更新的にはあと一分後ですが、読まれるのは年明けなわけなのでとりあえずご挨拶を。
時系列は10月ですけども。
「おっ、しど……士織よ。こんな所で何をしておるのだ?」
「あ、耶倶矢……なんで一人なんだ?皆は?」
二人は次の目的地、嵐山に来ていた。そこで、何故か一人でいる耶倶矢を見かけ、耶倶矢も存在に気付き、一瞬士織の姿だったことで固まったがすぐに士道が士織になっているだけと理解したようだった。
士織に聞かれた耶倶矢は、頭を掻きながらばつの悪そうな顔をする。
「うむ。いつの間にか、はぐれてな。して、そっちの女子は誰なのだ?」
「士織よ、先ほどから仲良さ気に話しているこの女は誰なのだ?まさか、あれか、士織の彼女か!」
二人は同時に相手が誰なのか問う。耶倶矢はもちろん十香だと分かっているのだが、この世界では初対面だから知らない振りをしている。十香は十香で、士道の彼女だと勘違いしている。
「えっ!私はそんなんじゃないんだけど……いや、まぁそれもありではあるけど……」
耶倶矢はもじもじしながら顔を赤くし、後半言っていた言葉は士織には聞こえなかった。十香にも聞こえていなかったようで、首を傾げている。そして顎に手を当てて、耶倶矢と士道の関係をなんとなく理解したような表情をしていた。
「ふむ、どうやら違ったようだな。私は夜刀神十香だ!」
「あ……んん。我が名は八舞耶倶矢。風を操る颶風の巫女だ!」
耶倶矢は名乗ると同時に格好良さ気なポーズをとる。
「んと、分かると思うけど耶倶矢は厨二病だ。それで、十香と同じで精霊だ」
「ちょっ、いきなり何言ってんのよ、士織!それと我は厨二病ではないぞ。これが素だ!あと、我の秘密を簡単にばらすな!」
「今更だろ?さっきまでの見られてるんだから。それに、なんとなく精霊か精霊じゃないか、ぱっと見で分かるんだろ?」
「あぁ、一目見てなんとなく精霊だとは分かったな。まぁ、あまり霊力は感じないがな。それにしても、二人は仲が良いのだな」
士織が速攻でばらしたことで、耶倶矢は顔を赤くして士織をポカポカ殴り、二人の様子を見ていた十香はそんな判断をした。二人の少女が言い合っているという感じなので、十香的には見ていて満足なようだった。十香の脳内では二人がイチャイチャしている妄想が展開されたが二人は知らない。
「さて、このまま一緒に居るのも我的には良いのだが、我は行くとしようかのう。我が同胞たちを探しておる途中であるしな」
「ん?一緒に行かぬのか?てっきり一緒にその同胞たちを探すものかと思っていたのだが」
「いや、よい。我は風の指し示すままに探すさ。それに、二人はなんらかの盟約を交わしておるのだろう?」
耶倶矢は士織が十香の霊力を封印しようとしているから一緒に居るのだと理解していて、自分がいたら邪魔になりかねなそうな予感がしていたからそんなことを言う。それと、この十香から美九のような気配を感じ取っていたりしていた。
十香は残念そうに肩を窄める。
「そっか、じゃぁ、俺たちはもう行くな。もし、皆を見かけたら連絡するから」
「うむ、その時は頼む。では、武運を」
「さらばだ。そのうちまた会えることを祈る」
士織と十香は耶倶矢に別れを告げると、嵐山の奥に向かって歩き始め、耶倶矢はそれを見送った。
ふぅ、と息を吐き、耶倶矢は伸びをする。
「まさか、十香が現れるとはな。千花のやつが急にあんなこと言ったから何かと思えば……。まぁ、今日はこのくらいにしておくとするか」
二人の姿が完全に見えなくなると、耶倶矢は嵐山に背を向け歩き出す。行き先は特に決めていないが、さしあたっては、皆がいそうな場所を目指して。
~☆~
耶倶矢と別れた士織たちは、嵐山の中の一角にある店の前のベンチに座っていた。
