この爆裂娘に親友を!   作:刃こぼれした日本刀

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 いよいよ本編開始です。今回はカズマさんと主人公の視点でお送りします。


この新しい仲間と冒険を!あぁ、だめだめ魔法使い
この素晴らしい友人と再会を!


「すいません。パーティーを募集していらっしゃるのはあなたたちですか?」

 

 彼女との出会いは、あまりにも衝撃的だった。俺じゃなくても驚いたと思う。誰だってびっくりするんじゃないか、あんなことがあれば。もし俺と同じ体験をして、びっくりしないやつがいるならぜひ話を聞きたい。

 

「あれ? もしかして、ルーちゃん?」

 大人しそうに見えた彼女は、一人の少女の姿を見た瞬間。

 

「やっほーめぐみん! 殺しに来たよ!」

 人が変わったように、そんな物騒な発言をしたのだから。

 

 緊迫した空気のギルドの一角で、二人の魔法使いが睨み合っている。

 

「カズマさん! カズマさん! 助けてほしいんですけど! ぼさっと見てる暇があるなら、この子たちを止めてほしいんですけど! 私、こんなシリアスな空気耐えられないんですけど!」

 

 二人の発するシリアスムードに、普段からボケ担当のアクアは耐えられないのだろう。いつもより3割り増しでオロオロしている。

 どうして、こんなよく分からない状況になったのか。それを語るには昨日まで時間を遡る必要がある。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 俺の名はサトウ・カズマ。日本からこの世界に自称女神のアクアを引きつれ、魔王を倒すためにやってきた転生者だ。……だったのだが。

 

「あれね。2人じゃ無理だわ。仲間を募集しましょう」

 

 試しにジャイアントトードと言う巨大カエルを3日以内に5匹討伐すると言う、比較的簡単らしい依頼を受けて見たのだが。あれはやばい。アクアがジャイアントトードをひきつけてくれていなければ、危うく二人ともカエルのごはんになるところだった。

 

 初めての討伐依頼であっさり死にかけた俺たちは、二日以内に残り3匹のジャイアントトードを倒すために、新たにパーティメンバーを募集することにした。

 

 そして本日の、冒険者ギルドにて。

 

「どうして、どうして誰も来てくれないの?」

 アクアは今にも泣きそうな顔をしている。泣きたいのは俺の方だよ。

 

「なあ女神様。そろそろ俺はお前を全力で殴っても、許されるよな?」

 求人の張り紙を出した俺達は、冒険者ギルドの片隅にあるテーブルで、半日近く黄昏れていた。やはり、こいつに募集条件を考えさせたのは間違いだったらしい。

 

「最初から無理だったんだよ。俺たちみたいな未熟なパーティーに、上級職が入りたいとかありえないだろ」

「おかしいわね。私のような蘇生も治療も何でもござれな才色兼備なアークプリーストが誘いをかければ、ぜひこのパーティーに入れてくださいアクア様と。上級職の冒険者たちが100人単位で押しかけてくるはずなのに」

 

 なんとこの自称女神様は、さっさと魔王を倒して天界に帰りたいとか言って、募集条件を上級職以外お断りなんて命知らずな暴挙に出たのだ。

 

「こうなったら最終手段だ。アクア、作戦Aで行くぞ!」

「何よカズマ! そんな作戦があるなら最初から教えなさいよ!」

「アクアを囮にしている間に、俺が何とかジャイアントトードを倒す! これこそ作戦Aだ」

「わあああああん! もうヌルヌルは嫌あああ!」

 

 ちっ、ジャイアントトードに食われかけたことが、アクアのトラウマになってしまったらしい。巨大カエルも食事中は無防備になるので、アクアを犠牲にすれば俺でも倒せるのに。

 

「なら仕方ない。上級職は諦めて、誰でもいいから人数を集めようぜ」

「でもでもでもでも」

「あのな、アクア。上級職ばっかだと、俺の立場が非常に可愛そうな感じになる。上級職にめんどうをかけまくる可愛そうな男になるんだ。しかもだ、上級職のくせに何の役にも立たない元なんとかのお前だっている。俺たちはトラブルメーカーなんだよ! 優秀な上級職の人たちの人生をめちゃくちゃにするのはやめよう! 普通の仲間を探そう」

 

