幻想郷の外来人   作:写楽―しゃらく―

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どうも。気ままに投稿です。
今回は少し長くなってしまったので、前後編で分けさせて頂きます。


第四話前編「必殺技とか超憧れる」

霧の湖と言うものがある。

その名の通り日中でも深い霧に覆われたその湖は幻想郷に於いても最も危険な地区の一つと言われている。

その場所に住まう妖精や妖怪はもちろんなのだが、それ以上にそこに近寄ってはならない、と言われる所以が、その畔にある。

紅魔館――

文明開化以前の文化レベルである幻想郷に於いては珍しく洋館である。が、それ以上に目を引くのは、その館の配色である。

血の色、と言えば聞こえは悪いだろう。しかしそれを連想させるかの如くの深紅の館は、まさに禍々しく、そして他者を寄せ付けない『何か』を放っている。

それが館そのものに起因するものなのか、それともそこに住まう者たちに起因するものなのか。

それは恐らく後者である。

 

紅魔館の別名。それは『吸血鬼の館』。

 

スカーレットデビルと呼ばれる吸血鬼が住まう館である。

そんな吸血鬼の館に近寄る、一人の影。

最近幻想郷にやって来た外来人は、まるで引き寄せられるかのようにそこへと足を踏み入れて行く。

待ち受けるのは何なのか。

とりあえず吸血鬼は待っていることだろう。

運命を操る吸血鬼、『レミリア・スカーレット』が。

 

 

 

 

 

 

「太陽拳とか使えたら、吸血鬼倒せんじゃね?」

「ああ、ハゲてる上に使えたらの話だがな」

 

俺は今、霧の湖と呼ばれる湖の畔をとぼとぼと歩いていた。

なぜかと聞かれれば、実は俺にも少し分からない。

今朝がた、魔理沙が博麗神社にやって来た時にこう言った。

 

『おい!紅魔館行くぞ!』

 

待って。唐突過ぎるだろ、と言うツッコミは、この幻想郷にやって来て一月経った現在に於いても聞き入れられることはなく、こうして俺はその紅魔館と言う館に誘われていると言う訳だ。

 

「私的にはかめはめ波でも十分効果的だと思うんだぜ」

「待って。ドラ◯ンボール幻想入りしてんの?」

 

今現在でも圧倒的人気を誇るかのバトル漫画が、まさか幻想入りしているとは…………。少しショックだった。

 

「私はあれが好きだぜ。悟◯がピッコ◯に頼んでラ◯ィッツと共に貫かれるシーン」

「俺はやっはサ◯ヤ人覚醒の時かなぁ」

 

などと談笑しているうちに、なんやかんやで紅魔館へと到着した。しちゃった。

 

「こいつはまた…………、異様に禍々しいな」

「だろ?良い趣味してるんだぜ」

 

これを良い趣味と言い放つ魔理沙は、やっぱりどこか感性がおかしいのだろう。俺からしたら最高に趣味が悪い。

真っ赤な様相は、まるで血のようであり、どこか重苦しいイメージだ。

息が詰まりそうになる感じ。

 

「と言うか、俺まだどうしてここに連れて来られたのか知らないんだけど」

 

なんやかんやで連れてこられてしまったため、理由を聞いていなかった。

 

「ああ、それはだな――」

 

 

 

「あら魔理沙。来ていたの?」

「おう。お邪魔しているんだぜ」

 

その日、私はいつものように紅魔館の図書館へと訪れていた。

理由はこの図書館の主、パチュリー・ノーレッジが所持しているこの図書館の本だ。パチュリーの持つ本は本当に研究に役立つから重宝してるんだぜ。

私に話しかけて来たのは、その図書館の主、パチュリーだった。

 

「あ、そうそう」

 

椅子に座ろうとしたパチュリーだったが、何かを思い出したかのように言った。

 

「魔理沙、レミィが呼んでたわよ」

「レミリアが?一体なんの用だぜ?」

「私が知るわけないでしょ。またなんか盗んだんじゃないの?」

「失敬な。ちょっと借りてるだけだぜ。死ぬまでな」

 

いつものセリフを吐いてみるが、しかしあのレミリアが、私に用事があるとは、珍しいこともあるもんだ。

面白そうなので取り合えず行ってみることにした。

 

「あら。来たわね魔理沙」

 

