この爆裂娘に親友を!   作:刃こぼれした日本刀

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 みなさん、本当にお久しぶりです。作者多忙により、時間が取れませんでした。本当にすいません。
 今後はやっと時間に余裕が取れるようになったので、また執筆を再開していきたいと思っています。冬休みと正月休みを使って、今年中になんとか第一章を終わらせられたらと考えていますのでしばらくお待ち下さい。




この頼もしいパーティでクエストを!

■■■カズマ視点■■■

 

 拝啓、サトウ・カズマ様。あなたは異世界に転生したら、チートでハーレムでファンタジーな生活が待ち受けていると思っていたことでしょう。

 

 ですが、現実は非情です。あなたが行う異世界は、野菜が人を攻撃するようなマジな異世界です。命がいくらあっても足りません。

 

 もちろん、異世界に行き、良いこともあるでしょう。パーティメンバーは全員美少女で、あなたはどこからどう見てもリア充です。

 

 ……ですが、メンバーは……。

 

「何このキャベツ! めちゃくちゃおいしいんですけど。ほら、ルミカもめぐみんもキャベツ炒めもっと食べなさいよ。大きくなれないわよ?」

 

 見た目と能力だけは完璧に女神なのに、その有り余る知力と幸運の低さが全てを台無しにしている可哀想なプリースト。

 

「アクア、それ以上この私の前で発育についての話をするのなら、爆裂地獄を味わうことになりますよ?」

 

 1日1発しか魔法が使えない、戦力的にも発育的にも残念な魔法使い。

 

「落ち着けめぐみん。仲間の怒りを受け止めるのも騎士の務めだ、打つなら私に撃て。お前の思い、この私が全て受け止めてやる……爆裂地獄か、ふふ」

 

 誰かを守るために体を張れる、凛々しく美しいドMクルセイダー。

 

「え? ダクネスったら大胆告白! 本命はクリスちゃんじゃなくめぐみんなの?」

 

 数々の異名を持ち冒険者たちからも恐れられる、魔法が使えない代わりに宴会芸から接近戦までこなす変な格好と思考回路をした自称魔法使い。

 

 確かにメンバーは全員美少女だが、それを差し引いて余りあるくらい残念なやつしかいない……だからチートに目の前の女神を選ぶのだけはやめておけ! 未来の俺より。

 

「ダメだ、こんなのはやっぱり間違ってる!」

 

 俺は目の前でバカをやってるパーティメンバーたちから、現実逃避するために書いていた過去の俺への手紙を破り捨てた。

 

 このままではまずい、こいつらと一緒にいたら俺の命が危ない……どうにかせねば。

 

「みんな、聞いてくれ。大事な話があるんだ」

 

 俺はいらない子をなんとかパーティから放逐するべく、作戦を開始した。

 

「アクア以外の3人にはまだ言ってなかったが……俺たちは本気で魔王を倒したいと考えてるんだ。俺が冒険者になったのも、全ては魔王を倒すため……」

 

「え! そうなの? まさかカズマさんにそんな勇者願望があったなんて。がんばってね、私も応援するから」

 

 いや、お前もやるんだよ! むしろ誰よりもアクアががんばらないとダメだろ。

 

「俺たちは最強の存在に喧嘩を売ろうとしている。これからの戦いは過酷なものになる。俺はお前らに傷ついてほしくないんだ! めぐみん、ルミカ、お前らはまだ若い。魔王が怖いなら無理しないでくれ、今ならまだ間に合うぞ」

 

 俺は魔王が怖い、ものすごい怖い。せっかく生き返ったのに、魔王に無謀な戦いを挑んで死ぬのは嫌だ。

 

 めぐみんもルミカもまだ子供だ、魔王に対する恐怖心は俺以上なはず。軽く脅してやれば……。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者! この世で最強の存在は魔王ですか? いいえ違います、違いますとも! 最強とは爆裂魔法のためにある言葉、ならば爆裂魔法を操りし我こそが最強! 私は必ず魔王を滅ぼします、そして証明するのです。我が名が最強であることを!」

 

 めぐみんはマントをバサッと翻しながら、ハイテンションで言い切った。

 

 ダメだ、こいつは手遅れだ。魔王に恐怖するどころか、ひと狩りいこうぜみたいなノリで魔王城に突撃しかねない。

 

「どうしたのだ、ルミカ? ……震えているぞ」

 

 ルミカの方を見ると、ダクネスが言うように俯いて体を小刻みに震わせていた。もしかして、びびってる?