「士織よ、お主のクレープを一口くれぬか?」
「んと、いいよ。ほれ」
きな粉+あんこのクレープ(八つ橋風)を食べていた十香は、苺+クリームのクレープ(プレーン)を食べていた士織にそう言う。
何種もの具材の中から、十香は何故かそれを選んでいて、理由は不明だった。十香自身、一目見てこれがいい気がしたとのこと。
士織は自分の食べていたクレープを十香の方に向けると、何故か十香は赤面した。
「これは、あれでは……間接キスというやつになるんじゃ……いや、しかし、今は女だから普通なのか?」
「ん?食べないのかー?」
「いや、しかし、見た目は女でも中身は男なのだし……」
十香はぼそぼそ言っていて、士織の耳には届かず、士織の声は十香には聞こえていないようだった。
それから、三分ほどが経ち。十香は決意を固め、顔を上げる。その間に、士道はクレープを食べ終え、
「よし、お主のクレープをいただくと……ふむ、クレープが変わっておらぬか?」
苺+チョコクリーム+バナナ+キャラメルソース+生クリームのクレープ(デラックス)を新たに買って食べていた。
士織は口に含んでいたクレープを飲み込むと口を開く。
「いや、だって、十香が考えてる時間長かったし、こっちも気になってたからな」
「ふむ、まぁいいか。では」
士織はクレープを十香の口元に持って行き、十香は士織のクレープを食べる。
モグモグと咀嚼して飲み込むと、十香は美味しそうな顔をして、満足したようだった。
「このクレープもなかなかだな。ほれ、食べるのだ」
十香は感想を言うや否や、手にしていたクレープを士織に向ける。士織はお言葉に甘えて、十香のクレープを食べる。きな粉にあんこと和の感じだからクレープと合うのか分からなかったが意外と合っていておいしかった。
「んっ、意外とおいしいな。それにしても、結構回ったよな」
「あぁ、そうだな。清水寺から嵐山とか方角が違い過ぎるから、無駄に歩いた気はする」
「決めたのは十香だけどな。それで、この後はどうするんだ?」
二人はクレープを食べながらそんな話をする。十香は残り一口のクレープを口に入れると、今後の話を切り出す。
「そうだな。では、時間的に次がラストだし、あそこに行きたいな」
「あそこって?」
「まぁ、行けばわかる。しかし、最後にはちょうど良いと思うぞ。それに、そこからなら刻限までには間に合うはずだ」
十香は士織に行き先を告げず、士織の手に握り歩き出す。士織は行き先が分からない不安と、一応常識はあるだろうという願いを持ちながらついて行く。
~☆~
「やはり、ここなら街を一望できるのだな。それにしてもいい景色だ」
「あぁ、そうだな。今日は晴れてるから遠くまで見られるな」
士道たち二人は、嵐山を後にして京都駅に戻っていて、京都タワーに登って京都の町を一望していた。士道は士織の状態から元の姿に戻っている。最後くらいはいつもの状態でいいだろうと十香が言ったのと、展望階には他に生徒がおらず、客も数人しかいなかったからだった。元に戻った瞬間、十香は落胆したが士道は見なかったことにした。悲しくなるから。
「さて、そろそろ刻限にもなることだし、私の士道に対する結論を伝えるとしよう」
十香は外の景色を見るのを止めると、士道の方を向きしっかりと目を見た。士道は十香に信用してもらえるかという不安があり、気が気じゃなかった。
「私的には士道は信用してもよいとは思う」
「本当か!」
「しかし、何か隠しているだろう?故に完全に信用することはできないな」
十香は士道に対して疑いの目を向ける。特に隠しているつもりは無かったのだが、十香にはそう見えているようで士道は困惑する。心当たりがない士道の反応に、十香は呆れたような顔をする。
