この爆裂娘に親友を!   作:刃こぼれした日本刀

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 お久しぶりです。結局投稿が遅くなってしまいました。
 なんとか数か月単位での投稿はできるように頑張ります。



この貧しいヒロインに求人を!

■■■ルミカ視点■■■

 

 魔王軍幹部のぶち切れデュラハン襲撃から何ごともなく1週間が経過した。事件当日は街中が警戒態勢だったけど、現在のアクセルは平和そのものである。

 

 そんなのんびりムードを満喫していたある日のこと。

 

「きつくてもいい、苦しくてもいい、痛くてもいい、つらくてもいい。……クエストよ、何でもいいからクエストを受けましょう!」

 

 ギルド内にアクアの慟哭が響き渡る。

 

「「え~……面倒くさい」」

 

 そんなアクアの発言に、カズマと私は溜息をついた。アクア以外のみんなは先日のキャベツ狩りできっちり稼いでいる。

 

 お騒がせデュラハンの影響で高難易度クエストしかない今、キャベツ狩りでお財布の潤った街中の冒険者たちはみんなニート状態になっているのだ。

 

 お外は魔王軍やモンスターがいて危ないから、私たちは働きたくないのです。

 

「ルミカとカエルを狩るのにも飽きてきたし、私はかまわないぞ。……だが、アクアと私だけでは攻撃力不足だろう……」

 

 ダクネスはそう言うと、ちらちらと私とめぐみんに視線を向けてくる。

 

 ふん、そんな可愛い仕草をしたって私は働かないんだからね。

 

「「じーっ」」

 

 アクアとダクネスが無言で見つめてくる。

 

「「じーっ」」

 

 そ、そんな棄てられた子猫みたいな目をされても、私は絶対働いたりなんか……。

 

「「じーっ」」

 

 は、働いたりなんて……やれやれ、もう仕方ないお姉さんたちね。

 

 このルミカ様が一肌脱いであげようじゃないの。

 

「大丈夫。私は手伝わないけど、代わりにアクセル随一の魔法の使い手、めぐみんが力を貸してくれるって。彼女の火力は世界を狙えるレベル、どんな強敵にだって負けたりしない。超絶カッコイイめぐみんさんにしか、こんなこと頼めないんです。お願いしますお姉様、どうか私の仲間を助けてあげて下さい」

 

 あまりにもアクアが可愛そうだったので、私はめぐみんに丸投げした。

 

 これぞルミカちゃん第3の必殺技、助けてお姉ちゃんである。

 

「……お、お姉様。なんと恐ろしい破壊力……ふ、ふふ、悪くない響きです」

 

 何かぶつぶつ言いながら頬を上気させためぐみんは、とてもいい笑顔を浮かべると。

 

「任せて下さい。私は手伝えませんが、こんな時こそ変幻自在のスキルマスターことカズマの出番です。彼ならどんな敵が相手でも対応できるでしょう。この私が保証します、彼こそが魔王を撃ち滅ぼす勇者に違いありません。必ずやアクアとダクネスを守り抜いてくれることでしょう。さあ旅立つのです真なる勇者カズマ、そう、伝説となるために……」

 

 快く私のお願いを受けてくれたかに思われためぐみんだったが、全力でカズマを推薦し……。

 

「そこまで言われちゃしょうがねえな。よし分かった、微力ながら力を貸そう。だが俺はめぐみんの言う通り世界を救うのに忙しい。その代わり、代理にルミカという俺の妹分を紹介するよ。彼女の戦闘力はいまいち不明だが、あいつは可能性の塊だ。多分宴会芸とかで戦いの雰囲気を盛り上げてくれるはずさ。安心しろ、仲間の応援によって潜在能力を開放したお前らは無敵だぜ!」

 

 そんなカズマはめぐみんから賞賛され、照れくさそうに頬を掻きながら、あっさりと私を生贄に捧げるのでした。

 

「「「………………」」」

 

 私たち3人はしばらく無言で顔を見合わせると……。

 