 

 チャンスだ! めぐみんはダメだったが、妹の方なら行けるかもしれない。

 

 畳み掛けろサトウカズマ! ここで勝負に出ないと、逆転の機会はもうこない気がする。

 

「よく聞けルミカ、恐怖心を持つことは悪いことじゃない。怖さを知るのも勇気だ……お前はもっと強くなれる。それでも怖いなら、私を……仲間を頼れ! 1人で立ち上がれないのなら、私たちがお前を支えてやる。だから、ルミカも私たちを支えてほしい。困った時に助け合える関係……それが仲間というやつだ」

 

 俺がルミカの精神を揺さぶろうとしたら、ダクネスがなんか語りだした。

 

「安心しろ、私は鉄壁の防御力を持つクルセイダーだぞ? 例えどれだけ魔王が強大な存在だとしても、仲間を傷つけさせはしない」

 

 ……ダクネス。ただのマゾだと思っていたのに、真剣な表情でルミカを勇気付けるその姿はとても凛々しくて……誰よりも格好良かった。

 

「例えお前が魔王に捕まったとしても……私はお前を見捨てない。大丈夫だ、魔王に捕まるのは女騎士の仕事! 私は絶対に……仲間をエロイ目なんかに合わせない!」

 

 誰か俺を殴ってくれ、一瞬でもダクネス(こんなやつ)に見蕩れてしまった自分が恥ずかしい。

 

「くくく、あはははは!」

 

 俺がダクネスのせいで落ち込んでいると、突然俯いていたルミカが笑い出した。

 

「感謝するよカズマ。なんと言う幸運、私たちの出会いは運命だったのかもしれないね。つまり、カズマと一緒にいれば魔王を血祭りに出来るんでしょ?」

 

 魔王にびびって震えていたと思ったら、どうやらルミカは魔王と戦える喜びに打ち震えていたらしい。

 

 紛らわしい反応しやがって。

 

「……魔王を倒して、私が未来の魔王になる野望がついに……ふふ」

 

 ルミカ、なんて恐ろしいことを考えてるんだ。

 

「私、怖くなっちゃった。ねえカズマ、魔王を倒すのやめない? 私と一緒に土木工事で頂点を目指しましょうよ。実は親方から俺の後を継がないかって、誘われてるんだけど。カズマの幸運と私の左官工技術があれば、きっと世界一の土木業者になれると思うの!」

 

 確かにアクアの土木作業技術には、親方も感心していたが……こいつって水の女神じゃなくて、土の女神なんじゃね?

 

「やれやれ、どうやら全員パーティに残るってことで良いんだな?」

 

 俺の発言にアクアだけが嫌そうな顔をする。こいつは腐っても俺の転生特典なので、意見は無視である。

 

 とりあえず、このままクエストに行くと死にそうな気がするので、クリスから巻き上げた金を使って、きちんとした装備を買う決意をした俺なのであった。

 

■■■ルミカ視点■■■

 

 

「どうだ、それほどへんではないと思うんだが」

 

「……ほぉ、見違えたぞカズマ。お前の格好は街でかなり浮いていたからな、気になっていたのだ」

 

「わー。カズマ、やっとへんな人からちゃんとした冒険者にジョブチェンジしたんですね」

 

 せっかく装備を一新したのに、ダクネスとめぐみんのあんまりな反応に、カズマは青筋を立て今にも爆発しそうである。

 

 ……まったく、二人とも男心が分かってないな。私がお手本を見せてあげないと。

 

「似合ってるじゃんカズマ、その頑丈そうな脛当てはどこで売ってたの? 私も欲しいから後で案内してよ」

 

「お、おう、サンキュー」

 

 私のフォローに照れるカズマ。ふっ、どうよ2人とも?

