この爆裂娘に親友を!   作:刃こぼれした日本刀

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投稿がかなり送れてしまいました。すいません。次回はなるべく8月中に投稿できるようにします。


この騒がしいギルドに混沌を!

 私たちに話しかけてきたのは銀髪の盗賊少女と金髪の女騎士だった。どうやら銀髪の人がカズマにスキルを教えてくれるらしい。

 

 私的にはアクアに花鳥風月を教えてもらえばいいと思う。困った時お金が稼げる実用的なスキルだよ。

 

 ていうか、この人たち……どっかで見たような気がする。

 

「む? そこにいるのはあの時の子じゃないか」

 

 カズマと銀髪の人が話し合っているので、暇そうにしていた金髪の人が私に話しかけてきた。

 

「…………………………」

 

 思い出せなかった。

 

 誰だっけこの人? なんとなく最近会った記憶があるんだけど。八百屋でアルバイトしてた人だったかな。

 

「この間はいろいろとすまなかったな。うちのクリスが迷惑をかけてしまった」

 

 え? 私迷惑かけられたの!

 

 どうしよう、本気で思い出せない。

 

いや待て、待つのよルミカ。ここは発想の転換、逆に考えるのよ!

 

 これだけ一生懸命思い出そうとしても思い出せないんだもん。女騎士さんは知り合いじゃない、そうとしか考えられない。

 

 黙り込む私をアクアが心配そうに見つめてくる。

 

「どうしたの、黙り込んで。話しかけられてるわよ? もしかしてまだのぼせてて具合が悪いの? 膝枕してあげようか」

 

 心配してくれてありがとう、でも違うのアクア。

 

 私はクリスと言う人に迷惑をかけられたらしいので、慰謝料がもらえるかなって考えてただけなんだ。決して知らない人に話しかけられてどうしようってなったわけじゃないんだからね。

 

「このけしからんおっぱいの方は知り合いなんですか?」

 

 めぐみんは爆裂魔法とおっぱいのことしか考えていないのかも。まあ、私も人のことは言えないんだけど。

 

「何でさっきから私を無視するのだ! くっ、もしかして……これは……放置プレイなのか?」

 

 やばい、このお姉さんヤバイ! なんか最後の方ぼそっととんでもないこと言ったよ!

 

 ……もう知り合いとか慰謝料とかどうでもいいから帰ってくれないかなこの人。

 

「何で私を無視するのだ。もしかして、忘れてしまったか? 私だ私! ダクネスだ!」

 

 どうしよう。もしかしてこれはあれ? あれなのかしら? アクシズ教徒の必殺技、昔の知り合いを装っての宗教勧誘!

 

「懐かしいな、私だよ私! 昔クラスで一緒だった。アクシズ教に入信してから私すっかり変わっちゃったからね! 分からなかった?」みたいなやつに違いない。

 

 ふふふ、残念でしたねダクネスさんとやら。

 

 ルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィに、この程度の宗教勧誘が通用するとでも思ったのかしら? どれだけ友達のフリをしようとも、そんなのはムダなのです!

 

 なんてったって小さいころからめぐみんやゆんゆんと言う変な子たちと遊んでいた私は周りから浮いちゃって、2人以外は友達が1人しかいないのだから! あーはっはっは!

 

 恐れ入ったか、このペテン師め! あまりぼっちを舐めるなよ!

 

 ……自分で言っててすごい悲しくなってきた。おかしいな、目から汗が止まらない。

 

「なでこなでこ」

 

 目をぐしぐしする私の頭を、アクアは優しく撫でてくれた。

 

「よしよし、いい子ですから泣かないで下さい」

 

 めぐみんが背中をぽんぽんしてくれた。

 

 うぅ、今は二人の優しさが何より辛い。

 

「おい、ルミぽん! 突然泣き出してどうしたんだ! 私か、もしかして私が悪いのか!」

 

 あれ? この女騎士さん、私のあだ名を知ってるの?

 

 紅魔の里ではルミカとしか呼ばれず、誰からも忘れ去られた悲しき運命の名を。

 

「頼む、思い出してくれ。そしてできるなら今すぐ泣き止んでほしい。周りの冒険者たちからの視線がきつい」

 

 私のあだ名を知ってるってことは、この人は詐欺師じゃない? つまりは知り合いと言うわけで……。

 

「もしかしてあなたは! 私の生き別れのお姉ちゃん!」

 

 めぐみんがヅッコケた。

 

「ルミカのお姉さんなら私のお姉さん? それとも私がお姉さん? もしくは私がルミカの生き別れのお姉ちゃんである可能性が微粒子レベルで存在する?」

 

 アクアの発言を聞き、転んだ状態から起き上がろうとしていためぐみんは、机に頭をぶつけた。

 

 私が知らない間にリアクション芸人にジョブチェンジしたのかもしれない。そう言いたくなるくらい素晴らしいヅッコケだった。

 

「いい加減にしなさいこのおバカ姉妹!」

 

 めぐみんのデコピンが、私とアクアに炸裂した。けっこう痛い。

 

「まったくもう。ルーちゃんのお姉さんが巨乳なはずないじゃないですか」「確かに」

 

 めぐみんの一言になるほどと頷くアクア。……それで納得しちゃうんだ。

 

「ひどいよめぐみん! 私のお姉ちゃんは貧乳じゃないよ、巨乳でもないけど」

 

 もしかしたら、めぐみんは人のことを顔ではなく胸の大きさで判断しているのかも。どうしよう、私が巨乳になったら他人扱いされちゃうのかな?

