幻想郷の外来人 作:写楽―しゃらく―
第七話、投稿させていただきます。
第五話「いつまでもアルバイトじゃカッコ悪い」
幻想郷の…………と言うか、幻想郷とは全く違う、次元を隔てて隣り合わせに存在する世界がある。冥界と呼ばれるそこは、死者の魂が移ろい、転生が決まった、もしくは成仏待ちの霊が、次の輪廻の輪に加わるまでの期間を過ごす場所。ひんやりとした空気は、涼しいと言うよりもはや肌寒い程である。死者の魂は温度が低い為、それを維持する為に気温が低いのか、はたまた魂そのものが冷気を放っているのかは定かではない。
フヨフヨと所在なく漂う魂たちの向かう先は特に無く、本当に漂っているだけなのだが、しかし何故だか魂が集中的に集まる箇所が存在する。
まるで引き寄せられるかのように、川面に浮かべた木の葉が水の流れに沿って流れるように、自然にその場所――白玉楼と言う屋敷へと集まっていく。
特に何かあるわけでもない。ただただ魂たちは自由に漂いつつも、はっきりちその場所を目指していく。理由は何故か?それは恐らく、その屋敷の主が引き寄せているのだろう。
「妖~夢~」
――西行寺幽々子。
冥界の姫であり、この白玉楼の主にして冥界の管理者を務める亡霊少女だ。かような口調の通りおっとりとした性格で、その人目を惹く容姿も併せて美人である。美人と言うよりは、可愛らしい雰囲気と言う感じだろうか。
「お呼びですか。幽々子さま」
名を呼ばれ、タタタ、と小走りでその場に現れたのは、白玉楼の専属庭師にして幽々子の付き人兼剣術指南役である少女、魂魄妖夢。
見た目はまだ十代も半ば程度に見える少女であるが、しかし彼女も幻想郷の住人。見た目=年齢と言う図式は成り立たず、実年齢は六十を越える。
彼女もまた、半人半霊と言う種族として生まれた、歴とした人外である。
「ご飯はまだかしら?」
「さっき食べたばかりでしょう!?そんな高齢者みたいなこと言わないでください!」
パァンッ!と勢いよく襖を閉めて妖夢は立ち去る。
あらあら~、といまだにのほほんとした幽々子は、柔らかな母性を感じさせる笑みを浮かべて呟いた。
「せっかく美味しそうな『メインディッシュ』があるって言うのに、妖夢ちゃんはお堅いこと」
含みある言い方は、一体何を指して言っているものなのか。
いや、誰のことなのだろうかは、幽々子にしか分からない。
――――――――
人形のような少女がそこに居た。
いや、人間のような人形、の方が正しいかもしれない。
白磁のような肌。目も眩む輝く金色の髪。整合の取れ過ぎた手足。こちらを見つめる硝子細工のような青い瞳。
作り物のような肌。作り物のような髪。作り物のような手足。作り物のような瞳は、まさしく人形と思えるように美しく、そしてそれ以上に不気味だった。
心なき人形が、無理に人間として振る舞おうとしているようで。
「はじめまして。私はアリス」
アリス・マーガトロイド。魔法の森に住まう人形遣いの少女。
操るのは人形か、はたまた己なのか。
俺には分からなかった。
――――――――――
「ねぇ」
「…………」
言いたいことは分かっている。彼女――俺の居候先の主人である博麗霊夢と向かい合って、俺はただただその場にて座っているしかなかった。