 

「まさか、あのルーちゃんが……落ち込んでいる人がいたら、無自覚に止めを刺していた外道が。髪飾りを新しくした女子に、髪の毛にゴミがついてるなんて指摘して……空気を凍らせてた氷結地獄のルミカが人を慰められるなんて。成長したんですね……ほろりときました」

 

「なるほど、これが女子力。ここでかっこいい脛当てとか言わないのがポイントになるのだな。紅魔族とセンスが同じだと言われたら、自分の感覚が信頼できなくなってしまうはず。うむ、素晴らしいコメントだ。ありがとう、勉強になったぞ」

 

 ルミカちゃんの華麗なるお手本を見た2人は、感心してくれたけれど……私の欲しかった反応と、なんか違う。

 

 私が自分の周囲からの印象について悩んでいたら。

 

「ねえルミカ。あの大きな鎌はまだ修理中なの? 今のあなたの装備で脛当てまでしたら、カズマと服装がかぶっちゃう感じに……」

 

 アクアがそんなことを言ってきた。

 

「ごめんカズマ、やっぱ脛当てはいらない。むしろ、今の私に必要なのは防具なんかじゃない! インパクトのある武器なのよ!」

 

 ありがとうアクア。紅魔族的に、キャラかぶりは致命的なのです。

 

「はあ、俺は今のままでも十分ルミカはキャラが濃いと思うよ。つーか、これ以上武器を充実させてどうするのお前? 本当なら魔法使いは杖とか防具に金を使うもんだろうが」

 

 やれやれとため息をつくカズマから、そっと目を逸らす。私だって……分かってるのよ本当は。

 

 でも、魔法が使えないのだから仕方がないのです。モンスターを倒さないと、レベルは上がらないのだから。

 

「さて諸君。装備は揃えた、スキルも覚えた。となれば、やることは一つだろう……」

 

 カズマは少しもったいぶってから、こう言った。

 

「クエストに行こうぜ! 低レベルな俺達でも安心安全なレベル上げができる、近場でそこそこ報酬もいい討伐系のクエストを受けたい。もっと言うと、俺が危なくないクエストを受けたい」

 

 もったいぶったくせに、発言がヘタレだし! ……まあ、高難易度なクエストを希望されても、それはそれで困るんだけど。

 

 カズマのそんな注文に、ダクネスが自信ありげに頷く。

 

「繁殖期に入ったジャイアントトードが……」

 

「「カエルはやめよう!!」」

 

 ダクネスの意見を、アクアとめぐみんが拒絶する。

 

「よーし! 今度こそカエルをぜんめt……むぐー」

 

「ルーちゃんはちょっと黙ってましょうね。ここからは大人の話です」

 

 ダクネスに賛成しようとしたら、めぐみんが私の口を手で塞いできた。最近親友の私に対する扱いがひどいと思う。

 

「どうしたんだ? カエルは刃物が効果ばつぐん、攻撃もワンパターンな舌での捕食だけだ。肉は食用になるから売れるし、こんなにおいしい獲物はいないぞ?」

 

「ごめんねダクネス。私は宗教的な理由でカエルはちょっと。アクシズ教徒は水の女神アクア様を信仰してるでしょ? だから水棲モンスターは倒しにくいのよね」

 

 嘘つきはエリス教徒の始まりじゃないんですかアクアお姉ちゃん?

 

「すいませんダクネス。実は我が家にはカエルはよく見るとなんとなく可愛いからいじめちゃダメという家訓があるのです」

 

 ……この前カエルを爆殺して、から揚げモリモリ食べてた子が何を言ってるのかしら。

 

 そもそもめぐみんの家は、「人間以外は食べ物! お腹がへったら虫でも食べよう!」みたいな感じじゃん。

 

 何なのこの2人……白銀のペテン師とか呼ばれて嘘つきの代名詞みたいに扱われてる私よりも、よっぽど嘘つきじゃない。

 

「こいつらはな……カエルにトラウマがあるからさ。他のモンスターにしようぜ」

 

 カズマもカエルが嫌いなのかもしれない。表情が若干引き攣っている。

 

「む、そうか? 薄い装備だと食われることもあるらしいが、装備を変更したカズマなら金属を嫌がって狙われないはず。3人は私が守るから大丈夫だと思ったのだが……仕方ない、なら別のクエストを」

 

「よし、カエルにしよう! ダクネス、3人をしっかり頼んだぞ! トラウマ克服のいい機会だ」

 

 こ、この男。自分が安全圏にいると知った瞬間、華麗に強気に手のひら返しとか……あれ、ちょっと待ってほしい。

 

「ねえダクネス! 今のカズマの装備ならジャイアントトードに、食べられないんだよね? 金属を嫌がって、食べられないんだよね! おかしいよ、そんなの絶対おかしいよ! ならどうして私はカエルに食べられたの? 粘液ぬるぬる汚されちゃったの!」

 

