奏と美嘉ねぇが20歳になったLiPPS。当然することと言えば、呑み会でしょう。

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3年経ったLiPPS

「「「美嘉(ミカ)ちゃんお誕生日おめでと~~」」」

 

事務所に戻ったアタシを出迎えたのは、3人の自由人だった。

 

「あ、ありがとう。志希ちゃん、フレちゃん、周子ちゃん」

 

「いや~、これで美嘉ちゃんもついに大人の仲間入りだね~」

「フンフン、ちょっと大人の色香がするんじゃないかにゃ~」

「ホント、ついこの前まではカリスマJKだったのに、今やもう大人のレディだよねぇ」

 

「アハハ、そうかな?」

苦笑いするアタシ。確かに高校を卒業してからは変わったかもしれない。

 

「私も、美嘉はかなり大人っぽくなったと思うわよ」

 

「奏ちゃん。えへへ……奏ちゃんがそう言うってことは、自信持ってもいいかな」

 

奏ちゃんはすごく大人びていたのに、もっと大人っぽくなった。

同い年なはずなのに、何というか、私とはかなり違う。

 

「という訳で、美嘉」

そう言って奏ちゃんがアタシに詰め寄ってくる。

独特の色気を湛えた微笑を見て、アタシは後ずさる。

 

しかし、後ろには既にフレちゃんと志希ちゃんが行く手を塞いでおり――。

 

奏ちゃんに顎をくいっと掴まれ。

 

「今週の土曜の夜、空けておきなさい――」

 

「――は、はい」

 

何故か敬語になってしまった。

 

 

 

――そして土曜の夜。

 

「アタシはさぁ――」

 

そう、アタシ達は。

 

「あんな誘われ方するから……どこかお洒落なところに連れて行かれるのかと思ったのに――」

 

少し古ぼけた暖簾の前に立っていた。

 

「どうして居酒屋なのよっ!!」

 

「まぁまぁ、いいじゃない。ココって川島さんや楓さんの行きつけらしいわよ?」

 

それってダメな大人たちの行きつけってことじゃない。

いや、アタシたちももう大人なのか。

 

「まぁまぁ店の前にたむろってたら迷惑でしょー、ほら入った入った」

 

そう言ってアタシの背を押す周子ちゃん。

 

「え、ちょっと待って!アタシ初めてお酒呑みに行くなら二人きりでお洒落なバーって決めてたのにー!!」

 

「はいはい、誰と行きたかったかは聞かないでおいてあげるから。行くわよ」

 

そんなわけで、カウンターに5人並んで座る。

アタシがごねている間に、フレちゃんと志希ちゃんは既につまみを頼んでいた。

 

「二人とも、ちょっと気が早すぎるわよ」

 

「まぁまぁ奏ちゃん、そんなカリカリしないで。ホラ!酒の席はブレイコーって言うじゃない?」

 

「フレちゃん、ソレ意味わかって言ってるの……?まぁいいわ」

 

「それじゃー、とりあえず一杯頼んじゃおうか……で、志希ちゃんはさっきから何嗅いでるん?」

 

「ん?スルメ!あまりいい匂いじゃないけどクセになるねコレ!」

 

「あはは……みんな変わんないね……」

 

奏ちゃんはちょっと変わったけど。この自由3人組は全然変わらない。

強いて言うなら、周子ちゃんの髪型が少し長くなったくらいかも。

 

「じゃーフレちゃんはカシスオレンジー。志希ちゃんは?」

 

「じゃあ……、ジンライムでいいかなー。ライムの香り好きだしー」

 

「私はゴッドファーザーを」

 

「奏ちゃんホント強いの行くねぇ……あぁ、あたしはビールで」

 

「ココ居酒屋なのに、そんなお洒落なのあるんだ……。ていうか、周子ちゃんはビールなんだ……」

 

「やっぱ一杯目はこうじゃなくちゃね」

 

「そ、そうなんだ……。あ、アタシ一回呑んでみたいのあるんだよね」

 

「大抵のものならマスターが出してくれるから、遠慮せずに言ってみなさい」

 

マスターって。ココ居酒屋なんだよね?

まぁいいや。言うだけ言っておこう。

 

「それじゃあ……シンデレラで」

 

「美嘉、シンデレラってノンアルコールカクテルよ?」

 

「ええっ!そうなの!?……うぅ、せっかくだしちゃんとお酒呑もうかな……。アタシもカシスオレンジで……」

 

「ふふ、分かったわ。それじゃあお願いするわ」

 

「かしこまりました」

 

畏まってそう言ったマスター(?)さんは、シェイカーを振りだした。

浴衣にエプロンと言う奇抜な格好で。

 

に、似合わない……。

 

しかし、川島さんたちの行きつけだけあって、腕は確かなようだった。

リズミカルに振られるシェイカーに、アタシの目線は釘付けだった。

 

「それじゃあみんな揃ったところで、美嘉の成人を祝い――」

 

