・・・・・・みさきは勝った。
今のみさきに、勝てる相手なんているのか?
それこそ俺なんて、決勝ですぐに返り討ちにされるかもしれないほどだ。
でもそれだけ・・・・・・それだけみさきは強い選手になったんだ。
もう何度も言ってるけど、本当に嬉しい。
試合が終わってみさきが降りてきたとき、俺は人目を気にせず、思いっきり飛びついたくらいだ。
流石にこの時は、葵さんも目をつむってくれたみたいで、特に何も言われなかった。
「あーあ、雨か~」
高藤の校舎にある、食堂の窓から外を見ているみさきが言った。
昨日までは晴れていたのに、今日は大雨だ。
流石にここまで雨が降ると、試合も困難だ。
その為俺とみさきの決勝は、明日に持ち越しとなった。
「つまーんなーい! 試合がしたい! 飛びたい!」
「みさきちゃん、すごいやる気ですね」
みさきの隣でココアを飲んでいた明日香が、みさきのやる気に驚いている。
「だって昨日の今日だよ! 明日香とあんなに良い試合して、今日は晶也と全力でバチバチできると思ってたのに!」
「仕方ないだろ? 雨あ降ったんだから。明日まで我慢だ、俺は逃げたりしないって」
あんまり騒ぐみさきを、周りの人に迷惑と思い、落ち着かせる。
「それに試合と練習禁止ってヒドイ! せっかく雨天でも飛べる場所があるのに!」
そう、みさきには明日のことも考えて、絶対に飛ぶなと言っている。
昨日の試合も随分疲れが出てるみたいだし・・・・・・本人は気づいてないみたいだけど。
だから、真白は練習に行って、明日香もついさっき練習の休憩に入ったところだ。
みさきは俺とずっとここで話してる。
「みさきちゃん、強くなるには、休むことも大切だって、この前みたスカイウォーカーの専門雑誌に書いてありました!」
「うう、そうだけど・・・・・・は~、仕方ない、うどんを食べてゆっくりするかにゃ~」
そう言ってみさきは、うどんを買いに行った。
ちなみにこのあとは、ひたすらうどんを食べ続けていた。
日が落ちる時間になった。
俺は校舎のロビーにあるソファーで寝てしまったいた。
「あ、晶也やっと起きた?」
俺が体を起こすと、みさきが隣に座っているのがわかった。
俺が寝ている間、ずっといてくれたのか?
「あ、別にあたしのことは気にしないでよね。晶也の隣なら、飽きないからいいし」
どうやら読まれていたらしい。
試合の時もそれくらい読んでくれると頼もしいのだけど。
「そういえば、みさきは俺の隣にいて平気なんか?」
「え? 別に平気だけど?」
どうやらみさきにはほとんど効果がないらしい。
「どうやら俺はまだ、みさきに平気と思われるほどの選手らしいな」
俺は何気なくそういった。
「あ、そういう意味で言ったわけじゃないから! それに晶也の隣にいるほうが、逆に明日の試合を深く考えなくていいから」
「なんか、みさきらしいな」
みさきのこういうところは、選手として見習いたい。
俺もこんな気持ちになれたら、最高の気分で試合できるのだろうか。
「晶也はどうなの?」
「正直、こうしている間も、みさきのことが怖い。それはそう言う意味とかじゃなくて、みさきとの試合でどうなるのかが、すごく怖い。みさきも明日香のように、時々ありえないヒラメキと反射で動くことがあるから、すごく怖い」
それに、俺はみさきの試合のすべてを知っている。
だから有利な点がいくつかあるわけだし、弱点や苦手なとこ知ってる。
でも、明日香とみさきにはそんなの通用しない。
明日香には俺の技術、みさきは俺の練習と知識を今まで教えてきたつもりだ。
そんな二人のうちのみさきに、俺の今の技術が通用するのだろうか。
「ねえ晶也~。お腹空いたから食べにいこうにゃ~」
「そうだな。もう日が沈んでるし、食べに行こう」
俺ちみさきは立ち上がり、二人で食堂に向かった。
「さあ久奈浜の皆さん! 特に日向晶也と、鳶沢みさきはじゃんじゃん食べて、明日の試合に備えてください!」
さながら食堂のおばちゃん風の格好で、俺やみさきにじゃんじゃん夕食を運んでくる。
その量はもの凄い。
でもさすがにそんな食べれるわけもなく、隣の人や部長に回していく。
しかし俺の隣に座っている人物は違った・・・・・・。
「っにゃー! このうどん美味しい! 盛り付けてある天ぷらもサクサク~!」