「落ちつけルミカ! いいか、落ちつくんだ! 深呼吸して落ち着いたら、私にぬるぬる粘液で汚されたことについて、詳しく話すんだ!」

 

 鼻息を荒くするダクネスに、私は粘液のことは無視して説明する。

 

「私だって金属の篭手持ってたのに、カエルに襲われたんだよ! そんなのってないよ、理不尽すぎるじゃない。これが幸運値の格差だと言うの? おのれ、邪神エリス! 私は、……あなたを許さない」

 

「あの、ルーちゃんがジャイアントトードに食べられたのって。デスメテオと短剣を投げつけて、装備してなかったからじゃ……。そもそも、ルーちゃんに仲間を無残に殺されたカエルが怒るのは当たり前じゃないですか?」

 

「……ふにゅっ!」

 

 めぐみんの指摘に顔が熱くなる。あまりにも恥ずかしくて、変な声が出ちゃったし。

 

 ……本当にはずい。

 

「と、とにかくカエルはやめよう! カエルを皆殺しにするだなんて、人間のエゴだよ。傲慢だよ!」

 

「誤魔化したな」

 

「誤魔化したわね」

 

「誤魔化しましたね」

 

 カズマもアクアもめぐみんも、私をそんな可哀想な子を見るような目で見ないで。

 

「ルミカ、今度2人でリベンジマッチにでも行くか? 私はいつでも手伝うぞ」

 

「ありがとうダクネス、すごく優しい言葉をかけてくれて。それがカエルの粘液を味わいたいなんて欲望あり気の慰めだとしても……私はうれしいよ。分かった、今度一緒にカエルデートしよっか」

 

「ああ、もちろんだっ! この私がいるかぎり、ルミカには手を出させない……粘液ぬるぬるは私のものだ……」

 

 頬を赤らめ、もじもじと返事をするダクネスはちょっと可愛いんだけど……やはり最後の呟きが不穏すぎる。2人で行くのは危険かもしれないので、なんとかしてダクネスの保護者役であるクリスちゃんに付いてきてもらわないと。

 

「みなさん、どうやらお困りのようですね」

 

 私たちがクエスト選びに悩んでいたら、受付のルナさんが現れた。小さい声でカズマが「受付のお姉さん、いったいどこから現れたんだ! 気配が感じられなかったぞ」と驚いていたのが印象的だった。

 

「ゾンビメーカーの討伐クエストなどいかがでしょうか? 夜な夜な墓地に現れる悪霊の一種で、駆け出しのパーティでも安心して戦える雑魚モンスターです」

 

「いいわねいいわね! 迷える魂を冥界に導くのも女神の役割。そろそろ私が真の女神であることを、カズマ以外にも認めさせてあげるわ!」

 

 なんかうちのバカなお姉ちゃんがはしゃぎ出しちゃってるし。

 

「……どうするの? アクアがやる気とかろくなことにならないと思うんだけど」

 

「……大丈夫です……何かあったら爆裂魔法で墓地ごとなかったことにするので」

 

「……大丈夫じゃない、大問題だろ。やっぱりこのクエストもパスしようか」

 

 カズマとめぐみんと一緒に、こそこそクエスト却下の相談をしていたら。

 

「いや待て、ここはアクアのレベルを上げよう。回復魔法がダメージになるアンデッド討伐以外で、プリーストがレベルを上げるのは難しい。だがここでアクアのレベルが上がれば、知力や運のステータスも上がる……つまり、欠点のない完璧なアークプリーストが爆誕することになる」

 

 ダクネスがとんでもないことを言い出した!

 

 このお姉さん、実はドMの皮をかぶったドSなんじゃないかな。

 

 カズマなんて、その発想はなかったみたいな顔してるし。

 

 ん? なんか引っかかるんだけど。

 

「……いや、まさか! このクルセイダー、アクアの欠点をなくすことでカズマに「まったく。優秀なアクアと違って、お前はいくらレベルをあげても防御しかできないの? モンスターに攻撃されて喜ぶとか、お前人として恥ずかしいと思わないの? このスタイル以外取り得のないへな猪口騎士め」と、罵倒されたいがためにこんなことを言い出したんじゃ……」

 

 ダクネスの策士ぶりに、ルミカちゃんドン引きである。

 

「恐ろしい……人間の欲望がこんなにもどす黒いものだったなんて。私、知らなかったし知りたくなかった」

 

 私はパーティメンバーの性癖のやばさに、戦慄が止まらなかった。

 

「私は思ったことが全部声に出てしまっていることに気がつかない……ルーちゃんの方が恐ろしいです」

 

 え、嘘っ! 声に出てたの?

