これはまだ吸血鬼が幻想郷に来たばかりの話。
吸血鬼が人の生き血を吸うために村を襲っていた。
そんな中あるひとりの人間の男を館に連れ込みいつものように血を吸おうとした瞬間男が、
「俺と賭けをしてくれないか?」
その言葉を聞いた瞬間、吸血鬼はクスリ、と笑う。
「アラ、人間如きが私に指図する気?」
「俺が生き残るためだ。それともお偉い吸血鬼さんはただの一般人の勝負を受ける勇気もないと?それならそれでいいけどな」
その言葉を聞いて吸血鬼は少しイラッとする。
「ふーん・・・いいわよ。もし貴方が勝てたら血は吸わないし殺さないであげる。勝てたら・・・ね?ただの人間ごときが私に勝負を売った事を後悔させてあげる」
この言葉を聞いて男は内心で
(良かった・・・!まじ良かった!プライドが高い相手だったから良かった。低かったらすぐに殺されていたな。さてと、ここからが本番だな。)
「で、一体何の賭けをするのかしら?」
「何をするかの前にここにトランプってあるか?」
「トランプ?咲夜ー!トランプ持ってきて!」
「こちらに」
吸血鬼の後ろに急にメイドの女性が現れる。
(うおっ!?なんだ?急に出てきたぞ?)
メイドの女性の手にはトランプが用意されていた。
「で、トランプっていうことはポーカーと言ったところかしら?それともブラックジャック?」
「ゲームは普通にポーカー。ルールは“ファイブカード・ドロー”だ。」
「ふーん。まあ、私はそれでもいいけど本当にいいのかしら?」
その言葉に男が反応する。
「どういうことだ?」
「どういうことって私、強いわよ?ポーカー。多分貴方は私に勝てない。それでもいいのかしら?」
その言葉に男がすぐさま反応する。
「なるほど、でも俺が生き残るにはこれに勝たなければいけない。可能性が低くてもやるしかないんだよ。それにここで俺がゲームを降りてもつまらないだろ?」
吸血鬼はクスリと笑う。
「ええ、そうね。ここで降りるなんて言ったらすぐさま殺してたわ」
「まあ、そこまで言うなら少しぐらいハンデを貰おうかな」
「何かしら?」
男は内心で喜ぶ。
(ビンゴ!プライドが高いやつほとハンデをよこせ系の挑発にノリやすい・・・!)
「なあに、難しいことじゃない。7回勝負にして欲しいんだ。ああ、7回勝負といっても先に4回勝った方が勝つんじゃなくて7回のうち1回でも俺が勝てば俺の勝利にして欲しい」
「あら、なんで7回なのかしら?」
吸血鬼は何故7回なのかを問う。
「簡単なことさ。ほら、“ラッキーセブン”って言うだろ?」
男の理由に吸血鬼は、
「面白い理由ね。でも7回は多すぎるわ」
と男の案を却下する。
「なら、3回ならどうだ?」
吸血鬼は少し考える。
「3回ねぇ。まあいいわ。」
(良かった、最初失敗した時はびびったが2回目は上手くいった)
男は最初に『フット・イン・ザ・ドア』と言う技術を使った。これは大きいお願いをする前に小さなお願いをしておいて相手を受け入れやすくする、というものだ。しかし、失敗したためすぐさま『ドア・イン・ザ・フェイス』と言う技術に変更した。これは『フット・イン・ザ・ドア』とは逆に先に大きい願い事をして、断られたら小さなお願いをする、というものだ。
「なら、ゲームをする前にカードの確認をしてもいいかな?相手が用意したものだからね」
「まあ、それぐらいならいいわよ」
吸血鬼は男にトランプを渡す。
男はトランプを一枚一枚ゆっくりと見ていく。
全てのトランプを確認し終えた後、
「OKだ」
トランプを吸血鬼に返す。
「もういいのかしら?」
「ああ、充分だ」
「そう。なら咲夜、ディーラーをやってもらってもいいかしら?」
「かしこまりました、お嬢様」
「なら、ゲームスタートだ」
男はいきなり机の上に足を置く。
その瞬間、
「先程までは我慢しましたが、これ以上のお嬢様へのご無礼は許しませんよ?」
先程まで吸血鬼の後ろにいたメイドが男の首元にナイフを突きつける。
「やめなさい、咲夜。この勝負はあいつが売って私が買ったの。手出しは禁止よ」
吸血鬼の答えにメイドは不満そうに後ろに退く。
「・・・失礼しました」
メイドが後ろに退いたと同時に男は声を出す。
「ありがとよ。死ぬかと思ったぜ」
吸血鬼は男の台詞におかしなところがあったのか笑いながら言う。
「何言ってるの?私を挑発したら咲夜が乗るって分かってたのでしょう?そして私がそれを止めるのも」
「さあな」
男は余裕ぶって答えていたが内心は
(いや、なにあのメイド?いきなりナイフ突きつけてくるとか物騒過ぎるでしょ。それに吸血鬼に「読んでた」、とか言われているけどそんなことないからね?普通に選択肢ミスったと思って、かなりあせってたから)
と、かなりあせっていた。