この上なく情けないし、みっともないということは分かりきっていて、しかしそれでも、理解したところで現状を打破出来るとは如何ともし難く、ただ黙っているしかなかった。
「どうしてこうなっちゃったのかしらね……。私たちは、ただ普通に日々を送っていただけだと言うのに」
「……全く、その通りだな」
言葉に含む絶望は、人間ならば誰しも味わったことがあるだろう。運命に対して抗っては見たものの、しかし結果として全く無意味で、更なる絶望に晒される。
泣きっ面に蜂、とか言う言葉が思い付いたが、それ以上だろう。絶望はやがて実際に俺たちの心を蝕むことは確実だ。それに対して俺たちの心が保つかどうかは怪しい。
「一体どうして、ウチが財政難になってご飯もまともに食べれなくなっちゃったの?」
「分からない」
現在、ここ博麗神社では、かつてない未曾有の財政危機に直面していた。
つまり今現在、絶賛台所事情が貧窮している、という事である。
「こうなる事が分からなかったの?アンタ」
「……予兆はあった」
実は薄々だが、いずれこうなるとは分かりきっていた。そりゃそうだ。博麗神社の主たる収入源はお賽銭。霊夢が行っている異変解決は臨時のアルバイトみたいなものだ。異変なぞそうそう起こるものではない(らしい)し、賽銭はもともと人の訪れることの少ない神社にわざわざお参りする人もほぼ皆無だ。その上、穀潰しである俺は絶賛無職のプー太郎。霊夢一人ならまだなんとかなったことだろうが、しかし成人男性である俺が一緒に暮らしている以上、生活費は2倍近くかかるのは当然だ。
直ぐにでも金が必要になるのだが、しかし俺は幻想郷に来て間もなく、そして人里には行ったこともない。初めて見る人間相手に、人里の人々が警戒しない訳がないのだ。
更に、以前魔理沙が言っていた、人里で暴れた妖怪のこともある。外からやってくる者に対する警戒心はいまだに薄れてきているとは言い難いらしかった。
しかし、俺が霊夢に働きに出ろ!何て言えるわけがない。穀潰しであり無職の俺にはそんな事を言う資格などない。
マジでどうするか…………、と頭を抱えて悩んで居るところに、襖がパァンッ!と勢いよく開かれた。
「オッス!シケた顔してやがるなぁ!オイ」
「この上なく話をややこしくする魔女が来たぞ。なんとかしろよ霊夢」
「お腹減って力が出ない……」
ヤバイな。今の俺たちに、パワータイプの魔理沙を相手にするほどの体力は全くない。追い払おうにも、その元気はなかった。
「おいおい、まるで『面倒な人が来ちゃったなぁ~』、みたいな顔はやめるんだぜ。さすがの私も少し傷つくぜ」
「あら、傷つくだなんて殊勝な心を持っていた事に驚……はぁ」
「言いかけてやめるのマジやめろ!今のマジで傷つくいたぜ!?」
どうやら魔理沙も今俺たちが置かれている状況の深刻さが理解できたようで、呆れたような表情をした。
「ったく、しょうがねえなぁ」
魔理沙はそう言ってがさごそと手に持っていた袋を漁り始める。やけに大きな布袋だった。
「ほれ。米とキノコのお裾分けなんだぜ」
「「神様!!」」
「綺麗な掌返しやめーや」
なんと魔理沙が食料を分けてくれた!一体彼女に何があったと言うのだろうか?もしや、魔理沙の姿をした妖怪ではなかろうか?そうでなくとも、俺たちは幻覚を見ているんじゃないだろうか?