 

「ぐすっ……めぐみん。例えあなたが忘れても、私はずっと友達だからね」

 

「え? 何言ってるんですルーちゃん?」

 

 親友が心配そうに私を見つめてくる。

 

 大丈夫だよめぐみん、私がんばって成長しないよ! 牛乳とか飲まないから! 私たちは仲良し貧乳コンビ、ベストフレンドだよ!

 

「私たちの友情は永遠に(めぐみんが巨乳にならないかぎり的な意味で)不滅だよ」

 

「突然何を言ってるんです? 私とルーちゃんは永遠に(死ぬまで的な意味で)友達ですよ」

 

「ねえめぐみん? 何なのかしら、絶対ルミカは何かを勘違いしている気がするのだけど」

 

 アクアの質問にめぐみんは即答した。

 

「アクア、気にしないで下さい。この子は昔から破天荒でドジっ娘で、思い込んだら一方通行。ルーちゃんの変な行動に一々付き合っていたら、命がいくらあっても足りません」

 

 めぐみん、私のこと機動要塞デストロイヤーか何かと勘違いしてない?

 

「ひどい! ひどいよめぐみん! 私はお姉ちゃんやお母さんと違って、どこにでもいるごく普通の紅魔族なんだから!」

 

 私が抗議すると、めぐみんは悲しそうに目を逸らした。

 

「ルーちゃん、覚えていますか? 3年前の森のくまちゃん事件のことを」

 

 くまちゃん事件? 森の中でめぐみんとゆんゆんとかくれんぼをしていて、確か私が鬼で……。

 

「ああ、あれか!」

 

 思い出した!

 

 確か鬼だとなんかやる気が出ないって私がごねて。そうしたら、めぐみんが「鬼が嫌なら別の役割にしましょう。そうですね、カッコイイので一撃熊にしましょう」とか言って。

 

 ゆんゆんが「鬼は何で人を追いかけるのかしら? 今回の場合ならどうして熊は追いかけて来るの? 人間なんておいしくないよ」なんて聞くから。

 

「あれは本当に悲しい事件だったね。まさかゆんゆんがあんなことになるなんて」

 

 あれから1週間、ゆんゆんは家に引き篭もっちゃったのよね。

 

「惜しい人を失くしたよ」

 

 私はそれっぽい言葉で誤魔化した。

 

「何人事みたいに言ってるんですか! 誰のせいであんなことになったと思ってるんですかこの子は!」

 

 誤魔化せなかった。怒っためぐみんが私に関節技をかけてきて地味に辛い。

 

 体術の授業をいつもサボっていた彼女に、こんな完ぺきな技が使えるなんて。

 

 やはり彼女はあの力に覚醒したのかもしれない。そう伝説の力、ツッコミキャラに!

 

「ギブ! ギブアップ!」

 

 めぐみんは涙目で反省したら許してくれました。私の幼馴染は女神かもしれない。

 

「どうしたの? めぐみんがルミカに乱暴するなんて。くまちゃん事件ってそんなにひどい事件だったの?」

 

「ええ、それはもうひどい事件でした」

 

 めぐみんはアクアへ事件の説明を始めた。

 

 そう、あの時ゆんゆんが「そうよ、熊さんは人と友達になりたかったの! だから追いかけて来るのよ! 熊さんとならきっと、友達になれるはず」なんて言い出したので。

 

 心優しい私は熊さんとゆんゆんが友達になれるように、おやつに食べようとしていた蜂蜜を彼女の体に塗ってあげたのだ。

 

 蜂蜜塗れになったゆんゆんは、「う、うう…うわあああ!」と喜びの涙を流しながら走り出し、そんなゆんゆんをめぐみんは慌てて追いかけて行った。

 

「ルミカ、あなたって子は」

 

「仕方なかったの! 当時の私はゆんゆんに良いことしたなって本気で思ってたの! 熊さんの大好物である蜂蜜を身にまとえば、きっと熊さんも大喜びでゆんゆんを抱きしめてくれるのではと」

 

 私の言い訳はアクアにスルーされてしまった。

 

「そう、それでゆんゆんちゃんは……くまちゃんに襲われて……この世にはもう……」

 

 悲しそうに天井を見つめるアクア。いや、死んでないからねゆんゆん。

 

