学校の方で文化祭が始まり、準備で忙しく、なかなか各時間が取れずに遅れてしまいました。
私の個人事情ではありますがここしばらくさらに遅れる可能性がありますが、今後共みなさまに読んでいただけると光栄です。
長文になってしまいましたが、本編をどうぞ。
大会までいよいよ今日を入れて残り四日。
みさきの練習ができるのは前日まで。
つまりあと三日間の間に、みさきには再び明日香と互角になってもらわないと困る。
「起きろみさき、そろそろ練習するぞ」
朝食もみさきの作った手料理。メニューはハムエッグとパンといたって普通だった。
ただ張り切りすぎて早起きしたみさきが、少し寝かせてほしいと言ったから、お昼くらいまで寝かせてあげた。
「ふにゃ~・・・晶也どうしたの?」
眠い目を擦りながら、みさきは起き上がる。
「外に出るぞ。着替えてくれ」
「えー、まだ寝てたい~」
そういってみさきは再び布団に戻る。
俺はみさきから布団を剥ぎ、起きろともう一度言った。
「うへー、熱いにゃ~」
みさきは完全にやる気のない感じでよたよた後ろを着いてきている。
「よし、ここでいいだろ」
「ん?! 砂浜? ・・・・・・あっ、もしかして!」
みさきは何を考えたのか、みるみるうちに顔色が真っ青になり、真夏なのにガタガタ震えている。
「きょ、去年の・・・今年もやるの? あの夏の、砂浜で若い肉体を散々に責められ、空でいたいけな体を責めらせ、若い肉体をムチで打たれ紐で吊るされ、思い出すだけで寒気のする練習を!!」
「紐って点は言いせんいってるぞ」
「え。私ムチで叩かれるの・・・・・・?」
「そんなことしない。いまから準備するから待っててくれ」
俺はそう言って、みさきだけ残し、木から木へロープを張る。
「よし、できた」
「これって、何をするの? 遊び? リンボーダンス?」
見ていたみさきは、俺のお隣にきて、説明を求める。
「やり方はあとで教えるよ。言えることは、バランス感覚を少しでも強化しようと思って、昔小さい頃にこんな遊びをしてたのを思い出したんだ」
「へえ。晶也ってこんな遊びしてたんだ」
みさきが興味深そうにロープを見ながら言った。
遊びと言っても、葵さんにバランス感覚や、足腰の動きなどを柔らかく、細かく動かせるようにするためにしていた、一種の練習だ。
「じゃあまずは、グラシュを履いたまま片足を上げて、一分耐えてみてくれ」
「わ、わかった・・・」
そう言ってその場でみさきは右足を上げて、左足でバランスを取り始める―――が。
「わ、とと。おわ! にゃ! ふにゃあ!」
地面がサラサラした砂なため、みさきは思った通りにバランスを取れないと言った様子だ。
すごいグラグラしている。
「こ、これ。なんとも、バランスが、取りにくいー!」
「地面が砂って言うのと、グラシュの重さが合わさって、通常よりも大変なんだよ」
俺が話ている間も、みさきは大変そうにしている。
そして俺もグラシュを穿履いて、みさきの隣で同じ練習を始める。
「晶也って、もしかしてこの練習したことあるの?」
「あるけど?」
「なら、コツとか教えてほしいんだけどな」
「コツと教えたら練習の意味はないだろ。まあコツがないわけでもないが、この練習は単純に、その人のバランス感覚を鍛えるから、結果的には努力するしかないんだよ」
そう言うとみさきは、短くため息をつき―――
「はーーー」
―――ひと呼吸分の間を空けて。
「その発言は、コーチとしては適切だけど、彼氏としてはちょっとな~」
「じゃあコツを知りたかったわけか?」
「そうだね。こう言う時は、優しくさりげなく、コツを教えてくれるのが、私の彼氏としてはベストかな」
そういいながらも、みさきはバランスを取り続けている、
余裕に話しているところを見ると、もう十分になれてきている感じだ。
時間も二分ほど耐えている。
「よし、じゃあ次。左足上げて」
「あ、うん」
みさきは会話しながらも、俺の指示をしっかりと聞いて練習をこなす。
「もう十分にコツを掴んだみたいだな」
「そうだね。晶也が一緒にいてくれるからかな?」
「俺が隣にいるだけでうまくなるなら、さぞ苦労しないことだろうな」
飛行姿勢とかならそうかもしれないが、この練習で俺のを見ても、なんも得られないと思うんだが。
「本当だよ。晶也が隣にいると、頑張らなきゃって気持ちになれるから。だから頑張れるんだよ、私」
みさきはたまに、唐突にこんな照れくさい一言を言う。
「まあ、片足上げて言う言葉じゃないけどな」
言葉と場があっていないことに、少し笑いながら返す。
「あはははは、それもそうだね」
みさきもそれに気づき、一緒に笑う。
最初のバランス運動を何度か繰り返し、完全に慣れたところで、いよいよメインの練習に入る。
「それじゃあそろそろこのロープを使うか」
「それで? これはどんな使い方するの?」
少しの休憩を入れ、その間に持ってきていたスポーツドリンクを飲んでいたみさきが改めて聞いてきた。
「やり方は簡単。このロープの端から端まで行って帰ってくるだけ」
「え、それだけ? たったそれだけの事?」
みさきは拍子抜けの様子だったが、この練習の難しさはすぐにわかるだろう。
さっそく右側の端に行き、片足をロープに乗せる。
