蒼の彼方のフォーリズム 天才の二人のその後   作:蒼空

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投稿が二週間も遅れてしまい、深くお詫び申し上げます。
恐らく次話も同じくらいになると、予想しています。

こんなにも投稿ペースが遅いのに、閲覧や感想、評価していただき、いつも誠にありがとうございます。


「ねー、早くお昼食べに行こうよー!」

夏の熱気と、観客の想いが熱く燃える浜辺の会場。

高校生活最後のFCの大会。

 

「みさきちゃん、起きてください。トーナメント表みにいきますよ」

 

朝が苦手なみさきの体を、明日香は起こそうとして揺すっている。

 

「んにゃー・・・。ここで寝ている~」

「ダメだ。見に行くぞ。今年は俺も出場するんだから、自分のは自分で見に行くんだ」

「りょーかーい」

 

相変わらすマイペースなみさきは、寝起きの猫のようにゆっくりと起き上がり、両手を伸ばして伸びをする。

 

「今年のトーナメント表は、去年みたいなことにならないといいけど・・・」

「でもみさきなら、勝つ気で行くだろ?」

「そんな滅相もない! 乾さん相手に、真っ向から勝つ気でなんて、怖くて無理、絶対無理!」

 

そんなこと言ってるみさきだが、去年の乾さんとの約束もある。

きっと当たったら、スモーを使って初めから全力でいくだろう。

 

「―――でも負けない。私は晶也と当たるまで、絶対に負けない!」

「あの、みさきセンパイ。それいわゆるフラグですよ?」

「私と晶也の愛の前に! フラグなんてただの棒よ!」

「そんなこと公衆の面前で叫ばないでくれ・・・」

 

今年の大会だが、参加人数は当然秋の大会よりも多い。

それに四島の全同年代にとって、高校最後の大舞台だ。

みさきはスモ―を使わないと勝てない相手も出てくるだろう。

 

「みさきは相手にもよるが、三回戦辺りから余裕がなくなってきたら積極的にスモ―を使っていこう。明日香はなるべき技の連発は禁物だな。真白は気を抜かずに、練習の成果を発揮しよう」

 

俺がみんなに伝えると、みんなは俺をやれやれといった様子で見る。

 

「まーさーやー、立場わかってる? 今年は晶也も出るんだから、少しは自分のこと考えないと」

「そうですよ。私たちは自分で判断します。ですから、晶也さんは自分の作戦を考えていてください」

「わ、私だって二年目なんですから、いつまでも自立できないままじゃ困りますしね」

「みんな、そんな心配しなくても、俺は自分の作戦も考えてあるから大丈夫だ」

 

そうこう話しているうちに、トーナメント表のある場所に着いた。

みんなはさっそく、それぞれ自分の名前を探し出した。

 

「あ、ありました! 私は今日の部ですね」

「俺は明日の部だ」

 

先にみつけた俺と明日香は、邪魔にならないようん、少し離れたところで話す。

どうやら明日香別の部になったようだ。

正直言うと、明日香と同じ部だったら、危なかったかもしれない。

 

「まさやー、私は明日だったよー」

「私も明日の部でした~」

 

少し安心したみさきと、みさきと一緒の部になった真白が上機嫌で戻ってきた。

俺は二人にも自分の部を説明し、それに続いて明日香も説明した。

 

「明日香だけ、別ブロックか」

「うう、私もみんなと同じがよかったです~」

 

一人だけ別の部になってしまった明日香は残念そうに肩を落とした。

 

「でも乾さんも今日の部らしいぞ?」

「ほんとですか! 去年はみさきちゃんと当たってしまって、一緒に試合出来なかったので、一緒に飛んでみたいです!」

「勝ち続ければ、今日の部の決勝で当たるだろうな」

「はい!」

 

明日香は今からもう試合したくてたまらないと言った様子だ。

 

「よし、それじゃテントに戻ろう」

 

 

 

 

 

「明日香、エアキックターン!」

『はい!』

 

マイクから聞こえるのは、まさに今、第一試合真っ最中の明日香の声。

その声からは、余裕のある状況であると、読み取れる。

 

「―――っ!」

 

エアキックターンを使った明日香は、加速して相手選手の背中を取った。

 

「そのままセカンドブイへ!」

 

相手のタイプはスピーダー。

最初はあえてショートカットさせて、そのあとブロックで見事止め、ドッグファイトで得点を重ね、今ちょうどドッグファイトを止めて、ブイを取りに行くところだ。

さっきのタッチで相手の選手はかなりバランスを崩した。

これだけリードすれば、そう簡単に追いつけないだろう。

そして次の指示を出そうとしたところで、試合終了の音が鳴る。

結果は九対一、明日香の圧勝だった。

 

「お疲れさま、慣れないドッグファイトで疲れただろ?」

「いえ、まだまだいけます!」

 

明日香は両手で拳を作り、俺に訴えかける。

 

「そうか、じゃあ次も頼むぞ」

「はい!」

「―――でーも! その前に、お昼だよねっ!」

 

ベンチに腰掛けてたみさきが、ガバッと勢いよく立ち上がる。

 

「そうだな。今年も真白うどんが出店してるって聞いたから、行ってみよう。」

「おー!」

 

俺達は出張真白うどんのあるブースに向かった。

 

「あ、日向さん、それに皆さんも、こんにちは」

 

途中、市ノ瀬に出会った。

その手には、この日限定、お持ち帰り用の発泡スチロールのどんぶりに盛られた肉うどんを持っていた。

 