「ふざけんなよめぐみん! 妹の頼みくらいちゃんと聞いてやれよ、お姉ちゃんだろうが。自慢の爆裂魔法でカッコイイ姿をルミカに見せてやれよ、お姉様!」

 

「あなたがそれを言うのお兄ちゃんっ! 妹扱いするならもっと私を大切にしてほしいんだけど。無理に決まってるじゃん、どれだけ宴会芸に期待してるの!? 妹を危険な目に合わせるような男に世界が救えますか、いや救えるはずがない! だからカズマ、世界を救う前の予行練習をしようよ。まずは身近な世界を救うのです勇者カズマ! あなたの助けを、アクア(仲間)が待ってる」

 

「お兄ちゃんに優しくするのなら、お姉ちゃんにも優しくしてもらおうじゃないか! いつまでも、私があなたのお願いを聞いてあげると思わないことです。私だって、本当はルーちゃんのお願いを叶えてあげたい。お姉様も辛いのですルミカ。でも、ダメなのです。……このままでは……あなたがダメになってしまう。よく聞きなさい誇り高き紅魔の娘、ルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィ! なんじはこんなところで才能を腐らせていい存在ではありません。可愛いキャベツには旅をさせろってやつです。さあ、見事この試練を突破し……この姉をも超えて行くがいい! クエストのお土産はコロッケでお願いします」

 

 お互いに面倒を押し付けられた相手に掴みかかるのでした。

 

 それから5分後。

 

「やめて、もうやめてよ! 、これ以上私のために争わないで!」

 

 私たちの口論は、そんなアクアの一声であっさりと終わりを迎えた。

 

「「「うん、分かった。じゃあアクアはダクネスと2人でがんばってね」」」

 

 3人の返事がきれいに揃い、私たちはがっしりと仲直りの握手。

 

 アクアが喧嘩はやめてって言うから仕方ないし。私たちは何も悪くないんだもん。

 

「ど、どうしてよおおおお! ……ぐす、ここは3人共も手伝ってくれる流れじゃない、……ひっく」

 

 これっぽっちもやる気のない私たちを見て、もう後がないアクアがめそめそと泣き始めた。

 

 そうか、寝る子と泣く子は育つ……だからアクアはスタイルばつぐんなのか。

 

「お、お願いよおおおお! もうバイトには耐えられないのっ! もうルミカと比べられるのはいやなのよ、……コロッケが売れ残ると店長が遠い目をしながらぼやくの。「はあ、前までバイトしてたルミカちゃんは優秀だったな。また働いてくれないかな」って」

 

「「「……はあ」」」

 

 泣き喚くアクアの懇願を聞き、アクア以外の3人が私を見て深い溜息をついた。またお前かと言いたげな顔をして。

 

 えっ! 待って待って、さすがに今回は私何も悪くないと思う。真面目にバイトしてただけで呆れられるのは、さすがに納得いかないんだけど。

 

「私がんばるから! 文句も言わないし、弱音も吐かないわ! ちゃんとカズマさんの言う通りに行動する、だからお願いよお!」

 

 もう、しょうがないなあ。

 

 私たちは無言で頷き合うと、カズマが代表して切り出した。

 

「分かった分かった、そうとうやばいクエストでもないなら手伝うよ。だからとりあえずクエスト持ってこい、話はそれからってことで」

 

「うぐ、ありがと、ありがとうねみんな。私、全力でがんばるからあぁ!!」

 

 瞳をキラキラさせながら、クエストボードに駆け出すアクア。あっ、こけた。

 

「ぐす、負けない……私はこんなところで立ち止まっていられないの! きちんと金欠なルミカの分も働いて……お姉ちゃんが養ってあげるんだからっ!」

 

 思いっきりずっこけて涙目になったアクアは、まるで強大な敵に立ち向かうヒロインみたいなセリフを叫ぶと、再び駆け出した。

 

「アクアが心配だから私もクエスト確認してくるね。変なクエスト選ばれたら困るし」

 

「カズマーっ! ちょっとルーちゃんの代わりにアクアを見に行ってくれませんか。私はアクアが発言した内容について、この子に聞きたいことがあるので」

 

 電光石火でアクアを追いかけようとした私の手首を、めぐみんがしっかりと握っていた。

 

 ……おのれアクア、余計なことを。ていうか、どうしてアクアが私の危機的な財布の状況を把握しているのだろうか。

 

「……ルミカ、まさかお前……あれだけ稼いだキャベツ狩の報酬を……まさかな」

 

 ダクネスも私を咎めるような目で見てるし。これ……チェックメイトってやつなのでは?