奏ちゃんが音頭を執る。

 

「「「「「乾杯!!」」」」」

 

「周子はジョッキをぶつけないでね」

 

「え~あたしだけ仲間外れ~?」

 

「そんなおっきなジョッキがぶつかったら、フレちゃんたちのか弱いグラスは吹っ飛んじゃうよ~」

 

「ま、確かにそうだね」

 

「にゅふふ~、良い香り~~」

 

「志希ちゃん、もうトリップしてるよ」

 

「放っておきなさい、気が向いたら話に入ってくるわよ」

 

「じ、自由だなぁ……。あ、美味しい」

 

初めて呑んだお酒は、フルーティーで呑みやすかった。

 

「でしょ~~、ホラホラミカちゃん、気になるの全部頼んでもいいんだよ?カナデちゃんの奢りだから!」

 

「奢るのは美嘉の分だけだからね?」

 

「「「え~奏(カナデ)ちゃんのいけず~」」」

 

「はいはい、あなたたちは自分のペースを守りなさいよ?」

 

「「「は~い」」」

 

この時のアタシは、初めて呑むお酒と、場の空気に完全に酔っていた。

酒は飲んでも飲まれるな。

ホントにその通りだね。

 

アタシはどんどん飲まれていって――。

 

 

 

「だぁ~かぁ~らぁ~~~、みんないつもアタシで遊びすぎなんだって~~!」

 

美嘉の様子がおかしい。

そんなに飲んではいない筈なんだけど……。

 

「美嘉?アナタ大丈夫なの?」

 

「こんなの平気に決まってんじゃん!!カリスマJK舐めちゃだめだゾ!」

 

「もう卒業してるやん……」

 

「そんな事より~~、志希ちゃあああん」

 

美嘉が志希に後ろから抱きつく。

 

「ん?何かにゃああああああ!」

 

「クンクン……、えへへ~志希ちゃんお酒くさぁい」

 

「うん、ソレ美嘉ちゃんの香りだよ?スーーーーーーハーーーーーーーいい匂い」

 

志希も負けじと首を回し、美嘉の匂いを嗅いでいる。

 

「えいっ」

 

周子が写真を撮っていた。

フレデリカは――既に落ちていた。

 

「はぁ――厄介なことになったわ……」

 

嘆息する。美嘉がこんなに弱いとは、想定外だった。

 

「なぁにが厄介なの~~?奏ちゃあああん」

 

「美嘉、そろそろ帰りましょう?アナタ結構酔いが回ってるわ」

 

「こんなの全然大丈夫らよ~~!そ、れ、よ、りぃ~~~」

 

「な、何よ?」

 

「奏ちゃんの唇って、やっぱりセクシーだねぇ……」

 

「そうかしら?自分ではあまり分からないけど」

 

顔が近い。酒の匂いが鼻をつく。

 

「ねぇ奏ちゃん――、キス、したことある?」

 

首に美嘉の腕が回される。太腿に体重がかかり、腰に足が回される。

 

「ちょっと、美嘉……」

 

「その様子だと無さそうだね……。ねぇ奏ちゃん、教えられるの教わるの、どっちがいい?」

 

美嘉の顔が近づく。何故か美嘉の艶やかな唇から、目が離せない。

だからだろう。後ろで周子と志希が、ニヤニヤしながらカメラを回しているのに気付かなかった。

 

鼻と鼻がくっついた。美嘉の大きな目が目の前にある。

吐息が近い。熱い。

 

「美、美嘉……、冗談はやめましょう?」

 

「アタシ、本気だよ……?」

 

「美嘉――」

 

美嘉の目が閉じられ、唇が私に触れ――

 

ゴチン。

 

「いたっ」

 

――触れる寸前に、美嘉の意識は落ちていた。

 

「――――ふぅ」

 

安心した。そして思い出した。

これって、3年前のステージの打ち上げで、私たちがからかったシチュエーションと逆だ。

 

「お酒の力もあるけど、美嘉も大人になったみたいね……」

 

脱力した美嘉を抱きとめながら、そう呟く。

 

「いや~奏ちゃん、いい風に締めようとしてるけど、奏ちゃん顔真っ赤だよ?」

 

「……ホラ、周子と志希はフレちゃん担いで。とりあえず私の家に行くわよ」

 

「あ、露骨に話題逸らした~」

「にゃふふ~、これは珍しいねぇ~」

 

「あなたたちねぇ……はぁ、ホラ早く帰るわよ」

 

「「は~い」」

 

そうして、酔いつぶれた美嘉とフレちゃんと私の家に運び、その日はお開きとなった。

次の日の朝、美嘉に聞いてみたが、酔った間のことを覚えていないようだった。

少し安心した。

 

周子と志希を口封じして、このことはあの場だけの秘密にしようと思った。

 

 

週明けの事務所で、周子が撮っていた映像をプロデューサーに見られることになるのだが、それは別のお話。


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