「ほほぅ。そこまで言うならこれはいらないってことなんだぜ?」
「あっ、待って待って!嘘です!魔理沙さん最高です!よっ!幻想郷一デキル女!愛してるー!」
「はっはっは!そうかそうか!私はそんなに良い女か!」
「ええそりゃもう!最高っすよ!」
「しょうがないなぁ!そんじゃ、少し待ってろ。私が腕によりをかけて料理作ってやるぜ」
「おお!魔理沙のお手製料理が食べられるとは!今日はなんと良い日なんだろうか!」
実際、魔理沙の手料理はかなり旨い。何度か食べさせてもらったことがあるのだが、その道でも生きていけるほどだ。実家に住んでいた頃に仕込まれたらしいが、独り暮らしするようになってからは適当に済ませているのだそうだ。誰かに振る舞う時だけ本気で料理するらしい。
とにかく、神のような魔法使い様が台所へと向かっていった。
「ああ……やっと白いご飯が食べられる……」
「…………すまん」
俺はちゃぶ台に突っ伏して霊夢に謝った。
「……なんでアンタが謝るのよ」
「いやほら……霊夢一人なら食費とか生活費にそんなにかからないだろ?……やっぱ俺が居るからこうして負担かけちまってるわけだし…………」
「別にそうでもないわよ」
同じように突っ伏しながら、霊夢は首だけを俺の方へと向ける。自然、目があった。淀みない大きな黒い瞳は、一直線に俺の瞳を見据える。まるで心の中を見透かそうと凝らすかのように。
そういや、こいつって結構な美人だったっけ…………、と何故かそんなことを思ってしまう。整った顔立ちからは想像できないようなだらけた顔は、どことなく愛嬌すら感じさせる。
「前からこんな感じに行き詰まることってのは何度もあったしね」
「何度も!?」
予想外の言葉にびっくりした。何度もって、なんでそうなるんだよ。
「異変も頻繁に起こってはいたけれど、それでも年単位よ。それこそ額面分しか貰えないのなら、暮らしてなんていけないわ」
「……意外と強かに生きてるんだな」
でも、それならなおさら悪いことしたなぁ。折角落ち着いた生活を俺が来たばっかりに不安定にさせてしまったと言うのなら、申し訳ない。
「ま、でも――」
霊夢は突っ伏した体勢のまま、少しだけ笑う。まるでイタズラ好きの子供のような笑顔を俺に向けて言った。
「アンタが来て、一人でご飯食べることがなくなったから、まぁ、おあいこってとこかしら」
「…………そーかい」
霊夢として、本当に何気なく言っただけなのだろう。しかし、俺はふいと顔を背ける。
気恥ずかしさで、顔から火が出そうだったから。
☆
「なるほど。つまりいつも通りに金欠ってわけか」
「ほぉいうほと」
「食べながら喋んな。行儀悪いぜ」
魔理沙が作ってくれた食事を一心不乱に頬張りながら、俺は魔理沙と話していた。霊夢はすでにお腹いっぱいらしく、縁側でのほほんとお茶を飲んでいる。一緒に暮らしていて思ったのだが、霊夢は俺の(現代人としての)感覚からしても、かなり少食だった。そんなしか食べないで大丈夫なのかとさっき聞いてみたら、曰く
「慣れてるから。少ない食料で効率よく栄養を摂取するのは」
涙が出そうになった。魔理沙は爆笑していた。
で、だ。霊夢はそこまで食べる方ではないのだが、しかし折角魔理沙が気を利かせてくれた料理を残すのも失礼と思ったので、俺が出来る限り食べきることにしたのだ。
「私としては、取っといて明日にでもまた食べてくれても構わないんだが…………。と言うか、作った身としてはもう少し味わって食べてほしいぜ」
言葉とは裏腹に、ちゃぶ台に肘をついて俺の食事を眺めている魔理沙は、どことなく嬉しそうな表情をしていた。やはり誰かに振る舞うと言うのは気持ちが良いものなのだろう。俺だってそうだから。ニコニコと俺の顔を凝視するのはさすがに恥ずかしいのでやめて貰いたいものだが、まぁそれで魔理沙が気分よくなるのなら、と割り切った。
「おいおい。ほっぺにご飯粒付いてるぜ」
「ん?あぁホント――!?」
ひょい、と。魔理沙が身を乗り出したかと思うと、俺の頬に付いていた米粒を指で摘まみ、そのまま自分の口へと運んだ。
どこぞのラブコメですか、と突っ込みたくなったが、如何せんまだ口に残っているので声が出なかった。
「ん?どうした?顔真っ赤だぜ?」
「…………魔理沙さんは意外と純真なんですね」
天然って恐い。
「で、だ。お前らこれからどうするつもりなんだぜ?」
魔理沙が話を切り出す。
どうと言うのは、まぁ当然俺たちのこれからの生活のことだろう。
「仕事は…………あるのかなぁ」
「それは厳しいところなんだぜ」
魔理沙が現在の人里の様子を教えてくれた。やはり現在でも外の者に対して警戒心が強く、見ず知らずの人間を受け入れるほどの余裕はないようだ。
「って感じだぜ。正直、後を引きすぎているっていうのも否めないな」
「確かにね」
縁側で茶を啜っていた霊夢がいつの間にかちゃぶ台の横に座っていた。気配を消すの上手すぎませんかねぇ?
