この爆裂娘に親友を!   作:刃こぼれした日本刀

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これで3日続けての連続投稿は最後です。無事に原作1巻完結。


このとんでもない理不尽な決着を!

■■■カズマ視点■■■

 

 たしかに、アクアは言った。洪水クラスの水だって出すことができると。

 

「ちょっ……! まっ……!」

 

「ぎゃー! 水、水がああがああー!」

 

 だからって、本当に洪水を起こすバカがいるか!

 

「あ、ルーちゃん! あの子、泳げないんですよ! 誰か、誰でもいいからルーチャンの救助を!」

 

 濁流にどんぶらこと流されながら、爆裂魔法の反動で動けないはずのめぐみんが、必死に手を伸ばして叫んでいる。そういえば、あいつ金槌だったよな!?

 

 突然出現した水に、その場のすべての人が押し流された。膨大な量のその水は、街の正門前に盛大な飛沫を上げ、そして、街の中心部へと流れていく。

 

 やがて水が引いたそのあとには、地面にぐったりと倒れ込む冒険者たちと、そして……。

 

「ちょ……、ちょっ……、何を考えているのだ貴様……。ば、バカなのか? 大バカなのか貴様は……!?」

 

 同じく、ぐったりしていたベルディアが、よろよろしながら立ち上がった。

 

 この場の全員が同じことを思っているが、今はそんなことを言っている場合でもない。今がチャンスだ。

 

「今回こそ、お前の武器を奪ってやるよ! これでも喰らええ!」

 

 俺はベルディアに片手を突き出した。

 

「やってみろ! 弱体化したとはいえ、駆け出し冒険者のスティールごときでおれの武器は取らせはせぬわ!」

 

 俺と対峙したベルディアは、俺に向けて叫びながら、再度自らの首を空高く投げ、両手で大剣を構えて精一杯の威厳を放つ。

 

 さすがは魔王の幹部の一人。弱っているはずなのに、こうして対峙するだけで足が震えてきそうになる。

 

「『スティール』っ!」

 

 そんな強大な敵に向けて、俺は、全魔力を込めたスティールを炸裂させた!

 

 それと同時に、硬くて冷たい手応えとともに、ずしりとした重さが両手に伝わってくる。

 

 だが、ベルディアを見ると、剣を両手で握りしめている。

 

「ちくしょう、失敗か!」

 

 そのまま、俺に向けてあの凄まじい斬撃を……放つことはなく、そのままぽつんとつったっていた。

 

 ……?

 

 その場の誰もが、何が起こったのかわからず、しんと静まり返っていると。

 

 困ったような、恐る恐るといった感じの、小さな声がした。

 

「あ、あの……」

 

 それはベルディアの声だった。

 

 ベルディアは、か細い声を震わせながら。

 

「あ、あの……。……首、返してもらえませんか。……?」

 

 俺の両手の間で、ベルディアの頭がつぶやいた。

 

 

「おい、お前ら! サッカーってのはなあああああ! 手を使わず、足だけでボールを扱う遊びだよおおおお!」

 

 俺は冒険者たちの前に、ベルディアの頭を蹴り込んだ!

 

「なああああかっ!? ちょ、おいっ、や、やめっ!?」

 

 俺が蹴飛ばしたベルディアの頭は、魔王軍幹部の襲来による騒動で苛立っていた冒険者たちにとって、格好のストレス発散の道具になったらしい。

 

「イエーイ! ナイスシュート!」

 

「パス! パース!」

 

「たーのしーい!」

 

「やめっ!? ちょ、痛だだだっ! やめろおおおっ!?」

 

 頭を蹴り回されるベルディアの胴体は、頭がないせいで前も見えず、状況も分からないまま右往左往している。

 

 これはチャンスだ。

 

「おい、ダクネス。一太刀浴びせてやりたいんだろ?」

 

 ずぶ濡れのまま近づいてきたダクネスに、俺は地面に落ちていた大剣を手渡した。

 

 ダクネスはそれを受け取ると、ベルディアの胴体の前でしっかりと構えを取る。

 

「この一撃はっ! お前に殺された、私が世話になったあいつらの分だ!」

 

 ダクネスの渾身の一撃が、ベルディアの胴体へと叩き込まれた。

 

「ぐはあっ!?」

 

 遠くで冒険者たちのおもちゃにされていたベルディアの頭が、人だかりの向こうからくぐもった悲鳴を上げた。

 

 ダクネスの一撃は、ベルディアの鎧を打ち砕き、胸元に大きな傷を刻み込んでいた。攻撃を当てるのは苦手なくせに、当たりさえすれば凄まじい威力を発揮する。力だけなら一級品。それがダクネスという女なのだ。

 

「ぐあああああああ! あぎゃああああ! ぎゃああああ! や、やめ、あああああ!」

 

 よほどダクネスの一撃が効いたのか、ベルディアは何度も苦痛の叫びを上げている。

 

 ……ん?

 

 おかしい。ダクネスが攻撃したのは一度だけのはずなのに、どうして悲鳴が何度も聞こえてくるんだ?

