デート・ア・ライブ パラレルIF   作:猫犬

85 / 146
10話 魔術師と精霊

「『前回のデート・ア・ライブ』」

『真那ちゃんが精霊になった日のことが分かったけど、これって後付け設定なんじゃないのー?』

「え?でも過去の見返したらそれっぽいのが何個かあったよ?」

『あー、本当だねー。続いて真那ちゃんが精霊の力を発動させたことで狂三ちゃんとの戦いが激化したみたいだねー』

「うん、途中で真那ちゃん大惨事になってたけど何で無事なんだろ?」

 

 

 

~~~~~

 

 

 

「まさか、<ラタトスク>陣営にこれほどの魔術師がいたとは」

 

折紙はエレンと数度武器を交わらせると、ブレイドを振りながらエレンはそんなことを言った。エレンの攻撃を槍でガードすると、エレンの発言をただのお世辞だと判断する。

(もしかしたら、褒めることで狼狽させるのが狙いかもしれない)

 

「そう。たぶんそれはこのユニットのおかげ」

「なるほど……しかし、それでもちゃんと扱えているようなので。あなた自身もそうとうですよ」

「……褒め言葉と受け取っておくわ。人類最強(笑)さん」

「なっ、あなたもそれを言いますか!」

 

しかし、ユニットのおかげだと言ってもそんなことを言ってきたので、折紙はいつか千花がエレンに言っていた呼び方をしたら、いとも簡単にキレた。そして、まっすぐに飛んできたので、回避は簡単だった。

(というか、こんな挑発でキレるって、この人をDEMのエースにしてて大丈夫なのかな?)

折紙はそんな心配をすると、ターンしてエレンの背後から槍で突きさす。エレンは周囲に薄い随意領域を張ることで、死角からでも折紙の動きを認識して、スラスターを噴かせて冷静に回避する。

ならばと、折紙は速度を上げてエレンを追随して、槍を振るうと、エレンはその場でクルッと回転して折紙の方を向き、

 

「穿て、<ロンゴミアント>!」

 

腰に付けていた砲身から光線を放った。折紙は槍から魔力を一気に放出して無理やり自身の軌道を逸らして回避すると、対象を失った光線は地面に着弾した。

 

「なるほど、装備に救われましたね。しかし、次はありません!」

「くっ……」

 

エレン的には今の攻撃でダメージを負わせられると思っていたがために、回避したことに感心すると、次はこちらの番とばかりにブレイドによる連続攻撃を行う。槍で凌いでいくが、初仕様なのと久しぶりのCRユニットでの戦闘の為、どうも以前のように動くことができず押されていく。

そして、折紙が転倒すると、エレンはこれでとどめと、折紙に向けてブレイドを振りかぶる。

(せめて霊装を纏えればよかったんだけど……)

折紙がここまでかと諦めかけると、いきなり遠くで謎の爆発音がして、振りかぶった状態のままエレンの意識がそちらを向いた。

その一瞬の隙を見逃さず、折紙は地を蹴ってエレンから距離を取る。

 

『折紙、バンダー君が全滅してしまいました。後緊急事態なので戻って来てください』

「了解。ナビよろしく」

『ええ、もちろんです』

 

鞠亜から通信が入ると、これ以上はエレンとやり合う必要が無くなったので、皆のところに戻ろうとする。

エレンは爆発音を気にするも、折紙を逃がすつもりも無く、地面を蹴る。

 

「逃がしませんよ!」

ズデーンッ!

 

そして、折紙は懐から出した機械の電源を入れると、エレンが地を蹴った瞬間CRユニットの機能が停止し、エレンはバランスを崩して転倒した。

真那からエレンはCRユニットが無ければそうとうな運動音痴と聞いていたので、エレンが転倒するのはなんとなく予想が付いていた。

 

「べつに逃げるわけじゃない。戦略的撤退なだけ」

「それを逃げるというのでは」

 

折紙は転倒しているエレンにそう言うと、エレンが何か言っていたが無視する。

 

「後で拾ってあげる」

 

折紙はそう言って士道たちのもとに走り出したのだった。

(それにしても、本当に魔力生成が出来なくなるんだ。まぁ、いいや、急がないと)

 

 

 

~☆~

 

 

 

琴里をかばって士道が斬られた時に戻る。

 

「あっ、やばっ。このブレイド峰無かったんだった。生きてる?五河君?」

 