「莉佳もうちのうどん買ってくれたんだね! ありがと」

「真白のとこの肉うどんはおいしいから」

「そういえば莉佳は今日の部なの?」

 

うどんから話題を変え、市ノ瀬の大会に変わった。

 

「うん、私は今日の部だよ。今年は真白とは試合できそうにないね」

「そうなんだ・・・でも勝ち続ければどこかで当たるから、だからお互い頑張ろうね! 」

「うん! それじゃあ私そろそろ行くね。佐藤院さん、私が来るまでお昼食べるのを待ってるかもしれないから」

 

そう言って市ノ瀬は高藤のテントの方へ小走りで駆けていった。

 

「ねー、早くお昼食べに行こうよー!」

「あ、ごめんなさい、行きましょう!」

 

みさきが空腹を訴えると、市ノ瀬の走っていった方を見ていた真白は、待たせてしまったみさきに、一言謝って、俺たちは再び歩いていく。

 

 

 

 

「ぷはー! やっぱこの一杯の為に生きているわ! FCやっててよかったー!」

 

豪快にうどんの汁を全部飲み干したみさきが、ドラマとかの居酒屋のシーンで、お酒を一気飲みしたサラリーマンのようなことを言った。

 

「みさきのFCは、うどんを美味しく食べるためだけにあるのか?」

 

本人はこの一杯と言っているが、実際はこれで三杯目だ。

お腹を壊さないか心配だが、いつものみさきなら普通の量か。

 

「そうだよ。私はうどんを美味しく食べるために、FCで体を動かして―――って違ーう! 私のFCはうどんを美味しく食べるだけに・・・じゃないというと嘘になるから、それもそうだけど、一番は晶也と自分のためだから!」

「嬉しこと言ってくれるな」

 

今この場には俺とみさきしかいない。

最初はみんなでお昼のうどんを食べていたが、みさきがお代わりするといったから、付き添いで俺が残ることにしたからだ。

 

「だって約束したでしょ? 今度は私が晶也を届ける番だって・・・どお? 届いた?」

「・・・・・・まだわからない。でもきっと、届いてると思う」

 

まだ去年のみさきみたいに、はっきりとした感情はない。

でもこの一年、みさきがいてくれたから俺は飛んでいられた。

空から逃げずに済んだ。

だからきっと、この大会が終わる頃には、届いてると、そう俺は俺を信じている。

 

「はー! お腹一杯、これ以上は無理ですにゃ~」

「今日が試合じゃなくてよかったな」

 

俺は笑いも交え、みさきに言った。

 

「そうだね。本当に今日じゃなくてよかったよ」

「あ、そういえば、晶也のセコンドなんだけどさ」

「ああ、そのことなら問題ないぞ?」

「私、お願いがあるの・・・・・・・」

 

 

 

 

みさきとお昼の間ずっと夢中で話していると、いつの間にかアナウンスが流れ、次の試合のお知らせが聞こえた。

俺とみさきは、俺が明日香のセコンドをすることもあり、テントに戻ることにした。

 

「それじゃ明日香、準備はいいな?」

「はい! コーチ!」

 

明日香はいつも通りの元気は声で返事をした。

 

「よし! 次も勝とう!」

「はい!」

 

明日香は返事を返すと、グラシュを起動させ、最初のブイ、ファーストブイについた。

 

『それではいいですか?』

 

マイク越しに、審判の確認の声が聞こえる。

会場は試合が始まる前の、静寂に包まれる―――。

 

『セット!』

 

―――試合開始の合図とともに、二人はスタートした。

観客席も一気に白熱する。

スタートしてファーストラインの半分を通過したところで、さっさく相手の選手はショートカットした。

ここでショートカットということは、相手はファイターの可能性が高い。

これなら一気に行ける!

 

「明日香、ファーストブイをタッチしたら、そのまま反動を利用して上に上昇、ローヨーヨで加速、もし相手がブロックしてきたら、ギリギリでソニックブーストを使って急加速」

『はい!』

 

明日香は俺の指示通りファーストブイをタッチ、そのまま反動を利用し上昇、そのままローヨーヨーをする。

そして相手選手は狙い通り、明日香の動きの先を読み、降下しきるタイミングで当たるように動き出す。

そしてみるみるうちに、両者の距離が縮まり―――。

 

「明日香、今!」

 

俺が叫ぶと同時、明日香も自分なりにタイミングを考え、見事俺の指示するタイミングと重なって動いた。

そのため動きにタイムラグなどなく、ソニックブーストでの奇襲は完璧に決まった。

これが明日香のFC脳の凄さなのだろう。

 

「よし、そのまま得点を取っていこう」

『はい!』

 

今は相手の選手は、明日香がいきなりソニックブーストを使ったことで、驚いてバランスを崩し、かなりの差がある。

結果、明日香はそのままセカンドブイ、サードブイと、得点を重ねていく。

―――その後の試合展開はまたも明日香の独占勝ちだった。

 

「お疲れ様、調子いいみたいだな」

「はい! 知らない選手との試合、とても楽しいです!」

「無理はしないようにな」

「はい」

 

 

 

 

その後二試合行ったが、どれも明日香に触れることができず、追いつくこともできない選手ばかりだった。

次はいよいよ、今日の部の決勝、相手ももちろん乾さんだ。

これの決勝で、勝ったほうが、明々後日の決勝での相手になる。

 

「明日香、絶対に勝とう!」

「はい! 行ってきますね。FLY!」

 

明日香は今日一番の笑顔と、自信を胸に、スタートラインへ飛んだ。

そして二人は特に会話することなく――――――試合は開始した。




次話はいよいよみさき達の試合です!
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