 

 疑問に思った俺は、ベルディアの頭がある人だかりへと視線を向けた。すると――。

 

「きゃああああっ!」

 

「……お、おい。ありゃヤベえぞ!」

 

「に、逃げろ! 早くみんな逃げるんだ!!」

 

 周囲の冒険者たちから、引きつったようなざわめきが漏れる。

 

 いつの間にか、ベルディアを取り囲んでいた人垣が左右に割れていた。その中心にいたのは、一人の少女だった。

 

 少女は地面に転がるベルディアの頭を、冷ややかに見下ろしていた。

 

「……ん、ね……!」

 

 漆黒のローブは、あちこちが濁流の威力で無残に裂けていた。アクアのヒールによって怪我自体は完全に塞がっているはずだが、水を吸って肌にピッチリと張り付いた布地からは、滴がぽたり、ぽたりと絶え間なく地面へ落ちていた。

 

 額に張り付いた前髪のせいで、その表情は遠目からは窺い知れない。

 

 トレードマークだったポニーテールも、容赦のない水流に揉まれたせいで完全にほどけてしまっていた。乱れた白髪が濡れた頬にまとわりつき、ただならぬ陰惨なオーラを醸し出している。

 

 誰も近づこうとしない。先ほどまでベルディアの頭を楽しく蹴り回していた連中でさえ、今では恐怖に顔を痙攣させ、遠巻きに様子を窺うばかりだった。

 

「……ああああああ! ふざっけんじゃねえですわよ、この腐れアンデッドがあああああ! 死ぬかと思った! この私が、本当に死ぬかと思ったし!」

 

 完全に理性を失ったらしいルミカが、ベルディアの頭を地面へ思いきり踏みつけた。

 

 ゴンッ!

 

「ひぎゃっ!?」

 

 鬼だ。目の前に鬼がいる。

 

 そんなルミカが、不意に動きを止めてゆっくりと顔を上げた。

 

「……ふふふ」

 

 その冷え切った笑顔を見た瞬間、周囲の冒険者たちが一斉に息を呑んだ。

 

「ふふふ、さすがは魔王軍幹部ベルディア。まさか私たちに追い詰められた途端、自分の命を捨ててアクセルの街もろとも厄介な冒険者を洪水で殺そうとするなんて……」

 

 ルミカの声は、先ほどまでの怒鳴り声とは打って変わって、酷く静かだった。一切の感情を削ぎ落としたような凪いだ声が、かえって周囲の恐怖を煽る。

 

「私、あなたたち魔王軍のことを甘く見ていたみたい。魔王に捧げるその忠誠心には、敵ながら敬意を表するよ」

 

 言葉だけ聞けば、敵への称賛だ。しかし、蛇のように細められた瞳はどこまでも冷酷で、唇の両端を吊り上げた笑みには、狂気的なまでの加虐心が透けて見えていた。

 

 ……あ、コイツ勘違いしてる。

 

 俺はルミカの狂気じみた笑顔を見て、すべてを察した。

 

 気絶していたルミカは、意識を取り戻した直後に、駄女神のやらかした大洪水に巻き込まれたのだ。泳げないアイツからすれば、あの津波は魔王軍幹部が放った「街ごと全滅させる捨て身の最終奥義」にしか思えなかったに違いない。*1

 

 

「おい、アクア。お前、ちょっとルミカに謝ってこいよ。……さすがに、あれじゃベルディアが気の毒だ」

 

 ベルディアをサッカーボールにしていた俺が言うのもなんだが、さすがに濡れ衣を着せられたまま、アクアに浄化させるのもな。いくら相手が魔王軍幹部とはいえ、多少の罪悪感くらいは覚える。それに、こんな誤解を残したまま決着がついたら、ベルディアだって死んでも死にきれないだろう。

 

「ちょっとカズマ、バカ言わないでちょうだい!」

 

 アクアは即座に首を横に振った。

 

「今のルミカを見て、そんなことが言えるわけ? ずぶ濡れで、あんな狂気じみた笑みを浮かべてるのよ? ジャパニーズホラーの化け物みたいになってるじゃない!」

 

「お前、本人に聞かれたら絶対に怒られるぞ」

 

「聞かれなくても怒ってるでしょうが!」

 

 ごもっともだった。

 

「そもそも、あの状態のルミカに向かって、『ごめーん★ 大量の水でベルディアを倒そうとしたら、うっかりみんなを洪水に巻き込んじゃったのは、この私! 水の女神アクア様なのでした!』なんて言えると思う? 下手したら殺されるわよ!」

 

「……それは、確かに」

 

 想像してみた。ずぶ濡れのルミカが、あの笑顔のままアクアを見つめる光景を。

 

 ……うん。俺でも謝罪の言葉を考える前に逃げる。

 

「アクア。もしそんな言い方をされたら、ルミカじゃなくてもブチ切れると思うぞ」

 

 ダクネスが真面目な顔で頷いた。

 

「ほら、私も一緒に行ってやるから、きちんと謝ろう。急がないと、ベルディアの魔王軍幹部としての威厳も、ルミカの人間性も、取り返しのつかないことになってしまう。これ以上、二人のあんな姿は見たくない」

 