「ずっと気になっていたのだが、精霊の霊力ってどのようにして封印するんだ?てっきり、説明してくれると思って待っていたのだが、一切言ってはくれなかったよな?」
「えっ、気になっていたのなら言ってくれればよかったのに……」
「いや、それを察して話すのが筋だろう。お主から振って来た話なのだから」
十香は腕を組んで、プンスカみたいな顔をする。十香に言われて、霊力の封印関係の説明をしていないことに気付いた。まずは士道自身について知ってもらわないと、と思っていた為後にしたのが仇となった。士道でいる時間より士織でいる時間の方が長かったが……。
「それに関しては、話すのを忘れてた俺のせいだな。スマン」
「ふむ、故意に隠していた訳では無かったのか……てっきり何か都合が悪いのかと思っていたのだが?」
「そうじゃなくて、単純にまずは俺のことを知ってもらおうと思ってな」
頭を掻いて、なんというか申し訳なさそうな顔をして士道は白状する。士道が潔く自分の非を認め謝ったので、十香もそれ以上は追及しないでおくことにした。
「まぁ、今更かもだけど説明するよ。霊力を封印するにはまず、精霊と俺との間に絆がちゃんとないとダメなんだよ」
「ふむ、絆か。つまり、信頼とかか。あながち私も間違っていなかったんだな」
十香は士道に仕掛けた勝負が結果的には霊力封印に関係してたことでうんうん頷いていた。しかし、それだけでは封印できないのだと勘付き、話の続きを言う様に促す。
「それが第一段階だな。で、ここからが封印に関してなんだが……」
「ん?どうかしたのか?早く言わぬか!」
「……それがだな……キスなんだよ」
「……えーと。もう一度言ってくれぬか?なんか変なことを言われた気がしたんだが?」
「キスが封印する手段なんだよ」
「……ッ!」
一度は聞き返すが、士道がもう一度言うと、士道の発言と言いづらそうな理由を理解したようで、顔を真っ赤にした。どうやら、人並みに羞恥心はあるようだった。
(まぁ、クレープの時に十香食べるまでにだいぶ悩んでたし。だから、なんとなく言うのが躊躇われたんだよな……)
「まぁ、そう言う訳だ」
「……つまり、お主はあの耶倶矢とやらにも、その……したのだな!」
「そうなるな。あの時は耶倶矢からされたわけだが……」
「そして、まだ会っていない数人も封印していると考えられるな。複数人分の霊力を感じるし、女になっていたわけだから」
頬を掻きながら、今更ながらとんでもないことしてるよなぁ、とか思い、士道は呆れ半分恥ずかしさ半分の気持ちになって来た。十香も士道の様子から数人の霊力を封印していることにも気づいていてそんなことを言う。
「しかし、私とてそう簡単に封印されるわけにはいかなくなったな。キスというのは大事な物だと聞いたことがあるわけだからな。それ故に、霊力封印は嫌だな」
「まっ、そう考えるよな……」
「と言う訳で、私と付き合うというのなら考えなくもないぞ」
「話の脈絡ねー。というか、さっきは信用してないって言ってなかったか?」
十香の急な気の変わりように、士道は首を傾げる。この世界の十香はどうやら、気分屋だということがなんとなくわかった士道だった。
(付き合うってことは……彼氏彼女の関係に……でも、それになると他の精霊たちの霊力封印が出来なくなるよな。というか、昨日改めて決心したばかりなのに……あと何人いるのか知らないけど、とりあえず狂三はいるわけだし……)
士道はどうしたものかと悩む。
悩む士道を十香はじーっと見ていて、ふぅー、と息を吐く。
「悩んでおるのだな。それと、説明はちゃんとされたわけだし、とりあえずは信用しなくもない。それと、封印しても付き合わなくていいぞ。軽い気持ちでやらずに、ちゃんと考えてくれるか確認したかっただけだ。それに、どうやら脈もありそうだしな」