窓の一つもない部屋。その上座に位置する場所にこれまたドでかい椅子が置かれていて、レミリアはそこに優雅に腰かけていた。

足届いてないけど。

 

「魔理沙。一言余計よ」

「まだ何も言ってないんだぜ」

 

相変わらず霊夢にしろレミリアにしろ、幻想郷のヤバい連中たちは読心が凄まじ過ぎる。どこぞの覚妖怪じゃあるまいし。

 

「んで?わざわざ私を呼び出したのは、一体全体どういうわけなんだぜ?」

「ああ、そうそう。あなたに聞きたいことがあったのよ」

 

レミリアがパチンと指を鳴らすと、いつの間にか私たちは『テーブルを囲んでお互いに見合って座っていた』。何を言ってるのか分からねーと思うが、私には何をされたのか分かっていた。

 

「相変わらず心臓に悪いからやめて欲しいんだが、咲夜」

「あらごめんなさい。でもこっちの方が手っ取り早いのよ」

 

いつの間にかレミリアの傍らに佇む一人のメイド。名は十六夜咲夜。この紅魔館唯一の人間にして、メイド長を務める『時を操る程度の能力』を持つメイドだ。

先程の一瞬の出来事は、レミリアが指を鳴らしてからコイツが時間を停止させて、その間に行ったことだ。

 

「まぁいいや。で?本題は?」

「そうそう。最近面白そうな噂を耳にするのよね。霊夢の所に外来人が居候してる、って」

 

その事か。まぁ多分そうだろうなーとは思っていたけど。

 

「その通りだぜ。そいつがどうかしたのか?」

「別に。最近は妙に退屈でねえ。フランも出ていってしまったし。何か娯楽を探していたところなのよ」

「そいつの話を聞けば退屈が紛れるのか?」

「少しはそう期待しているわ」

 

レミリアは優雅に紅茶に手をかけた。どうやら既に聞く気マンマンらしい。

 

「そうだなぁ。それじゃあ本当に最初から――」

 

 

 

 

「ってな感じて話してたらレミリアが『面白そうだから連れてきて頂戴』とか言ってな。私としてもヒマだったし、了承したわけなんだぜ」

 

つまり、こいつのせいで俺は幻想郷でも危険な地区にある館の、それもその主である吸血鬼から直々に招待されてしまったと言うわけだ。こいつのせいで。

 

「まぁまぁ!レミリアも取って食おうなんざ思ってねえって」

「取って食えるから吸血鬼なんだろうが…………はぁ。俺に平穏は訪れないんだな。きっとそう言う運命なんだ」

 

そう言って項垂れていると、紅魔館の門が見えてきた。

随分とドでかい門の下に、誰かいるのも分かった。

赤い髪に緑色の……チャイナ服かな?を身に纏った、スタイル抜群の女性だった。

…………寝てるのかな?

 

「おーい。美鈴―」

 

魔理沙が大手を振ってその人に話しかけると、その女の人は片目をパチリと開いて魔理沙を確認する。

 

「おや、魔理沙さんではありませんか。今日も相変わらず盗人ですか?」

「人聞きの悪い。借りてるだけだぜ。死ぬまでな」

 

そんなやりとりをする魔理沙と女性。

 

「ところで、そちらの方は?」

「ああ、こいつが例の外来人だ」

 

ああ、とその女性が呟くと、パン!と右手の拳を左手で包み込むように構える。なんか中国っぽい。

 

「申し遅れました。私は紅魔館が門番、紅美鈴と申します」

「あ、ご丁寧にどうも」

 

それに倣い俺もお辞儀をする。しかしなんと言うか…………。

 

「門番って言っても、人間に門番が出来るんですか?」

「え?」

 

俺の言葉に、美鈴さんはどこかきょとんとしていた。何かおかしいこと言ったかな?

 

「あの、魔理沙さん?」

「あー、そういや説明してなかったな」

 

魔理沙がなんか面倒くさそうな表情をする。なんなんだよ。俺だけ除け者か?