「ちょっと待って。なんで私まで謝る側なのよ!」

 

 抗議するアクアを無視して、ダクネスはその背中を押し、最前線へと歩いていった。

 その間にも、ルミカはベルディアの頭を容赦なくグリグリと踏みつけていた。

 

「ふふふ、どうかしら、デュラさん? 大いなる大地とキスした感想は?」

 

 ぐりっ。

 

「がああっ!? や、やめ――」

 

「屈辱ですか? それとも、私が憎いですか?」

 

 ぐりぐりっ、と全体重を乗せて踏みにじる。泥水とルミカの靴底に挟まれ、ベルディアの頭がミシミシと……。

 

「ぎゃあああああっ!? よせ、頼むから踏むのをやめろおおおっ!」

 

「許せないよね。許せるはずがないもんね。……だって、私もあなたを許せそうにないもの」

 

 ……駄目だ。完全にサディスティックなスイッチが入ってしまっている。

 

 ベルディアの痛切な悲鳴など心地よいBGMとばかりに、ルミカの瞳にはサディズムに満ちた愉悦の光さえ灯り始めていた。このまま放っておいたら、ベルディアの頭がどうなるか分かったもんじゃない。

 

 そんなことを考えていると、俺の隣にいためぐみんが、ひどく心配そうな顔でルミカを見つめた。

 

「か、カズマ……。ルーちゃんのことは私が何とかしますから、早くベルディアを楽にしてあげてください!」

 

「お、おう?」

 

「惨めですね、無様ですね! その恥辱と屈辱を抱いたまま、このルミカちゃんの手で地獄に落ちるがいい! 光栄に思うことね! 死を迎える最後の瞬間に見るのが、美少女のパンツだなんて! 冥土の土産には、もったいないくらいかしら!」

 

 そしてルミカは、ベルディアの頭を粉砕すべく、その片足を高く振り上げた。

 

 その勢いで、水を吸って重くなった黒いスカートの裾がふわりと翻る。

 

 本来なら決して人前で見せることのない、白い太腿が無防備に根元近くまであらわになったが、当のルミカはそんなことなど気にも留めていなかった。今の彼女にとって重要なのは、羞恥心などではなく、目の前のアンデッドに自分が味わった恐怖と屈辱の全てを思い知らせることだけなのだ。

 

「さあ、覚悟しなさい、腐れアンデッド! このルミカちゃんが直々に――」

 

「ルーちゃんっ!」

 

 次の瞬間。背後からめぐみんが全霊の力で飛びついた。

 

 片足立ちで完全に無防備だったルミカの体は、抵抗する間もなく大きく傾ぎ、二人はもつれ合うようにして濡れた地面へと激しく転がった。

 

「わああああっ!?」

 

「ぎゃああああああああっ!?」

 

 ルミカの悲鳴と同時に、もう一つ、別の野太い悲鳴が響き渡る。

 

 倒れ込む拍子に、ルミカの振り上げていた足が、地面にあったベルディアの頭を直撃し、勢いよく蹴飛ばされたベルディアの頭は絶叫しながら、泥水の上をゴロゴロと虚しく転がっていった。

 

「わっ、ちょっと、何するのめぐみん! 離して、まだあいつを叩き潰して――」

 

「駄目です! もういいんです、もう終わりましたから!」

 

 馬乗りになるような形で、めぐみんはルミカの肩を強く抱きしめた。水を吸って重くなった漆黒のローブ越しでも、ルミカの体が凍えるように冷たくなっているのがはっきりと伝わってくる。

 

「……泳げないのに、急に水の中に放り出されて、怖かったんですよね。冷たくて、息ができなくて、本当に死ぬかと思ったんですよね」

 

「……っ」

 

 ルミカの体が、ぴくりと震えて静止した。

 

 めぐみんは幼馴染の濡れた白髪をそっと撫で、その怯えをすべて包み込むように、もう一度ぎゅっと抱きしめる。

 

「もう大丈夫です。私がそばにいますから、もう無理に怒らなくていいんですよ」

 

「……めぐ、みん……」

 

 ルミカの声から、先ほどまでの凄みと冷酷さが完全に消え去った。すがるようにめぐみんの服を強く握りしめ、ルミカの指先が小刻みに震える。

 

「私、本当に……もう駄目かと……っ、すごく、怖くて……!」

 

「はい。よく頑張りましたね、ルーちゃん」

 

 めぐみんの胸元に顔を埋めた瞬間、ルミカの瞳から一気に涙があふれ出した。子供のようにしゃくり上げ、小さな肩を震わせて泣きじゃくる幼馴染を、めぐみんはただ優しく、愛おしそうに抱きしめ続けた。

 

 ずぶ濡れの美少女二人が、地面にもつれ合ったまま涙を流して抱き合っている光景は、どこからどう見ても深夜の百合アニメの光景だった。完全に二人の世界に入り込んでいて、周囲の入る隙なんてありゃしない。

 

 ……うん。なんだか、ものすごく邪魔しちゃいけない気がするな。これ、俺が下手に声をかけたら視聴者から大バッシングを受けるやつだろ。

 