 

 いや、まだだ。まだ私は諦めない。

 

「何を言っているの2人とも。お金って言うのはね、使わないと経済が回らないんだよ?」

 

 真面目な私は経済活動の仕組みを理解していないと思われる可愛そうなめぐみんとダクネスに、教師が生徒に言い聞かせるように教えてあげることにした。

 

「で、残金はいくらなんですか?」

 

「はいめぐみんさん、良い質問ですね。確かに貯金は大切なことです、だからといってみんながみんな貯金ばかりしていてはお店の人が困っちゃうんです。先生みたいにお金をいっぱい稼いだ人は、その分お金を使わなければいけない義務があるのです。私が物を買ってあげないと、魔道具店のウィズさんが路頭に迷うことになるのです」

 

 これはきっと仕方ないことなのだ。ポンコツ店長の店で高価なマジックアイテムを買う物好きなんて、駆け出しばかりのアクセルには私くらいしかいないのだから。

 

 私の経済活動は浪費ではなく、これは小金持ちにのみ許された人助けなのである。

 

「先生、親友が金欠でこのままでは路頭に迷いそうなのですが、私は怒って良いですか?」

 

「やめてください。先生は小金持ちなので金欠とは全く縁がありませんが、お友達が可愛そうなので怒るのはやめてあげてください!」

 

 めぐみんの私を見る目がマジだった。

 

 マジで目が笑っていなかった、でも今の私はめぐみんの金欠な親友ではなく通りすがりの謎の先生なので気にしない。

 

「ルミカ、めぐみんが怖いなら怒らないから私に話してみろ」

 

 嘘だ! 変態だけどなんやかんや真面目なダクネスは、きっと私に説教するんだ。

 

 先生はその手には引っかからないんだからね。

 

「ダクネスさん、質問する時は挙手してください。後私はルミカではなく、謎の美人教師なので先生と呼ぶように。分かりましたね?」

 

「……せ、先生」

 

 照れくさそうに年下の少女を先生と呼ぶお姉さん(ダクネス)が可愛すぎて、もう少しいじめたくなるのは私だけでしょうか。

 

「ねえダクネス。私はお金持ちだから、尊敬の気持ちを持ってお嬢様と呼ばれるべきではないかしら?」

 

 おーほっほっほっほっほ!

 

 ノリと勢いによる先生口調からのお嬢様コンボ、このまま話題をどんどん逸らして、全てをうやむやにしてさしあげますわ!

 

「お金持ちなルミカお嬢様って、総資産はどれくらいなのですか?」

 

「聞いて腰を抜かすんじゃなくってよ、私の全財産は500エリスですわ! ……やば」

 

 ノリと勢いでうやむやにするつもりが、ついノリと勢いでめぐみんの質問に正直に答えてしまった。ノリって怖い。

 

「めぐみん、ダクネス。先生からの最後の授業です。これだけは忘れないで欲しい、私もまた金持ち(お嬢様)という幻想におどらされただけの犠牲者の1人にすぎないってことを。お金は大切にね」

 

 最後にそれっぽい言葉で誤魔化そうとしたけど、この後めちゃくちゃ説教された。

 

■■■カズマ視点■■■

 

 ルミカとめぐみんの心配も尤もだ。俺も嫌な予感がする。

 

「ち、違うのっ! 無駄じゃないもん、これは魔王軍幹部と戦うために必要なマジックアイテムを……やめて! 謝るから、もう野生の店長を餌付けしたりしないからああ! カズマ、早く帰って来てお兄ちゃん! うぐ……ごめんってば、もう無駄づかいしないから! 反省したから髪の毛ワシャワシャしないでー!」