士道の背を斬ってしまったアルテミシアはバツが悪そうな顔をして、何故か士道の心配をする。

すると、士道の背から琴里の炎が舐めて傷口を癒す。その光景を見てアルテミシアは、へぇ、とか声をこぼしていた。

 

「大丈夫?士道?無理しないでよ」

「……」

 

士道にかばわれた琴里は、心配そうに声をかけるが、士道は反応が無く、頭を押さえ始めた。

もしかしたら、霊力の使い過ぎで体調が悪化したのかと、琴里は考え顔色を窺おうとすると、士道がガバッと顔を上げ、

 

「うあぁぁぁー」

 

突然叫び、士道の身体から強風が吹き荒れ、すぐそばにいたことりは吹っ飛ばされる。少し距離が開いていた精霊達は少しよろめく程度で済み、十香は飛んできた琴里をキャッチして地面に降ろす。

 

「大丈夫か、琴里?シドーの身に何が起きているのだ?」

「助かったわ、十香。たぶん、霊力の使い過ぎで暴走が一段階進んだかも……」

 

十香は士道の方に視線を向けて問うと、琴里はそう返した。

士道はその場に停止しているが、時折強風が吹き、だいぶやばい状態なのだとこの場にいるメンバーは感じていた。

 

『琴里、士道の状態がレッドゾーンに入ります。どうしますか?』

「そう……。やっぱりそうなってしまうのね。わかったわ」

 

鞠亜がそう警告すると、琴里は暗い顔をしてから、すぐに表情を戻す。そして、精霊達に話しかけようとすると、

 

「うがぁぁー」

 

士道がさらに叫び声をあげ、士道を中心に霊力の大爆発を起きた。霊装を纏えない精霊たちは、爆発の余波に呑まれ――

 

「ふぅ、防衛システムの強化に行ってる間になんだかすんごいことになってるんだねぇ」

「一応、これって私のせいだよね?」

 

――なかった。

精霊たちのを護るように爆発との間に二人の人影が立っており、そう呟いていた。爆発の規模が大きかったためバンダースナッチとバンダー君は全部壊れ、その辺に居た魔術師たちは爆風で何処かに吹き飛ばされたようだった。

 

「助かった訳だけど、今までどこ行ってたわけ?」

「ん?だから、システム強化だよぉ。まぁ、今はすることがあるでしょぉ」

 

そこに立っていたのは、今まで何処かに行っていた千花と、士道の暴走の最後のトリガーを引いてしまったアルテミシアだった。なぜか、千花は限定霊装(九割バージョン)を纏っていて、その手には<死之果樹園>が握られていた。爆発の余波を<死之果樹園>でぶった斬り、それでも残ったものをアルテミシアが随意領域で防いだようだった。

七罪が半眼を向けると、千花はそう返し、士道の方に促す。

 

「というか、色々聞きたいことがあるんだけど……」

「私はパスが生きてるから、霊装は纏えるんだよねぇ」

「一応、私のせいみたいだからね。あと、あなたたちに死なれると私が困るから」

 

琴里が二人に聞こうとすると、質問内容が分かっていたのか二人は言い終わる前にそう言った。結果として、なんで千花のパスは生きてるのかとか、アルテミシアが精霊を生かす意味とか疑問がまた生まれてしまったが、士道のこともあるのでこれ以上の詮索は後に回す。

士道の周囲には濃密な霊力が渦巻いており、琴里の耳のインカムから、聞きたくなかったアラーム音が鳴り響いた。

琴里は息を呑むと、士道はもう一度叫び、地を蹴って空を飛んで、ショッピングモールの方へ行く。

精霊達もアルテミシアも見ていることしかできず、

 

「それで、琴里ちゃんはどうするつもりなのぉ?」

 

千花は琴里に“士道” をどうするつもりなのかを問う。

琴里は震える手を隠しながら、

 

「これ以上は危ないから皆はここで待っていて、私が何とかするから」

 

そう言い、精霊達は驚いた顔をしながら琴理を見る。

 

「待機だと?我らにできることは無いのか?」

「首肯。夕弦たちに何かできることがあるはずです」

 

耶倶矢と夕弦が反論すると、他の皆も頷く。琴里は皆の気持ちはうれしいと率直に思うが、危険に巻き込むわけにはいかなかった。

 

「大丈夫。ちゃんとこうなった時の為の準備はあるから」

 

だから、琴里はできる限り不安に思わせないよう作り笑いを浮かべて、明るい口調で伝えると、

 

「そうなんですか……頑張ってください」

「琴理さん、気を付けてくださいね」

 