 通常職でも、ステータスが上がれば転職できるらしい。最初は弱かったパーティメンバー。そんなだめだめパーティーも多くの修羅場を経験し、メンバー全員が上級職へと成長する。そして、成長した俺たちは三日間の激闘の末、ついに魔王を倒すのだ。

 

 これはこれでテンプレだよな。そうだよ、俺はファンタジー世界にこういう冒険を求めて来たんだよ。目指せ、最弱職からの異世界テンプレ成り上がり! 渋るアクアを無視して、俺が募集をやり直そうとした時だった。

 

「すいません。上級職のパーティメンバーを募集していらっしゃるのはあなたたちですか?」

 

 俺たちに声をかけてきたのは、クールな顔つきをした中学生くらいの少女だった。少しきつめの印象を与えそうな赤い瞳に、肩甲骨にかかるくらいの長さの白髪を黒いゴムでポニーテイルにしている。肌も透き通るように白い。腰や肩は驚くほど細く、風がふいたら折れてしまいそうだ。

 

 360度どこから見ても、病弱と言うかか弱いと言った印象を感じさせる美少女でした。

 

「どうカズマ、私の言ったとおりでしょ」

 ほめてほめてと言うように、胸を張るアクア。

 

「なあ、アクア。この子は本当に上級職なのか? というか冒険者なのか?」

「見れば分かるでしょ」

「見て分からないから聞いているんだよ!」

 

 その少女はよく分からないファッションをしていた。黒マントに黒いローブ、黒いブーツ。この格好で杖でも装備していれば、間違いなく魔法使いに見える。しかし、その少女はローブの上から皮製の胸当てをし、手には金属製の篭手、両腕には包帯が巻きつけられ、腰には短剣。背中には身長より大きな鎌を背負っている。

 

 ここが日本なら何かのアニメのコスプレかと思うような格好だが、今俺がいるのはファンタジー世界。こんな格好をする上級職があるのかなんて分からない。

 

「さて、問題です。私はいったい何の職業でしょうか。回答できるのは5回までです。見事正解して、私をパーティーにスカウトしてみて下さい」

 

 そう言って、白髪少女は俺たちに微笑んだ。

 

「え? ちょっとちょっと! 私たちの仲間になってくれるんじゃないの?」

「アクア、お前が変なことでもしたんだろ! ギルドじゃお前の悪い噂が知れ渡ってるんだ! だからこの子、適当な理由つけて帰ろうとしてるじゃないか!」

 半日近く待ってようやく出会えた、上級職と思われる少女を逃すわけにはいかない。

 

「変な噂? それは何ですか? そちらの青髪のお姉さんは私に何もしていませんし、お2人の噂なんて聞いたことはないので、安心して下さい」

「ならどうしてクイズなんて始めるんだ? アクアの知能レベルが心配なのか?」

 アクアが俺の脚を蹴ってくる。ステータスの差か、ものすごい痛い。

 

「冒険者には時に観察力も必要になります。これからパーティーを組むことになるお二人の実力を試させてほしいんです」

 なるほどな。俺たちと冒険者として一緒にやっていけるかと言う試験みたいなもんか。 面白そうじゃん。

 

「そのクイズ対決、受けて立つ!」

「そんな簡単なことで仲間になってくれるの? 私の観察力は神の領域なの。悪いけど、あなたの正体なんてバレバレよ」

 そうか、腐ってもこいつは女神。全てを見通す能力くらい持っているってわけか。この勝負もらった!

 

「その特徴的な大きな鎌。あなた、死神ね! 人間の目は誤魔化せても、女神の目は誤魔化せないわ!」

 

 何だと! この薄幸の美少女が死神。確かに人間離れした美しさ、生気もあまり感じられない。地上に女神がいるんだし、死神がいてもおかしくない!

 

「いいえ、違います。私はただの人間です。……っていうか、女神って何ですか?」

「ですよねー。じゃあ次は俺の番だ! その胸当てと小手、腰にある短剣からして。アサシンだろ! その黒いローブは闇に紛れるためなんだろ」

 

「違います」

 違うのか!

「分かったわ! アサシンじゃないなら、その格好は盗賊でしょ」

「違います」

 

 死神でもなければ、盗賊でもアサシンでもない。考えろ、この子のまとまりのない格好には何か意味があるはずだ。もう一度よく観察する。

 

 だめだ、いくら考えても共通点が見つからない。……共通点が、見つからない?