「ゆんゆんは蜂蜜塗りたくられて泣きながら里中走り回ってるうちに甘い匂いに誘われたのか、そこらじゅうから大量の虫が集まって来て。大量の虫にまとわりつかれた恐怖から気絶。全身百箇所以上を虫に刺されて……1週間家に引き篭もって。その後3ヶ月ほど精神が不安定になっていました」

 

 めぐみんの説明は確かに正しいけど、このままでは私が最低なやつだと勘違いされちゃうかもしれないから、一応補足説明をしたいと思う。

 

「虫にまとわりつかれて気絶したゆんゆんを見て、私は笑顔で言ったの。くまさんとは友達になれなかったけど、虫さんとは仲良くなれて良かったねって!」

 

 この説明を聞けばアクアはきっと理解してくれるはず。私は友達思いの良い子なのであって、決して人でなしではないのだと。

 

「どうしよう。私の妹があまりにも外道な子だった……」

 

 アクアにドン引かれた! そして外道扱いされた!

 

 ……うん、確かにいろいろ振返って見ると、私は外道なのかもしれない。今後はいっそ開き直って、これからはダークヒーローでも目指そうかな。

 

「ルミカ、今度ゆんゆんちゃんに謝りに行こう? お姉ちゃんも一緒に行ってあげるから。お詫びの品に蜂蜜でも持って行きましょう」

 

 謝りに行くのは別にいいんだけど、蜂蜜に嫌な思い出のあるゆんゆんに、蜂蜜持って謝りに行くとかアクアこそ鬼畜外道だと思う。

 

「ふっ、あのころの私は若かったからね。今ではいい思い出だよ」

 

「昔はやんちゃしてたみたいな雰囲気で誤魔化さないで下さい! はぁ、本当にもう。ルーちゃんのせいでそもそも何の話をしていたか分からなくなっちゃったじゃないですか」

 

「違うもん! めぐみんが私のお姉ちゃんをおっぱいの有無で判断するのがいけないんだもん!」

 

 私はめぐみんに猛抗議! 何でもかんでも私のせいにしないでほしい。

 

「え? ルーちゃんはお姉さんの顔をちゃんと覚えていたんですか? けっこう前に家出したお姉さんのことなんて、忘れちゃったのかと思いました」

 

「めぐみんは私をどこまでバカだと思ってるの? 私が家族を忘れるはずないでしょ」

 

 確かに時々存在を忘れたくなるような変な姉だけど。

 

「ルーちゃんがボケるのがいけないんです。見知らぬ人をお姉ちゃんなんて呼ぶんですから」

 

 やれやれ、私の発言がボケだなんて。めぐみんってば、まだまだ子供なんだから。

 

「これは私の作戦だったの。話しかけられたけど、誰だか思い出せない。そうだ、とにかく知り合いっぽいから話を合わせておこうと」

 

「なるほど。さすがは紅魔族、素晴らしい作戦ね。今度から私も同じ状況になったらそうするわ!」

 

 私の天才的な発想を賞賛するアクア。そんなアクアをめぐみんは冷ややかな目で見つめていた。

 

「はぁ。全然話合わせられてませんから。生き別れの姉妹なんて設定、どこから出るんですか」

 

 何故かめぐみんにため息をつかれると、すごい罪悪感がする。

 

 姉妹と言えば、お姉ちゃんが家出したのは何でだっけ?

 

 ああ、そうだ。思い出したよ!

 

 確か八百屋さんにキャベツを買いに行ったきり、帰って来なかったんだ。

 

 何やってんのよあの人、お使い一つ出来ないなんて。バカなの? 死ぬの? 方向音痴なの?

 

 今度ギルドに人探しの依頼でも出そうかな……一応心配だし。

 

「ため息とかやめてよめぐみん。めぐみんにそういうことされたら、何ひとつ悪い事してないのに土下座しないといけない気分になっちゃうじゃん」

 

「嘘をつくのは悪いことなんですよルーちゃん。悪い子はアクアに膝だっこの刑です」

 

 なんて恐ろしいことを言うんだこの娘。あんなことをもう一度されたら、今度こそ私は恥ずかしさで死んじゃうよ。

 

「大丈夫だよめぐみん。こんな単純な嘘に騙される人なんていないって。騙されてないなら、それは罪にはならないのよ。だから膝だっこなんて怖いこと言わないで、マジで私泣くから」

 

「それもそうですね。こんなあほな発言を本気で信じる人なんて、世間知らずな箱入りお嬢様くらいですよね。なら膝だっこはなしです」

 

 そう言って、私とめぐみんは笑い合った。

 

 これで安心、膝だっこは免れた。めでたしめでたし。

 

「2人とも、現実を見て! ルミカの嘘に騙されてあわあわしちゃってる可哀想な人を見て!」

 

 言われた通りにアクアが指差す方向を見るとーー

 

「どうしようクリス! 私はどうすればいいんだ! まさか、私に生き別れの妹がいたなんて。お姉ちゃんとは何をすればいいんだ? 急いで父に確認を取らなければ」

 

 私の華麗なるボケによって、女騎士さんは大パニック!

