この爆裂娘に親友を!   作:刃こぼれした日本刀

7 / 17
 ついに、カエルと戦闘です。カズマさんの頼もしい仲間たちが、実力を発揮します。ポンコツアークウィザードも大活躍です。



この忌まわしいカエルにリベンジを!

「すいませんアクア。この借りは必ず返します」

 ちょっと恥ずかしそうにするめぐみん。

「もう2人とも喧嘩なんかしちゃだめよ?」

 私たちにやさしげな眼差しを向けるアクアさん。

 

「俺、もう疲れたよ。おうちに帰りたい」

 何故かホームシックになっているカズマさん。どうしたんだろう? 私たちのハイレベルな決闘を見て、冒険者としてやっていく自信がなくなっちゃったのかな。後で慰めてあげないと。

 

「んぐんぐ。ごちそうさまでした」

 めぐみんとの激闘を終えた私は、約束どおりプリンアラモードを食べている。ただ、めぐみんはお金を持っていなかったので、アクアさんが代わりに買ってくれた。なんていい人なんだこのプリースト。性格も見た目もいいとか、できる女すぎる。きっと戦闘力も一流な凄腕冒険者なのだろう。

 

「仲直りしましょう、ルーちゃん。私が悪かったです」

「全てを許そうじゃないか、我が盟友めぐみん。私こそ大人気なかったよ」

 アクアさんは、少し高めのプリンアラモードを買ってくれた。おかげで私の心はとても穏やかだ。今なら魔王軍の侵略行為すら、笑って許してあげちゃう気分。めぐみんとも無事仲直りできたし、迷惑をかけた二人にお礼を言わないと。

 

「アクアっち、プリンアラモードありがとう! カズカズも何となくありがとう!」

 

「アクアっちって何! 仮にも女神に対して、アクアっちって何! ちょっと軽すぎない!」

 さっきも言ってたけど、女神って何だろう。

「カズカズはやめてくれ、なんか紅魔族みたいで嫌だ」

 おかしいな、カズマさんの顔が引きつってる。こんなにクールなあだ名なのに。

 

「いや、二人ともいい人そうだから。もう大人しい女の子のキャラ作らなくてもいいかなって。なかなかの演技力だったでしょ?」

「ルーちゃんは、基本的にこんなキャラです。あほの子に見えるので、初対面の人に舐められないように、猫をかぶるように指導しました」

 

 えへんと胸を張るめぐみん。なんか可愛い。

 

「とりあえず、カズカズはやめてくれ。カズマでいいから」

「残念。せっかくカズマのために、スタイリッシュなあだ名を考えたのに」

「まあいいじゃないですか、ルーちゃん。紅魔族的に、カズマと言う名はそのままでも十分エレガントな名前ですし」

 めぐみんのコメントを聞き、雷に打たれたような反応をするカズマ。名前を褒められたのが、相当嬉しかったみたい。

 

「なら私のことはそうね、敬愛と尊敬の意味を込めて美しき女神アクア様と呼んでちょうだい!」

「分かりました、美しき女神アクア様」

「カズマ! この子素直よ! 素直すぎて、なんか私罪悪感を感じるわ」

 褒められて即座に謙遜するとは、なんて謙虚な人なんだアクア様。ますます尊敬しちゃうよ。

 

「ルミカ、お前」

 

 何故か私の反応を見たカズマが、信じられないものでも見たような顔をしている。 どうしたんだろう、私の背後に幽霊でも見えたのかな?

 

「アクア様っていい女ですよね、喧嘩を止めるために食べ物をくれたし。美人だし、性格もいいし」

「確かに、初対面の相手に何かプレゼントするなんて、なかなかできないことです」

 私に同調し、うんうんとうなずくめぐみん。

 

「さぞかしもてもてガールなんでしょ? できる女アクア様って感じ、きっと腕利きの冒険者なんですよね。アクア様みたいな人って、憧れちゃうな」

「……うぐ……ぐすっ、今私輝いてる! 地上に降りて来て初めて輝いてるわ! この子私の養子にしたい、いや妹にしたい」

 アクア様がお姉さんか、それはそれで楽しそう。そういえば、私の実姉は今何をしているんだろう。

 

「きっと今回の依頼でも、大活躍するんでしょう?」

「もちろんよ! 私の華麗なるゴッドブローが炸裂するわ」

 なんだって! ゴッドブロー? 必殺技にゴッドとかついてるよ、やばくない?