「確かに、人里が少しだけ過剰気味になってる感はあるわ。でもまぁ、それも仕方のないことよ」
「仕方ないって、どう言うことだ?」
飯を食いつつ、俺は霊夢に尋ねてみた。
「人里は基本、異変とは無縁なのよ」
魔理沙が再び淹れてくれた茶を啜りながら、霊夢は話した。
「異変とは幻想郷を巻き込むレベルの事件ではあるけれど、それでも人里の人間はこう思っているのよ。『誰かが解決してくれる』ってね。まあそれは事実なのだから仕方のないことなんだけれど。でも、そう言った……、何て言うのかしら?『危機感の無さ』って言うのが響いてるんでしょ」
「なんか現代人みたいな感覚だなぁ」
分からなくもない。俺の生まれが日本だから、特にとも言える。日本は世界で最も平和な国と言われているが、その分、取り分けて危機感が薄いとも言われている。自己防衛が基本の海外からしてみればあり得ないと言うことなのだが、そう言った環境に慣れてしまえばそうなるのは当然とも言える。
しかし危機感の無さはイコール対応力の低さに繋がる。
明日何かが起こるかもしれない、と言う意識の無さは結果として何かが起きた時へ、ツケとして雪崩れ込む。今の幻想郷の人里はそう言う状況なのだろう。
「現代人がどうかは知らないがな。でも、それでもタチの悪い話だぜ。なんたって今の人里では、『多少であろうとも能力を持つ人間』を排斥する流れになってるからな」
「排斥…………?そりゃ一体どういう…………」
「言葉のまんまだぜ。私や霊夢、咲夜のような『能力を持って生まれた人間』を全て、人里の外に追い出そうとしてるんだぜ」
なんだそりゃ。やることが愚かにも程があるだろ。
「だから、『タチが悪い』んだぜ。そう言う流れになっちまえばそうなる。集団で生きる人間達は自分の意見ってのがないからな。他人が決めた事に、無関係な奴らは無理には反発しない」
「…………」
人里に住んでいなくて良かったと、今はっきり実感した。俺みたいな人間が受け入れられるとは思わないが、もし受け入れられていたらと思うとゾッとする。
「それで、追い出された人間はどうなるんだ?」
「そりゃ、死ぬだろ。常識的に」
「でも、魔理沙や霊夢みたいな能力持ちなんだろ?生き残ることだって……」
「能力を持つ人間が、私や魔理沙みたいな『強い能力』だとは思わないことね。普通はもっと役に立たない能力ばかりなんだから」
「…………」
俺には何も言えなかった。言う資格などないと思うし、それにどうあがいても、俺は人里とは無関係なのだ。どうしようもない。
「ま、これは人里が乗り越えるべき問題で、私たちは関与すべきではないんだろうぜ」
そんな俺の心中を察したのかどうかは分からないが、魔理沙がそう締めくくった。これでこの話は終わり、と言うように。
実際、どう答えれば良いのか分からなかった俺は安心した。魔理沙はアホに見えるが、実は意外と回りの空気をよく見ている奴だ。自然にフォローしてくれる。たまに空気を読まない発言をすることもあるが、それはその場の空気を読んでいるのだ…………と思う。
「で、だ。これからどうするんだぜ?」
「そこなんだよなぁ…………」
実際、どうしたらいいのかさっぱりだ。まさしく就活に行き詰まる大学生のように、何をすればいいのか分からない。
「しょうがないんだぜ。私がバイト探してきてやるぜ」
「あるのかよ。バイトなんて」
人里には入れないってさっき言っていたじゃないか。
「だから、人里以外で見つければいいんだぜ?」
「え?ちょ、待っ――魔理沙!?」
そう言って魔理沙は直ぐ様身支度を整えて、博麗神社から飛び出していった。
