幻想郷の外来人   作:写楽―しゃらく―

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第一話です。特に何も起こりません。


第一章「紅魔異伝」
第一話「滅多な事は言うもんじゃないよね」


「ふーん。気づいたら見知らぬ場所に、ねぇ」

 

一通りの自己紹介を終えた俺の話を、さも興味なさげに、この紅白の巫女は俺の話を聞いていた。

 

「外来人か。まぁ珍しくもないんだぜ」

 

その紅白の巫女、博麗霊夢の横で、今度は逆に楽しそうに話を聞いていたのは、白黒のエプロンドレスのような服装に箒を持った、正しく魔法使いと言った感じの女性。名前は霧雨魔理沙と言う。

 

「しっかしまぁ、なんと言うか、お前さんまだ運が良い方だぜ?」

「異世界に飛ばされたってのにか?そんなまさか」

「魔法の森やら迷いの竹林やらに飛ばされてたら、野垂れ死ぬより前に餌になってただろうぜ」

「ははは…………は?餌?なんの?」

 

猛獣でもいるのかよ…………。そりゃ危ない所だった。

 

「猛獣の方が幾分マシよ」

 

俺の思考を読んだのか、疑問に答えたのは霊夢だった。

 

「猛獣の方がマシって、どういうことだ?」

 

それってつまり、猛獣よりヤバイのが居るってことか?

恐竜でもいんのかよ。

 

「ま、そのうち分かるでしょ。それよりアンタ、帰るんでしょ?」

「帰るって、どこに?」

「元いた世界によ」

「帰れるの!?」

 

普通こういった場合、帰る方法を必死になって探し求めるってのがセオリーじゃないか?

それで最後にはこの世界を救うために元の世界に戻ることを捨てて戦うってのが俺の中での王道なんだが。

 

「お前さん、運がいいぜ」

「運がいい?」

「霊夢はこの幻想郷の守護者なんだ。帰そうと思えばいつだって帰せるぜ」

 

マジか。なんかあっさり過ぎて言葉もない。

…………帰る、か。

正直、答えは決まっていた。

 

「いや、遠慮する」

「そう。それじゃ早速結界の――って、えぇ!?」

 

俺の答えに、霊夢は意外そうな声を出して驚いた。

 

「アンタ正気!?この世界はアンタが思ってるよりも危険――」

「まぁ大丈夫だろ。なんとかなるなんとかなる」

「住むところだって――」

「さっきお前たちが言ってた人里とやらに住まわせて貰うよ。なぁに、若い男の働き手なんて幾らでもあろう。食いっぱぐれることはないだろ」

「そもそも――」

「まぁ元々いた世界に、俺の家族はいないんだ。一人も。別に悲しむ人もいないから大丈夫」

「…………」

 

次々と言葉を発する俺に対して、霊夢は最後には絶句してしまった。

それを見ていた魔理沙は対称的に大笑いしていた。

 

「あっははははははは!お前さん、面白いやつだぜ!霊夢、お前の負けだな」

「べ、別に勝ち負けとか競ってた訳じゃないけど…………でもアンタ、本当にいいの?これを逃したら、もう私にも帰せなくなるのよ?」

「大丈夫だ。問題ない」

「…………なんだかすっごく嫌な予感のする断言だけど…………。はぁ。当人に帰る気がないのなら、私にはどうしようもないわ。好きにしなさい」

 

額に手を当てて、頭痛を抑えるようにやれやれと口に出して言う様は、なんだか苦労系の主人公のようだった。

 

「あはははははは!はぁー。笑い疲れたぜ。て言うかお前さんよ。実際の所、マジに住むところはどうするつもりだぜ?」

「いや、だから人里に――」

「そりゃ無理だ」

 

魔理沙がキッパリと断言したことに、なんだか嫌な予感がした。

 

「運の悪いことに、ついこの間、人里で妖怪が暴れたんだ」

「妖怪ってなんだよ」

 

俺の疑問に、魔理沙があー、と呟きながら説明をしてくれた。

 

~説明中~

 

 

妖怪とはその名の通りに妖怪らしい。以上。をい。

まぁもう少し詳しい説明だったんだが、俺に説明する気概がないので割愛。

 

「ふぅん、妖怪ねぇ。まぁ既に不思議体験を経験してるんだ、それきしの事じゃあ驚かないぜ」

「そいつぁ長畳だぜ。でだな、その人を襲う妖怪が、ついこの間人里で暴れたんだよ」

 