 

 紅魔族の少女(義妹)が俺に助けを求めていた気がするが、そんなことはなかったぜ。

 

 何故なら俺には、白髪で赤目でポニーテールな宴会芸魔法少女なんて属性てんこ盛りな義妹なんていないのだから。

 

 よし、現実逃避終了。

 

 俺が背後で繰り広げられる騒動を無視して、クエストが張り出されている掲示板にたどり着くと。

 

「……うん、これに決めたわ」

 

 真剣な表情でアクアが1枚の紙を握り締めていた。背後から紙を覗いて見ると……。

 

『これさえあればプリーストいらず! これ1本であなたも勇者! 強烈な副作用を乗り越えた時、あなたは伝説になる! 新開発した肉体強化ポーションの被験者を募集しています。激痛に耐えられる体が頑丈な人か、ステータスが低いごく普通の冒険者の方大歓迎! 報酬は40万エリスと『ヘルズパワーポーション』の現物をプレゼントします』

 

 すごくヤバそうなクエストだった。

 

「早まるなアクア! どうして寄りにもよってそんな怪しいクエストを選ぶんだ。そのポーションがもし有効なアイテムなら、俺はパーティからお前を追い出すぞ!」

 

 慌ててアクアからクエストの依頼書を奪い取る。

 

 さすがに女神を捨てるのは冗談だが……このヘルズパワーポーションとやらは絶対飲みたくない。

 

「あっ、ちょっと何すんのよ! カズマの好きなゲームで例えると覚醒イベントってやつでしょ、これ。せっかくステータスが低い……可愛そうなカズマがパワーアップできるクエストを見つけたのに」

 

「ア、アクア……お前、そこまで俺のことを思って。……おい、ちょっと待て、何でわざわざ最後言い直した? 可哀そうじゃねえし、日本だと割と普通のステータスだから」

 

 こいつ、ひょっとして危険物を飲ませて俺を亡き者にする気か。

 

「このクエストならダクネスも喜ぶと思って」

 

「喜んだダクネスが副作用に耐えきれずに死んだらどうするんだ!」

 

「回復魔法があるし大丈夫よ、……たぶんね」

 

 最後の一言が不安すぎる。

 

「よーし、やめるぞ! 他だ、他のクエストを探すんだ!」

 

「えー……じゃあカズマさん、ちょっとクエスト掲示板を見てみなさいな。この依頼はけっこうまともな方なのよ?」

 

『人探し依頼。1年程前、お使いに行ったきり帰ってこないお姉ちゃんを探してください。 報酬は20万エリス』

 

『ギルドの受付嬢である私、リーナと1日デートをしてください。可愛い女の子とお話ししたいだけで特に邪な考えはありません。1日私とおいしいごはんを食べたり、お店巡りをしませんか? 報酬10万エリス』

 

『戦力を把握するために、敵地へ潜入してください。先日アクセルの街に現れた魔王軍幹部のアジトとなっている廃城に忍び込むだけの簡単なお仕事です。幸運を祈る。要 魔王軍幹部を刺激する可能性があるので、紅魔族の方以外でお願いします。報酬40万エリス』

 

『マンティコアとグリフォンの討伐依頼。マンティコアとグリフォンが縄張り争いをしている場所があります。ほっておくと大変危険なので、2匹まとめて討伐してください。報酬は50万エリス』

 

「パンナコッタ!」

 

 あまりの驚きに混乱して間違えちまった、なんてこった。

 

 アクアの言う通りだ。何だこのヤバイクエストの数々は。

 

 どうする? 俺はいったい、何を選べばいいんだ。

 

「よしアクア。クエストは危険すぎる、だからみんなでバイトしようぜ」

 

 あのデュラハンの城に潜入したり、モンスターの縄張り争いに巻き込まれたら、いくら命があっても足りない。

 

「どうしてよ! もうバイトは嫌だって言ったじゃない。もう少し真面目に考えてよカズマ! ……しょうがないわね、こうなったら……」

 