 

「めぐみんめぐみん! ゴッドブローだって! きっとすごい技なんだよ! 神殺しができる技だよ!」

「神や魔王にすらダメージを与える私の爆裂魔法とどっちが強いか、勝負ですアクア」

 

 私とめぐみんが期待に満ちた眼差しを送ると、アクア様がすごい顔になった。

 

「おい二人とも。あんまり期待しすぎるな。後で後悔することになるぞ」

 カズマってば。そんなこと言って、本当に盛り上げ上手だな。押すなよ、絶対押すなよってやつでしょ? 心配しなくても、紅魔族はお約束を守る種族だよ。

 

「きっと相手は殴られた瞬間、内部から爆発四散するんだよね」

「ルーちゃん、甘いですね。多分もっと派手な技ですよ、敵を殴った余波だけで地面に半径100メートル以上のクレーターができるとか」

 私とめぐみんはカズマの言うとおり、さらに場を盛り上げた。さあアクア様、ゴッドブローについて解説して下さい。

 

「ふふっ、ふふふふふ。あははははは」

「おっ、おいアクア? ……大丈夫か」

 あれ? なんでカズマは顔を引きつらせてるの? もしかして、私たち何か間違えた?

「ふふふ、そのとおり! ゴッドブローとは、そのあまりの破壊力から大昔に神々により封印されし禁断の破壊攻撃! その一撃は全てを虚無へと返し、神をも殺す」

 

「「カッ、カッコイイ!!」」

 私とめぐみんはそんなリアクションしか取れなかった。アクア様は私たちの想像を遥かに超える戦闘能力の持ち主だった。崇拝しそう。

 

「では、見せて下さい。その恐ろしい技をジャイアントトード相手に」

 めぐみんがそう言うと、アクア様は顔を真っ青にして。

 

「ごめんなさい! すいませんでした!」

 

 私たちに対して、華麗なるジャンピング土下座を披露して下さった。

 

 

「じゃあ、アクアが泣き止むまで適当にだべろうぜ」

 カズマの説明によれば、彼女はできる女ではないそうだ。アクア様というか、アクア様(笑)らしい。

 

「ぐすっ……ひっく……。ごめんなさい」

 私たちの純粋な眼差しに耐えられなくなったアクア様(笑)は、全てを白状した。自分はジャイアントトードすら倒せない、ヘッポコアークプリーストなのだと。

 

「アクアがそんなすごい人じゃなくて、けっこう安心しました。これで我が爆裂魔法こそが、最強であることを証明できます」

 嬉しそうにするめぐみん。

「本当に良かった、もしそうだったら大変なことになってたよ」

「大変なことって何だ?」

 心底安堵している私に、カズマが質問する。

「神殺しをしたなんて噂を聞いたら、世界中から最強の称号を求めて、紅魔族が押し寄せて来るよ。毎日が決闘バトルロイアル、刺激的な人生になること間違いなし!」

「……紅魔族って……」

 カズマが私とめぐみんを見て、残念なものでも見るような顔をする。もしかして、カズマも最強の称号がほしかったの?

「ルーちゃん。人事みたいに言ってますけど、私見てましたからね。アクアが神をも殺すって言った時、獲物を狙う獣のような目をしてましたよ」

「紅魔族って……紅魔族って……」

 カズマが私を見て、何かぶつぶつ言っている。大変だ、私のせいで紅魔族のイメージが悪くなっちゃった。急いで訂正しないと!