 

「そうか、そういうことだったのか!」

「分かったのカズマ!」

「俺たちは考えすぎていたんだよアクア! この子のチグハグな格好に惑わされていたんだ。答えは最初からあったんだよ!」

「つまり、どういうことなの?」

 

 ははは、やるじゃないか白髪美少女。だが、答えは見えた。ポンコツ女神の目は騙せても、この俺のシューティングゲームで鍛え上げられた観察力は騙せないぜ。

 

「魔法使いと言えばローブ、皮の軽装備と短剣と言えば盗賊、そして鎌を遣う職業は重戦士。それらの技全てを使える職業はたった一つ」

「まさか、カズマさん! この子の正体は……見た目通り……」

 

 どうやら、アクアも気がついたようだ。

 

「全ての職業の技を覚えることができるのはたった一つ。あんたの正体はただの冒険者以外ありえないんだよ!」

 

 負けを恥じる必要はない。君はよくがんばったさ、名も知らぬ美少女。この世界の冒険者相手なら、君はほぼ確実に勝利できていた。そう、君が敗北する理由は俺が異世界人で、それも日本人だったからだ。

 

 恨むなら、トンチなんて屁理屈への対抗策を日本人に教えた、一休さんを恨むんだな!

 

「違います。言ったはずです、私は上級職募集を見て来たのだと。私が最弱職の冒険者だったら、問題にならないじゃないですか」

 

 そうだった。俺ってば、最弱職だった。

 

「分かったわカズマ! この子は見た目通り魔法使いよ! 魔法使いで上級職なら、この娘の正体はアークウィザードよ!」

 

 自信満々に胸を張るアクア。どうやらこいつは俺の失敗から何も学ばなかったようだ。確かにローブにマントなんて魔法使いっぽいけど、魔法使いなら杖を持っているはず。この勝負、俺たちの惨敗だ。

 

「よくぞ見破りましたねお姉さん。そうです、私の職業は見た目通りアークウィザードです」

「ふふん、どうよカズマ。私の心眼に見抜けないものなんてないのよ! 敬って! この才能の塊である私を敬って!」

「納得できねええええ!」

 ちくしょう。いつか天国に行ったら、覚えておけよ一休さん。あんたのせいで、俺はポンコツ女神に負けたんだ!

 

「申し遅れました。私の名前はルミカと言います。これからよろしくお願いしますね」

 こうして、俺のパーティーにアークウィザードが加わった。

 

 

「我が名はめぐみん。アークウィザードにして、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者」

「……遊んでほしいなら、そこの青髪のお姉さんにお願いしたまえ」

「ち、ちがわい!」

 人生で最も奇抜な事故紹介を聞いた俺は、現実逃避するつもりで適当にアクアに丸投げしようとしたが、その子は慌てて否定した。いや、めぐみんはないだろめぐみんは。

 

 ルミカを仲間に加えた俺たちだったが、もう一人くらい仲間が来ることを願って、1時間ばかりギルドに待機していると、ルミカよりも少し背の低い少女が募集を見てやってきた。

 

「なあアクア! アークウィザードならすでに一人いるけど、どうする?」

 ルミカにも意見を聞きたいんだが、ここにはいない。彼女は5分ほど前からトイレに行っているため、俺よりも異世界に詳しいであろうアクアに聞いてみた。

 

「……その赤い瞳。もしかして、あなた紅魔族?」

「いかにも。我は紅魔族随一の魔法の使い手、めぐみん。……あの、初対面の人にこんなお願いをするのは申し訳ないのですが何か食べさせてくれませんか…………」

 

 ここが日本なら、幼女誘拐犯として警察を呼ばれるかもしれない。だからと言って、空腹で涙目のロリっ子に冷たい対応なんてしたら、PTAやら教育委員会から吊し上げられてしまう。子供に道を聞くだけで通報されてしまう、日本とは恐ろしい国なのだ。だが、ここはある意味子供に優しい国日本ではなく、異世界だ。前世の常識は関係ない。

 

「ありがとうございます。1週間ばかり何も食べていなかったので、死ぬかと思いました」

「ご飯くらい気にすんなよ。俺の故郷では女の子には優しくしなさいと言う教えがあってだな。俺はこう見えてジェントルマンだからな」

 美少女には優しくする。YESロリータNOタッチは紳士の嗜みであり、日本だろうと異世界だろうとその考えは変わらないのだ。美少女なら大抵のことが許されるのである。

 