 

 何かぶつぶつ言いながら床の上でじたばたしていて、とても可哀想なことになっていた。

 

 ……やっぱりこれって、私のせいですか?

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ドラマチックなボケがしたかったの。反省してる、反省してるから! だからアクア、ニコニコしながら私を膝の上に乗せようとしないで!」

 

「だめよルミカ。お姉ちゃんには妹が悪いことをしたら、お説教する義務があるの。勘違いしないでほしいのだけど、これはあくまでお説教をするためであって、私がルミカをだっこしたいわけではないんだからね」

 

 嘘だ。アクアは私をだっこしたいだけに決まってる。

 

「助けてめぐみん! アクアがいじめる~」

 

 私はめぐみんに抱きついた。

 

「しまったわ! めぐみんは幼馴染に劇甘! これはルミカを渡して欲しければ、私を倒して行け的なパターンなの? どうしよう、可愛いめぐみん()を殴り倒すなんて私には出来ないよ」

 

 恐れおののくがいいアクア! これが、対シスコン用戦術兵器! これこそが、究極の絶対防御! めぐみんシールドです!

 

「がんばって下さいルーちゃん。私は応援していますから」

 

 そう言って、めぐみんは私の後ろに回り込んだ。

 

 あれ? 私の思ってた反応となんか違う……あれ?

 

「さすがめぐみん! そのままルミカを捕まえといて」

 

「分かりました」

 

 アクアの指示にあっさりと返事をするめぐみん。

 

「え? ちょ、ちょっと待って! ここはめぐみんが私をアクアから守ってくれたりする展開でしょ? 常識的に考えて」

 

 落ち着くのよルミカ。大丈夫、今ならまだなんとかなるはず。

 

 私の座右の銘は策士策に溺れず、冷静に話し合ってめぐみんを味方につけるのよ。

 

「昔からあなたは少し痛い目を見ないと、反省しない子でしたからね。ルーちゃんに反省してもらうためには、アクアの膝だっこが一番です。常識的に考えて」

 

 すごい常識的な答えを返された!

 

「お願い待って待ってちょっと待って! めぐみんは私が嫌いなの? 今あなたがしようとしていることは、お腹を空かせたこめっこちゃんに可愛いニャンコを預ける様なものだよ! 私がどうなってもいいの!」

 

「私の妹を飢えた獣のように言うのはやめてほしいんですが……その気持ちも分からなくはないのが辛いところです」

 

 こめっこちゃん、大丈夫かな? お腹を空かせて雑草とか食べてなきゃいいんだけど。

 

「惑わされちゃだめよめぐみん! ルミカはあなたを言葉巧みに誘導しようとしているのよ! 負けないでめぐみん! あなたが外道に落ちてしまったら、誰がルミカを光の道に連れ戻せるって言うの!」

 

 ちっ、もう少しでめぐみんの意識を逸らせたのに。

 

 おのれアクア、敵ながら中々良いセリフを! だが甘い、私が本当の誘い文句ってやつを見せてあげましょう。

 

「紅魔族なら闇の力とかダークサイドとか、カッコイイと思わない? さあめぐみん、こっちにおいで。共に世界を暗黒に染め上げようではないか!」

 

 ふふふ、紅魔族ならこのシチュエーションに抗えまい! この勝負、私の勝ちだ!

 

「ふっ、甘いですねルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィ! この私が、この程度のシチュエーションに、食いつくとでも思ったんですか?」

 

 めぐみんに誘惑が効かないなんて予想外。唖然としていた私は、気が付けば後ろからめぐみんに羽交い絞めにされていた。

 

「嘘でしょ、ありえない! 紅魔族ならこのシチュエーションで私の味方にならないはずが」

 

「なるほど。めぐみんは紅魔族である前に、一人の姉だったと言うことね」

 

 項垂れる私に、勝ち誇ったアクアがそれっぽいセリフを言った。

 

 胸を張っているのが非常に憎らしい。あの胸もいでやりたい。

 

「今まで共に戦ってきた仲間が敵のスパイだったり、ラスボスを倒したと思ったらラスボスの手下が真の黒幕だったり。ダークサイドなら、裏切り者の方がかっこいいと思いませんか?」

 

 確かに、超絶カッコイイ!

 

 まさか、この私が幼馴染の好むシチュエーションを読み違えるなんて……完敗だよめぐみん。

 

「ぐすっ……裏切られた。私、親友に裏切られた。……信じてたのに、めぐみんのことは味方だって……私信じてたのに」

 

 こんなに完璧に負けてしまったら、最後の手段。泣き落とししかないじゃない!

