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試合終了のホーンが鳴った。
結果はみさきの圧勝だった。
相手は他県ではそれなりに名も知れていて、俺も見たことはある相手だったが、みさきはセカンドラインでスモーを使い、そのままドッグファイトで三点。
相手がドッグファイトでバランスを崩したところで、ブイタッチをして二点。
そしてこの午後の部の一回戦でわかった今までのみさきとの違い。
それは飛行姿勢だった。
元々はグラシュのバランサーカット時のグラシュを制御する為にしていた練習だったが、思わぬところで、みさきをさらにレベルアップさせてくれたようだ。
「んー! 疲れた~。うどん食べたーい」
みさきは気楽そうに両腕を伸ばし、伸びをしながら戻ってきた。
みさきは本気でしていたはずだが、頭はイマイチ熱くなれなかったようだ。
「ねえ晶也、今日の夕飯に真白うどんのあごだしうどん追加してもらおうよ!」
「あとで佐藤院さんに言っておくよ」
「んにゃー! やったー! うどん、うどん! 今日の夕飯はうどんだー!」
みさきはそんなことを言いながらテントの中のベンチへ腰を下ろす。
「次は真白だな」
「これに勝てばみさきセンパイと試合ができる・・・うー! 私絶対に勝ちます!」
「おう。その生きだ!」
アナウンスで真白の名前が呼ばれ、スタートラインへ飛んでいった。
相手の選手は見たことのあるグラシュを履いていた。
あのグラシュはインヴェイドのファイター用グラシュ。
確か最近発売されたばかりの新型のはず。
「・・・セット!」
ホーンの合図と共に、二人は飛ぶ。
「やっぱりショートカットしてきたか・・・」
真白はドッグファイトに弱いわけじゃないが、初めて試合をする相手だと、癖や動きがわかりにくい。
でもしれは相手も一緒だ。
『真白、シザーズで突っ込んで、寸前でローヨーヨー』
「はい!」
相手選手が位置につくのと同時に、真白はブイをタッチし、指示通りシザーズで突っ込む。
『今っ!』
「ええっい!」
真白は全力で姿勢を変え、直前でのローヨーヨーを成功させる。
相手選手は反応が遅れ、遅れて真白を追いかけるが、追いつかないのが分かり、ショートカットする。
『その調子だ! 次は超上空からのきりもみ降下』
「了解です!」
真白はブイの反動を利用して上空へ上昇。
そしてすぐさま指示通りにきりもみで急降下。
そのきりもみに、相手選手は突っ込んでくる。
「わ、わわわっ!?」
ヘッドセットから聞こえるのは、予想外な動きをした選手に対しての戸惑いと驚きの声。
『落ち着け。これほ好都合だ。俺の合図で両手を前に出すんだ!』
「は、はい」
そして二人の距離が人一人分くらいまで近づいた時だった。
『出して!』
「はいー!!」
真白は半ばやけくそで、両手を前に出す。
その急な行動に、相手選手はついて行けず、そのまま伸ばし真白の手が辺り、お互いは弾き飛ばされる。
『真白急げ! 早く体制を立て直さないと、回り込まれるぞ!』
この状況、お互いがバランスを崩している状態では、先に体制を持ちなおした方の勝ちだ。
今までの真白ならピンチだけど、今の真白なら、この状況をチャンスに変えられると思う。
そう持ったから、思い切って賭けに出た。
もしも失敗したら、後で真白に死ぬほど謝るつもりだ。
「っ・・・ってあれ? 体が自然に・・・」
『ぼっとするな! 急げ! ブイにむかって飛ぶんだ!』
無駄な力を入れず、自然の動作くで体制を持ちなおした。
それは今までの経験不足な真白では、絶対に不可能なことだ。
「晶也、今の真白の動き、なんだか今までと違くない?」
「みさきも気づいたか。・・・そうなんだよ、夏の練習の間、ずっと一人で基礎練習とフィールドフライを繰り返し、たまにみさきと模擬試合をさせてた練習の成果だ」
フィールドフライで飛び方の基本と持久力。
柔軟やマラソンなどの基礎練習で体を作って。
最後にみさきとの対ファイター戦の試合を想定した模擬試合で飛ばされることで、自然と体に体制を立て直す術を教えた。
今の真白なら、その辺のファイターには負けないスピーダーになっているはずだ。
「わ、私、いつの間にそんなにレベルアップしたんでしょうか」
自分の進化に、真白は戸惑いながらも、ブイをタッチしていく。
『相手との差もそれなりになった。これなら残りの時間内をブイタッチで逃げ切れる』
「了解です!」
陽気な真白の声が聞こえる。
試合終了のホーンが鳴る。
結果は予想通り、あの後は真白の独走で、圧勝だった。
「よくやったな真白。正直驚いたよ」
「そんなことないです。晶也センパイの練習のおかげです」