「……ロリコン」

 

 どうやらアクアには俺の考えなんてお見通しらしい。女神様からのゴミを見るような視線が思ったよりきつい。早く俺の心のオアシスこと、ルミカに帰ってきてほしい。

 

「それでアクア。その紅魔族ってのは何なんだ?」

 これ以上アクアの視線を浴びているのは健康上よろしくない。俺はアクアに質問して話題を変えることにした。

「紅魔族と言うのは、黒髪と赤い瞳が特徴で生まれつき魔法使いとしての素質が高い種族なの。……そして、大抵常人には理解できない奇抜な名前と独特のセンスを持っているわ。簡単に言うと、本当に魔法が使える重症の中二病患者かしら」

 

 ロリっ子から冒険者カードを見せてもらうと、確かにそこにはめぐみんと言う名とアークウィザードと言う職業が書かれていた。名前も名乗りも、別にふざけている訳じゃないらしい。

 

「あなたたちの名前の方が、私的にはクリエイティブと言うかセンシティブです」

「なら参考までに聞いて見ましょう。お父さんとお母さんの名前を教えてもらえるかしら?」

「母は紅魔族でも五指に入る専業主婦ゆいゆい。父は紅魔族随一の変わり者ひょいざぶろー。ちなみに妹はこめっこです」

 

「…………とりあえず、この子の種族は質のいい魔法使いが多いんだよな? 仲間にしてもいいか?」

 俺は何も聞かなかった。変な名前なんて聞かなかったぞ。

 

「おい、私の家族の名前について言いたい事があるなら聞こうじゃないか。紅魔族は売られた喧嘩は買う種族、殴り合いもやぶさかではないぞ」

 魔法使いが二人。回復役が一人。俺以外に前衛が後一人はほしいな。

「本当に爆裂魔法が使えるのなら、彼女を逃すのはおしいわ。上級魔法よりも極めて習得することが難しい、最強の攻撃魔法。その一撃は全てを塵にすると言われているの」

 

 前世の父さん母さん。異世界では美少女が最強の攻撃力を持っているらしいです。日本にいたらロリコンが絶滅すると思います。そんなデンジャラスな世界で、息子はなんとかやってみます。

 

「こいつはアクア。俺はサトウカズマ。カズマでいい。後一人、ルミカって言うお前と同じアークウィザードがいるから。これからよろしく頼むよ、めぐみん」

「え? ルミカ、今ルミカと言いましたか?」

 

 ルミカの名前に強く反応するめぐみん。

 

「ルミカがどうかしたの? あのうさぎさんみたいな子と知り合い?」

「うさぎみたい? それはいったいどんな子なんですか?」

「ルミカはお前みたいな赤い眼をした、白髪をポニーテイルにした子だよ。年齢も背丈も、めぐみんと同じくらいだったかな」

 

「……白髪ですか。赤い眼をしたルミカと言うアークウィザードなら、私の知り合いなんですが……。あの子は私と同じ黒髪なので、人違いでしょうか?」

 

 うんうんと悩むめぐみん。確かにルミカのファッションセンスはいかにも中2病だったけど。黒髪じゃないなら、恐らく人違いだろう。

 

「ただいまもどりました」

 

 そこにタイミング良く、話題のルミカが帰ってきた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 彼女を追いかけ紅魔族の里を出て、しばらく立った。私は先に里を出たはずのめぐみんを未だ発見できていない。駆け出し冒険者が集まる街、アクセル。めぐみんもゆんゆんもこの辺りにいるはずなんだけど。

 

 そろそろ、一人じゃきつくなってきた。どこかでパーティメンバーでも募集してないかな。私みたいなポンコツ紅魔族でも仲間に入れてくれるパーティーがあればいいけど。

 

「上級職のみ歓迎?」

 冒険者ギルドの掲示板に、昨日まではなかったパーティメンバー募集の張り紙を見つけた。これはチャンスかも。上級職だけを求めているなんて、私以外のメンバーはかなりの実力者揃いに違いない。新米冒険者の私がミスしても、先輩たちがきっちりフォローしてくれるんじゃない? さっそく話を聞きに行こう。

 