 

「一応、美鈴は妖怪なんだぜ」

「えっ」

 

マジですか。どっからどう見ても人間にしか見えないんですが。

唖然とする俺に、美鈴さんは少しだけ苦笑しながら答えた。

 

「まぁ、妖怪としては下級ですし、見てくれも人間みたいですからね、私は」

 

たはは、と笑う笑顔には、どことなく愛嬌がある。なんとも親しみやすい印象だ。

 

「それでも、ただの人間相手に引けは取りませんよ。こう見えても妖怪ですので」

「それは身をもって知ってます。妖怪は見た目じゃ判断できないって」

 

先日のルーミアの件が特に顕著に記憶に残っている。あんな見た目で中身も子供っぽいのに、放つ威圧感は人間にはないものだった。

 

「ま、外見から判断しないようになったのは、一歩前進ってトコなんだぜ」

「そう考えれば成長してる、ってことか」

 

命の危険がなけりゃそれでいいや。俺は。

 

「仕事をサボって何をくっちゃべっているのかしら?美鈴」

「ひっ!」

 

本当に突然、どこからともなく声が聞こえた。どっからだ?

 

「咲夜。だから心臓に悪いから普通に登場してくれなんだぜ…………」

「あら。時間ロスはメイドの恥ですわ。何事も効率が大事なのよ?」

 

その声の主は魔理沙の隣に、本当にいつの間にかそこに居た。

銀髪に赤い瞳。そして狙いすぎだろと言わんばかりのメイド服。ガチモンのメイドさんだった。

 

「はじめまして。私、紅魔館にてメイド長を務めさせていただいております、十六夜咲夜と申します。本日はようこそおいでくださりました」

「あ、これまたご親切にどうも」

 

恭しく見事な礼をするその人、十六夜咲夜さん。ついついこちらも畏まってしまう。

 

「…………随分と、思ってた感じと、また違いますね」

「は?」

 

何が違うんだろう?

 

「いえ、こちらの話ですわ」

 

咲夜さんは、それ以上続けるつもりはないと言う感じに話を切り上げる。そんな言われ方だと気になって仕方がないじゃないか。

 

「それでは、我が主がお待ちですので、こちらへどうぞ」

 

モヤモヤとした気分は晴れないまま、俺と魔理沙は咲夜さんの案内に従って行くのだった。

 

 

 

 

今日やって来た外来人…………。私の想像とは、かなりかけ離れていた。

妖怪を退けたと聞いていたから、てっきり霊能力や超能力の類いを持ち合わせているのかと思っていたが、それらを全く感じさせることはなく、むしろ完全なる一般人と言う印象だ。

ただの人間であるにも関わらず、宵闇の妖怪を倒したと言うのは、甚だ信じがたい。やはりあれはただの噂に過ぎないようだ。

まぁ魔理沙のことだから、偶然倒したと言う事実が曲解しているのだろうと推測出来る。

心配して損した気分だ。

もしこの男が危険な者で、我が主、レミリアお嬢様に危害を加えるつもりならば、容赦なくこの場で切り殺してやろうと思っていたが――

 

「…………随分と、思っていたのと違いますね」

「は?」

 

おっといけない。聞かれてしまったか。

 

「いえ、こちらの話ですわ」

 

妙に納得のいかない表情をした男を案内するために、私は先導し始めた。

 

 

 

 

「私は図書館に行ってるんだぜ。終わったら呼んでくれ」

 

と言って、魔理沙は一緒に付いてきてくれなかった。

 

館の中は外とは違い、赤い調度品こそ多く見られるが、しかしそれでも普通の内装をしていた。本当に普通。ちょっと高級そうなホテルとかそんな感じ。

 

「こちらですわ」

「アッハイ」

 

言われるがまま案内される俺と魔理沙。しかし広い館だなー。

 

「て言うか、広すぎだな…………」

 

明らかに外観と内観で広さに矛盾が生じている。あの建物の大きさに比べて天井が高いだとか、廊下が長すぎるだとか。なんかの能力か?

 

「あら。お気付きになりました?これは私の能力を使って、空間を広げているのですわ」

「空間を広げるって…………どう言うこと?」

「説明すると長くなりますので、割愛させていただきますわ」

 

やめてよさっきから。説明してくれよ。気になって気になって仕方がないじゃないか。

 

「こちらです」

 

と、やきもきする俺を完全に無視して、咲夜さんが立ち止まる。

そこには、一際大きな扉が佇んでいた。

なんとなく分かる。ここにこの館のボスが居る。

雰囲気と言うか、感覚と言うか、なんか俺には説明出来ない謎の力を感じる。奇妙な圧迫感に加えて、空気がビリビリと震えるような威圧感。人間には出せない『圧』が、扉一枚を隔てて向こう側から発せられていた。

