ISのファフナー Siegfried and Brunhild   作:アルカンシェル

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10 希望といくさと

 

 

 

 一夏の部屋で箒は正座をして精神統一を図っていた。

 気持ちが逸って一睡もできていなかったが、コンディションはそこまで悪くない。

 損傷した紅椿はすでに束によって完璧に修復されている。

 あとは作戦開始の時間を待つばかり。

 

「一夏……私は……」

 

 悔しさに箒は拳を握り込む。

 前の戦闘に、簪の能力によって体験した未来でも箒はマークニヒトに勝てなかった。

 束や鈴たち、代表候補生たちは気にしなくて良いと言っていた。

 その理由は知識不足の箒も理解できる。

 マークニヒトの性能はISとは次元が違い過ぎる。

 

「力が足りないと思ったのは初めてだ」

 

 しかし、箒の紅椿もその点では他のISと比べて反則の性能を持っている。

 二つのコアを持ち、二つの単一仕様能力を持ち、それを増幅する機能もある。

 第三世代が試作されている中で唯一の第五世代。

 姉がくれた最強の機体を自分が使いこなせていないことを痛感してしまった。

 

「なあ一夏、私はどうすれば強くなれる?」

 

 部屋の主に尋ねるが、声は返ってこない。

 

「なあっ! 答えてくれ一夏っ!」

 

 いつかの時のようにクロッシングによる声は返ってこない。

 本当にいなくなってしまったのだと、認めなくない箒は何度も彼の名を呼び、声を上げる。

 しかし、当然応えは返ってこない。

 

「…………箒、こんなところで何してんのよ?」

 

 不意に聞こえた声は望んだ彼のものではなく、部屋に入って来た鈴のものだった。

 

「鈴か……ここなら一夏の声が聞こえると思ったんだ」

 

「……そう」

 

 短いやり取りで話は終わってしまう。

 

「……鈴こそ、一夏の部屋に何の用だ?」

 

「あんたがまたヘタってるんじゃないかと思って探してたのよ」

 

「余計なお世話だ」

 

 箒の返答に鈴はふーんと興味がないといわんばかりな態度を取る。

 

「ねえ……」

 

「何だ?」

 

「ポジション代わってくれない?」

 

 まるで部屋を代わってくれと言わんばかりの気安さで鈴がそんなことを言ってきた。

 

「いきなり何を?」

 

 鈴のポジションは敵ミールがいる空母への強襲、そして人質の救出。

 対して箒のポジションはマークニヒトの足止め。

 触れたら同化されるフェストゥムを相手にする以上、安全な戦場などないがそれでも箒のポジションは一番危険な役割だった。

 

「いやぁ、箒もあんな化物相手にするのは怖いでしょ? あたしはあいつにリベンジしたいから代わってあげようかなって思ってさ」

 

「誰が怖がるか」

 

「でも自分の機体を使いこなせていない誰かさんよりあたしの方がずっとうまく立ち回れると思わない」

 

 その言葉に箒はムッと顔をしかめて言い返す。

 

「そういうお前のは燃費だけが取得の目立たない機体ではないか」

 

「でもあたしは幼なじみでしょ、もしかしたら呼びかければマークニヒトの中にいる一夏が応えてくれる可能性だってあると思わない」

 

「私だって一夏の幼なじみだっ!」

 

「だけど、あんたが呼んでも一夏は応えてくれなかったんでしょ?」

 

「それは……」

 

「この際だからはっきり言っておくけど、この戦いが終わって一夏が戻ってきたらあたしは一夏に告白するわ」

 

「なっ!?」

 

 突然の鈴の言葉に箒は絶句する。

 

「い、いきなり何を言い出す……」

 

「あたしは本国の帰還命令を無視してここにいるから、この作戦が終わったら代表候補生を降ろされるはずよ。だから、ね」

 

「しかし、一夏は記憶喪失で……それに戻ってきても心を失っているんだ」

 

「それが何だって言うのよ。記憶喪失であたしのことを思い出してくれないことも、戻ってきてもまたいなくなるかもしれないことも分かってるわよ。

 それでもあたしは言い続けるって決めたのよ。一夏が目を覚ますまで、あたしを思い出してくれるまで、何度だってあたしは一夏が好きだって言ってやるのよ」

 

