デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

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今回はあの人たちが出てきます。タイトルでお察しを。


2話 <ラタトスク>

「はぁ、なんか疲れたな」

 

その日の夜、士道は周りには誰もいないホテルの屋上のベンチに座りながら空を見上げていた。

十香と別れた後は、変に思われないようにいつもの調子を装い道頓堀散策、駅に戻りホテルに行った。そんで、夕食を食べ終え、今は自由時間中で適当なタイミング風呂に行くことになっている。

殿町たちは他の班の男子の部屋に転がり込んでトランプ中。折紙たち女子陣はたぶん入浴中。千花は士道のスマホをいじるとか言って、部屋でいじってるはず。

士道がこんなところに居る理由は、十香に言われたことが堪えていて、自分はどうするべきなのか悩んだからだった。周りに人がいたら、考えることに集中できそうにないので。

 

(結局精霊を救いたいのも、俺の自己満足なのかな?皆を危険な目に遭わせてるわけだし。現に霊力を封印してなかったら、みんな危な気無く戦えたから危険は無かったはずだし。ああー)

 

士道は考えていくだけでネガティブな方向に行ってしまったので、頭を掻き、考えを改めようとする。

 

「相席いいかな?」

「車椅子だから座れないですよ」

 

すると、士道に相席を求める男性の声と、低いトーンでツッコミを入れる女性の声がした。

士道が声の方を向くと、そこには車椅子に座った五十代ほどの外国人男性とそれを押す二十代ほどの眼鏡の女性がいた。

その二人はどこかで見たことがある気がして、記憶を呼び起こす。

(たしか、十香と一緒に居た時に……あっ)

 

「ボールドウィンさん、カレンさん」

「?」

 

士道が二人の名前を思い出し口に出す。すると、男性の方は反応し、なんで名前を?みたいな表情をした。女性の方は表情が変わらなかったが。

そこで士道もこっちの世界では初対面だから名前を知っていたら変だということに気付いた。

士道は慌てて誤魔化そうとする。

 

「えっと、今のは……」

「……あぁ、君とはあっちの世界とやらで、会っていたのかな?五河士道君」

 

しかし、男性はそう言って納得していた。あっちの世界、士道の名を知っていることに士道が困惑すると、

 

「あぁ、あっちではちゃんと自己紹介をしなかったのだね。では、改めて。私の名前はエリオット・ボールドウィン・ウッドマン。<ラタトスク>の創始者と言えばわかるかな?」

「私はカレン・ノーラ・メイザースです。以後お見知りおきを」

 

二人は士道の困惑の原因を察し、自己紹介をする。そして、<ラタトスク>という言葉とその名前でハッとする。

 

「あなたが<ラタトスク>の……」

「あぁ、そうだよ。会うのが遅くなって悪かったね。何故か私のもとに五河司令から連絡が届かなくてね。途中で消されていたのだよ」

「はぁ、無視していた訳では無かったんですね。なら良かったんですけど」

「あぁ、どうやら君たちに余計な知識は付けさせたくないのが理由のようだ。今は謹慎にしてある」

「そして、エリオットと共に勝手にかつ秘密裏に会いに来ました。ちょうどこちらに用事もあったので」

 

ウッドマンは向かいのベンチの前に移動し、カレンはベンチに腰を下ろす。

そして、何故ここに居るかも口にした。

 

「さて、長い時間はばれるから手短に行こう。君の身に遭ったことは聞いている。まさか、アイクが君に会うとは」

 

ウッドマンはふぅ、吐息を吐くとここからが本題とばかりに、話を進める。

 

「どうして私が<ラタトスク>を作ったか、何故精霊を保護するかが聞きたいだったかな?」

「はい、どうしても気になっていて。それでウエストコットが言ったことは真実なんですか?」

 

ウッドマンは今一度確認をすると、士道はそう答える。

 

「そうかい、では話そうか。アイクが言ったことは真実だよ。確かに私はあの頃精霊の力を利用しようと考えて、アイクたちと共に研究をしていた。そして、原初の精霊を出現させたわけだ」

