決勝戦は二話に分けて書いていきます。
大会最終日、泣いても悔やんでも、これが最後の試合であり、高校最後の公式試合になる。
そしてその最後の試合を彩るのは、俺とみさきだ。
「晶也さん! みさきちゃん! 頑張ってください!」
テントにいる明日香が、俺とみさきに声援を送る。
それに続いて窓果や真白も言葉を送ってくれる。
「二人とも、頑張ってください! 特にみさきセンパイは!」
「なんだかんだ。私も最後までマネージャーさせてもらってたし、みんなの練習に関わってきたわけで、もっとやってたい気持ちもあるけどね。・・・・・・高校最後の公式試合、頑張ってね」
真白も窓果も、最後には頑張って、ただそれだけ言ってくれた。
今まで精一杯頑張ってきた俺たちには、その言葉が一番の声援になる。
「晶也。この試合のセコンドは、私がしよう」
そう言ってテントから出てきたのは、葵さんだった。
そして今、俺のセコンドをすると言ってくれた。
「はい! お願いします!」
これは願ってない事だった。
でもただ一つ、気になることがある。
「でも、みさきのセコンドは・・・・・・」
そう、みさきのセコンドだ。
俺は試合に出るし、葵さんは俺のセコンド。
では一体誰がみさきのセコンドをするのだろうか。
「僕がしよう」
そう言って階段から降りてくるのは、真藤さんだ。
「真藤さんが?」
「うん。鳶沢くんにちょっと興味が沸いてきてね。・・・どおかな?」
そう言ってみさきの方を向く。
「ぜ、全然いいです! お願いします!」
流石にみさきもこれには驚いている様子で、真藤さんの言葉には即答だった。
「それじゃあ決まりだね。よろしく鳶沢くん、それじゃあ試合の話がしたいから、こっちで話そうか」
「はい、お願いします!」
みさきと新堂さんは、隣の空きテントに向かって歩いて行った。
「それじゃあ晶也、私たちの話をしようか」
「はい」
俺も、葵さんと話を始める――――――。
試合開始の時間も近くなってきた。
俺も葵さんの話を聴き終わって、しばらくたった。
今はずっと、高ぶった心を落ち着かせている。
「晶也さん。やっぱり緊張してますか?」
椅子に座っていた俺に、明日香が声をかけてきた。
「ああ、うん。すごく緊張してる、だけど同時にすごく楽しみだよ」
「そうですよね! 私も楽しみです!」
・・・・・・明日香も楽しい?
「本気のみさきちゃんと何度か試合をして、その時の私、すごく楽しいんです! もちろんどの選手の方との試合も楽しいですよ。・・・でもそのなかでも、みさきちゃんとの試合は、特別に楽しいんです! その気持ちは、試合を見ていても同じです!」
「だから、みさきと俺の試合も、楽しみなんだな」
「はい!」
明日香は、いつも、どんな気持ちで試合してるんだろう・・・・・・いや、楽しんで飛んでいる。
でも俺は、以前の試合をしていた頃の日向晶也の、最後の試合は・・・・・・楽しんで飛んでいなかった。
でも今の俺なら、あの頃の俺より、断然いいモチベーションで試合をできる。
『まもなく決勝戦を開始開始します。試合に出場する選手は、スタートラインについてください』
アナウンスが入り、俺は席を立ち、グラシュの電源を入れる。
「スー・・・・・・ハ~。FLY!!」
俺は大きく深呼吸して、グラシュの機動キーと言う。
「晶也!」
スタートラインへ飛ぼうとしたら、後ろから葵さんに呼び止められる。
「楽しんでこい」
「・・・はい!」
葵さんのその言葉を胸に、俺はスタートラインに着いた。
「ついに、ここまできたね、晶也」
「ああ、これも全部、部のみんなや、みさきのお陰だ、ありがとう」
今の俺がここに居るのは、俺と一緒にここまで来てくれた部のみんなと、俺の心の中で燻っていた、燃え尽きずなかなか火のつかない気持ちに火をつけてくれたみさきのおかげだ。
どれだけお礼を言っても、言い切れない。
「お礼を言うのは早いよ」
「そうだな」
「あの、そろそろ初めてますよ!」
あまり長く話過ぎたのか、審判の人が会話を中断させる。
「はい、すみません」
「いつでも行けます」
俺とみさきは、スタートできるように体制を整える。
「――――――セット!」
俺は勢いよくスタートする。
俺にとっては完璧なスタートだ。
「うにゃああ!」
まずみさきはショートカットする。
それはいつも通りだ。
このまま俺はセカンドブイを触れ、得点を入れてみさきとドッグファイトで試合をするつもりだ。
そして予定通りブイに触れ、みさきに向かってシザーズで様子を伺うように飛んでいく。
まあ当然、そんな見え見えの動きは、みさきにバレバレで、止められてしまう。
そして本来試合中なら、起こりえないが、選手と選手が向かい合う。
「晶也・・・・・・」
そう言って俺を見る、彼女の目は、とても闘争心でいっぱいだった。
今すぐにでも飛んで、バチバチしたい。
今まで見てきた、みさき以上の、本気の目だ。
「行くぞみさき!」
みさきに小細工は不要、全力で突っ込んで、全力で当たる!