 俺はそっと視線を逸らし、目の前の美しい友情から現実へと意識を戻した。……とはいえ、このまま放置するわけにもいかない。

 

「今だ、アクア! あとは任せた!」

 

「えっ、今!? ちょっと、カズマ! せっかくいい雰囲気だったのに!」

 

「いいから早くしろ! ルミカが落ち着いてるうちに、サクッと終わらせるんだよ!」

 

 俺の急かす声に、アクアは不満そうに頬を膨らませながらも、ダクネスの一撃によって鎧を破壊され、ずぶ濡れのまま立ち尽くしているベルディアの胴体へと向き直った。

 

 アクアはめぐみんの腕の中で泣いているルミカの耳へ届けと言わんばかりに、よく通る声で魔法を放つ。

 

「人々を殺め! 街ごと冒険者たちを大洪水に沈めようとした! 恐ろしくて邪悪な魔王軍幹部ベルディアよーーーっ!! せめて最後は安らかに眠りなさい! 『セイクリッド・ターンアンデッド』!!!」

 

「ちょ、お前! 最後の水は絶対に違うだろうがああああああ!」

 戦場に、ベルディアの理不尽極まりない悲鳴が響き渡った。

 水による弱体化や冒険者たちからの憂さ晴らし、ダクネスの重い一撃やルミカからの追い打ちを受け、今度のターンアンデッドには耐えられなかったらしい。

 

 鎧が光の中へと消え去っていく。

 

 ……それにしても。

 

 アクアの奴、結局ベルディアに罪をなすりつけやがったな。

 

 こうして、何が目的でこの地にやってきたのかも一切明かすことなく、魔王軍幹部ベルディアは、アクセルの街で最高に理不尽な形で浄化されたのだった。

 

 勝利に沸く冒険者たちの歓声を聞きながら、傷だらけのダクネスは片膝をつき、デュラハンの身体が消えた場所で祈りを捧げていた。

 

 そんなダクネスに、めぐみんがおそるおそる声をかける。

 

「……ダクネス、何をしているのですか?」

 

 ダクネスは目を閉じたまま、独白するように答えた。

 

「……祈りを捧げている。理不尽な処刑への恨みからアンデッドになってしまったベルディアが、せめて安らかに眠れるようにな。……それに、理不尽な濡れ衣を着せられての最期では、あまりにも不憫じゃないか」

 

 ……ダクネス。

 

 いや、確かにルミカの勘違いやアクアの誤魔化しは理不尽だったけど、お前がベルディアを変態扱いしたことだって、相当な理不尽だったぞ。

 

「そして、ベルディアに殺された冒険者たちにも……。私の剣が当たらないのをリアクション芸の一環だと勘違いしていたアレク。私とクリスを百合的にくっつけようと、あれこれ余計なお節介を焼いてきた受付嬢のリーナ……。どうしようもないくらい馬鹿な奴らだったが、悪い奴らじゃなかった」

 

「そ、そうですか……。それで、ルーちゃんは何をしているのですか?」

 

 めぐみんは、独白を続けるダクネスの隣にしゃがみ込んでいるルミカを見て、首を傾げた。

 

「……祈りを捧げてるの。デュラさん、あなたは強敵と書いて友と読む、私のかけがえのない宿敵だったよ……。ぐすん」

 

「ルーちゃん。ダクネスの隣でしんみりしたところで、さっきの醜態は誤魔化せませんよ」

 

「ち、違うもん! ルミカちゃん、怒りの大暴走からの大号泣事件なんて、誤魔化そうとしてないもん! この場にいるめぐみん以外の全員の頭を、記憶がなくなるまで殴るかどうかは後で考えるとして……いはい、頬を引っ張らないでよ!」

 

 めぐみんに両頬をつねられながら、ルミカは抗議した。

 

「半分くらいは冗談だったのに! 私はただ、これから恥ずかしい思いをするであろうダクネスも、せめて安らかな気持ちになれるといいなって、祈りを捧げているだけなのに!」

 

 指摘されたルミカは、ぷいっと顔を背けた。

 

「……私はあいつらのことを、いつの間にか大切な友達だと思っていたらしい。アレク、リーナ……。また三人で酒でも飲みたかったな……」

 

 めぐみんとルミカのやり取りが聞こえているのかいないのか、ダクネスの独白はまだ続いていた。

 

「あの二人だけじゃない。冒険者になった初日に、世間知らずな私へ嘘を吹き込んでからかったマイケル。妹が病気ですぐにまとまった金が必要なんだ、頼む、いつか必ず返すからと言って、迫真の演技で金を借りていったダニエル。ダクネスの胸には夢や希望じゃなくて筋肉が詰まっているのよ、と私に嫉妬していたジェーン……。みんなろくでもない奴らだったが、嫌いではなかった。もう一度、あいつらに会えたらな……」

 

「えっ、えっと……そ、そうですか。それじゃ、続きは後で聞いてあげますから、とりあえずギルドに戻りましょうか」

 

 慌てて話を切り上げようとするめぐみんの言葉が聞こえているのかいないのか。

 

 ダクネスは目を閉じたまま、優しげな声で呟いた。

 