「はい、そこまでは聞いています。でもそれだと<ラタトスク>を作った理由は?<ラタトスク>の理念は精霊達の霊力を封印して安全に生活してもらうことなんじゃ?理由が変わっていますよね。それとも、それは建前で、本当は利用しようとしている?」

 

士道はウッドマンの説明に疑問を持つ。“精霊を利用する”から“精霊の保護”に変わった理由が分からなかった。

 

「ああ、確かにそう思われても仕方ないね。だが、私は精霊を救いたいと思っているし、ここに居るカレンも私に賛同してくれているよ」

「はい、私は基本エリオットの意見に賛同しています。それに、私もあの時原初の精霊を出現させたことは後悔しています」

 

カレンは頷いてそう返すと、眼鏡をくいっと上げる。カレンの見た目の年齢が二十代な為、なんでこの人が原初の精霊を見たことあるのかが謎だった。しかし、顕現装置を使えば見た目をそのままにし続けられると聞いたことを思い出す。

 

「はぁ、ではなんで精霊を救いたいと思うんですか?正直膨大な予算を使ってまで精霊を集める理由が分からないんですけど」

「そうだね。それを話さないとダメだね。と言っても、君が納得できる理由であるかはわからないけどね」

 

ウッドマンは一息ついて続ける。しかし、言って納得してもらえるかが心配で、少し困り顔をする。それから昔を思い出しているのか少し遠い目をして口を開く。

 

「私はあの時、原初の精霊に恋してしまったんだ。一目惚れってやつだね」

「一目惚れ、ですか」

「あぁ、あの時原初の精霊を見て、全てが変わった。それまでの目的も捨て、友と別れ、そして<ラタトスク>を作った。彼女と同じ精霊たちが傷付くのを見ていられなくてね。それが<ラタトスク>を作った理由だ」

 

ウッドマンは一通り話し終え、士道はそんな理由がと思った。それと同時に、この人の想いは本物なんだと感じていた。

士道が話を頭の中で整理していると、

 

「ちなみに、私はエリオットに惚れています」

 

唐突にカレンがそう言った。士道は何故急に?と思う。

 

「しかし、エリオットは彼女に惚れてしまっています。なので、後顧の憂いを絶つことで、きっとエリオットは私を選んでくれると信じています」

「カレン、君の気持ちはうれしいが、こんな老いぼれのことは忘れて、他の男を探したらどうだい?」

「いえ、あなた以上の男はいないですよ。間違えました、いるわけないです」

 

(あ、なんだろ。この人、なんか折紙と波長が似てる気がする。でもこの人は本当にウッドマンさんが好きなんだな)

そんな感想を持ちながら、士道は頭の整理を終える。

 

「分かりました。<ラタトスク>を作った人がそんな想いだったと分かってよかったです」

「いや、私の方こそ、精霊を大事に思える君にその力が宿ってよかったと思っているよ」

 

二人はそう言葉を交わすと、その後いくつか雑談をして過ごした。

そして数十分ほど経つと、カレンが腕時計で時刻を確認する。

 

「エリオット、そろそろ戻りましょう。彼も学生の身分、集団行動から外れすぎるのもどうかと思いますし」

「あぁ、そうだったね。五河君もそろそろ戻った方がいいと思うよ。こんな時間だから」

 

ウッドマンに言われて士道が時刻を確認すると、すでに九時半近くで、十時消灯ということになっているので、そろそろ戻らないと風呂に入り損ねそうだった。

 

「あ、もうこんな時間。俺も話が聞けて良かったです」

「それなら、なりよりだ。では……おっと、その前に一つ」

 

ウッドマンは士道に片手を上げて、士道は会釈をしてその場を後にしようとすると、ウッドマンは何かを思い出したかの表情をする。

ウッドマンは胸ポケットに入れていたメモ帳を取り出し何かを書くと、そのページをちぎる。

 

「五河君、これを。私のプライベートアドレスだ。今回みたいな自体が今後も起きるのは私としては避けたいからね。天宮市に戻ったら五河司令にも教えておいてくれ」

「はぁ、いいんですか?俺なんかに教えちゃって」

「君だからだよ。では、またいつか会おう」

「では、今後のご武運を」

「はい、では失礼します」

 