 指を突き付けられてされた宣言に箒は完全に言葉を失ってしまう。

 

「そ……それはダメだ……」

 

 なんとか言葉を搾り出すが、箒は鈴の顔から目を逸らしてしまう。

 

「何がダメなのよ? あんたにあたしの告白を邪魔する権利があるとでも言うの?」

 

「私は……私だって……」

 

 一夏を思う気持ちは同じ。しかし、鈴のように一夏の全てを受け止める覚悟はできていない。

 それを痛感させられた。

 

「ま、そういうことだからあたしにマークニヒトと戦わせてよ」

 

 強い眼差しに箒は何も言えないでいると、新たに入って来た人間が鈴の要求に応えた。

 

「それはできない相談だな凰鈴音」

 

「ラウラ……」

 

「今回の作戦でのお前のポジションは強襲と人質の救出。

 空母の中での戦闘が予想されるため、銃身の展開が自由な衝撃砲に高い格闘能力を持つお前が最適だと判断された」

 

 一夏の部屋に入って来たラウラは淡々とした口調で鈴の進言を却下する。

 

「対して箒の紅椿だが、本人が機体を使い切れていないことを差し引いても、その性能を十全に発揮するには広大なスペースが必要になる。

 加えてマークニヒトに対抗できる武装がある。甲龍では攻撃力が足りずに囮にはなれないだろう」

 

「そんなのやってみないと分かんないでしょ!?」

 

「鈴、いくら簪の力によって攻略条件が明確にされたとしても敵は未知の存在だ。

 犠牲を最小限に抑え、迅速に勝利するためにもポジションの変更は認められん」

 

「ぐっ……」

 

 取り付く島もないラウラに鈴は押し黙る。

 

「代表候補生なら受け入れろ」

 

「もうそれは返上したわよ」

 

「だが、それでも今はまだ専用機持ちであり、生徒達の代表だ」

 

「…………分かったわよ」

 

 渋々と鈴は頷いて踵を返す。その背中を見送ってラウラは肩を竦めた。

 

「ラウラ……その……すまない、助かった」

 

 あのままラウラが現れなければ、鈴の勢いに負けて頷いていたかもしれない。

 

「気にするな。鈴の気持ちも分からないわけではないからな」

 

「鈴の気持ち……」

 

「一夏が心を失わずに戻ってくる可能性だ」

 

「それは……」

 

「未来では敵のミールを破壊して一夏は解放されたが、それより早くマークニヒトから一夏を救い出せれば、あるいは……」

 

 何の根拠もない考えだが、箒はそうと思えなかった。

 夢の中で一夏に別れを告げられたことは束以外には話していない。

 記憶を失い、心を失っていたとしても一夏を取り戻すと息巻いている鈴たちの意気に水を差すことを箒はできなかった。

 何よりそれをしてしまうと、本当にもう一夏が戻ってこないと認めてしまうように思えた。

 

「そうだ。ラウラはどうして一夏の部屋に? それとも鈴のように私を探していたのか?」

 

「いや、私は一夏の持ち物で借りたい物があって来たんだ」

 

「借りたい物?」

 

「ああ、一夏がAICで行った高密度障壁の操作をドイツで再現しようと試みてはいるがうまくいかず、昨日篠ノ之博士に相談してみた」

 

「姉さんに……相談?」

 

 あの臨海学校から束はIS学園に住み着き、人当たりも多少はマシになった。

 それでも他人の相談に乗る姉の姿を想像できず、同時にとてつもなく嫌な予感を箒は感じた。

 

「シュバルツア・レーゲンにアクセラレータを搭載する時間はないため、博士がある物の存在を教えてくれた」

 

「ある物……?」

 

 説明しながらもラウラは一夏の部屋のクローゼットを遠慮無しに空け、そこに仕舞われたダンボールを漁り出す。

 

「そうだ。それを被るだけでイメージ・インターフェイスの精度を高め、稼働率を引き上げる秘密兵器だそうだ」

 