「それではカードをお配りさせて頂きます」
男に配られた手札は左から順にスペードの5、ハートの9、ハートの10、クラブの12、スペードの6だ。
(さてと、メイドがカッティングしていなかったから俺が仕組んだままだと思ったがそんなことはないな)
そう、男はトランプを確認する時にスペード、ハート、ダイヤ、クラブの1、2、3・・・13の順に並び変えておいた。
そして男は吸血鬼やメイドと話している時もトランプから目を離さなかった。そしてその上で吸血鬼もメイドもトランプのカッティングしていなかった。それなのにカードの順はバラバラになっていた。
(考えれるパターンは二通り。一つはメイドがイカサマをしている方法。もう一つはなにか能力持ち、という可能性。確率的には前者の方が高い。もともとメイドは吸血鬼側の人間だからな。まあ、能力持ちの場合もイカサマしている可能性が高いんだが。・・・前者の場合の方が楽だなあ。イカサマを見つけるだけでいいし)
男が考えていると吸血鬼が、
「色々と考えているみたいだけど、イカサマはしてないわ」
男はその言葉に眉をピクリ、と動かす。
「その言葉が真実だという証拠は?」
「真実、という証拠はどこにもないわ。でもそんなことは関係ないでしょう?」
そう、吸血鬼の言う通り男はこの言葉を信じるほかないのだ。
(そうなんだよなあ。・・・まあそんなことはどうでもいい。吸血鬼は間違いなくプライド的にイカサマはしないだろうな。イカサマがするとしたらメイドの方なんだよなあ。・・・さてと、前者か後者か見極めますか。どっちかがわかれば戦う方法も変わるしな)
「一枚チェンジで」
「なら私は二枚チェンジよ」
男はクラブの12を捨てる。
そして配られたカードを見る。
(ハートの5か。ポーカーに置いてのイカサマはパーム・ボトムディール・セカンドディール・フォールスシャッフルなど色々あるが見た感じ使ってなかった。となると、能力持ちか・・・!面倒くせえな。俺に気づかれずにカッティング出来た。つまり考えられるのは空間操作、時間操作、そして普通にシャッフル系の能力の三通り。一番面倒くさいのが空間系。次にシャッフル系。最後に時間系だ。空間系だと勝ち目はほぼゼロ。シャッフル系だと面倒いけどなんとかなりそうだな。時間系だと楽何だが)
男は試行錯誤し、
「・・・もう一度チェンジ」
「私はもうこれでいいわ」
男は今来たハートの5を捨てる。来たのはクラブの6だ。
「さて、勝負といきましょうかね」
吸血鬼と俺は手札を見せ合う。俺はスペードの6とクラブの6のワンペア。対して吸血鬼の手札はハートの2、ハートの4、ハートの8、ハートの11、ハートの13のフラッシュだ。
「あら、私の勝ち見たいね」
「・・・」
男は場に出たカードを見る。
(相手の手札はフラッシュ・・・。多分イカサマはないなイカサマするなら良くあるのがストレートとかだからな。フラッシュなら多分イカサマではない。・・・となると)
男は勝ち筋を考える。
「・・・OK、次に行こう」
もう一度5枚配られる。
今度はハートの11、ハートの5、クラブの2、スペードの8、ダイヤの4だ。
(メイドはカードを底に置いてカットはしていなかった・・・それなのにさっき捨てたハートの5が手札に来たってことは能力持ちは確定っと)
「二枚チェンジで」
男はハートの11とスペードの8を捨てる。
「・・・三枚よ」
吸血鬼は三枚を捨てる。
(今来たのはハートの6とスペードの13か。吸血鬼は三枚を捨てた。しかも先ほどとは違い声のトーンが低かった。これが演技ではないとするならばおそらくワンペアも出来ていないだろうな。となると次の手は)
「なあ、なんでこの賭けを受けてくれたんだ?」
男は吸血鬼に揺さぶりをかける。
「あら、なんでそんなことを聞くのかしら?」
「いやいや、ただの純粋な疑問ですよ。こんな賭けなど無視してさっさと血を吸えば良かったじゃないですか?だから何故か気になったんですよ。ええ、はい」
男の問に吸血鬼は少し考え、
「ふーん、まあいいわ。教えてあげる。簡単なことよ、面白いじゃない?今までの人間は死にたくないなどごめんなさいなどとしか言って来なかった。でも貴方はわざわざ賭けを挑んできたのよ?それに私の勝ちは揺るがないしね」
男はこの話を半分ほど聞き流していた。
(上機嫌に話すってことはさっき引いた三枚はいいカードだったってわけか。仮に残していた二枚と揃ったとするならば考えられるのは・・・)
「でもまあ、負けると死ぬからな。努力はするさ。一枚チェンジで」
男はスペードの13を捨てる。
「私も一枚かしらね」
吸血鬼も一枚捨てる。
「俺はノーペアだ」
「あら、そう?残念ね。私は」
「ストレートだろ?」
男は吸血鬼のセリフを遮って言う。
