうじゃ。童は男×男にしか興味は無い。だから怒っておるのじゃ」

「きゃぁー、みーちゃんがBLというか腐女子に反転したぁ」

 

驚愕の真実、美九の百合からBLになったことに、千花は驚きと共に悲哀の声を上げた。士道としても、美九の変化に動揺してしまい、続く言葉が出てこない。

(今の美九は十香と折紙の時と同じで反転してるんだよな?その割に会話できてるんだけど。それに千花も反転したって言ったけど……反転ってそういう意味なのか?趣味嗜好も変わるのか?百合からBLって)

 

「さて、そろそろ飽きた」

「……何が飽きたんだ?」

 

そんな二人の考えてることなど露知らず、美九は士道を睨むように視線を向けると、先ほどの音の波で士道たちを襲おうとした、と思った士道は警戒する。

 

「“童の下僕になれ人間”」

 

しかし、そんな予想は外れて、美九は士道を洗脳しにかかった。士道は前の世界で美九に洗脳されかかって、結局洗脳されなかったので、

 

「……んと、どうすれば……?」

 

今回も洗脳される事態にはならなかった。

分かってはいたが、一応心配してしまった士道は、どう反応したものかと困ってしまう。下手に刺激して美九が怒るのは避けたいので。

美九はまさかの事態に驚きを隠せないのか、たじろいでいた。

しかし、すぐに意識を切り変え、続いて千花を見据える。

 

「まさか、効かぬものがおるとは驚きじゃ。世界は広いということじゃな。ならば、主じゃ。“童の下僕になるのじゃ”」

 

そして、千花に対して美九は洗脳を行う。

霊力を封印した精霊には洗脳が効くはずなので、千花は洗脳されてしまうのでは?と士道は思い、千花を見る。

 

「うがぁ、頭がぁ」

 

千花は頭を抱え、俯きながらその場にうずくまる。どうやら徐々に効いているようで、千花は抗っているように見えた。

 

「“童の下僕になれ”、“童の下僕になれ”……」

「千花、正気を保つんだ」

 

美九はたたみかけるように繰り返していく。はっきり言ってそうとう怖く、士道の背に寒気が走った。それでも千花に声を掛けて意識を保たせようとした。

 

「……」

 

そして、何度目かで千花は反応が無くなった。

その反応を、千花の洗脳が完了したと判断したのか、美九は繰り返すのを止める。

すると、千花は俯いたまま立ち上がる。

一切千花の表情が見えないのが、より一層恐怖を与える。

(まさか、千花が洗脳されるなんて……このままじゃ美九と千花に襲われて……)

 

「さて、どうやら成功したようじゃな。それにしても士道と言ったか。何故お主には効かなかったのじゃ?」

「さぁな、分からんな」

 

今の状況ではまずいので、時間をできるだけ引き延ばして、琴里たちが来るのを待つ。琴里たちが来ればまだなんとかなる可能性があるので。

 

「ほう、隠すと言うのじゃな。……さて、時間を引っ張って救援が来るのを待っているようじゃが、その希望も打ち砕いておくとしようかのう」

「……何をする気だ?」

「こうする気じゃ。あぁー」

 

美九は空を見上げると、近くにあったビルに音弾を放ち、倒壊させて天井にできた穴(千花が吹っ飛んできたときにできた穴)を塞ぎ、救援が来ても見つけるのを困難にした。

 

「さて、これでもうしばし話せるのじゃ」

「なんで、そんなに話したがるんだ?別の人間でもいいんじゃないのか?」

「お主が特殊だからじゃよ。ただの人間と話してもつまらぬ。なんじゃ、不服か?」

「いや、気分を害したのなら謝る。俺の知ってる反転体は有無を言わさず攻撃してきたからちょっと珍しくてな」

「ほう、お主は精霊と出会ったことがあるのか。しかし、反転体と呼ばれるのは何か嫌じゃな。童は名を持たぬからな、どう呼んでもらうかのう」

 

美九は士道の言葉から、精霊、反転とそれなりに知識があることを読み取っていた。次いで、反転体という呼び方に不服そうな顔をした。

 