 

「へな猪口騎士、私は……年下の娘にバカにされるほどダメなのか……ダメなのか」

 

 めぐみんのつぶやきから己の過ちに気づいた私が、恐る恐るダクネスの方を見ると。彼女は机に頭を打ち付けていた。

 

 怖い! そしてごめんなさい。

 

「だ、大丈夫だダクネス! お前にはいいところがたくさんあるさ。スタイルとかスタイルとかスタイルとか、ついでに防御力とか……なんかごめん」

 

「おい、慰めるならもう少しがんばってくれ。私だって普通に傷つくことがあるんだぞ」

 

 カズマの一言が止めになり、「……私には冒険者としての価値が……ないのか」とダクネスは机に突っ伏してしまった。

 

「そんなことありません、ダクネスさんはとても魅力的な女性です。あまり自分を悪く言わないで下さい。ダクネスさんはクリスさんといつも仲良しで、百合的な意味で磨けば光る原石です! 例え誰が否定したとしても、私は……あっ、ちょっとルナ放して!」

 

「ではみなさん、ゾンビメーカー討伐クエスト、いってらっしゃい」

 

 ルナさんは突然女騎士を慰めるためにやってきたリーナちゃんを羽交い絞めにしながら、何事もなかったように私たちを笑顔で送り出してくれた。きっと受付嬢には絶対的なスルースキルが必要なのだろう。

 

 私はこのプロ意識の高い可哀想な受付嬢に、今回のクエスト報酬で胃薬を差し入れすることを女神エリス様に誓ったのだった。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 時刻は夕暮れ、街から外れた丘の上にある共同墓地の近くで、私たちは夜を待ってキャンプをしている。

 

「うまいなこの肉。何かワイルドな味がする」

 

「ちょっとカズマ! それ私が育ててた肉なんですけど!」

 

「カズマもアクアもせっかちだね。お肉はいっぱいあるんだから、慌てないで」

 

 晩御飯は鉄板焼き。私の得意料理である。

 

 今度キャンプをする時は、過去に勇者が作り方を伝えたと言うお好み焼きを作ってあげよう。

 

「おい、めぐみん。私はさっきから不思議に思っていることがあるのだが」

 

「どうしたのですかダクネス? そんな真剣な顔をして」

 

「いや、私の勘違いかもしれないんだが。街で買って来た肉の量が、いつの間にか増えている気がするんだ」

 

「うわっ! マジだ、マジで肉が増えてるぞこれ」

 

 ダクネスの発言に、驚きの声をあげるカズマ。

 

「まさか、これが墓場の近くで起こる心霊現象なのか!」

 

「もしかして、カズマさん怖いの? ビビリなの? 助けて下さい美しき女神アクア様と泣いて頼むなら、私が神聖な結界を張ってあげても良いわよ」

 

「アクアもカズマもダクネスも、大丈夫ですよ。お肉が増えたのはお化けのせいではありません。犯人はこの中にいます」

 

 めぐみんの話を聞いた3人の視線が、一斉に私に突き刺さる。

 

 え? 何? もしかして、私…またやらかした?

 

「ねえルミカ。確かルミカって新しい爆発するポーションを買ったから、今金欠なんでしょ? たくさんお肉を用意して大丈夫なの?」

 

 確かに私は金欠で、今手持ちが1万エリスしかない。大ピンチです。

 

「大丈夫だよアクア、安心して。私が用意したお肉は仕入先は秘密だけど、無料で手に入れたものだから」

 

「安心出来るか!」

 

 アクアの質問に答えた私の肩を、突然カズマが掴んで来た。

 

「お前ってやつは! お前ってやつは! 日本人的に食品偽装なんて一番やっちゃいけないやつだから! 熟成通り越して腐ってるやつとかやばい肉じゃないだろうな」

 

 なになに! 日本とか言われても、よく分からないんだけど。

 

「どうしたのカズマ。そんなに怒って、お肉がおいしくなかったの?」

 

 肩を掴まれているので、カズマの顔が近い。男の人とこんなに至近距離で向き合うのは恥ずかしいけど、私は絶対引き下がらない。

 

 食べ物の好き嫌いはダメだと思う。

 