珍しく、真白がそんなことを言った。
いつも通りなら、私だって本気出せば、こんなもんですよ! とか言うかと思った。
「そんなことないよ。今の試合は、真白の努力の成果だよ」
後ろからみさきが褒めながら出てくる。
「み、みさきセンパーイ! みさきセンパイはやっぱり私のことを見てくれてたんですね!」
「わー、ちょっとまった! 暑いからくっつかないで!」
みさきに褒められた真白は、いつも通りみさきに飛びついている。
「二人ともそんなに仲良くするのはいいけど、次の試合はみさきと真白だぞ?」
去年白瀬さんがいっていた、本当にお互いが本気なら、一緒にいることが平気じゃない。
たぶんみさきは、まだ真白を本当に怖いとは思ってないはずだ。
そして真白も、みさきとの強さに差がありすぎで、怖いことの意味がまだ分からない。
そんなとこだと思う。
『次の試合が始まります、指定選手は、スタートラインへ―――』
二人のじゃれ合いもひと段落着いたところで、アナウンスが流れる。
「さあ二人とも、試合がはじまるから、それぞれスタートラインに行くんだ」
「はいにゃ~」
「わかりました」
みさきと真白は、グラシュを起動させて、スタートラインへ着いた。
今回は両選手とも、久奈浜の選手ということで、一人セコンドをしてもらわなければならない。
『みさき、聞こえるか?』
「はいはーい、よく聞こえるよー。私のセコンドはやっぱり晶也なんだね」
『有坂、お前のセコンドは私だ。鳶沢が相手だからって、手を抜いたりしたら、反省文と練習内容追加だからな?』
「は、はい! わかりました! 各務先生!」
真白のセコンドには去年俺がみさきとのマンツーマンで練習しているときに、代わりにコーチをしてくれた葵さんがしてくれると、名乗り出てくれた。
「晶也」
ふと、葵さんが、マイクに手を当てて、選手には聞こえないようにして声をかけてきた。
「お前がどれだけコーチとして育ったか、みてやろう」
「ありがとうございます。各務先生」
「今は葵でいい」
珍しく、葵さんが、そう言ってくれた。
「セット!」
ホーンの音と共に、二人は飛び立つ。
『みさき、ショートカット』
「にゃっ!」
短い独特の返事と共に、みさきはショートカット。
『有坂、ブイをタッチしたら、小さく上下に揺れながら、鳶沢の頭上を行くんだ』
「は、はい」
葵さんも何か指示を出しているみたいだけど、ルール上、セコンド同士は、指示がばれないように、同じ高校どうしでも、距離を取らなければならない。
『みさき、くるぞ!』
「わかってる」
真白はブイをタッチすると、上昇したまま、その高度で、上下に飛び出す。
『みさき、タイミングを見計らってスモ―』
「うん!」
みさきはジッと真白の動きをみて、タイミングを図る。
『有坂、鳶沢はたぶん得意の背面飛びで張り付くつもりだ、張り付く瞬間は恐らく、鳶沢の手前で、こちらが上昇するときだ。そのタイミングで腕をのばして弾け』
「うにゃー! そこだー!」
タイミングは真白が頭上にくる手前で、上下するタイミングの中で、上に上がるとき。
そのときなら相手の動きに合わせてスモ―ができるはずだ。
そしてみさきは俺の指示なく、それをやってくれた。
みさきのFC脳が鍛えられている証拠だ。
「―――えい!」
「っ・・・・・・え!?」
真白が、みさきがスモーで入ろうと、お腹を上にした瞬間に、手で弾いた。
「そんな!」
思わず俺までも驚きの声を上げる。
今の動きは、真白一人じゃ無理だ。
・・・ということは、葵さんの指示。
流石としか言いようがない。
こちらがスモーしやすいように、わざとあんな動きをしてきたのか。
『みさき、今から追っても無理だ。サードラインへショートカット』
「う、うん。・・・それより晶也、真白ってあんなに強いの?」
『あれはたぶん葵さんの指示だ。・・・でもその指示通りに動くなんてな。それだけ真白に練習の成果が出てるってことだ』
「そうなんだ・・・」
ヘッドセットからは、少し不安なみさきの声。
まさかセコンドが違うだけで、ここまで力の差が出るとは・・・もし葵さんがみさきのセコンドをしたらどうなるか、少し気になった。
でも俺が一番みさきの事を理解してるんだ、だから俺意外に、完璧にみさきのセコンドをできる人なんていない。
『でも俺達だって、練習はしただろ? その成果を見せつけてやればいいさ!』
「うん!」
そしてみさきはサードラインへ着き、真白を迎え撃つ。
書いていて気が付いたのですが・・・市ノ瀬の試合を入れてないことに気づき、近いうちにサイドストーリーとして投稿します。
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