士道は渡された紙をポケットにしまうと二人に一礼して屋上を後にした。

 

「彼は精霊を大切に思っていることが確認できてよかったよ」

「えぇ、そうですね。彼ならきっと……それで、あなたはこれで満足ですか?」

 

カレンは屋上の上にある貯水タンクに寝転んでいた少女に声を掛ける。士道が屋上に来る少し前から寝転んでおり、士道は終始気づくことは無かった。

声を掛けられた少女――千花は身体を起こすと、貯水タンクに座ったまま声を発する。

 

「まぁねぇ。それにしても気配消してたのに気づくのはさすがだねぇ。さすが自称人類最強(笑)の妹さんだねぇ」

「あの人のことをそこまで馬鹿にできるのは、世界でもあなたぐらいでしょうね。木野千花さん」

「カレン、そんなに警戒しなくていいよ。彼女は五河君が心配だったのだろうから」

 

千花は足をパタパタさせてそう言い、カレンはそんな千花がウッドマンに危害を加えないか警戒していた。

 

「そうだよぉ。そっちから手を出さない限りは私も手は出さないよぉ。あと、真那ちゃん辺りもたぶんそういうこと言うと思うよぉ。大体精霊の保護する団体がそんな敵意を出しちゃだめだよぉ」

「……そうですね。少々気配の消し方が強すぎたので警戒しすぎましたね」

「うんうん、ただ喋りに来ただけなんだからねぇ。それに士道君には秘密にしてたからぁ。よっとぉ」

 

千花はいつまでも二人の上から喋ってるのもどうかと思い、タンクから飛び降り着地する。着地後、士道が座っていたベンチの前まで来ると、そのまま腰を下ろす。

 

「さて、私の要件は二つ。まずは、<ラタトスク>に警告を。もしも士道君が暴走したらって時の予防線張ってるよねぇ?」

「あぁ、一応あるね。ただそれは私と五河司令しか扱えないようにしてあるし、使わずに済むように<フラクシナス>には検査を徹底してもらっているよ」

「うん、ならそっちは問題ないやぁ。ちなみにもしもそれを二人以外が使った場合は、<ラタトスク>潰すからぁ」

 

ほんわかした調子で千花は喋るが、最後はトーンを落としてそう警告した。カレンはその瞬間千花から殺気を感じた。しかし、ウッドマンはカレンの前に手を出して制止を促す。カレンは渋々ウッドマンの指示に従うが、警戒は解かなかった。

 

「まぁ、そうならないように<ラタトスク>の人たちにも言っておいてねぇ。さすがに、私も意味のないことはしたくないからぁ」

「わかったよ。そこはちゃんと徹底しておこう。それで、二つ目は?」

 

いつもの調子に戻った千花は、いつものトーンで話し出し、ウッドマンも士道と話していた時のような優しい物腰で話す。

 

「二つ目は、ちょいと<ラタトスク>にある精霊のデータを見たいってお願いですよぉ。あ、欲しいのは狂三ちゃんたちを含めた、現在確認してる皆ですよぉ。まぁ、これは一つ目につながるんですけど、士道君が暴走する可能性を排除しときたいんでぇ」

「了解したよ。あとで手配しておこう。たぶん見れるのは数日後になるから<フラクシナス>に送る、でいいかな?」

「それでいいですよぉ。すいませんねぇ、色々あるんですよぉ」

 

千花はとりあえずその二つを提示し、ウッドマンから承諾を得ると、満足そうな顔をした。

そんな千花にカレンは不審そうな目を向け、口を開く。

 

「ちなみに何故あなたは精霊のデータが欲しいのですか?それでどうして彼が暴走する可能性を潰せるのですか、と問いましょう」

 

カレンは千花のその理由が分からなかった。ウッドマンもだが。

千花は、あぁ、と小さく呟く。

 

「それはねぇ、士道君に留められる霊力を逆算するためだよぉ。結局、暴走は許容量オーバーの結果だからねぇ」

「なるほど……ちなみに許容量は知っているのですか?」

「ううん、知らないよぉ」

「……」

「……あ」

 