「……あいつらに、もう一度会えるなら……。一度くらい、一緒に酒でも飲みたかったな……」

 

「「そ……そっか……」」

 

 目を閉じているダクネスの背後から、戸惑ったような声がかけられた。

 

 びくりと震えるダクネス。

 

 恐る恐る振り返ると、そこには見覚えのある二人が立っていた。

 

「姉ちゃん、あんたの行動ってリアクション芸じゃなかったのか! ってことは、受付のリーナちゃんも宴会芸マニアじゃ……」

 

「いいじゃないですか、アレクさん。趣味は人それぞれです。宴会芸が好きでも、女の子が好きでも、いじめられるのが好きでも、関係ありません。私とアレクさんは、ダクネスさんの友達じゃないですか」

 

「それもそうだな……。最初は勘違いで集まった三人だが、俺たちが育んだ友情に嘘はない! 今日はみんなで飲もうぜ!」

 

「そうですそうです! 私とアレクさんの無事と、ダクネスさんが私たちを友達と呼んでくれたことを祝って、今日はぱーっと遊びましょう!」

 

 クルセイダーのアレクと受付嬢のリーナが、ダクネスに優しい眼差しを向けていた。

 

「……アレクとリーナが無事だったのは嬉しい。本当に嬉しいのだが……。ということは、他の奴らも……?」

 

 祈るように目を閉じていたダクネスが、おそるおそる目を開ける。

 

 すると、目の前には気まずそうに頭を下げる三人の男女がいた。

 

「そ、その……わ、悪かったよ。カスみたいな嘘を吹き込んで……」

 

「あ、ああ……。悪かったよ。お前の善意につけ込んで金を借りるなんて……。あのときの金はきちんと返すし、俺、もうギャンブルもやめるよ」

 

「……ひどいことを言ってごめんね、ダクネス。あなたはこんなろくでもない私たちのために祈ってくれるようないい子なのに、嫉妬して……」

 

 次々と告げられる謝罪の言葉。

 

 ダクネスはぷるぷると震え、頬をみるみる赤くしていった。

 

 そこへ、空気を読まないアクアが弾んだ声を上げる。

 

「ダクネス、任せてちょうだい! 私くらいになれば、死にたてホヤホヤの死体なんて、ちょちょいのちょいで蘇生できるわよ! よかったわね、これで一緒にお酒が飲めるじゃない!」

 

「……死にたい」

 

 本人たちがすぐ後ろにいるとも知らずに続けていた、自分の恥ずかしい独白。

 

 その内容を思い出したダクネスは、羞恥心に身悶えした。

 

「……ダクネス。これから一緒に宿屋に引きこもらない? 羞恥心で死にたい者同士、慰め合いっこしよ?」

 

 ルミカはそう言って、ダクネスの肩をぽんぽんと叩いた。

 

■エピローグ■

 

 ベルディア討伐の翌日。

 

 俺はこれからのことを考えながら、一人でギルドへ向かっていた。

 

 アクアには悪いが、魔王討伐なんて絶対に無理だ。

 

 今回だって、奇跡的に運がよかったにすぎない。

 

 ルミカやダクネスは、下手をすれば死んでいた。

 

 顔見知りのリーナやアレクたちだって、実際に命を落としていたのだ。

 

 これ以上、仲間や知り合いが死ぬところなんて見たくない。

 

 これからは日本の知識を生かして商売でもしよう。冒険者活動は、たまの気晴らし程度で十分だ。

 

 そんなことを考えながらギルドの扉を開けた俺は、目の前の光景に絶句した。

 

「みんなーっ! 今日は来てくれてありがとーっ!」

 

 ――その場で足を止めた。

 

 ギルドの中央には、即席ステージが設置されていた。

 

 天井から吊るされたミラーボールのような魔道具が、無数の光をギルド中に撒き散らしている。冒険者たちはステージを取り囲み、手拍子をしながら歓声を上げていた。

 

 そして、そのステージの真ん中で。

 

「もっともっと、盛り上がっていこーっ!」

 

 白髪のポニーテールを左右に揺らしながら、ルミカがノリノリで歌っていた。

 

 軽快なリズムに合わせて身体を弾ませ、片手を高く掲げる。観客の歓声に応えるようにくるりとターンすると、白銀のポニーテールが綺麗な弧を描いてふわりと広がった。

 

 そこへミラーボールの光が降り注ぐ。

 

 きらきらと光を反射した白髪は、まるで白銀の糸のように輝いていた。

 

 ステージの上で笑う顔も、歌に合わせて動く仕草も、普段の騒がしい言動からは想像できないほど華やかだ。

 

 ……こういうところだけ見ていると、本当に美少女なんだよな。

 

 いや、普段だって顔立ちそのものは整っている。

 

 問題は、その美少女という評価を本人が全力で台無しにしていることだ。

 

 なんだ、これ。地下アイドルのライブかよ!