 

「違うの! 私はただ平和的にこの鎌で! アクアをボコボコにしようとしただけなの!」

「ドン引きだよ! 全然平和的じゃねえよ! 完全に武力行使じゃねえか!」

「ルミカ! 私信じてるから。その鎌の刃じゃない部分で、私の肩を叩いてくれようとしたのよね? そうでしょ? そうに決まってるわ」

 おかしい。カズマも泣き止んだアクアも、どうしてそんな反応をするんだろう。説明が足りなかったのかな。

 

「私はアクアに不意打ちしようとしただけなの! 平和的に一瞬で痛みを感じる暇も与えず、アクアを戦闘不能にしたかったの! そして、神殺しすらできる冒険者に勝利したルミカちゃんと呼ばれたかった、ただそれだけなの!」

「うわあああ! ルミカが、ルミカが私を! うわあああああ」

 私の心遣いに涙を流して、大喜びするアクア。

「ルーちゃん、私もドン引きです。ちょっとあっちで、お姉ちゃんとohanashiしましょうか」

 

 え? 何で? どうしてめぐみんは怒ってるの?

 

「めぐみんが……めぐみんが殴った」

「すいません、私の妹分がすいません」

「いや、その発想はなかった。まさか、アクアを速攻で倒して、自分が最強を名乗ることで紅魔族の襲撃から、アクアを守ろうとしていたなんて。俺はびっくりだよ!」

 

 どうやら、私の説明能力はゴブリン以下だったようだ。全然伝わってなかったなんて。ルミカちゃんの体は優しさ100パーセントでできているのに、疑うなんてヒドイ。

 

「やっぱりルミカは天使だったのね! この私の目に間違いはなかったわ」

 この短時間で分かったことがある。アクアは私以上にきっとだめな子だ。何、このちょろいお姉さん。

 

「そうだ、めぐみん。俺お前に聞きたいことがあるんだ、その眼帯ってどうしたんだ?」

 さすがカズマ。そこに気がつくとは、やはり突っ込みキャラか。

「ふふふ、この眼帯は我が魔力を抑えるためのリミッター。我が魔力は強大すぎるのです。体から無意識に垂れ流される魔力だけでも、環境に悪影響を及ぼしてしまう!」

「すげー!」

 めぐみんの設定解説に感動するカズマ。

 

「私もルーちゃんに聞きたいことがあるんですが」

「何かな、めぐみん。私のスリーサイズを聞きたいの?」

 

 私たちは、子供のころからずっと競い合ってきた。時には殴り合いにもなった。

 そう、どっちが巨乳になれるのかの真剣勝負だ。成長具合はほぼ互角。身長は私の方が数センチ勝っている。だけど、胸は分からない。私も彼女も可愛そうな胸をしている。

 

「そうではなくて、その格好についてです」

 なんだ、そっちの話か。めぐみんは、私にも紅魔族的アピールをさせてくれるらしい。

「私もルミカの格好は気になっていたわ」

 なるほど。アクアも私の格好が気になると。

「実は俺も。もしかしてめぐみんみたいに、何か理由があるのか?」

 ほほう、カズマもですか。

 

「私が里から出た時は、そんな風じゃなかったはずです。ルーちゃんに、何があったんですか?」

 めぐみんの最後の一言で、完全に空気は温まった。

 

 よしよし、君たちの気持ちは伝わったよ。そんなにも聞きたいなら、教えてあげようじゃないか。私が1週間寝ないで考えた最強の鎌、原稿用紙25枚分もあるデスメテオの設定について!

 

「ルーちゃんのその白い髪は、いったいどうしたんですか?」

「………………………………」

 

 やばいやばいやばい。そっちを聞きますか、どうしよう。設定なんて考えてないよ。

 

「……紅魔の里を出てすぐに、私は強大な敵と遭遇したの。本当に恐ろしい相手だった、何回も死ぬかと思った。隙を突いて何とかソイツからは逃げ切れたんだけど……殺されかけた恐怖で髪の色が抜け落ちちゃったんだ」

 

「何だと、そんな恐ろしい敵が。この世界には存在するのかよ」

 驚愕するカズマ。

「ううっ……ぐずっ……。ルミカ。大丈夫だから…もう大丈夫だから……これからは私が守ってあげるからね……ぐずっ……」

 泣きながら私を抱きしめるアクア。

 

 ふう。なんとか誤魔化せたよ。

 

「まあ、私の眼帯はただのファッションですし、ルーちゃんのも嘘なんでしょ?」

「……あはは、バレちゃった」

 