「まぁ、俺も反転体なんて呼び方をする気もないし、美九って呼んでいいか?もともとそう呼んでいたから。あっ、それと俺は五河士道だ。名乗ってなかったな」

「あ、私は木野千花ねぇ」

「ふむ、五河士道、か。何故だか聞いたことがある感じがするな。おそらくは童が寝ていた時のもう一人の童の時じゃろうな。まぁ、士道と呼ぶことにしよう」

「了解。それで、何が聞きたいんだ?」

 

遅いながらも自己紹介を済ませると、士道と美九は近くにあった椅子に腰かける。

すると、千花は何処からか紅茶とクッキーを持ってきて机に置いた。

 

「ほう、命令もしてないのに童の為に動くとは感心じゃな」

「あぁ、というかどこから持って来たんだろ?」

「それは……別の部屋ではないのか?」

「あっ、確かにどこかにはそういう部屋もあるか。……ん?ところで、命令もしてない?」

「そうじゃろ、童の声を聴かせた後は、士道お主と話して……ん?」

 

二人は千花が持って来た紅茶を飲みながら、そんなことを言うと、ある疑問が生まれた。

そして、椅子に座って、クッキーを食べている千花の方を二人同時に見る。

表情はどう見ても洗脳されている様子は無く、いつもの千花だった。

 

「何故、勝手に動けるのじゃ」

「なんで、洗脳されてないんだ?」

「はにゃ?」

 

二人は疑問を口にすると、千花はなんのことやらと首を傾げる。

そして何かに気付いたのかハッとする。その間にもクッキーを食べ続け、飲み込む。

 

「ん?なんのことかなぁ。そもそも洗脳されてないしぃ。あっ、紅茶も美味しぃ」

 

千花はそう言うと、紅茶を飲み感想を呟いた。

(なんで、千花は無事なんだろ?九割解放したから効いていないのか?そういえば狂三も効いてなかったから、ある程度霊力を持ってれば効かないのか?)

そんな疑問を持つと、千花はいつも通りかってみ士道の心を読む。

 

「たぶんそうなんじゃないのぉ。知らないけどぉ」

「ん?何を納得しておるのじゃ?今士道は何も言っていないはずじゃろ」

 

そして、千花が士道の心を読んだあたりで、美九は困惑の表情を浮かべていた。

 

「ハッ、まさかこれが愛の力。つまり、士道と千花は心と心で繋がっておるのじゃな!」

「あ、……うん」

 

困惑したと思ったら勝手に自己完結し、これまた勝手にテンションを上げてそう聞いてきた。

急なテンションの変化に千花はいつものテンションより低い感じで答えた。

 

「して二人は、付き合っておるのじゃろ?」

「にゃ、まだ付き合ってないよぉ」

「いやいや、隠さなくてよいのじゃぞ」

「いや、付き合ってないぞ」

「もう、照れ隠しならしなくてよいのじゃぞ。さぁ」

 

いくら言っても信じない美九と、そんな美九に言う二人。

美九は最後にもう一度と言わんばかりに、二人に聞いた。

 

「「いや、(まだ)付き合ってないから(ぁ)」」

「……」

「「ん?」」

「……つまり、付き合ってもいないのにイチャついていたのか?」

「「うん」」

「……」

 

その言葉を皮切りに、美九は急に無言になった。見た感じ何かを考えているようだった。

そして、

 

「ふざけんじゃねーよ。まだ付き合ってるのならさっきのイチャつきも許容できたじゃろう。しかし、付き合っているわけでもないとは、もう我慢の限界じゃ」

「なんか嫌な予感がするんだけど」

「主ら二人とも成敗してくれようぞ」

「あー、このみーちゃんも面倒くさーい」

 

美九は激昂し、千花はぼやいたのだった。




反転した美九が騒ぎ(ぼやき)倒して、独壇場だったから 独奏?てことで。
ちなみに美九の魔王は次回になるです。

そして、今月に入って、忙しかったり、風邪ひいたりで全く書けていない現状・・・。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。