「?なんのことかわからないけど……まぁ、いいか」
「うむ、気にするな。ということで、霊力封印しないことも無いな」
(十香はこんなんでいいのか?まぁ、十香がいいなら……いや、いいのか?というか、俺がこんな気持ちでしていいのだろうか?それと、さっきから何か嫌な予感がするんだよなー)
士道は周囲を見回す。何処からか視線を感じるから。見えるモノは双眼鏡にパネルに、それとガラス越しから見える景色だけ……。
「なぁ、十香。気になることがあるんだが……」
「あぁ、士道も気付いたか」
二人は今の状況に不信感を抱いた。いつから始まっていたのか分からないが。二人背中合わせの状態になり、周囲を警戒し見回す。
「鞠亜、いつから京都タワーから人がいなくなった?」
『……つい数分前ですね。<フラクシナス>は天宮市にいた為に気付くのが遅れましたが、人が居なくなる直前にこの辺り一帯に魔力反応が検知されています』
「つまり、DEMとやらの攻撃なわけだな」
「ん?なんで十香は普通に会話に参加できてるんだ?てか、鞠亜の声聞こえてるのか?」
状況の分析に努めていると、ナチュラルに二人の会話に入って来た十香に、士道は疑問を口にする。
「ずっと聞こえていたし、いつ私に紹介してくれるのか待っていたんだぞ」
『地獄耳ですね。私は士道の鞠亜です。まぁ、今はそれよりもこの状況の打破を』
「電脳少女まで守備範囲とは……しかし、今はこの状況からか」
「鞠亜、周囲の反応は?」
『京都タワー内には誰もいません。おそらくは先月の美九を操っていた奴を改造して人を操ったと見た方がいいでしょうね』
鞠亜は推測ではあるが、とりあえず二人に伝える。
(そう言えば、あの機械壊さずに出たからな。もしかしたら後で回収されたのか?或いは新しく作ったか?)
士道は真那が壊していた事実を知らないので、そんなことを考える。今のところ視界には敵は見えないが気を抜いたらそこをつかれるので集中する。
「ぐッ!」
士道が見ていた方角の一部からチカッと光が見え、おそらく狙撃される可能性が高いと考えていた為、十香に声を掛けることはせず、<氷結傀儡>で作った氷の盾で攻撃を防ごうとするが、相当な威力の弾だったようで、勢いを殺しきれず後ろに吹っ飛ぶ。十香は十香で気配を感じてしゃがんだせいで、士道を受け止めるモノは無くそのままガラスを突き破って外に放り出された。
「士道!」
外に士道が放り出された士道に気付き、十香は手を伸ばすが、時すでに遅く、士道は重力に引っ張られ落下する。撃たれて尚且つこの高さでは士道は助からないと十香は思いながらも飛び出そうとするが、次弾が十香に向かって放たれ、十香は即座に霊装を纏い、<鏖殺公>で弾を切り裂く。そして、十香は下を見るともう士道の姿は小さく、今から追いかけて間に合わない距離だった。
「よくも我が友、士道を!許さん!」
士道の死は避けられないと十香は判断し、せめて士道の敵は取ると息を巻くと、穴の開いたガラスをぶった切り、士道を撃った奴がいる方向に向かって飛びだすのだった。
『士道、緊急事態です!十香が士道は死んだと思い込んで飛び出しました!』
「え、マジか。あれの狙い、たぶん俺だと思ったから、十香から距離置いたのに」
士道は<颶風騎士>の風を周囲に展開させて状態を安定させると、即座に鞠亜が十香の飛んで行った方向にガイドし、追いかけて行った。
~☆~
その頃、折紙たちは、
「提案。マスター折紙、これはどうでしょうか?」
「そうね、京都なら八つ橋は無難なところ」
みんなへのお土産を探し、京都タワーから少し離れた場所で歩き回っていた。だから、士道たちに起きていることを知る由も無かった。