「何だと、そんなものいつの間に……」

 

 しかし、あの姉ならさもありなんと思ってしまう。

 そして一夏にならそんな秘密兵器をこっそり渡していてもおかしくない。

 箒は興味深げにラウラが行動を見守る。

 

「うむ、これだな」

 

「それが秘密へ……い……き……」

 

 自慢げに取り出したそれを見せ付けるラウラに箒は思わず引きつった声を返していた。

 脳裏に封印していたはずの記憶が浮かんでくる。

 

「ま……って、ラウラ……それはまずい……いろいろな意味でそれはダメだ」

 

 ラウラが両手で抱え持つそれには箒も見覚えはあった。

 むしろ、それを使ったこともある。

 だからこそ分かる、それにはラウラが求めているような機能は存在していないことを。

 

 ――姉さん……面倒になって適当なことを言ったな……

 

 ここにいない姉に呪詛を飛ばしながら、箒はどうやってラウラからそれを奪うか思案する。

 

「分かっている。このヘルメットはかつて教官も使っていた物だということは……

 私のような未熟者には手に余る代物なのかもしれない。だが、それでも今はこのヘルメットが必要なんだ」

 

「あ……えっと……」

 

「さて、私はこれからすぐにこれのテストをするが……そうだな。できれば二代目であるお前の意見を――」

 

「わ、私は紅椿の最終チェックをしなければいけなかった。すまないラウラ、先に行かせてもらう」

 

「ふむ、そうか……出来れば箒には必殺技とやらを見せて――」

 

「もうこんな時間か。ではラウラ作戦開始の時にまた会おう」

 

 渋るラウラに箒は一方的に言って、一夏の部屋、そしてラウラから逃げ出した。

 

 

 

 

 

「なるほど、さすが篠ノ之博士の発明、まさか本当に障壁として展開することができるようになるとは」

 

「………………え?」

 

 

 

 

 人は自分よりも慌てている者を見ると冷静になれるという。

 セシリアはそれを今まさに実感していた。

 

「落ち着いてください山田先生」

 

 整備棟の一角、ブルー・ティアーズの調整を行っている隣のブースでは慌てふためきながら一組の副担任山田真耶がフィッティング作業を行っていた。

 

「おおおオルコットさん、大丈夫ですよ。私は先生ですから」

 

 全然大丈夫そうに見えないが無理もない。

 真耶の緊張の理由はセシリアも理解できるし、セシリアも緊張がないわけではない。

 おそらくはISが世界に現れてから初めての戦争。

 それも絶対防御が機能しない、命を落とすことがある本物の戦場。

 死ぬことが怖いと思うことに、子供も大人もない。

 現に戦うことを嫌がった生徒、教師までも避難者として学園を逃げ出している。

 

「安心してください山田先生。簪さんの能力のおかげで勝つための道筋は見えていますわ」

 

「ですけど……」

 

 自信なさげに俯く山田にセシリアは思い付きをそのまま尋ねる。

 

「たしか山田先生は奇襲部隊として織斑先生の救出を担当されましたのですわよね?」

 

「はい。凰さん、更識さんたち、それから私を含めた教師部隊の四人で空母に潜入しました。ですが――」

 

 言い淀む理由はセシリアも理解できる。

 無理矢理、戦場に立たされたシャルロットが目の前で消滅した様を思い出す。

 そこで何人いなくなったのかはセシリアも聞いていない。

 今は事前情報により、最適なルートと遭遇する敵のデータのおかげで生存確率は大きく上がっている。

 それでも危険な死地に赴くことに気後れしてしまうのは仕方のないことだ。

 

「先生の不安は分かりますが、せめてみんなが見ている前ではしっかりしてください」

 

「はい……すいません」

 

 まるでどちらが教師か分からない反応にセシリアは苦笑する。

 

「すごいですね。オルコットさんは。私は先生失格ですね……」

 

「わたくしは……わたくしには一夏さんの祝福がありますから」

 