 俺が諦めてアルバイトに誘うと、アクアは儚げに微笑んで。

 

「じゃあ私、行ってくる。まさか、女神が同性の人間とデートをするはめになるなんて、人生って何があるか分からないわね」

 

「待てアクア、待てええ! 冷静になれ、受付の百合なお姉さんの方に行こうとするな! 女神が百合サイド(ダークサイド)に落ちていいのか? お前、見た目だけは美人なんだから下手したら食われるぞ! 早まるな!」

 

 

 

 自暴自棄になったアクアの肩をつかんで引き留める。

 

「はなして、はなしてよカズマ! 私がバイト(地獄)から抜け出して、酒場のツケ(罪の十字架)を清算するにはもうこの方法しかないの! 例えこれが受付嬢(堕天使)からの誘いだとしても、私には前に進む以外の道はないのだから」

 

 こいつ、紅魔族のノリが伝染して話し方がおかしくなってるし。

 

 ……どれだけバイトが嫌なんだ。

 

「まだ諦めるのは早いぞ。ほら、よく見たらこれとか悪くないんじゃないか」

 

 俺の手を振り払い、クエストを受託しようとするアクアに先ほど見た依頼書を指差す。

 

「何これ? 行方不明の姉を探してほしいって……カズマさんって人探しに自信でもあるの? もしかしてニートがレベルアップすると、安楽椅子探偵にでも転職できるの? あのね、カズマがいくら高校生だとしても、じっちゃんの名にかけてとか叫んだくらいで名探偵になれるわけじゃないのよ」

 

 珍しく人が心配してやってるのに、こいつときたら。

 

 ……そういえば、向こうでじいちゃんは元気にしてるだろうか。

 

「カズマさん、こちらのクエストを受けるつもりですか?」

 

 掲示板の前で騒いでいる俺たちの様子を見に来たのか、美少女とデートがしたいなんてクエストを出した張本人が現れた。

 

「このクエストは人海戦術が必要になると思いますので、カズマさんの5人パーティでやるのは難易度が高いかと。ですので、ぜひ私が出した素晴らしいクエストを受けませんか?」

 

「確かにそうね、ギルドの受付嬢と1日遊んでお金がもらえるなんて、こんなに楽ちんな仕事はないわ」

 

 受付のお姉さんの言葉に、惑わされそうなアクアを慌てて引き留める。

 

「待てアクア。俺たちみんなで力を合わせれば、この街で人探しくらいどうにかなるはずだ」

 

 俺は思ったのだ。せっかくみんながアクアを手伝ってやろうとやる気になった直後に、あっさり問題が解決したら……俺たちの熱意はどうすればいいんだ。

 

 まあ、本音を言うとアクアだけが楽して大金稼ぐのがムカツクのだ。

 

「カズマさんの考えは不可能に近いですね。現在この街に対象者がいないことは確認ができているんです」

 

 俺の考えはリーナに即座に否定された。

 

「実はこちら、ルミカさんからのクエストでして。お姉さんに会いたいという少女の純粋な願いを叶えるために、多くの冒険者たちがクエストに挑んだのですが……」

 

 リーナは残念そうに首を振った。

 

「もしかして、キャベツで大金稼いだはずのルミカが金欠なのは」

 

 ただ金使いが荒いだめな子だと思っていたが、ちょっとルミカを誤解していたのかもしれない。

 

「……あの子も苦労してるのね」

 

 アクアがしんみりと言う。

 

「だからアクアさん、ルミカさんを誘って私のクエストを受けませんか? お姉さんに会えずに寂しい思いをしている女の子に、私たちの手で楽しい思い出を作ってあげたいんです! ……あわよくば、一言ありがとうお姉ちゃんと言われたいんです!」

 

 真っすぐにアクアの目を見つめるリーナ。

 

 一瞬いい話っぽく聞こえたが、……絶対嘘だと思う。このお姉さんは、アクアのついでにルミカも誘って遊びに行きたいだけだ。

 