 そして、あっさり私の名演技を台無しにするめぐみん。

 

 

 

「このこのこのこの!」

「うわっ、痛いです。ちょっとマジ痛いです! ヘルプ、謝りますからヘルプミー!」

 カズマに眼帯を引っ張られて、涙目のめぐみん。

 

「いいかしら、ルミカ。嘘をつくことはだめなことなの、罪深いことなのよ。昔から嘘つきはエリス教徒の始まりと言われているのよ、まったく。……それからね……」

 いやいや、アクアこそ嘘でしょ! 何その嘘つきはエリス教徒の始まりって! 聞いたことないよ。

「聞いてますか? ルミカさん、私のありがたいお説教ちゃんと聞いてますか?」

「ごめんなさい! 本当ごめんなさい!」

 アクアによく分からない説教をされる私。

 

「こら、ちゃんと私の目を見て! この曇りなき眼をきちんと見て! 反省が足りないのかしら」

「もうしません、もうしないので許して下さい! なので降ろして下さい! 恥ずかしいから降ろして下さい!」

 

 ギルドの中、多くの冒険者の視線が突き刺さるテーブル席があった。そこにはお互いが向き合う形で、青い髪の女に説教されている白髪の少女がいた。この瞬間、世界中の誰よりも恥ずかしい思いをしている少女がそこにいた。

 

 何故かアクアの膝の上に強制的に座らされ、涙目で謝罪する美少女がいた。

 ……ていうか、私だった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 アクアからの説教地獄から開放された私は、ギルドのみなさんからの生暖かい視線に耐えられず、他の3人を引きずってジャイアントトードの討伐へとやってきた。

 

「爆裂魔法は威力が高い分、詠唱時間が長いです。呪文が完成するまで、あそこのカエルの足止めをお願いしま……え? ちょっとルーちゃん!」

 

 めぐみんが遠くにいるカエルを、爆殺しようとしている。しかし、別方向からもカエルが現れた。私は一匹のカエルに向かって、全力ダッシュ!

 

「あはははは! あははははは! 殺してやる! 皆殺しよ! カエルなんて、一匹残らず駆逐してやるわ! 恥ずかしかった腹いせよ、乙女の怒りを思い知れ!」

 受けて見よ、我が究極の爆発攻撃を!

「何してるんですか、このおバカ娘! アクア!さっきの責任を取って、その子を止めて下さい!」

「え? 私のせいなの! 私が妹をしかるお姉ちゃん気分を楽しんだのがいけないの!」

 

 カエルを目掛けて突撃しようとした私は、アクアによって捕獲された。おのれ、またもや我の邪魔をするのかアークプリーストめ!

 

「おい、ルミカ! お前魔法使いが接近戦を挑もうとするなよ!」

「あはは、面白いことを言うねカズマ! 私を誰だと思っているの?」

「めぐみんに面倒を見てもらってばかりの、だめだめな妹だろ?」

 そんなバカな! 360度どこからどう見ても、私の方がしっかりもののお姉ちゃんでしょ! 見る目がないね、カズマ。

 

「この殺戮の舞姫、グロテスクマスターと呼ばれるルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィが! 普通の魔法使いの枠組みに納まるとでも思っているの? いいから私にやらせてよ」

「分かった分かった。ならルミカは念のために、ここで待機していてくれ。お前は、俺たちの最終兵器だ!」

 

 何ですって? 私が……最終兵器?

 

「ふふふ、良いでしょう。この私が見守っています、お行きなさい勇者たちよ! 安心して下さい、何も心配することはありません! 貴方たちには勝利の女神であるこの私、最終兵器ルミカがついているのですから!」

 決まった、最高に格好よく決まった。

 

「よし、俺たちには勝利の女神様がついてる! 行くぞアクア!」

「ちょっとカズマさん! 女神ならここにもいるんですけど! 私こそが女神様よ、本物の女神なら最初からあんたについていたはずよ!」

 

「あの……ずっと気になってたんだけど。時々言ってる女神って何?」

 

 私の質問に、カズマは真剣な顔で答えた。

 