 パーティー募集をしていたのは、青髪美人のアークプリーストさんと冒険者のお兄さん。どうしよう。初対面の年上の人に話しかけるなんて、恥ずかしい。緊張していて気づいたら、話かけようとしてから半日くらい経過していた。

 

 やばいやばい。とにかく話かけないと。

 

「すいません。パーティーを募集していらっしゃるのはあなたたちですか?」

 

 とりあえず、掴みはオーケー。第1印象は悪くないはず。演技は完璧。今の私はどこからどう見ても、大人しそうな少女にしか見えないはず。私が紅魔族であることは気づかれていない。初対面の人に紅魔族だと言うと、けっこうヒドイ反応されるからね。

 

 しかも、私はめぐみんが言うにはあほの子らしい。とりあえず初対面の人相手には、舐められたら負けだからキャラ作っておきなさいってめぐみんが言ってたし。

 

「なあ、アクア。この子は本当に上級職なのか? というか冒険者なのか?」

「見れば分かるでしょ」

「見て分からないから聞いているんだよ!」

 

 え? どうしよう。私の服装って冒険者に見えないの? 武器とか持ってるし、ローブも着てるんだけどな。猫かぶってるのはバレてないけど、別の方向で怪しまれてるよ。

 

「さて、問題です。私はいったい何の職業でしょうか。回答できるのは5回までです。見事正解して、私をパーティーにスカウトしてみて下さい」

 

 どうしよう。緊張してわけの分からないこと言っちゃったよ!助けてエリス様! どうか私にこの状況を乗り越えるヒントを下さい。

 

「アクア! お前が変なことでもしたんだろ! ギルドじゃお前の悪い噂が知れ渡ってるんだ! だからこの子、適当な理由つけて帰ろうとしてるじゃないか!」

「変な噂? それは何ですか? そちらの青髪のお姉さんは私に何もしていませんし、お2人の噂なんて聞いたことはないので、安心して下さい」

 噂と言うなら、私の方が有名になっちゃってるよ。いろんな意味で。

 

「冒険者には時に観察力も必要になります。これからパーティーを組むことになるお二人の実力を試させてほしいんです」

 

 クイズ対決を行うそれっぽい理由をつけたけど、本当に信じてくれたよこの人たち。私の服装から職業が分かっても分からなくても、冒険者としての実力なんて試せないよ。このクイズって、遠回しに私の服装ってどんな感じって聞いてるだけだよね。私、何やってんだろ。

 

「よくぞ見破りましたねお姉さん。そうです、私の職業は見た目通りアークウィザードです」

 なるほど。私の服装は死神とか盗賊とかに見えちゃうのか。誰がどう見てもアークウィザードにしか見えないと思うんだけど、死神とか格好いいから別にこのままでいいや。

 

 2人ともノリが良いし、面白い人たちだ。特に冒険者の人からは、突っ込みキャラの匂いがする。彼なら私がミスしても、華麗な突っ込みで水に流してくれるに違いない。この人たちとなら、私もがんばれるかも。

 

「申し遅れました。私の名前はルミカと言います。これからよろしくお願いしますね」

 

 それから1時間、私たちは上級職の人がやって来るのを待ち続けた。

 

「すいません。私、少しお手洗いに行ってきます」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「ただいまもどりました」

 

 私がお手洗いからもどると、人数が1人増えていた。3人だと人数的に不安だったので、1時間待ってて本当に良かった。

 

「私がいない間に、新しい方が増えたんですね」

「あら、ルミカ。お帰りなさい」

「今お前の話をしていたところなんだ」

 アクアさんとカズマさんが、笑顔で私を迎えてくれた。アクアさんの隣に、私より少し背の低い女の子が座っている。

 

「はじめまして。私はルミカと申します」

 

 軽く挨拶すると、彼女は私の顔を見て固まっている。何だろう、私の顔にケチャップでもついてるのかな?