 

「………………」

 

 アクアがぽかんと口を開けていた。「え? 最初に裏切りを提案してたのルミカでしょ?」と目が語っていた。

 

 ごめんねアクア、私って負けず嫌いだから。使えるものは何でも使う悪い子なのです。

 

「何悲劇のヒロインぶってるんですか。ルーちゃんの考えはお見通しです。私のこと、どうせめぐみんシールドとでも思ってたんですよね?」

 

 どうしてバレちゃったのかしら。恐るべし幼馴染。

 

「めぐみん、ヒロインって言うのは死んだらだめなの。ヒロインとは主人公とハッピーエンドを迎えなければならない運命を背負いし者。どんなに絶対絶命な状況からでも、何故だか最後まで生き残る存在を人は畏敬の念を持ってヒロインと呼ぶんだよ。よく物語の中でもあるでしょ? 仲間を肉盾にして敵の攻撃を防いだり、ライバルキャラを敵の囮にしてヒロインレースから永遠にリタイアさせたり。つまり、ヒロインは卑怯卑劣極悪非道、何を犠牲にしても許されるんだよ?」

 

「最低です! ヒロインにあるまじき最低な発想ですね!」

 

「そんな最低な私も最高にステキ! いえーいっ!」

 

 私はめぐみんのセリフに最高の笑顔でそう言った。

 

「笑顔で開き直らないで下さい。確かに可愛いですけど」

 

「私の妹が可愛すぎて生きるのがつらいっ!」

 

 めぐみんもアクアも私の笑顔でイチコロなのです。

 

 これで話題は完全に逸れたはず。ルミカちゃん大勝利!

 

「ではルーちゃん。可愛いヒロインらしくアクアお姉ちゃんにたっぷり可愛がってもらって下さい」

 

 めぐみんの一言に、私の肩がびくりと震えた。

 

「やめてやめて! めぐみんの言う可愛がるは私の思う可愛がるじゃないと思うの! このままだとアクアにルミカちゃんがボコボコにされちゃうかも! だからめぐみん、肩をぐいぐいしないで」

 

 めぐみんは私の肩をぐいぐいとアクアに向けて押し始めた。

 

 何なのこれ! 欠食児童だっためぐみんに、この私が力負けするなんて!

 

 紅魔の里にいた時より、ちゃんとご飯が食べられるようになって元気なのかも。

 

 ……昔から親友の健康を心配していたので、元気に育ってくれてちょっと泣きそう。

 

「もう、ルーちゃんったら。私とアクアがそんなひどいことをするはずないじゃないですか」

 

 ……滑って転んで気絶した時、めぐみんに髪の毛抜かれそうだったよね私。

 

「安心してルミカ。女神アクアの名に誓って、私はルミカを可愛がるだけでボコボコになんてしないわ!」

 

 そもそもアクアって女神じゃないじゃん!

 

「本当? 痛いことしない? 怒ってナイフとか投げない?」

 

 私は二人に恐る恐る尋ねた。

 

「そんな恐ろしいことしないわよ!」

 

「しませんよ! ルーちゃんはお姉ちゃんたちを何だと思ってるんですか!」

 

「もちろん信頼してるよ。二人ともやる時は殺る女だと思ってます!」

 

 特にめぐみんはカズマや私が何かやらかしたら、容赦なく爆裂魔法をぶち込んで来るに違いない。

 

「妹に信頼されてとても嬉しい、嬉しいのだけど……何なのかしら、この複雑な感情は。人として、いや女神としてこのままでいいのかしら私」

 

 なんかアクアが落ち込んじゃった。

 

「人から信頼されてこんなに微妙な気分になったことはありません。安心して下さい、そんな物騒なこと私たちはしませんよ」

 

 めぐみんはちょっぴり涙目になった私を安心させるように、頭を撫でてくれた。

 

「ああ良かった。お母さんが夫婦喧嘩になった時、お父さんに魔剣持って襲い掛かってたり、お姉ちゃんがお母さんとの親子喧嘩で上級魔法を撃ち合ってたから。てっきり、めぐみんやアクアも怒ったら襲い掛かって来るのかと思ってたよ」

 

 ジャイアントトードとの戦闘で手持ちの武器はほぼ使い切っちゃったからね。今襲い掛かられていたら、何も抵抗出来ずに命が危なかったかも。

 

「………………」

 

 あれ? あれ? ……めぐみんとアクアの反応がなんかおかしい気が。

 

「どうしたのめぐみん? どうして突然そんな悲しそうな目で私を見るの? ねえ、何で私の頭をぽんぽんするの?」

 

「ぐす、ルーちゃん……今まで気づいてあげられなくて……ごめんなさい。まさか、ルーちゃんの家が修羅の国だったなんて……ひっく……もう1人で抱え込まないで良いんです、私の前でなら……泣いても良いんですよ」

 

 めぐみんが私の頭を撫でてくる。何故か泣きながら。

 

 どどど、どうしよう、どうしたらいいの!

 

 めぐみんが泣いてる! 私の可愛くて天才で優しい幼馴染が突然ガチ泣きしてる!