 

「あっ! ちょっとカズマ、遅かったじゃないの! もう、みんなすっごく盛り上がってるわよ!」

 

 ファンタジー世界とは思えない光景に呆然としている俺に、アクアが手を振ってきた。

 

「もう、カズマったら! せっかくの可愛い妹の初ライブに遅れるなんて! この世界じゃDVDみたいに映像をポンポン残せないんだから、今見ないと後悔するわよ!」

 

「……おい。どうしてルミカはギルドの中で歌って踊ってるんだ? あと、他の二人はどこへ行った?」

 

「きゃーっ! ルーちゃん、最高! 爆裂可愛い! その笑顔は反則すぎるでしょ、きゃーっ! 今、私だけに手を振ってくれた! これが噂のファンサってやつですね!」

 

「……お、おい、めぐみん! お前、キャラが違わないか!? 恥ずかしいから、いったん落ち着こう、な!? こういうのは私が求めている恥辱ではないのだが!」

 

 俺が尋ねると、アクアはステージから少し離れた場所を指差した。

 

 そこには、とても目立つ二人がいた。

 

 めぐみんはペンライト代わりなのか、杖をぶんぶん振り回しながら、ルミカのパフォーマンスに黄色い悲鳴を上げている。

 

 そしてダクネスは、そんなめぐみんを肩車していた。

 顔を真っ赤にしながら。

 

 ……なぜかステージでライブをしている奴も、そのうちオタ芸でも始めそうな奴も、どっちの紅魔族も俺のパーティーメンバーなんだよな。

 

「アクア。ノリノリなルミカに何があったんだ?」

 

「ベルディアの討伐報酬を受け取った冒険者たちが宴会を始めたのよ。だんだん盛り上がってきたところで、誰かがブチ切れたルミカの大暴走事件を話題にしたの」

 

「……おい、誰だよ、そんな命知らずは」

 

「そうしたら、自分の黒歴史から話を逸らそうとしたルミカが宴会芸を始めてね。受付のリーナが即席のステージを作り、飛び入り参加したアレクが場を盛り上げて、私とルミカがさらに宴会芸を披露して……」

 

「待て。なんでお前まで宴会芸を披露してるんだ?」

 

「細かいことはいいのよ! なんやかんやあって、最終的にはカラオケ大会になり、ルミカのワンマンライブが始まったの!」

 

「どうしてそうなった!?」

 

 説明を聞いても、ますます分からなくなった。

 

 どうやらルミカは、自分が昨日やらかした醜態を忘れてもらうために宴会芸を始めたらしい。

 

 ところが、持ち前のノリと妙な才能が悪い方向に噛み合った結果、いつの間にかステージの主役に祭り上げられたようだ。

 

「ル・ミ・カ! ル・ミ・カ!」

 

「アンコール! アンコール!」

 

 ギルド内では、女性冒険者たちまでもが拳を突き上げ、地響きのようなコールを送って熱狂している。……あれが噂のルミカファンなのかもしれない。

 

「ならリクエストに答えてもう一曲! 歌って殺せる殺戮系美少女、ルミカちゃんの美声に酔いしれろ!」

 

 本人にとっては黒歴史を誤魔化すための苦肉の策だったのだろうが、観客からの大歓声を受けて完全に調子に乗ったルミカは、マイク代わりの魔道具を握りしめてノリノリで次の曲を歌い出した。

 

「ほら、座って座って! 今からカズマにも、この曲のサビで入れる合いの手を教えてあげるわね!」

 

 アクアが隣の椅子をぽんぽんと叩いた。

 

「いや、俺はいい。俺は昨日の戦いで疲れてるんだ。静かに報酬を受け取って帰りたい」

 

「何言ってるのよ! 周りの冒険者たちだって、ちゃんと手拍子してるでしょ!」

 

 周囲を見渡せば、冒険者たちが見事に息を合わせて手拍子をしていた。

 

「お前の仕業か! もうこれ、文化侵略だろ!」

 

「失礼ね! 文化交流と言いなさい!」

 どっちでもいいわ!

 

 俺が頭を抱えていると、アクアが急に真剣な顔になった。

 

「カズマ、私とあなたでルミカをプロデュースしましょう!」

 

「は?」

 

「引きこもりだったカズマなら、きっとアイドル育成ゲームとかもやっていたと思うの。今こそ、前世の知識で無双するときに違いないわ!」

 

 ……いや、確かに育成ゲームもやったことはあるけど、現実でやるのとは違うと思うぞ。

 

 それに、どうして俺がこの話に巻き込まれなきゃならないんだ。

 

「そのうち、めぐみんとルミカの二人でユニットを組むの! ユニット名は『クリムゾン』か『爆裂シスターズ』にしましょう!」

 

「おい、勝手にめぐみんまで巻き込むな」

 

「女神アクアの名のもとにアクシズ教をスポンサーにつけて、エリス教徒をこっちに引き込んであげるわ! エリスの悔しがる顔が目に浮かぶわね!」

 

 ……なんだろう。

 

 まだ一度も会ったことはないが、アクシズ教徒が関わる時点で、なんか失敗する気がする。

 

 しかし、ルミカをアイドルとして売り出すという考え自体は、そこまで悪くないのかもしれない。

 

 日本の知識を活かせば、ライブの興行やグッズ販売、ファンクラブの運営くらいなら何とかなる可能性がある。元手さえ用意できれば、危険なクエストに頼らず稼げるかもしれない。