 

「え? 嘘? ……もしかして、ルーちゃん?」

 

「あれ? 私の名前をルーちゃんなんて呼ぶ人は……あの子しかいないはず?」

 

 その少女は黒髪で赤い瞳で人形のように整った顔立ちで。私がずっと会いたかった彼女で。

 

「……まさか、こんなところであなたと会うとは思いませんでしたよルミカ」

「それはこっちのセリフだよ、めぐみん」

 やっと見つけた。

 

「できることなら、あなたとは争いたくなかった。私たちが出会ってしまったからには、戦いはさけられません。覚悟はいいですか、ルーちゃん」

「望むところだよ、めぐみん」

 これが私たち2人の宿命。因縁の対決。

 

「紅魔族に、最強は2人もいらない。消えるのはあんたよ……めぐみん」

「決着をつけましょうルミカ、格の違いを教えてあげます」

 めぐみんが紅魔の里を出てからずっと、この時が来るのを待っていた。さあ始めよう、地獄のような復讐劇を。

 

「え? ねえ、カズマさん。これどういう状況?」

「よく分からないけど、やばそうなのは確かだぜ」

 

 アクアさんとカズマさんが、私たちの戦いを盛り上げようと、それっぽいセリフを言い出した。なんて空気が読める人たちなんだ。2人の期待に応えて、私も決めセリフの一つでも言わないと。

 

「やっほーめぐみん! 殺しに来たよ?」

 どうよめぐみん! 3日前思いついたこの決めセリフは!

「こんにちは、ルミカ。……そして、さようなら」

 くっ、さすがはめぐみん。相変わらずそれっぽいセリフを! 名乗り対決は互角か。

 

 だけど、最後に笑うのはこのルミカ様よ!

 

 こうして、私たちのプライドをかけた決闘は始まった。後にこの戦いは、「最低最悪の地獄絵図」と呼ばれ、アクセルの住民たちにより語り継がれることになる。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「おい、アクア! 紅魔族って何、出会った瞬間に殺し合うような種族なのか!」

「そんなことはないはずよ。多分ね」

 

 アクアがそんな不安になるようなことを言った。

 

「くははは! 我が名はめぐみん。アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者」

「ふふふ! 我が名はルミカ。しかしルミカとは仮の姿、真の名はルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィ。アークウィザードにして、爆裂魔法を極める者」

 

 漫画だったら、背景にゴゴゴゴゴと書かれていそうな重圧を感じる。……つうか、ルミカも爆裂魔法使うのかよ。

 

「おいおい、ルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィだと!」

「あの特徴的な白髪と赤い瞳、何よりも背中に担いだ鎌。やばい、まさかあいつが最近噂の!」

「全員建物から逃げて! ギルドがぶっ飛ぶわよ!」

 ルミカの名を聞いた途端、慌てる冒険者たち。

 

「おい、あいつって何者なんだ!」

「ねえ、カズマ! あの子私より目立ってない? 女神たる私より目立ってるとかありえないんですけど!」

 神様なら存在感を気にする前に、女神らしく戦いとか止めろよ。

 

「カズマさんたちはアクセルに来たばかりですから、知らないんですね」

 混乱している俺たちに、受付のお姉さんが駆け寄ってきた。どうやら、周囲の冒険者たちが大騒ぎする理由を教えてくれるらしい。

 

「ルミカさんはとにかく説明できないくらいいろいろとすごいんです。戦場のトリックスター、殺戮の舞姫、ブラッドラビット、破壊の女神、神速の堕天使、グロテスクマスター、リアルアンデッド、白銀のペテン師、魔王軍幹部も裸足で逃げ出すルミカさん。数々の異名を持ち、アクセルの冒険者たちに恐れられています」

「女神ですって! この私を差し置いて女神!」

 やばそうな異名がいっぱいあるし。もうこのなんちゃって女神より、ルミカが女神でいい気がしてきた。

 

「どうやったら、女の子にそんな通り名がつくんだ。特にリアルアンデッドとか、もうただの悪口じゃね?」

「みんなルミカさんのことが嫌いというわけではないんですよ。ギルド職員や女性冒険者さんたちには妹のように可愛がられていますし。ただ、変な異名とか変な戦闘スタイルのせいで、パーティにはあんまり誘ってもらえないんです」

 

 俺はルミカをパーティに誘っていいのか、分からなくなってきた。ある意味、アクアより危険な香りがする。

 

「あの日、私は守れなかった。あんたに、大切なものを奪われた! あの時受けた屈辱、悲しみ、怒り。今日まで忘れたことはない! 覚悟しろめぐみん! 私はあんたを許さない!」

「そう思うなら私が悪いんでしょうね、あなたの中では」

 俺がそんなことを考えていると、話が進んでいた。アニメだったら、回想シーンが始まりそうだ。

 