琴里の言葉を信じて送り出され、琴里は士道が飛んで行った方に向かって走り出したのだった。

 

「んと、もしかして、精霊を捕まえる大チャンス?」

 

そして残された精霊たちを見てアルテミシアは首を傾げた。

 

「いや、連れて行かせないよぉ。というか、悪いと思ってるなら帰ってよぉ」

「それはそれ、これはこれだよ」

「うにゃぁ、なんでそうなるのかなぁ!皆は離れててぇ。或いは琴里ちゃんを追いかけてぇ」

 

精霊たちを護るように千花がアルテミシアの前に立つと、精霊達にそう言ってこの場から移動するように促す。

 

「えっ?でも、琴里には待っていろと言われたわけだろ?」

「琴里ちゃんの表情を見て、本当に納得のいく方法があるとは思えないでしょぉ?あんな作り笑い浮かべてるしぃ」

「……やっぱり、無理してたんだ」

 

最初は琴里を追いかけることに躊躇するが、続いた言葉を聞いて思い当たる節があったようで納得していた。

 

「分かった。私は琴里を追いかけるぞ」

「うん、琴里ちゃんをよろしくねぇ」

「分かったけど、千花も気を付けてね」

 

そして、皆、気持ちを切り替えると琴里を追いかけて行った。

皆を見送ると、千花はアルテミシアに視線を戻す。アルテミシアはそんな精霊たちを見ながら、何故か一段落するのを静観していた。

 

「待っててくれたんだねぇ」

「まぁ、ねぇ。私も思うところはあるからさ」

 

アルテミシアは頬を掻くと、千花はふぅ、と息を吐き<死之果樹園>を地面に突き刺して体重を乗せて寄りかかる。

 

「それで、そっちはどうする気なのぉ?DEMの幹部に幽閉されてるSSSのメンバーを取り返すのに精霊が必要なんでしょぉ?」

「えっ?なんで、それを?」

 

千花が急に核心をつくと、アルテミシアは驚いた顔をする。そのことを知っているのは、DEMでも一部の人間なだけに、困惑を隠せない。エレンにもウエストコットにも言っていないことだったので。

注)ちなみに二人とも知っています。アルテミシアが言わないから何もしないだけ。

 

「まぁ、情報なんてこのご時世、簡単に手に入るからねぇ」

「はぁ、それであなたが捕まってくれるの?」

「ううん。残念ながらそんな余裕はないよぉ。大体助けたら仕事としてそのうち戦うことになるんでしょぉ?」

「まぁ、そういう命令が下ればね」

 

そんな問答をすると、決裂かとアルテミシアはため息をつく。

 

「といっても、みんなを助けたらフリーの魔術師として犯罪者を捕まえる方向の仕事に切り替えるつもりだけどね」

「ふーん。でも、やっぱり無理かなぁ。私にも予定があるからぁ」

「じゃぁ、無理やり来てもらうね。一応、引き渡したら勝手に脱出してもらって構わないからさ」

 

そう言うと、アルテミシアは千花に向かってブレイドを振るう。

千花は<死之果樹園>を引っこ抜いてガードすると、

 

「アルテミシア、無事でしたか!」

 

明後日の方向からエレンが来てしまったのだった。

 

「はぁ、めんどいなぁ」

 

 

 

~☆~

 

 

 

場所と時間は移って真那と狂三の戦いに戻る。

 

「確かに撃ち抜いたはずなのになんで生きていますの?というか、先ほどのは一体?」

「月って太陽光を反射して輝いて見えるじゃねーですか」

「……?ええ、そうですわね。それが何か?」

「さっきのは、随意領域で霊力を固めた変わり身に真那の姿を反射させて見せただけです」

 

真那の発言を聞いたことで、撃ち抜いた真那の消え方の説明はつくもので、納得せざるを得なかった。そして、狂三は真那の天使の能力に当たりを付ける。

 

「……もう、なんでもありなんですのね。その天使の能力の一つは霊力でできたものは分解および吸収、再構築ってとこでしょうか?」

 

狂三の分身が斬られたことで消滅したこと、弾丸は弾かれただけだったことからそう推察すると、真那は頬を掻く。

 

「さすがの洞察力ですね。ですけど、一つ訂正しとくと、再構築は無いですよ。あれは随意領域との併用なんで」

「はぁ、これじゃ精霊を倒すために生まれた精霊じゃないですの」

「いえ、別に……いや、そうなりますか。真那的には、あなたみたいなタイプの精霊を止めるための力だと思ってるんですけどね」

 