 

 ……いや、待て。

 

 こういう話には、必ず面倒な問題がついて回る。

 

「なあ、アクア。アイドルといえば、厄介なファンの問題が出てくると思うんだけど。例えば、ミツルギみたいな奴がルミカのストーカーになったらどうするんだよ?」

 

「くっ……! 確かに、あの人みたいなのが出たら……!」

 

 アクアは腕を組み、真剣に考え始めた。

 

「ボディーガードにダクネスを採用しても、なんだか突破されそうな気がするわ……!」

 

「おい、ダクネスの防御力を何だと思ってるんだよ」

 

「でも、あの子って変なところで隙があるじゃない? もしファンに押し倒されたりしたら……」*2

 

「その言い方はやめろ! 本人やめぐみんに聞かれたら面倒なことになる!」

 

 俺たちがひそひそと話している間にも、ルミカのライブは大いに盛り上がっていた。

 

 白銀に輝く髪を揺らし、笑顔で歌い続けるルミカ。

 

 その姿に熱狂する冒険者たち。

 

 そして、ルミカの一挙手一投足に黄色い悲鳴を上げるめぐみんと、彼女を肩車したまま羞恥に耐えるダクネス。

 

 ……うん。

 

 こいつらの将来については、後で考えよう。

 俺は自分にそう言い聞かせると、現実から目を逸らすように受付へと向かった。

 

 そうだ。俺は昨日、魔王軍幹部を倒した冒険者だ。ここへ来たのはライブを見るためではない。討伐報酬を受け取りに来たのだ。

 

 金だ。金さえ手に入れば、こんな騒ぎとはおさらばできる。この世界での人生を少しでもまともなものにするために、まずは資金を確保するのだ。

 

「昨日の魔王軍幹部討伐の報酬を受け取りに来たんだけど」

 

 俺が話しかけると、受付のルナはいつもと違って、何とも言えない微妙そうな、引きつった笑みを浮かべた。

 

「あ、カズマさん、おはようございます……。昨日の一件ですね。ええと、カズマさんたちのパーティーには、魔王軍幹部討伐に対する特別な報酬が国から出ることになりまして……」

 

「特別報酬? そりゃすごいな、いくらなんだ?」

 

 国からの特別報酬という響きに、俺の期待は膨らむ。

 

「……なんと、今回は3億エリス支給されることになりました」

 

「さ、3億エリスぅ!?」

 

 その言葉が耳に飛び込んできた瞬間、俺の背後でそれを聞きつけた冒険者たちが一斉に沸き立った。

 

「おい聞いたか! 三億エリスだってよ!」

 

「マジかよ、さすが魔王軍幹部を倒した英雄様だ!」

 

「カズマ、今日はおごりだな! 朝まで宴会だーっ!」

 

 ギルド内がにわかに大盛り上がりを見せ、酒の追加注文や歓声が飛び交う。

 

 3億エリス。頭の中で金貨が山のように積み上がる。家が買える、一生遊んで暮らせる。ついに俺の人生に春が来たのだと、感極まって拳を握りしめようとした――その時だった。

 

「……あの、カズマさん。それでですね、本当に大変申し訳ないのですが……こちらをご確認いただきたくて」

 

 ルナが心底申し訳なさそうな顔をして、一枚の紙を差し出してきた。

 

「ん? なんだこれ?」

 

 盛り上がるギルドの喧騒の中、俺が手渡された紙に目を落とすと、いつの間にかステージから離れていたアクアとダクネス、そしてめぐみんが俺の後ろからその紙をのぞき込んできた。

 

 そこに書かれていたのは、ゼロがずらりと、これでもかと並んだ数字だった。

 

「…………何これ?」

 

 俺の呟きに、ルナはさらに眉を下げて、消え入りそうな声で告げる。

 

「アクアさんが街の前に召喚された、あの大量の洪水で、街の一部に甚大な被害が出ていまして……。皆さんの魔王軍幹部討伐の功績もありますので、街としても全額を弁償しろとは言いません。ですので、一部だけでも払っていただけないでしょうか、と……」

 

 そう告げると同時に、ルナは俺たちからサッと目を反らし、逃げるように受付の奥へと引っ込んでしまった。

 

「…………」

 

 俺の手の中にある紙。

 

 国からの報酬、3億エリス。

 

 請求された弁償金額、3億4000万エリス。

 

 ……弁償。

 

 その決定的な二文字がギルド内に響き渡ったかのように、さっきまでお祭り騒ぎだった周囲の冒険者たちが、一瞬にして水を打ったように静まり返った。誰もが壁のシミを見つめ、俺と目を合わせようとしない。

 

 その静寂の中で、俺の後ろから気配が遠ざかっていく。

 

「え、ええと……私はちょっと、本日の爆裂魔法の準備があるので、これで失礼します!」

 

「さーて! 私は女神として、街の人々に希望を与えるためにボランティアに行ってくるわね!」

 

 めぐみんとアクアが、そそくさと出口へ向かって逃げ出そうとしていた。

 