「めぐみん! あんた、自分が何をしたのか! 私から何を奪ったのか、思い出せないとでも言うの!」

「自分の実力のなさを、私のせいにしないで下さい。大切なものを守れなかったのは、あなたの未熟さが招いたこと」

 何かものすごい因縁が。部外者が口を出していい話ではなさそうだ。

 

「確かに、あの時の私は未熟だった。私がもっと。もっとしっかりしていれば。私は失わずにすんだんだ」

「私は何度だって繰り返す。あなたに私が止められますか? あの日、ただ涙を流すことしかできなかったあなたに。私を追いかけることすらできなかった、無力な少女に。このめぐみんが止められるとでも言うの、ルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィ!!」

 

 ていうか、ルミカの本名って。ルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィなんだ。さすが紅魔族、変な名前だった。ルシフェリオンって何だよ。

 

「あの時とは違う。私はもう、2度と失ったりしない。あんな悲劇、繰り返させたりするもんか! 貴様を倒して、私は未来に進むんだ! この攻撃に、私の全てをこめる。めぐみん、あんたにこれが止められるかしら!」

 めぐみんに向かって、攻撃態勢に入るルミカ。

 

「ふふふ、私も甘く見られたものです。あなたの攻撃なんて、避ける価値もない。我が力の前には全てが無力。もう1度味あわせてあげましょう、圧倒的な絶望を!」

 まるで友人を抱きしめるかのように、両手を広げ構えるめぐみん。その堂々とした立ち姿は、勇者に立ち塞がる魔王のようだった。

 

「ちょっと! 大丈夫なの! カズマ、なんとかしないと!」

「ちくしょう! どうすればいいんだ!」

 

 少女たちの血で血を洗う激闘を何とか止めようと、慌てる俺とアクアに。

 

「昔、ルミカさんに聞いたことがあります、安心して下さい。絶対危ないことにはならないはずです」

 受付のお姉さんは、笑顔で断言した。

 

「これで終わりよめぐみん! あの子の仇!私の怒りを思い知れ」

 

 めぐみんに向けて飛び掛かるルミカ。……え、これ本当に大丈夫なの? あの子の仇とか言ってるけど、本当に大丈夫なの?

 

「よくも、よくも私のおやつのプリンアラモード! 勝手に食べたなあああ!」

 

 絶叫するルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィ。

 

「………………え?」

 

 そのつぶやきは誰のものだったのか。ギルドの空気が凍りついた。呆然とする俺とアクア。口をあんぐり開けている冒険者のみなさん。

 

「ルミカさん言ってました。おやつを食い逃げした友達に、怒りの鉄拳をくらわせてやるんだって。乙女の誇りにかけて、甘いものの借りは返してみせるって」

 凍りついたギルド内で、受付のお姉さんだけが笑っていた。

 

「あれだけオーバーなこと言ってて……因縁の最終決戦みたいな空気で……プリンアラモード? ありえないんですけど……マジありえないんですけど」

 アクアが俺たちの言いたいことを全部言ってくれた。

 

「ぐふっ! 予想より少し痛かったです」

 

 殴りかかるルミカを、めぐみんはしっかり受け止め抱きしめた。どうやらあの構えは、本当に友人を抱きしめるためのものだったらしい。一瞬でも勇者を待ち構える魔王のようだと思ってしまった、過去の自分を殴りたい。

 

「楽しみにしてたんだからね! 食べる三日前から楽しみにしてたのに……わああああんっ!」

「ごめんなさい、あの時はお腹がすいてたんです。泣かないで下さい、今度同じの買ってあげますから」

 

 泣きながらポカポカとめぐみんを殴るルミカ。よしよしとルミカをなでるめぐみん。

 

「何かあの二人、百合っぽく見えませんか? 抱き合う美少女って何かいいですよね」

 

 そんな二人の紅魔族を、受付のお姉さんは頬を赤くしながら見つめていた。

 ……この人はかなり、危ない人かもしれない。

 

 俺は今日思い知った。このろくでもない世界には、ろくでもないやつらしかいないのだと。

 

 




 ルーちゃんの本名がついに判明しました。ルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィ、長いので基本頭文字を取ってルミカとしか呼ばれない可愛そうな子です。次回は戦闘シーンに、なればいいな。
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