 

「お嬢様、お連れいたしました」

 

コンコン、と小気味の良いノックをしたあと、中から返事が返ってくる。

 

「ご苦労様。入ってもいいわよ」

 

ぞわり、と、背筋に冷や汗が一筋流れるのを感じた。女性の声ではあったが、まさに人ならざる者の威圧感が大いに感じ取れる。

失礼します、と言って、咲夜さんが扉を開けると――

 

そこに居た女性に、思わず見蕩れてしまった。

 

ピンク色の服装は、どこか幼さを垣間見せながらも、しかしそれに対比してすらりと伸びた手足にスレンダーな体つき。青みがかった銀髪からは、まるで月の光りが放たれているかのようにきらきらと輝いていた。

 

「――…………」

「よく来たわね。私は紅魔館の主、レミリア・スカーレッt……って、聞いてるのかしら?」

「はっ!?俺は一体何を!?」

 

ようやく我に返った俺だったが、いまだに目の前の美女に圧倒されているのは事実で、ぶっちゃけて言うと少しだけキョドっていた。

だってさぁ、今まで俺が見たこともないくらいに美人なんだぜ?人見知りしない俺ではあるけど、それでも気恥ずかしさってのはあるもんでさ。

 

「すいません。少し驚いてました」

「あら、何にかしら?」

 

レミリアさんはクスクスと笑いながら、俺の言葉を待っている。その姿もどこか妖艶だ。

 

「まさか紅魔館の主が、こんなに綺麗な人だったとは。予想外でした」

「あら、上手ね。予想していたのはどんな感じだったのかしら」

「そりゃあもう、でっぷり太った外人のおっさん的なイメージでした」

 

俺の言葉に、レミリアさんは満足そうに笑った。

 

「フフフ…………。あなた、なかなかに面白いわね。咲夜。紅茶の準備を」

 

と、レミリアさんが指をパチン、と鳴らすと――何も起こらなかった。

あれ?と、レミリアさんが首を傾げて、チラリと自分の背後を見てみると、そこにはなんか項垂れている咲夜さんが居た。どったの?

 

「さ、咲夜…………?どうしたのよ?」

「――――」

 

レミリアさんが声をかけても、咲夜さんは項垂れたままブツブツと何かを呟いている。なんだと思って耳を傾けてみる。

 

「お嬢様が大人のお姿になってしまわれました以前妹様に対抗してなられたお姿になってしまわれましたああ私は再びこの絶望を味わうことになろうとは全く思ってもみませんでした見栄っ張りなお嬢様のこと客人相手にしかも男性ともなれば威厳を保ちたくなるのも分かりますしかしこれはあんまりでは私はどうしたらそうだ客人が来たのが原因ならばその客人を排除すればなんら問題はないはずやはりあの男は私の敵そう仇敵であったのですねそうと分かれば直ぐにでも滅さなくてはなりませんねこの私の心の平穏のために」

 

怖ええええ。どうしたの咲夜さん。どうしてそんな呪いの文言のように息継ぎなしでブツブツと言葉を並べられるの?と言うか虚ろな目をして俺のこと見ないでくれませんかねぇ。あとレイ◯目でナイフ持つなや。怖いんだよ。ヤンデレか。

 

「ああもう!落ち着きなさい咲夜!!」

 

レミリアさんがそう言うと、咲夜さんは、はっ、と我に返った。

 

「申し訳ありませんお嬢様。取り乱しました」

「本当よ。全くその癖直せないの?」

「申し訳ありません。ですが直ぐにあの男を殺しますので少々お待ち下さい」

「分かってねぇ!?ああもう!これでいいんでしょ!?」

 

レミリアさんがそう言うと、彼女の体が霧に包まれて、みるみるうちに姿が変わっていった。

一瞬でその姿は、絶世の美女から、ちょっと生意気そうな美少女へと変貌した。

 

「あれ?その姿は?」

「全く…………。これが私の本当の姿。レミリア・スカーレットよ。よろしくね」

 

ムスっとしながら頬を膨らます姿は、まさしく子供のようだった。

 




魔理沙は親友ポジ。
咲夜さんは以前から変わりありませんようで安心しました。
後編はそのうち。お待ち下さいますよう。
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