俺はみさきに触れようと、いきなり腕を動かす。
「バチバチしよ! 晶也!」
しかしみさきの反射神経の前にはそんなのは不要。
あっさりと返され、その言葉と共にやりかえされる。
「ああ! やろう!」
ある程度弾かれた俺は、みさきに急接近し、また触れようとする。
「甘い甘い!」
しかしそれも交わされる。
「背中もら・・・・・・っ!?」
先ほどのように、カウンターを入れたみさきは、また俺がバランスを崩したと思い、背中に周り触れようとしたが。
「そっちも甘い!」
俺はくるりとみさきの頭上を回転しながら後ろに回り込む。
「くっ! 私だって!」
弾かれたみさきは、すぐに翻し、俺に向かって飛んでくる。
「そんな動きじゃ俺に勝てないぞ!」
俺は交わし、みさきを追いかけようとしたが―――。
「ふにゃあああ!!」
みさきは明日香の試合でも見せた、あの球体状の相手を囲う技を行う。
中の様子は最悪だ、コントレイルの球体の壁で、みさきがどのあたりを飛んでいるかなんてわかわらない。
でもこの技は、グラシュを解除状態で飛んでいてこそできる技。
でも見た感じ今のみさきのグラシュは、解除してない。
だからこの技は不完全なはずだ。
「落ち着け、落ち着いてみれば、わかるはずだ・・・・・・」
いくら法則してなく飛んでいるとしても、必ず一回は俺の目の前の位置を通りはずだ。
その時に行けば打開できる。
・・・・・・もっとも、みさきがそれまで待っててくれるならだけど、
「いくよっ!!」
「うっ・・・く!」
やっぱり、待ってはくれないか。
読む前に背中を取られた。
きっとみさきもわかっているはずだ、この技はキリがいいところでやめないといけないと。
その結果がこれか。
・・・・・・やっぱみさきはすごい。
「こっちも行くぞ!」
明日香とは断然違う、本物の、俺だけのペンタグラム・フォース。
「その技の弱点は知ってるよ」
みさきは俺に方位されても、平然としている。
それはきっと、明日香と同じだと思っているから。
「・・・・・・ってあれ?!」
みさきは気づいたらしい。
『晶也さん、すごいです!』
俺のペンタグラム・フォスを見て、観客の人も驚いているようだ。
葵さんのヘッドセット腰に、明日香やみんなの驚きと綺麗という言葉が聞こえる。
『日向センパイ流ってやつですね!』
真白のそんな声が聞こえる。
『日向選手! ここで見たこともない大技だー! これが元現役最強のスカイウォーカーと言われた選手の力かー!』
今年も実況をしている保坂の声が聞こえる。
最強・・・今の俺にはもったいない言葉かもしれない。
真白の言葉を借りるとしたら、俺流のペンタグラム・フォース。
それは本来横に一つの星型にさらに、高速でブレずに飛ぶことで、横の星が消える前に縦の星を作り、二つに縦横の星を重ねて相手を囲う技だ。
本来横だけだと動きはすぐに読まれるけど、これなら頭上や足元を見る必要が出てくる。
「うー! これじゃあわからない!」
みさきも困っている様子だ。
そんな声が俺にも聞こえる。
みさきが下を見たときには上に、右を見たときには下。
みさきが見たときには、俺はそこにいない。
そしてある程度慣れてきたとき、その時がチャンスだ。
「え! いつの間に!」
俺はみさきの背中を取った。
「ソニックブースト!」
俺は現役の時から愛用している技で、みさきに急接近していく。
「させない!!」
しかしみさきも足で踏ん張り、垂直エアキックターンで交わす。
今度は俺が下、みさきが上のポジションになる。
「にゃあああ!!」
みさきは降下しながらシザーズを行う。
その動きは大きいが、素早い。
「つっ!!」
急なことで対応が遅れ、弾かれる。
しかも降下の勢いもあったため、すぐには体制を整えられない。
「今度こそ背中いただき!」
そしてみさきは俺の背中に触れる。
「まだまだ!」
海面すれすれだが、みさきはさらに仕掛けるつもりだ。
うまく行けば、ポジションを変え、みさきを海面すれすれに追い込める。
しかし、みさきは行こうとした体を急に止めた。
恐らく真藤さんに止められたんだろう。
みさきは熱くなって、ポジションの事を忘れてたのかもしれない。
チャンスだったが、真藤さんの言葉で再びみさきのチャンスに変わる。
そしてみさきはサードブイをタッチしに行ってしまう。
『晶也、ショートカットだ』
「はい!」
今度は俺がショートカットをする。
試合時間もあと半分くらいだろうか。
次の投稿は間に合えば明日を予定しています。