「そうね、ならこのクエストを受けようかしら」

 

 女神が悪魔の誘惑に落ちそうになったその時。

 

「こら! リーナ! こんなクエストを勝手に掲示板に張るなんて、あなたは何を考えているんですかっ! あなたが怪しい行動をすると、ギルドの評判に影響するんですから」

 

 怒りの感情が込められた声がした。

 

「げ、ルナッ!? アクアさん、ごめんなさい。このクエストはたった今消滅しました! では私は仕事に戻らせてもらいますねー」

 

 額に青筋を立ててこちらに歩いてくる真面目な方の受付嬢の姿を見た瞬間、リーナはアクアが持っていた依頼書を慌てて奪い取ると、一目散に逃げ出した。

 

「ふふん、ルナッ! 私が大人しく説教を受けるなんて思わないことね! もぐもぐごっくん。これで証拠はきれいさっぱりなくなったんだから! おほほほ」

 

 ……えっ!?

 

「ねえカズマ、あの人……私の見間違いじゃなければクエストの紙を食べてなかった?」

 

「ああ俺も見た、あれは絶対に食ってたな……あの人、この間は真面目に生きるとか言ってたんだが……」

 

 あまりにもひどい百合な受付嬢の姿に、俺たちが呆気に取られていたら。

 

「お2人ともすみません。うちの問題児がご迷惑を……リーナも悪い娘ではないんですが、その……少々元気がありすぎるというか」

 

 困ったような表情で俺たちに頭を下げる真面目な方の受付嬢。

 

 きっとこの人も、ポンコツな仲間に振り回されて苦労してるんだろうな。親近感が沸いた。

 

 ……今度パーティメンバーを酒の魚に、食事にでも誘ったら、案外ヒロインフラグが立ったりしたりしねえかな。

 

 

■■■ルミカ視点■■■

 

「ねえめぐみん。なんで私には今回のクエストが何か教えてくれないの?」

 

 ガタガタと揺れるモンスター捕獲用のオリの中で、私はめぐみんに尋ねた。

 

 現在の所持金が500エリスしかないことがバレてしまった私は、もっとお金は計画的に使いなさいとめぐみんとダクネスに叱られてしまった。

 

「ないしょです。行ってからのお楽しみということで、到着するまで寝ててもいいですよ?」

 

 そう言うと、めぐみんは膝の上に載せた私の頭を撫でる。

 

 正座させられてのお説教の後、カズマとアクアは無事にクエストを決めたらしい。らしいというのも、依頼内容を見た瞬間めぐみんが他の3人に耳打ちした結果、私だけ依頼内容を見せてもらえなかったのだ。

 

 おまけに、カズマがクエストの場所までは馬にモンスター捕獲用のオリを引かせて移動すると説明したら、何故か私はオリに入れられて現地まで運ばれることになった。

 

「……私、オリに入れられて反省しないといけないほど、悪いことはしてないのに。罰がきつすぎると思うの」

 

 私が頬をふくらませて抗議すると。

 

「ルーちゃん、大人しく言う通りに街の外でオリに入れられて現地まで運ばれるのと、『私は1週間で全財産使い果たして500エリスしか持ってないおバカです。現在反省中です』という張り紙を出して、街の中もオリに入れられて運ばれるか。……好きな方を選ばせてあげます」

 

「ひゃい! 私、1回オリに入ってみたかったんだ! 現地まで歩かなくていいなんて楽ができて最高じゃん! ……反省してるから街中引き回しはやめて!」

 

 めぐみんが無表情で怖いことを言うので、慌ててマシな方を選ぶしかなかったのだ。

 

「……な、なあめぐみん。ルミカも反省しているようだし、私が代わりに街中をオリに入れられて運ばれるというのはどうだろうか? ……いや、何でもない」

 

 アクセルの街の門を出て、大人しくオリの中に入る私のことをダクネスがとても羨ましそうに見ていた。

 

 めぐみんはどうしても行き先を教えたくないらしく、オリに入った私に目隠しをするように指示する。

 