 他の人たちよりも落ち着いていられるのは、先の戦闘でセシリアは同化結晶を発生させ『増幅現象』を引き起こしたからに他ならない。

 おそらくは以前にマークザインと一時的に同化して共に引き金を引いた影響なのだろう。

 自分の窮地を救ってくれた力の存在は、今の状況で何よりも心強かった。

 

「それに世界最高の頭脳である篠ノ之博士がおりますし、簪さんの未来情報に合わせて学園にある機体も対同化処理が施されていますわ……

 未来では確かに苦戦し多くの犠牲を払って勝利しましたが、今のわたくしたちなら全員生き残って勝つことも夢ではありませんわ」

 

「そう……ですね」

 

 セシリアの言葉を受けて、ようやく真耶は笑みを浮かべる。

 

「でもいいんですか、オルコットさん? 貴女も凰さんと同じようにイギリス政府から帰国命令を受けていると聞きましたけど」

 

「ええ、そちらの方はブルー・ティアーズに篠ノ之博士のアクセラレータを付けてもらえることで説得しましたわ」

 

 ブルー・ティアーズに発現した『増幅現象』を十全に使うために紅椿にも使われている機能を増設させる。

 イギリス政府も第五世代の技術を手に入るならと、

 

「そういえば、この戦いについてIS委員会の方はどんな動きをしているのですか?」

 

「委員会の会議は難航しているようです。未知の敵を相手にどの国も援軍を出すことを渋っていて、学園にもこの場を最終防衛ラインとした徹底抗戦の指示しか受けてません」

 

「未来でもそうでしたが、やはり援軍は期待しない方がいいようですわね」

 

「すいません」

 

「いえ、山田先生が謝ることではありませんわ」

 

 まるで自分のことのように頭を下げる真耶にセシリアは逆に恐縮する。

 

「それにしても……」

 

 顔を上げた真耶は寂しげな目をして周りに視線を送る。

 

「先生……?」

 

「たった数日ですごい変わり様ですね」

 

 吊られて周囲を見渡したセシリアは真耶が何を言いたいか理解する。

 IS学園整備棟。

 乱雑に散らかった工具とパーツ。

 工作室であっても女子高特有の空気があったが、今は殺伐としたものに変わっていて見る影もない。

 

「平和だった頃がまるで遠い昔みたいですね」

 

「先生……」

 

「こんなことがあって、新学期をちゃんと始められるか心配です」

 

「そんなこと、勝てばよろしいのですわ」

 

「え……?」

 

「この戦いに文句の言いようのないほどにパーフェクトな勝利を得れば、二学期からは元の平和なIS学園に戻りますわ」

 

「…………生徒に励まされるなんて、本当に先生失格ですね」

 

 真耶は苦笑して、セシリアの言葉に頷く。

 

「頑張りましょう。みんなで無事に二学期を迎えるために」

 

「ええ……」

 

 生徒と教師ではなく、共に肩を並べて戦う仲間としてセシリアと真耶は握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 楯無が泣いていた。

 

「お姉ちゃん……? どうして泣いているの?」

 

 狭いゼロ・ファフナーのコックピットですすり泣く姉に簪は声をかける。

 しかし、返事はない。

 

「うう……どうして……どうして?」

 

 簪の呼びかけに気付いた様子はなく、楯無は両手で顔を覆って泣き続ける。

 

「私は……」

 

 まどろんだ意識がはっきりしてきて、ようやく簪はそれまでの記憶を認識した。

 敵の母艦にゼロ・ファフナーで強襲をかけ、ミールを破壊した。

 覚えているのはそこまででどうやら気を失っていたようだ。

 

「お姉ちゃん、状況は? どれくらい気を失っていた?」

 

 そう尋ねるが、楯無は返事をしない。

 泣き続ける楯無に戸惑いながらも、簪は自分で確認する。

 

「え……何……これ……?」

 

 高く舞い上がった黒煙。

 赤熱した大地。

 かつてIS学園だったその場所は見る影もない。

 そして敵の本拠地だった空母も焼け爛れ、無残な姿に変わり果てていた。

 

「……みんなはっ!? 一夏っ!?」

 

 呆然とその光景に目を奪われ、簪は我に返って周りを探す。

 