隣に座るみさきは、次々来るみさきように作られたうどんを、次々と平らげていく。
「鳶沢くん、すごい速さで食べていくね。僕も負けていられないね!」
その後ろで食べていた真藤さんが、みさきの食べるスピードをみて、何かの闘争心に火が付いたのか、負けじともの凄い速さで食べ始め、佐藤院さんも追加のうどんを持ってくるので忙しくなってきた。
でもそのおかげで、こっちに追加の料理がそれ以上来なくなり、こちらも安心して食べ始めてる。
「真藤さん、負けませんからね!」
それに気づいたみさきが、さらにスピードを上げる。
流石は真白うどんの早食い勝負で優勝しただけではある。
「むっ! 鳶沢くんやるね。でもこっちには秘策があるんだ!」
そして真藤さんは立ち上がり、片手に箸、片手にうどんのどんぶりと、何かのポーズをとる。
「真藤選手! ここで得意のコブラだー!!」
さらにいつからいたのか、保坂が実況を開始し始める。
というか、うどんの早食い勝負、コブラはどうなんだろ・・・・・・。
「私だって! うにゃあああああ!!」
みさきはどんぶりに顔を突っ込むようにして食べ続ける。
「おおっと、鳶沢選手も! 普段のFCの試合のように超近距離でのうどんとのドッグファイトだー!」
あれは、そういうことなんだろうか。
「みさきちゃん頑張って!」
「みさきセンパイファイトです! 勝ったら私を一日好きにできる権利を上げちゃいます!」
いつの間にか、二人の周りには人だかりができて、それぞれに声援が送られる。
「えぇ~。それだとちょっよやる気が・・・・・・」
「うぁみさきセンパイ! 食べるスピード下がってますよ!」
どうやら真白の一言で、みさきのやる気が下がったらしい。
真白はなんでか気づいてないみたいだけど。
まあ、でも、俺はゆっくりと夕飯を食べさせてもらうかな。
「ほらみさきー! 勝ったら晶也を好きなようにしていいよー!」
ゆっくりと夕飯を食べていると、なんか聞き覚えのある声で、そんな言葉が聞こえた。
「窓果、なんで俺の名前を出したんだ」
「だって~。その方がみさきのやる気が出るから~・・・・・・テヘッ!」
・・・・・・返す言葉もない。
でも実際、みさきはやる気を取り戻し、さっきとは比べ物にはならない速さでうどんを啜っていくが・・・・・・。
「なに!? 日向くんを・・・好きにできる権利!? ・・・うおおおおおおお!!」
それを聞いてなぜか真藤さんまで本気になっている。
いつもの温厚な真藤さんとは真逆の真藤さんになってしまった。
「今回の勝利報酬を聞いた真藤さんが、本気モードになってしまった! 久奈浜の作戦が裏目に出てしまった!」
「もっと小さな声で言えばよかっいた・・・・・・」
窓果が、まるで勝負に敗れたかのように膝をついて言っている。
というか、報酬が俺と言うのはどうなんだろうか。
――――――そしてその後も二人の勝負は続いた。
「うにゃ~。もう食べられない」
見事真藤さんに勝ったみさきは、先ほど俺が寝ていたソファーで、今度はみさきが横になっている。
「明日の試合大丈夫なのか?」
「うん。問題ないよ。朝にはお腹空いてるから」
みさきのお腹は、いったいどんな構造してるんだろう。
「ねえ晶也。あれ本当?」
「・・・・・・何が?」
なんとなくわかったから、恐る恐る聞き返す。
「好きにできるやつ」
・・・・・・やっぱり。
「んー。どうするかな。・・・・・・明日の大会に勝てたらな」
「じゃあ晶也が勝ったら私を自由にする権利をあげる!」
「それって自分で言うものか?」
自分で自分を売っているようなもんだな。
「いいの! それで晶也のやる気もさらに上がっら嬉しいし・・・・・・どお? 上がった?」
「ちょっとだけな~」
「えー。そこは嘘でも・・・上った! もういろいろなモノも上がった! だから今すぐ二人で部屋に行こう! ・・・くらいは言って欲しかったな~」
ロビーでなんてこと言い出すんだ・・・・・・。
「俺がそんなこと言うと?」
「それもそうだにゃ~」
「それじゃあほら、明日は早いんだから、お互い部屋に戻って寝よう」
「うん、そうしよう」
そうして、俺とみさきは明日に備えて、早めに部屋に戻って眠ることにした。
八月中には終われるように予定していますが、ずれるかもしれません。
残り短いですが、最後までお付き合いしていただけると嬉しいです。