「こいつ、病気なんだ。一週間に何回か自分のことを、女神と自称しないと高熱を出して寝込むんだ。今のところ、治療法は見つかっていない」

 

「「へえ、そうなんだ」」

 私とめぐみんはそう言って、アクアに優しく微笑んだ。

「ねえ、何で二人とも息ぴったりなの? 何でそれで納得しちゃうのよ!」

「安心して。私とめぐみんは、これからもアクアの友達だからね」

 

「わあああ! 女神の力、見せてやるわ! カエルごとき、私だけで十分よ!」

「だめですアクア! そのセリフは、確実に死亡フラグです! 戻って来て下さい!」

 私の一言が止めを刺してしまったようだ。めぐみんの忠告も聞かずに、アクアは近くにいたジャイアントトードに襲い掛かった。

 

「確かに昨日までの私は弱かった、ゴッドブローも通用しなかった! だけど、今日の私は昨日までの私じゃない! 私には守るべき妹たち、ルミカとめぐみんがいるの!」

 あれ? 私たちって、いつからアクアの妹になったの?

「人間は大切なもののためなら、いくらでも強くなれる! 私はあの子達に誓ったのよ、必ずカッコイイゴッドブローを決めてやるって!」

 アクア、ゴッドブローのこと……気にしてたんだ。

 

「アクア、お願いです! 普段言わないような格好いいセリフを言ったりしないで下さい!」

「そうだよアクア! この後、自分の過去を語り出したりなんかしたら。本当に死んじゃうよ!」

 

 めぐみんや私の必死の説得も届かない。アクアは語り続け、自分からどんどん死亡フラグを立てていく。

 

「カズマ……あんたともいろいろあったけど、今の私があるのはカズマさんのおかげ。私、すっごく感謝してる!」

「おいアクア! お前大丈夫か、本気で大丈夫なのか!」

 ついにカズマまで、アクアの心配をし始めた。どうして彼女は、誰に頼まれたわけでもないのに、自ら死ぬための伏線を張るんだろう。

 

「掛って来なさい、バカガエル! お姉ちゃんの力、見せてあげるわ!」

 いや、女神の力を見せてやるって言ってたじゃん。アクアはアークプリースト(なんちゃって女神)から、妹バカ(お姉ちゃん)へとジョブチェンジしたらしい。

「私の怒りに震えて消えなさい! これこそがゴッドブローを超えた新必殺技! 妹の前で姉に恥を掻かせたこと、来世に行っても忘れるな! ゴッドラグナロク!」

 アクアが叫ぶと、彼女の右手が眩い光りに包まれる。

 

「ゴッドラグナロクとは、お姉様のプライドと愛情を乗せた究極の右ストレート! 相手は死ぬ!」

 

 自称お姉様の必殺技は、カエルの腹部に直撃した。そして、それは全然効果がなかった。

 

「地獄で待ってるわ、兄弟」

 ちょっと格好いいことを言って、アクアはカエルに食べられた。これが、体を張った一発芸か。アクアは芸人の鑑だね。

 

「誇りに思うがいい、我が必殺の爆裂魔法で死ねることを!」

 アクアの一発芸の合間に、準備が整ったみたい。めぐみん、見せてもらうよ。あんたの爆裂魔法!

 

「『エクスプロージョン』っ!」

 

 眩い閃光、轟く轟音。カエルのいた場所には何もなかった。あるのは20メートルに及ぶクレーターのみ。感動で涙が止まらない。あの時、助けてくれたお姉さんと同じ魔法だ。超絶格好いい。

 

「なるほど……。これが最強の攻撃魔法か……すっげー」

 カズマも爆裂魔法の威力に感動している。

「この美しい破壊……死んだお姉ちゃん(アクア)にも見せたかったな」

 私も雰囲気に乗って、それっぽいセリフをつぶやいてみる。さて、早くアクアを助けてあげないと。

 

「カズマ! ルーちゃん! しんみりしてるところ、非常に申し訳ないんですが」

 

 私がめぐみんの方へ振り返ると、彼女はカエルに食われかけていた。どうやら、近くの地面にもう1匹隠れていたらしい。とりあえず元気そうだったから、手を振っておいた。

 

「やばい!」

 私がめぐみん救出作戦を実行しようと、走り出そうとした時。私とは別方向を見ていたカズマが叫んだ。どうしたの? ついにアクアが消化されそうなの?