 

 私はどうしたらいいの? 助けてアクア!

 

「ぐす、うぐ……お姉ちゃんはそんなことしないよ、大丈夫だよルミカ……ひっく……」

 

 こっちも泣いてるっ!!

 

「どうしたのアクア。何で私を抱き締めるの! 何でアクアも泣いてるの?」

 

 え? 私? 私のせいなの?

 

 私の発言に何か問題点があったから、二人の美少女が泣いてるの? 何この罪悪感……。

 

 仕方ない、こうなりゃヤケよ! 膝だっこでも肩車でも何でもござれ! かかって来なさいシスターズ!

 

「な、なあんちゃって! うっそぴょーんっ!」

 

 ルミカちゃんの必殺技、ペテン! 私は全てをなかったことにした。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「まったく……この子はまったく。ルーちゃん、たまにはしっかりきっちりこってり反省して下さい」

 

「いはい、いはいよめぎゅみん! ほめん、ごめんにゃしゃい!」

 

 めぐみんが私の頬を引っ張ってくる。痛い、すごく痛い。

 

 でも、これで良かったのです。美少女に泣かれるくらいだったら、私は喜んで悪役になりましょう。

 

「ルーミーカーちゃーん!!!」

 

 突然後ろから恐ろしい声がした。

 

「ふぇ?」

 

 びっくりした私が恐る恐る振り返ると、そこにはにこにこしたアクアがいた。ていうか今の声どうやって出したの! どすが効いてたよ?

 

「ね、ねえ……何でアクアは私の背中と膝の裏に手を回そうとするの?」

 

 ものすごいいやな予感がする。

 

「ああ、これ? 膝だっこじゃ物足りなかったかなって思って」

 

「……思って……?」

 

 冷や汗をダラダラ流す私の質問に、アクアはとても良い笑顔で答えてくれました。

 

「お風呂で憧れだって言ってたし、お姫様だっこをしてあげようかなってっ! その状態で街中歩き回りながらお説教しましょうか」

 

「やめてやめて! はーなーしーてー!」

 

 そんなことされたら私が死んじゃう!

 

 美少女を泣かせた罪悪感に耐え切れなかったからって、安易に膝の上お説教コースを覚悟してしまったさっきの自分を殺してやりたい!

 

「助けてめぐみん! あなたの親友が公共の場で辱められちゃうよ! お嫁に行けなくなっちゃうよ!」

 

 私の必死の助けてオーラを受けためぐみんは、子供を安心させるように微笑んだ。

 

「大丈夫ですルーちゃん。もしお嫁に行けなくなっても、私がもらってあげますから」

 

 全然大丈夫じゃないですから! 問題しかないですから!

 

 だめだこの親友、助けてくれる気がまったく感じられない。

 

 助けを求めギルドの中を見回すと、みんな私から目を逸らした。

 

 カズマだけが「キマシタワー」と言いながらこっちをガン見して鼻血を流していた。彼とは今度きっちりお話しなければいけない気がする。

 

 後受付のリーナさん、私とめぐみんを見てこっちに親指を立てないで! グッジョブじゃないから!

 

 確かにめぐみんのお嫁宣言にちょっぴりときめいちゃったけど。私たちはそんなんじゃないんだから!

 

 誰か、誰か他にいないの? 私を救い出してくれる白馬の王子様は。

 

「……辱め。……お嫁に……行けなくなる……?」

 

 私の叫んだ単語に反応したのか、さっきまで床でのた打ち回っていたダクネスさんがゾンビのように立ち上がった。彼女と目が合ってしまったが、私は速攻で目を逸らす。

 

 ……さすがにあの人には助けてほしくないよ。

 

「話し合おう、アクア。ここは平和的に話し合いましょう! 話せば人は分かり合えると思うの」

 

 私は最後まで諦めない! 諦めてたまるもんですか!

 

「ルミカが話し合って分かってくれなかったから、今こんな感じになってるのよ」

 

 アクア様のおっしゃる通りですごめんなさい!

 

「それに、さっきも言ったでしょ? 嘘つきはエリス教徒の始まりなのよ」

 

 そう言って、アクアが私を抱き上げようとしたその時。

 

「少し待て。さきほどから聞いていれば、年端も行かない少女を辱めようとは関心できんな」

 

 なんということでしょう。ちょっと変態さんっぽいから助けられたくないと思っていたダクネスさんが、私を助けてくれるなんて。

 

 ありがとうございます騎士様! 清く凛々しく美しいとはあなたのような人のためにある言葉です。

 

 私の中でダクネスさんへの好感度は鰻上り、いやコイの滝登りだよ!

 

「まったく、こんな大勢の人がいる前で説教しなくてもいいではないか……羨まけしからん」

 

 今この人、小さい声で羨まけしからんって言った! 一瞬で好感度が下がりましたよ騎士様!

 

「そもそも、最も許せないのは! エリス教徒である私の前で、女神エリス様のことを嘘つき呼ばわりしたことだ!」

 

 バカな!