同じ説明をする魔理沙だが、先程とは違い俺は既に人里の人の妖怪に対する姿勢を聞いている。

と、なると少しおかしいことがある。

 

「と言うか、なんで妖怪が人里なんかにやって来たんだ?そこそこ知能の高い妖怪なら、霊夢がすっ飛んで来るってことぐらいは分かってるだろ?それにもし人里で暴れたんだったら、もう既に霊夢に退治されてるんじゃないのか?」

「…………あぁ、まぁなんと言うか、その時の状況は正に100年に一度あるかないかってくらいの事件だったからなぁ」

 

いまいち上手く説明出来ないでいる魔理沙に変わって霊夢が言葉を紡いだ。

 

「その暴れた妖怪、ってのが、元々人里に住んでいた人間だったのよ」

「人間…………?妖怪じゃないのか?」

 

妖怪と言ったり人間と言ったり、一体どっちなんだよ。ハッキリしてくれ。

 

「だから、”元”人間、よ。元々人間だった奴が、あることをきっかけに妖怪化した、って言えば分かるかしら」

「そんなことあるのか?人間が妖怪になんて」

 

それこそ、体全てを総取っ替えすることだろうに。

 

「まぁ、色んな条件が重なって重なって、ようやっと出来上がったようなものよ。滅多にはないわ。だけど…………」

 

バツが悪そうに、霊夢は言葉をつっかえる。それに呼応して魔理沙が続けた。

 

「それのせいで今人里は外に住む人間に対してかなり警戒している、ってことなんだぜ」

 

ああ、なるほど。確かにそりゃ、人里も大変な現状で新たな人間なんか受け入れる余裕なんてない、ってこったな。

 

「そうなると、住むところどうすっかな……。さすがに夜営はキツそうだし…………」

「夜営なんかしたら、多分5秒と保たないんだぜ」

 

嫌ーな笑みを浮かべて魔理沙が言う。

 

「仕方がないんだぜ。私の家に置いといても構わないんだが…………」

「いや、それはマズいだろ」

 

さすがに一人暮らしの女性の家になんて転がり込めるか。俺はそこまで主人公してはいない。

 

「なんだぁ?その年でまさか女と一晩一緒になったこともねえってか?ははは!」

 

ビキリ……。空気がひび割れる音が、確かに聞こえた。

…………何故か俺の真横から。

 

「悪かったわねえ…………、今の今まで経験なくて!」

「あ、いや、霊夢?お前に言った訳じゃないんだぜ…………」

 

なんで霊夢さんがキレてるんですかねぇ。

いつの間にやら霊夢の逆鱗に触れたらしい魔理沙は、慌てて取り繕う。

わーぎゃーと騒がしい二人を見ているうち、俺はいつしか笑っていた。

 

「何笑ってんのよ」

「ぶっ殺すぞ?あ?」

 

いや、怖いわ!見た目美人な二人のメンチ切りに怯えをなした俺も慌てて取り繕う。

 

「いやー!それにしても俺はどこに住めばいいんだろうかー!?」

 

明らかに棒読みである。

しかし、そんな俺の渾身の演技に惑わされたのかどうかは知らんが、霊夢は深いため息を吐いた。

 

「全く、しょうがないわね。暫くの間だったらうちに住んでもいいわよ」

「え!マジで!?ありがとう霊夢さん!!」

「え、ちょ、キャアアア!ななな、何いきなり抱きつこうとしてんのよ!ぶっ殺すわよ!?」

 

さすがにスキンシップが過ぎたか、自重自重。

しかし、これで当面の寝床が確保できたわけだ。そりゃ嬉しくもなるってもんだ。

 

「ああ、そうそう」

 

浮かれている俺に、霊夢は何やら思い出したかのように言う。

 

「家主は私だから、基本的に私の言うことは絶対よ。いいわね?」

「そりゃもう!居候の身なんだからなんでもするぜ!」

「ん?」

「ん?」

 

あ…………、なんかヤバい流れを感じる…………。

 

「今なんでもって言った?」

「言ったんだぜ。確かに」

 

ギラリと輝く瞳が何か怖い。

 

「あの…………、私一般人なので、出来る範囲でお願いします…………」

 

これから俺を待ち受ける運命は、やはり不幸なのかも知れない。

 




晴れて霊夢と同棲決定です。
人里で暴れた元人間ってのは、言うまでもなく彼です。
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