「いや美味かったけども。俺は出所不明の肉が怖いんだよ日本人的に! どうやってこの肉を手に入れたのか説明してくれ」

 

 ……どうやって手に、入れたかですって。

 

「美味しかったなら良いじゃん! 大事なのは味だよ味!」

 

 カズマの質問に冷や汗が止まらない。

 

 お肉に問題はない、ただ入手方法がちょっと言いにくいだけだ。

 

 理由を言ったらきっと、またみんなに可哀そうな子だと思われる。

 

「……おい、本当に大丈夫なんだろうな」

 

 カズマの目が怖い。ちょっぴり泣きそうだけど、私は負けない。

 

 負ける訳にはいかないのよ、美少女的に!

 

「……カズマは本当に…真実が知りたいの? この事実を知れば、もう後戻りはできない。よく考えて、本当に……後悔しない?」

 

 私の最後通告に、ごくりと息をのむカズマ。

 

「ごくり」

 

 あれ? 今誰か口でごくりって言わなかった?

 

 私が声のした方を見ると……。

 

「何だこの気持ちは。カズマが息を荒らげながら、いたいけな少女(ルミカ)に迫る姿を見ていたら……ムラムラしてきたぞ。それに、カズマに迫られて涙目になるルミカを見ていると……くふ」

 

 息を飲み頬を赤く染めたダクネスが、私とカズマを見つめていた。どうしよう、うちの女騎士が正直怖い。

 

「何バカなことを考えているのですかダクネス! 私のルーちゃんを如何わしい妄想に使うのはやめてもらおうか」

 

 ありがとうめぐみん。やっぱり私の味方は幼馴染だけなのです。

 

「ダメよルミカ! 男性とお付き合いするにしても、そこのクソニートだけはやめておきなさい」

 

 カズマと恋愛関係か、残念だけど今のところそれはないかな。

 

 パーティを組んだばっかりで、お互いのこととかまだよく分からないし。こういうのはまず、友達から始めるべきだと思う。

 

「ダクネスもアクアも好き勝手言いやがって! 良いかお前ら、俺はロリコンじゃない! めぐみんもルミカも対象外だ」

 

 私たちバカにされてる? 告白もしてないのに、振られたみたいな状況なのだけど。

 

 いや、そもそも告白するつもりはないんだけどね。なんかもやもやする。

 

「俺はこいつらみたいな胸もない、お子様体型に欲情なんてしない。俺はもっと、ボンキュッボンな色気があるお姉さんが好みなんだ!」

 

 カチンと来た! 私、今のはカチンと来ちゃったよ。

 

「その喧嘩、買おうじゃないか! 紅魔族の力、思い知るがいい」

 

「めぐみんの言う通りだよカズマ! 私だってもう立派なレディなんだから! これでも私、恋愛経験豊富なんだよ!」

 

 あれ? ちょっと待ってルミカ。私の人生で恋愛イベントなんて言ったら……。

 

「ふ、私の初告白…獣? 嘘でしょ……私の失恋、獣?」

 

 こんなに悲しい気持ちになったのは、ゆんゆんがぼっちをこじらせてけむっちと名前をつけて、毎日校庭の木にいる毛虫に挨拶していたのを目撃した時以来です。

 

「……私、死にたい。……このまま墓場で、ゾンビになりたい」

 

 まさか、この私がゆんゆんと同レベルの残念な子だったとは。気づいたら、涙が止まらなかった。

 

「ルミカのやつ、どうしたのだ? もしかして、私のせいだろうか」

 

「ちょっとダクネス。思春期の女の子は繊細なんだから発言には気をつけてよね!」

 

「ダクネスとアクアが余計なことを言うからだぞ! 見ろよ、あのルミカの人生に絶望しきったような目を!」

 

「もとはといえば、カズマが悪いのです。私たちをロリ扱いして、恋愛関係の話はルーちゃんに効果抜群です。3人とも、今後はその手の発言に気をつけてもらえませんか? 慰めるのもけっこう大変なので」

 

 みんなが何か言ってたけど、私はへこんでいたので全然聞こえなかった。

 

 ……悪口言われてたらどうしよう。

 




・ルミカ
 実は幼少期に獣に襲われたことと獣相手にナンパしたことがトラウマになっている。

 毎回毎回誤字報告してくれる方、本当にありがとうございます。
 ルミカの用意した肉は普通の肉ですが、入手方法を話したがらなかった理由がそのうち判明する予定です。
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