「人里以外って、そりゃどういうことなんだよ…………」
魔理沙の行動は明らかに善意からくる物で、あまり否定的な言い方はしたくはないのだが、しかしどうにも、一抹の不安を感じざるを得なかった。
「まぁ、覚悟することね」
霊夢の声も、なんだか遠くに感じた。
☆
翌日、魔理沙がやって来て開口一番俺に言った。
「仕事だぜ」
そうして引っ張り出されていく俺は、なんだろう、諦めの境地に達してしまったような気がする。
連れてこられたのは、魔理沙も住む魔法の森。以前キノコ狩りをした森である。
「おい魔理沙。こんなところで、一体どんな仕事があるってんだ?」
「ん?ああそうか。お前は知らなかったっけ?」
前を歩く魔理沙が俺に向かって言った。
「魔法の森には私とは別に住んでいる奴が、あと二人いるんだ。今回はその片方が仕事をくれたんだぜ」
「二人も?こんな森によく住めるな」
「まぁその二人は当然ながら人間じゃあないからな」
やっぱりか……。人間じゃあない奴と会うのは初めてではないが、しかしこの森で初めて妖怪に襲われた俺は少しだけ不安に感じてしまう。
今日会う奴も、人間を襲うような妖怪なのだろうか。
そう考えるのは人として普通の思考だろう。
「安心するんだぜ。今日会うのはお前が考えているような奴じゃあ決して無いから」
「そうかそうか。そりゃ安心だな」
「おう。安心しやがれ」
俺の精一杯の皮肉に気付かずに、魔理沙は笑っていた。やはりコイツ、俺が思っている以上に天然なんじゃないだろうか?
「今回紹介する奴って言うのが、私と同じ魔法使いなんだが、私とは違って生まれながらの魔法使いなんだ。私よりも高位の魔法使いなんだが、少しばかり性格に難がある奴でな。今回仕事をくれたのは」
「へぇー。お前が言うくらいなんだからそうとう難があるんだろうな」
「ケンカ売ってんのか?……まぁいいや。とにかく、人里で触れ回ってた私に声をかけてきたのがそいつだけだった、って言うのもあるんだぜ」
「へぇー…………ん?そいつって人間じゃあないんだろ?どうして人里で触れ回ってたお前に声をかけられるんだ?」
「例外ってことさ。そいつは以前からよく人里にやって来ては買い物やらなんやらしていくやつだから顔が知れ渡っているし、霊夢のこともよく知る奴だから、人里で何か事を起こそうって思うような奴じゃないからな」
なるほど。ようは人里の常連さんってことか。何にしても例外はあるってことだな。
「とにかくだ。魔法使いには総じて性格に難がある奴が多い。なるべく怒らせないようにしろよ。さもなくば――」
「何なのかしら?」
突然後ろから声が聞こえた。俺や魔理沙以外の声だ。
透き通るような、ピアノ線のように細い声。人の心の奥底に沈み込んで行くような、人間としての、生き物としての、なんと言うか、『熱』を感じない声だった。
「私の性格の、一体どこに難があると言うのかしら、魔理沙?」
二人同時に振り返る。
人形のような少女がそこに居た。
いや、人間のような人形、の方が正しいかもしれない。
白磁のような肌。目も眩む輝く金色の髪。整合の取れ過ぎた手足。こちらを見つめる硝子細工のような青い瞳。
作り物のような肌。作り物のような髪。作り物のような手足。作り物のような瞳は、まさしく人形と思えるように美しく、そしてそれ以上に不気味だった。
心なき人形が、無理に人間として振る舞おうとしているようで。
「はじめまして。私はアリス」
アリス・マーガトロイド。魔法の森に住まう人形遣いの少女。
操るのは人形か、はたまた己なのか。
俺には分からなかった。
アリスって難しい。とりあえずマリアリはありません。