「待てやコラァアアアアアアアッ!!」

 

 俺は2人の首根っこをがっちりと掴んで引き戻した。

 

「ひゃうっ!? カズマ、痛い、痛いわよ! 私は街を守ろうとしただけよ!」

 

「アクアが洪水を起こしたので、責任はアクアにお願いします! え、城への爆裂魔法? ……てへ」

 

「結果的に四千万エリスの赤字になってるだろうが! 俺の三億エリスを一瞬で溶かした挙句に借金背負わせやがって、この駄女神とポンコツ紅魔族が!」

 

 掴み合いになりながら、俺は本気で頭を抱えた。

 

 四千万エリス。これから手に入るはずだった大金が右から左へ消え去り、さらに残る莫大な借金。日本の知識を活かして商売を始めるにしても、元手がマイナスではどうしようもない。

 

 ……こうなったら、本当にルミカをプロデュースして、本気でアイドルデビューさせるしかないかもしれない。さっきアクアが言っていた作戦だが、あいつの歌と人気があれば、グッズ販売やファンクラブ運営で何とかなる可能性が――。

 

 そんな現実逃避混じりの計画を考えていた、その時だった。

 

「カズマ」

 

 とことこと、軽い足音がして、ステージから降りてきたルミカが俺の前にやってきた。

 

 いつもの騒がしい様子はなく、少しだけ真面目な顔をして、俺の顔を見上げている。

 

「……なんだよルミカ。お前も逃げる準備か?」

 

 俺がやさぐれた声で言うと、ルミカは白いポニーテールをふわりと揺らし、にっこりと笑って言った。

 

「私、バイトのシフト増やすね」

 

「……え?」

 

「私もこのパーティーのメンバーなんだから、少しでも返済の助けになりたいし。それに、カズマにはいつもお世話になってるからね! 大丈夫、私が本気を出せばすぐに返済できるはず!」

 

 そう言って、ルミカは照れくさそうに胸を張った。

 

「……ルミカ……」

 

 普段はトラブルメーカーで、散々俺らを振り回して迷惑をかけまくるくせに。

 

 こういう時だけ、妙に健気で頼りになることを言ってくれる。昨日だって、あんなに恐ろしい魔王軍幹部を前に、最前線で戦ってくれたのだ。

 

 一瞬でも、こいつを借金返済の道具としてアイドル売りしようとした自分が、ほんの少しだけ恥ずかしくなった。

 

「……ありがとな、ルミカ。助かるよ」

 

「ふ、ふふん! 当然でしょ! カズマは私をもっと褒めていいんだからね!」

 

 ルミカの言葉に、絶望で冷え切っていた心が、ほんのちょっとだけほっこりと温かくなるのを感じた。

 

 ……だが、それとこれとは話が別だ。

 

 俺は、今も自分の横で「次こそは私が敵の攻撃を……!」と見当違いな期待に目を輝かせているダクネスと、隙を見てまた逃げ出そうとしているアクアとめぐみんを睨み据えた。

 

 ほっこりしたって、四千万の借金が消えるわけじゃない。

 

 これから先も、このろくでもない仲間たちと一緒にいたら、命がいくつあっても足りないし、いくら金があっても足りやしない。

 

 商売を始める元手すら奪われたのなら、もう道は一つしかない。

 

 こうなったら、さっさと魔王を討伐して、この、ろくでもない世界から絶対に抜け出してやる!

 

*1:
ルミカはアクアが魔法を放つところを見ていましたが、直後洪水に巻き込まれて溺れていたので、記憶が混乱。洪水から生き延び、こんな極悪非道なことをするのは魔王軍幹部に違いないと思い、ベルディアのファイナルアタックだと勘違いしました。

*2:
アクアは心配しているが、普通に押し倒そうとした相手を返り討ちにする模様。さすが自称殺戮系美少女。





・ルミカ
怒りの暴走からの大号泣は黒歴史。でも作者はここが一番書きたかったので満足。
ちなみに洪水に巻き込まれた結果、アクシズ教の入信所はなくなりました。正門の上でサインして、まだ提出していなかったからセーフなのか?

・めぐみん
ベルディア討伐後に、幼馴染を存分に甘やかした模様。そのうち裏エピローグとして投稿予定。

・アクア
ベルディアに罪を擦り付けたが、流石に3日後くらいにはルミカにバレる。逆によく3日もバレなかったと褒めるべき。

・カズマ
もしルミカをアイドルデビューさせた場合、借金は返済できる。でも、その時はまた別な苦労が増える。行方不明だったルミカの姉が押しかけてきたり、ゆんゆんが友達のグッズ購入で破産しかけたり、仮面の悪魔がプロデューサーに名乗り出てくる。

・ダクネス
宿屋で慰め合おうと言ってくれたルミカは、めぐみんに連行された模様。でも、その日はリーナとアレクと楽しくお酒を飲めたから、問題なし!

・ベルディア
原作より理不尽な目にあった人。ベルディアさんのためにも、他の幹部もきちんとヒドイ目に合わせなければ!

 今後の予定としては、いくつか間話を挟んでから、原作2巻へと入りたいと思います。
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