真那はそう言って、真那が言ったことを証明するよう狂三に向かって行き、狂三はそれでもここでやられるわけにはいかないので銃で応戦する。

しかし、飛んできた弾丸は大鎌に弾かれるか随意領域で防がれ、瞬く間に距離を詰められた。そして大鎌を振るい、分身体を狩ると、

 

「予想通り、霊力量は見えているようですけど、これだけいると多少は誤魔化せるようですわね。【七の弾(ザイン)】」

 

その後ろにいた狂三が【七の弾】を放った。真那は当たったら動けなくなるので、なんとか大鎌を弾の射線上に動かして、大鎌と【七の弾】がぶつける。すると、【七の弾】の効力が発動する前に霊力が吸われて効果が発動することは無かった。

 

「ふぅ、危なかったですよ。さすがにまた喰らうのはあれですし」

「……まさか、吸収して無力化が可能なのですか。これは、厳しいですわ」

 

真那は額の汗を拭うような素振りをして安堵し、狂三は能力の厄介さに困り顔をする。しかし、戦闘中なので両者はすぐに気持ちを切り替えると、狂三は真那から距離を取り、

 

「もう、終わりにしましょうか。<月華狩人(サリエル)>――【理解(ビナー)】」

 

真那はその場で<月華狩人>の能力を解放させる。すると、持ち手についている透明な結晶が黒に染まる。何が起こるかわからず、狂三が警戒すると、さらに真那は行動する。

 

「アレフ」

 

真那は大鎌の刃で自分の指を少し切ると空を蹴り、一瞬で狂三(オリジナル)の背後に回っていた。まさかの瞬間移動に狂三が困惑すると、

 

「ザイン」

 

真那がさらにそう言い、狂三(オリジナル)の身体を斬り裂いた。斬られた狂三は特に傷が無く、分身体たちは斬られたのに無事だからと困惑する。しかし、斬られた狂三はその場から動かず、まるで時が止まったようだった。

そして、数秒経つと、狂三の時間が戻り動き出すが、

 

「チェックです!」

 

その首元には<月華狩人>が掛けられていて、妙な動きをしたら斬られる状態にあった。その為、分身体たちも下手に動くことが出来なかった。

狂三は降参の意思を示し、

 

「降参ですわ、真那さん」

「そうですか。じゃぁ、ちゃんと後で兄様に謝ってくださいね」

 

両手を上げてそう言うと、真那は狂三の首から<月華狩人>を離すのだった。

二人は地上に降りると、やっと<時喰みの城>が解除されたが、だいぶ時間を奪ったため、起きるのには時間がかかりそうだった。

 

「面倒なことしてくれましたね。ちなみに時って返せるんですか?」

 

真那はふとそんな疑問が生まれたのでそう問うと、狂三は首を横に振る。

 

「いえ、それは無理ですわ。あと、奪った寿命は大体一日分ぐらいですから……たぶん支障はないでしょう。ほとんどの人は寿命で息を引き取る前に病気とかで息を引き取るでしょうし」

「そうでしょうけど、もしかしたら……終わったことですし、どうにもならねーなら仕方ねーですね」

 

狂三の言い分に真那は納得できなくもないが、それでいいのかとも思え曖昧な反応になる。そして、突然、インカムから謎のアラームが鳴り響いた。

 

「ん?なんでしょうか、このアラームは?……兄様たちの方に何かあったのでしょうか?」

『真那、聞こえますか』

 

真那が首を傾げると、鞠亜から通信が入り、真那はインカムの通信をオンにする。

 

「なんですか、鞠亜さん。あと、さっきのアラームは?」

『緊急事態です。急いで来て下さい。説明は移動中にするので』

「急ぎですか。わかりました」

 

真那は通信を切り、事前に聞いていた場所に向かおうとする。そして、行く前に狂三の方を向いて話しかける。

 

「それで、あなたはどうしますか?」

「そうですわね。ついて行きましょうかね。一応、士道さんの体調を悪化させてしまった責任もありそうですし」

「そうですか。じゃ、行きますか」

 

真那は狂三の意思確認を終えると、士道たちのもとに向かおうと、地を蹴ろうとする。その直前、狂三は真那に待ったをかける。

 

「待ってください、真那さん。普通に行ったら間に合わないかもしれませんわ」

 

そして、狂三はある提案をするのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。