 

 まさかダクネスさんみたいな変態さんが気高く神聖で真面目なエリス教徒だったなんて! てっきり変人と変態のユートピアと呼ばれるアクシズ教徒だと思ってたのに。

 

「あなた、もしかしてあの有名な話を知らないの? これは魔王軍幹部に一度殺されちゃったけど、運良く蘇生魔法で生き返った人から聞いた話なんだけどね。女神エリスの肖像画は巨乳に描かれているけど、実際に死後の世界で出会ったエリスはどうやら胸パッドだったらしいのよ。つまり、女神エリスは嘘つきなのよ!」

 

 そんな噂、聞いたことないんだけど。絶対今考えたでしょ。

 

「何……だと」

 

「あっははははははははは! あっははははははははは!」

 

 噂を信じて崩れ落ちる女騎士。勝ち誇り高笑いを上げるアクア。そんな2人からこっそり距離を取る私。

 

 ありがとう騎士様、あなたの犠牲は忘れません。膝だっこが回避できたのは、だいたいあなたのおかげです。

 

「女神エリス、私はあなたを許しません!」

 

 何故か突然怒りだすめぐみん。

 

「権力にモノを言わせて胸を偽るだなんて。万死に値します! 我が爆裂魔法で消し飛ばしてくれる」

 

 エリス様逃げて! 超逃げて!

 

「あっ! あの時の貧乳巨乳コンビ!」

 

 おっぱいの話で思い出した。

 

 銀髪ちゃんがクリス、金髪さんがダクネス。2人ともこの間私を助けてくれた、心優しいお姉さんたちでした。

 

「誰だ私を貧乳って呼ぶのは! ぶっ飛ばしてやる! 貧乳で何が悪い! 貧乳はステータスだよ! 胸なんて飾りなの、盗賊は身軽じゃないとだめなんだ! つまり、私は貧乳なんかじゃない! 職業が盗賊だから仕方なく貧乳になってるんだ! 本気を出したら巨乳にだってなれるんだからね。貧乳には無限の可能性が秘められてるんだ!」

 

 カズマと話していたはずのクリスちゃんが、鬼のような顔でこっちを睨んでいらっしゃる。……土下座したら命は許してくれるかな……。

 

「落ち着けクリス。子供に殺気を向けるな! 気にすることはない、子供とは素直な存在なんだ」

 

 ……子供じゃないし、立派なレディだし!

 

「ダクネスには、私の気持ちが分からないんだ! 胸がないから、男の子によく間違えられる私の怒りが! 初対面の人からお兄さんとか少年とか呼ばれる屈辱が! 女の子からお兄さんと声を掛けられ、街中でナンパされたあの悲しみが! あんたみたいな巨乳に分かるのか!」

 

「そうだよ! どうしてダクネスさんにはクリスちゃんの気持ちが分からないの? 世の中には巨乳だからって、言っちゃだめなことがあるんだよ」

 

 クリスちゃんの魂の叫び、私の胸に響いたよ。

 

「おい! それをルミカが言うのか! 何で私が悪いムードになってるんだ。クリスを怒らせた張本人はルミカではないか! おかしいだろ」

 

 何もおかしなことなんてない。私は巨乳の敵であり、貧乳の味方なのだから。

 

「だいたい胸なんてあっても肩がこるだけだぞ?」

 

「う、ううう。ダクネスの馬鹿ああああ!」

 

「いや、もう貧乳でも何でも良いから! 俺にスキルを教えてくれよ!」

 

 ダクネスさんの心無い一言を受けたクリスちゃんは、泣きながらギルドを飛び出して行った。それを慌てて追いかけるカズマ。うーん、なんてカオスな状況なのかしら。

 

「……クリスを泣かしてしまった。私はなんてひどいことを……」

 

 落ち込むダクネスさんの肩をぽんぽんするめぐみん。

 

「ルーちゃんがすいません。私のルーちゃんが本当にすいません。この娘に悪気はないんです、本当は優しい子なんです。ちょっと頭が悪くて空気が読めないだけなんです」

 

「ねえ、めぐみん。それはフォローになってないと思うの私だけ? 紅魔族随一の優しさを持つルミカさんも、怒る時は怒るんだよ?」

 

 確かに私は頭が悪いかもしれないけど、めぐみんは性格が悪いと思う。絶対私をいじって楽しんでるよこの子。

 

 ていうか私のルーちゃんって何?

 

「まったく、ルミカはトラベルメーターなんだから。お姉ちゃんをあんまり心配させないでね」

 

 トラブルメーカーを言い間違えちゃうアクアの方が、私はすっごく心配です。

 

「ふむ、なるほど。確かに私とクリスがルミカと出会ったのも、バカバカしい理由だったしな」

 

 え? 納得しちゃうの! ダクネスさん納得しちゃうの!

 

 どうしよう、予想以上に私ってみんなからあほの子だと思われちゃってるの?