「お。・・・おお? おおおっと! うわっ!!」
みさきは両足を乗せた途端、見事に背中から転んだ。
幸いどんなに転んでも、下は砂だから、怪我をすることはない。
それを踏まえて砂浜にしたわけだけど。
「いったーい」
「大丈夫か? でもこれで、難しいってことが分かっただろ?」
俺はみさきに手を差し伸べ、みさきはその手を握り、立ち上がる。
「だけど、絶対に克服して見せる!」
「ならもう一回だ」
「うん!」
それからみさきは、やっては転びを繰り返し、途中休憩を挟みながらも、数時間立った頃だ。
「できたあ!!」
週百をゆうに超える回数の中で、やっと成功した。
「よし。お疲れさま。今日はここまでにしよう」
「え、もう? 飛ばないの?」
「今日は休みなのにかなり練習したからな。これ以上は完全にオーバーワークだ」
俺が中止を宣言するとみさきは不満たっぷりに反論する。
上手く行ったから、ちょうど乗ってきたところなんだろう。
「晶也はいつも意地悪する~、まあ確かに、私は意外とマゾいとこあるけどさ、こう言うのは違うと思うんだ」
「じゃあみさきは、この先の休日はずっと、俺とイチャイチャできなくてもいいわけか―――」
「練習が中途半端に終わらせられるのもダメだけど、晶也とイチャイチャできないのはもっとダメ!!」
そういってみさきは全力で否定した。
「なら今日の練習はこれくらいにして、どこか出かけよう。丁度昼時だしな」
「うん! そうしよう!」
俺が提案すると、みさきはすぐに着替えに行った―――。
「じゃあまずはどこに行こっか」
「そうだな。白瀬さんのところに行ってもいいか?」
「うん、いいよ」
商店街を歩いていて、ふと白瀬さんに聞きたいことを思い出し、立ち寄ることにした―――。
「いらっしゃい日向くん。それにみさきちゃんも。僕に何か用かな?」
いつも通りカウンターに行くと、白瀬さんが暇をしていた。
「はい。今日はちょっと変わったことを聞きに来ました」
「変わったこと・・・・・・夜の練習に―――」
「違います! ふざけないでください!」
「晶也はそのためにここに・・・」
「みさきも便乗するな!」
俺が止めると、二人はニヤニヤしながら俺を見る。
「ほんと。晶也は可愛いにゃー」
「そうだね、この初々しい反応とかがね」
「変なこと言わないでください。白瀬さんが言うと冗談に聞こえません!」
いつから二人の仲はこんなにも深まったのだろう。
「―――で、それはそれとして、何を聞きにきたんだい?」
「それはですね。過去に試合で、グラシュのバランサーを切って練習した人がいるかどうかなんです」
そう聞くと、白瀬さんはノートパソコンを持ち出し、俺たちに見せる。
「そろそろそんなことを聞きに来る頃かと思って、準備してたんだ。―――これが過去五年間の上位四位まで勝ち上がった選手のデータで、これが僕の見た今までの試合の動画結果。見た感じ誰もバランサーのカットしてなかったみたいだ」
「そうですか。・・・・・・そうなると、俺たちが初の試みなわけですね」
「そういうことになるね」
俺は白瀬さんにお礼を言って店を出た。
「どうしたの晶也、表情が浮かないけど」
「えっ、・・・ああ、大丈夫」
「そっか。じゃあ次どこ行こうか!」
そして俺とみさきは、次の場所を考えながら、手をつなぎぶらぶらと商店街を歩いた。
「はあー、今日は疲れたにゃ~」
昨日と同じように、俺の部屋で寝るつまりのみさきは、先にベットで横になっている。
「それじゃあ晶也、何しようか!」
「何もしない、寝るぞ」
そう言って俺はみさきのとなりに入る。
「つまんない! せっかくのお泊り会なのになんにもイチャイチャしてない!!」
「おい、あんまり大きな声を出すなよ。近所迷惑だろ? それに世間一般的に、彼氏の家で、同じ布団で寝ていれば十分イチャイチャだろ?」
「そうだけど、あたしをこんな普通のイチャイチャじゃ満足できない体にしたのは晶也だからね?」
「―――誤解が生まれそうな言い方をするな!」
俺もみさきも、夜遅いのに、構わず大声を出してしまった。
しかしそんなこともお構いなく、みさきは駄々をこねる。
「やだやだ! イチャイチャするー! ・・・・・・それに! 今日くらいイチャイチャしないと、大会が近くなったらできなくなるから、だから、今がいい」
俺は尚も駄々をこねて、聞こうとしないみさきを、ガバッと置き、そのままベットに押し倒した感じにする。
今みさきは、俺の両腕に挟まれ、ジッと見つめられたまま、オロオロとしている。
「え、ええっと。え? あれ? 晶也さん? もしかして、怒っちゃいましたか? え? ええ?」
「い・・・イチャイチャしたいんだろ?」
オロオロするみさきに、俺は、自分でも言ってて少し恥ずかしいが、そう言った。
「ひ、久しぶりの、ご、強引な昌也さんで―――んくっ」
俺はみさきの言葉を無視し、その唇に自分の唇を交わした。
「んんっ・・・ん。はあはあっんん・・・」
俺がみさきにキスしたはずなのに、俺は、求めるみさきのなすがままになっている。
「ん、はあはあ。・・・もっと―――うんんっ!」
そろそろみさきが「もっと」と言い出す頃と想い、俺は少し乱暴にキスをした。
この二日目の夜は、そんな甘い夜だった。