理由を語り、カレンは冷静に返すと、千花は気づいた。士道の許容量が不明なことに。

 

「まぁ、その辺はなんとなくだよぉ。あっ、そろそろ戻んないとぉ。では、そのうち」

 

千花はとりあえず約束を取り付けたので逃げるように去って行った。残された二人は、まぁ平気だろうと判断すると、屋上から出て、泊まる部屋に向かうのだった。

 

 

 

~☆~

 

 

 

「なるほどね。まぁ、行くといいよ。どうせどの部屋もまだ起きているんだし、もし他の先生に聞かれたら許可は取った、といえば平気だろう」

「すいません、迷惑かけちゃって」

「いや、いいよ。あの人たちに会っていたんだから仕方ないだろう。それで、シンは納得できたんだね?」

「はい、一応聞きたかったことは聞けたので」

 

士道は令音がいる部屋に訪れて、昼に十香に会ったこと、さっきウッドマンとカレンに会ったことを伝えていた。そのうえで、一つ頼みごとをしていた。

 

「納得したならそれでいいよ。さて、戻って来てからすぐに行けばよかったのに、と言うのは野暮なのかな?」

「それは……まぁ、俺の責任ですね」

 

士道は言い訳できないので、頭を掻きつつ苦笑いをする。士道が令音に頼んだことは、結局風呂に入りそびれたから入っても構わないかということだった。一応就寝時間を過ぎ、入浴時間でも無い為だった。

士道が入り損ねたのは、部屋に戻る道中に折紙、耶倶矢、夕弦にラウンジで捕まり、そのままおしゃべりに付き合い、就寝時間十分前になって部屋に戻り、そして十時を過ぎてしまったからだった。

 

「分かっているのならいいよ。さぁ、行ってきたまえ。さすがに遅すぎるのはホテルにも迷惑だろう。十香のことは明日にでも考えよう。次会えるのがいつかはわからないけどね」

「えぇ、そうですね……はい、わかりました」

 

令音の許可も下り、士道は十香の話を振られると、十香に言われたことを思い出し憂鬱なり、一瞬表情に出すが、すぐにいつものような表情を作って部屋を後にした。

令音は士道の一瞬の変化に気付いたが口に出さず見送った。

 

「はぁ、十香に何を言われたのやら?しかし、これはシンが自身の答えを見つけて乗り越えることだしね。それにしても、まさかこのタイミングで来るとはね」

 

令音が小さく呟くと、唐突に部屋のドアがノックされた。令音は士道が戻って来たのかと思いながらドアを開ける。

 

「あ、令姉ぇ。お風呂入り損ねたから入ってきてもいい?」

 

すると、そこには千花がいて、士道と同じ要件だった。令音はため息をつくと、

 

「千花、一応ここでは教師と生徒の関係なんだからね。まぁ、いいや。それで、千花はあの人たちとの用事は済んだんだね?」

「まぁねぇ。まぁ、向こう次第なんだけどねぇ」

「ほどほどにしなよ。君のはまだ知られちゃダメなんだから」

 

令音は眠たげな目で千花にそう言うと、千花は頷く。

 

「で、行ってもいいのぉ?まぁ、ダメなら勝手且つ穏便に入るだけだけどぉ」

「そっちは普通に入ってきていいよ。どうせ教員たちは今後の打ち合わせ中だから、数十分は見つからないだろうし。それと、こういう場合の為に大浴場は十一時までは来禅の生徒の貸し切り状態だからゆっくりできるだろうね」

「りょうかーい。じゃぁ、行って来るねぇ」

 

千花は令音の了承を貰うと、お風呂に向かって去って行った。

そして、令音はもう今日は誰も来ないだろうという判断をするとドアを閉めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後。

 

「あれぇ?どっちが男湯で、どっちが女湯だろぉ?勘だとこっちかなぁ?まぁ、どうせ誰もいないから関係ないよねぇ」

 

暖簾が無い(消えた)風呂場の扉の前に悩む茶髪の少女がいたとかいないとか。ろくな確認もせず右の扉をくぐったとか。その一分後に暖簾が外れていることに気付いた従業員が掛け直したとか。

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