 

「ルーちゃんはドジっ娘ですから。この子、何か迷惑とか掛けませんでした? 妹が迷惑を掛けたなら、それは姉である私の責任でもあります」

 

 めぐみんならこの後「妹が迷惑を掛けたお詫びに良ければ、その邪魔そうな胸をもいであげましょう」とか言い出すかななんて考えてしまった私は、少し疲れているのかもしれない。

 

「迷惑なんてしていない、私は騎士として当然のことをしただけだ。路上で少女が……」

 

 まずい! これ以上ダクネスさんに話させてはいけない!

 

 このままだとめぐみんとアクアに、私のうれしはずかし姦しいエピソードがバレちゃう。

 

 2人の才色兼備なルミカちゃんのイメージが、残念な子になってしまう! 急いで誤魔化さないと。

 

「私が路上パフォーマンスをしていたら、クリスちゃんたちが話しかけてくれたんだ。そこから話が弾んでね。一緒にご飯を食べたの」

 

 よし、我ながら完璧な言い訳!

 

「あれは路上パフォーマンスだったのか? 私たちは道端で行き倒れていた少女を保護したつもりだったんだが……」

 

 ……あっ。

 

「ルミカ。やっぱりめぐみんとは似たもの姉妹なのね」

 

 アクアはうんうんとなんか一人で納得している。

 

「ふふっ。さすがに行き倒れを路上パフォーマンスで誤魔化すのは、無理だと思いますよルーちゃん」

 

 めぐみんは笑いを堪えている。

 

「違うもん! お昼寝してただけだもん! 道端でお昼寝してただけなんだもん! 私は決して行き倒れてなどいない」

 

 3人とも私の話を聞いてくれない。すごく暖かい目で見て来る。

 

 それから5回ほど。私はどれだけ自分が優雅に地面の上で午後のひと時を過ごしていたのかを説明した。……3人とも信じてくれなかったけど。

 

「うぐ……ぐすっ……違うもん……ひっく……違うんだもん」

 

 恥ずかしい。涙が止まらない。

 

「もう良い、もう良いんだルミカ。それ以上無理にしゃべらなくてもいいんだ。お前が空腹で倒れていたのは私の勘違いだった、お前の『道端に寝転がり優雅に庶民と戯れる姫様』は素晴らしい芸だったから」

 

「そうよね、優雅に地面に座るくらい普通よね! 私も時々地面とハグしてるもの、土との触れ合いって大切よね。常に大地に感謝を忘れないルミカの姿勢は素晴らしいものよ」

 

「もう笑わないので泣き止んで下さい。今ならプリンもありますよ」

 

 ダクネスもアクアもめぐみんも。こんな惨めな私を慰めてくれるなんて……恥ずかしくて死んじゃいたい……いなくなっちゃいたい。

 

 いなく……なっちゃいたい?

 

「くく。くふふ。くははははは! そうだそうだよそうじゃないですか! どうして私はこんな簡単な点に気がつかなかったんだろう。まったく、ルミカってばおバカさん☆」

 

「ねえ、どうしたのルミカ? 目が真っ赤なんですけど! まるでさっきのめぐみんみたいに目が真っ赤なんですけどっ!」

 

「何だ、この背筋を這うような悪寒は……まるでふざけてクリスの胸パッドを取った時のような恐ろしい気配がするぞ!」

 

「まずいですよ2人とも! 本気でまずいです! ルーちゃんが! 紅魔族随一の天災、ルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィが! 本気で切れました!」

 

「まったく。アクアもダクネスもめぐみんも、何をそんなに焦ってるの? 私は全然怒ってないよ? ただちょっと……」

 

 私は一生懸命考えたのです。うれしはずかしエピソードがバレちゃったのはもう仕方ない。大切なのはその後始末をどうするかなのだと。

 

「ただちょっと……爆裂魔法でギルドを塵にしようかなって!」

 

 私の素晴らしい発言に、ギルド内の冒険者全員がスタンディングオベーション! 荒くれ者たちは絶叫しました。

 

「全員戦闘準備! ルミカちゃんを全力で止めろぉぉぉぉ!」

 

 その時の私は思ってしまったのです。恥ずかしい過去なんて、ギルドごとなかったことにしちゃえば良いじゃんと。

 




 ダクネスさんはルミカのお姉ちゃん発言を受けて、床の上でずっとじたばたしていました。クリスと喧嘩しちゃったり。今回一番の被害者かもしれません。

では一度やりたかった次回予告を。

やめて!これ以上カズマさんの変態的幸運値で、スティールなんてされたら、アクセルから女性冒険者がいなくなっちゃう!お願い、負けないでルミカ!あんたが今ここで倒れたら、めぐみんやクリスの尊厳はどうなっちゃうの?乙女的ライフ(パンツ)はまだ残ってる、ここを耐えれば、カズマに勝てるんだから!
次回、「ルミカ死す」デュエルスタンバイ

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