吸血鬼がの動きが止まる。
「・・・なぜストレートだと?」
吸血鬼は男に質問する。
「そう聞くってことは正解ってことか。なぜ分かったかって?言うわけないだろ?」
吸血鬼が手札を見せる。その手札は男の宣言通り、スペードの9、ハートの10、ダイヤの11、ハートの12、クラブの13のストレートだった。
「さあ、ラストゲームを始めよう。ただし、勝つのは俺だがな」
メイドがカードを配る。男はそのカードを・・・伏せたままにして見ようとしない。
「なぜ手札の確認をしないのかしら?」
吸血鬼の疑問に男は、
「確認する必要が無いからさ。オレの手札はフルハウスだ」
「・・・へぇ。なぜ見ないでフルハウスだと?」
「・・・まあもう配られたしいいか。簡単なことだ。数えたのさ」
「数えた・・・?何を」
男は自慢気に
「そこのメイドがカットするための幅、大体何回やるかを、ね」
「それでさっき私の手札が分かったとでも?」
「そういったところだ」
「くっ」
吸血鬼は何度も手札を見直す。
「どうした?吸血鬼?俺はあんたに勝てないんじゃないのか?どんな気持ちなんだ?吸血鬼が賭け事とはいえただの人間に追い込められている。なあ、一体どんな気持ちなんだ?」
男の言葉に吸血鬼が反応する。
「・・・貴方今、追い込められている、と言ったわね?」
男の表情が凍る。
「と、いうことは私が正しいようにやれば勝てるということね?」
「ノ、ノーコメントで」
「ふふ、それならとりあえず二枚、いえ三枚チェンジよ」
吸血鬼は三枚捨てる。
「くっ!・・・二枚チェンジよ」
吸血鬼は最後のチェンジで二枚捨てる。
「・・・はあ、私の負けよ」
吸血鬼の手札はハートの4、ハートの5、ハートの6、ハートの7、スペードの9だった。
それに対して男の手札は
「・・・はあ!?」
スペードの8、ハートの8、クラブの1、スペードの3、ダイヤの2のワンペアだった。
「貴方、自分の手札はフルハウスって・・・」
男は悪びれもなく、
「ああそれ嘘。たった2回でわかるわけないだろう?ちなみにさっきの挑発はあんたに今の自分の手札は何?と聞かれないためのものさ」
「それなら私が貴方の言葉を信じると思ったわけは?」
「あれは別にどっちでもよかったのさ。信じようが信じまいがあんたはもしかしたら、の可能性を考えてしまう。それに俺は前のターンであんたの手札を当てているしな」
「な、ならなんで私の二回目手札が分かったの?」
「ああ、あれはあんたの表情から推測した。後はまあ、勘かな」
吸血鬼は聞きたいことがなくなったのか、脱力して
「なるほど・・・つまりこのゲームが始まった時から私は貴方の手のひらの上で踊らされてた訳・・・か。・・・ふふふ、」
「なんだよ、急に笑って。まあいいや、俺は帰らせてもらうぜ」
男が席を立った瞬間、
「咲夜!」
「はい、お嬢様」
男はメイドに押さえつけられていた。
「・・・なんだよ、まだ何か用があるのか?それともなにか?約束を破って俺の血を吸おうとでも?」
「いいえ、そんなことはしないわ。契約は契約だもの。だから私は貴方を殺さないし血を吸おうとも思わない。けどね、別に貴方の自由を約束したわけではないわよ。ただの人間でありながらこの私を賭けごととはいえ倒した。・・・私は貴方が気に入ったのよ。だから貴方、ここで執事をやりなさい」
「・・・へっ?」
男は頓狂な声を出した。
「ああ、ちなみに拒否権はないわ」
少し時間が経った後、男は諦めたかのように
「・・・やれやれ。本当に拒否権は無さそうだ。仕方ない。やってやるよ。ただしそこまで期待すんなよ?」
しかし、男の内心では
(良かった・・・!上手くいった!)
そうこれも男の手のひらの上の出来事だった。
仮にここで男が村に帰ったとしても吸血鬼の手先として認識されるだろう。良くて立ち入り禁止、悪くて死刑だ。どちらにせよ男は死ぬ確率の方が高かった。だからこそ生き残るためにはここに残って生きていくほかなかったのだ。
「ふふ、そうと決まれば早速着替えないとね」
「その前に1ついいか?」
「あら、何かしら?」
「あんたの名前、まだ聞いてないんだよ」
「ああ、そういえばそうだったわね。私の名前はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主で誇り高き吸血鬼よ。・・・そういえば貴方の名前も聞いていなかったわね。なんて言うのかしら?」
「俺か?俺の名前は————」
この後、男は主を守るために妖怪の賢者と心理戦をしたり、紅き霧の異変を手伝ったり、と色々するのだがそれはまた別のお話。
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