 ……私、凶暴なモンスターをおびき寄せるためのおとりにでもされるのかも。

 

 さすがに私ごと爆裂魔法に巻き込んだりはしないはずだけど、目隠ししてると何も分からなくてけっこう怖い。

 

 不安になってオリの中でビクビクしていると、少ししてめぐみんもオリの中に入ってきた。

 

「目が見えない状態で、バランスが取れずに頭でも打ったら危ないので。仕方なく、仕方なく私が一緒にそばにいてあげます」

 

 そう言うと、めぐみんは私を膝枕した。

 

 目隠ししてオリの中なんて、非日常的な空間にいるのに、めぐみんの膝の上は実家のような安心感で……すごく落ち着く。

 

「ねえカズマ、めぐみんは心配させた罰ゲームって言ってたけど、ひょっとしてルミカをただ膝枕したかっただけなんじゃ?」

 

「目隠しした女の子をオリの中で膝枕か、なんかすげー背徳的だよな。やっぱ、めぐみんってヤンデレの素質が……」

 

「この状況は大丈夫なのか? 人さらいと勘違いされたらどうしよう? やはり私がオリに入った方が、そういうプレイだという言い訳ができたのではないだろうか」

 

 ……アクアもカズマもダクネスも、他人事だと思って 好き勝手言うんだから。

 

 まったくもう。

 

 その時の私は思いもしなかった。

 

 まさか私への罰ゲームが、ある意味でめぐみんの優しさによるものだったなんて。

 

 今回のクエストが、街中をオリで運ばれる方がマシなレベルの絶望だということを。

 

 ……その時の私は知る由もなかった。

 

 

 

 なんとなく嫌な予感はしていた。

 

 街で借りた馬に引かせたオリの中、めぐみんの膝枕でうとうととしていいた時、川のせせらぎが聞こえた気がした。

 

「くぁwせdrftgyふじこlp! キャアアアアア! ルミカ、もうおうちかえりゅうううううう!! ■★!”#!」

 

 クエストの目的地に到着し、目隠しを外した瞬間。私は心の底から悲鳴を上げる。

 

 眼前には大きな湖。気付くと私はめぐみんに縋りついて泣いていた。

 

『湖の浄化。街の水源の1つの湖の水質が悪くなり、ブルータルアリゲーター等の凶暴なモンスターが住みつき始めたので水の浄化を依頼したい。湖の浄化ができればモンスターは生息地を他に移す為、モンスター討伐等はしなくてもいい。※要浄化魔法習得済みのプリースト。報酬は30万エリス』

 

 泣きわめく私を見てドン引きしていたカズマが言うには、今回アクアが選んだクエストは湖の浄化らしい。

 

 ……私、泳げないんですけど!

 




・ルミカ
 泳げない設定がこれからきっと伏線になるはず。ちなみにクエストの場所が湖だと知っていたら、3日くらい行方をくらませていたと思われる。
 何故だ、何故作者は目隠し監禁膝枕とかなかなかヤバイものを思いついてしまったんだ。初期設定では全くそんなシーンはなかったのに。

・めぐみん
 目隠しをしたのは金遣いの荒い幼馴染へのお仕置き的意味もあったが、半分は今回湖に行くことを直前まで知らせないで上げようという優しさである。ルミカをオリの中で膝枕して、けっこうドキドキしていた。

・カズマ
 残念ながらルナとのフラグは立たない。おそらく、この世界ではダクネスルートに進むと思われる。
 今回義妹?の少女が人類とは思えない泣き叫び方をしていたのですごく驚いた。

・アクア
 シスコンが悪化しつつあるためか、何故かルミカのお財布状況を完ぺきに把握しているし、ノリが紅魔族に近づきつつある。

・ダクネス
 最近ルミカからの自分に対する扱いが、頼れる年上のお姉さんから困った子扱いになっていることに少し興奮しているらしい。

・リーナ
 キャラ名の由来は、百合なお姉さん→ユリナ→リーナである。もちろんあの後ルナにめちゃくちゃ怒られた。絶対この人アクシズ教徒だろ。
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