「っ……」

 

 コアの反応を頼りに仲間たちを探す。

 が、彼女達も周囲の有様と同様の姿となっていた。

 絶対防御が意味をなさないほどの熱量。黒く炭化した物体はそれが誰だったのか判別できない。

 そこは地獄だった。

 

「違う……こんなの私が見た未来じゃない」

 

 否定の言葉を搾り出す。だが、目の前の事実は消えない。

 

「簪ちゃん……」

 

「お姉ちゃん……」

 

 ようやく自分を呼んでくれた姉に簪はわずかに安堵する。

 

「どうしていなくなっちゃったの……どうして……うう……」

 

「え……?」

 

 簪の名前を呼びながら泣き続ける楯無に簪は理解できなかった。

 

「何を言ってるのお姉ちゃん。私はここに――」

 

 手を伸ばして触れようとした指が楯無をすり抜けた。

 

「なっ!?」

 

 慌てて手を引き戻し、両手を見下ろす。

 自分の両手は、両手に限らず身体の全てが半透明にその先の透かしていた。

 

「あ……そうだ……私は……」

 

 敵のミールを破壊しようとして、同化による抵抗を受けてそのまま砕け散った。

 

「簪ちゃん……簪ちゃん……」

 

 一人、生き残った楯無が壊れたように呼び続ける。

 そんな彼女に届かせる言葉がない簪は俯き、唇を噛み締める。

 そして――簪は覚醒した。

 最初に目に入ったのは姉の穏やかな寝顔。

 

「…………夢……?」

 

 身体を起こして周りを見渡せば、そこはいつもの自分の部屋。

 ファフナーのコックピットでもなければ、眠る以前の記憶もしっかりしている。

 

「…………よかった」

 

 自分が見たはずの未来と異なる悪夢が現実ではなくて安堵する。

 額の汗を拭おうと腕を上げる。

 

「っ……」

 

 手の平に現れた同化結晶に簪は言葉を失った。

 

「夢じゃない。あれは未来観測? ファフナーに乗ってないのに……?」

 

 両手に刻まれた指輪の痕。

 手の平から生えた同化結晶。

 そして、向こう側を透かした見える両手。

 

「同化現象……」

 

 覚悟はしていた。

 ファフナーに乗れば同化症状が進行して消滅する。

 いくら篠ノ之束によって改善されていたとしても、同化現象そのものがなくなったわけではない。

 一夏と比べてわずか数回の起動で、簪は自分の生存限界を感じてしまった。

 自分がいなくなること兆候に簪は身体を震わせる。

 

「大丈夫……まだ……私はここにいる……」

 

 自分の身体が別の何かに変わっていく恐怖に押し潰されそうになる。

 しかし、泣き喚くよりも先に気になることがあった。

 

「でも、あれが未来なら……どうして……?」

 

 以前に見た未来とは違う未来。

 以前のものは多くの犠牲を払いながらも、敵のミールを破壊して一夏と千冬を取り戻した未来だった。

 その情報を基にして作戦の見直した。

 勝利のキーとなるミールのコアの破壊。

 捕らわれた織斑千冬がいる場所。

 マークニヒトの攻撃パターンの詳細。

 敵の進行経路と戦力。

 それぞれが得た未来の戦闘の記憶によって、勝利条件がはっきりとして、作戦もより良いものへと仕上がった。

 そうして未来は変わった。だが、それは悪い方にだ。

 

「見つけないと……」

 

 穏やかな寝顔の楯無を見て簪は呟く。

 学園とそこにいた生徒達、そして自分を失って壊れてしまった未来の姿。

 姉をそんな風にするわけにはいかない。

 何よりもあんな未来を簪は認めるわけにはいかなかった。

 

「簪ちゃん……」

 

「お姉ちゃん」

 

 起こしてしまったかと思ったが、楯無は目を閉じたまま寝言を呟く。

 

「簪ちゃん、大好き……ふふふ」

 

「……私もだよ。お姉ちゃん」

 

 幸せそうな顔で寝ている姉の頭を撫でながら簪は微笑む。

 

 

 

 

 

 

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