 

「あっちの地面からカエルが5匹出て来た! めぐみん、一旦距離を取るぞ! 遠くから爆裂魔法でぶっ飛ばせ!」

 

 カズマはそう言って、私とめぐみんに顔を向けて固まった。

 

「何を……やってるんだ? 新しいかくれんぼか?」

「現実を見てカズマ! めぐみんは遊んでいるんじゃないの! 捕食されかけているんだよ! 確かに少し楽しそうに見えるけど」

「我が爆裂魔法は最強。しかし、消費魔力も絶大。限界まで魔力を振り絞ったので、まったく動けません。だから早く助け……」

 

 こうして、めぐみんは消えていった。格好いいセリフも言ってなかったし。少し楽しそうに見えたけど、意外とピンチだったみたい。

 

「ルミカ、俺が2人を助ける! だから、お前も使えるらしい爆裂魔法であっちの5匹を倒してくれ!」

 

「…………………………」

 沈黙。そして私は、カズマの言うことを無視して歩き出す。

 

「さて、ではカズマ。私が残りのカエルをなんとかするから、だめな姉二人を助けてあげて下さいな」

「待て、ルミカ! 何故俺から目を逸らす!」

「心配してくれて、ありがとう。なら、アクアたちを助けたら、私のことも助けに来てね」

「突然メインヒロインみたいなことを言い出しても、俺は誤魔化されないぞ!」

 

 ちっ、これだから突っ込みキャラは。

 

「この戦いが終わった後でいいの。めぐみんにも、言ってない隠し事があるんだ。みんなにも、聞いてほしいことなの」

「それ完全に死亡フラグだから! 生き残っても、後で話をうやむやにする気だろ!」

 カズマの叫びを無視し、私はジャイアントトードに突撃する。

 

「1匹目!」

 カエルの頭に、デスメテオを振り下ろす! 直撃だ、頭を完全にかち割った。

 

「2匹目!」

 眼球を狙って、腰の短剣を投擲。見事命中、苦しそうに鳴くジャイアントトード。ふふふ、あの短剣には致死性のまひ毒が塗ってある。やつは身動きすら取れずに、あの世行きだよ!

 

 ……この毒高かったんだよね。毒使いとか頭良さそうとか、頭悪いこと考えてつい無駄遣いしちゃったけど。いや、使う機会が来て良かった。

 

「後ろだルミカ!」

 カズマの声を聞き、急いで横にジャンプ。

 

「くらえ! メテオスラッシャー!」

 数秒前まで私がいた場所に、デスメテオをぶん投げる!

 

 私の鎌は特注品、見た目は重そうでも実際は女の子でも投げられるなんちゃって武器。多分そこそこ硬いものに2回もぶつけたら、使えなくなる欠陥製品。1匹目のカエルを倒せたのはまさに偶然。

 

 そして、偶然はまだ続いた。

 

「3匹目!」

 私を捕食しようと大きく開けていたカエルの口に、デスメテオがナイスショット。さらに、格好いいだけで強度0の大鎌は、真ん中辺りから2つに折れた。折れた鎌がうまく喉に引っかかって、カエルはもがき苦しんでいる。コイツは後で止めを刺そう。

 

「おお! すげー! 俺、次は魔法が見たい!」

「………………………………」

 

「おいルミカ! どうしたんだ? お前は魔法使いなんだよな、おいこら待て……何で目を逸らす!」

「ち、違うし! この程度の相手、魔法を使う必要すらないだけだし!」

 不思議だな……ルミカ、とっても不思議だな。戦闘の疲れかしら、冷や汗が止まらないですわ!

 

「……おい、まさかお前。魔法が使えな……」

 

 ぎくっ! ぎくぎくぎく!

 

「やれやれ、仕方ないぼうやですね。いいでしょう、男の子の夢を叶えてこその魔法使いです! さあさあ、見るがいい! この私の爆裂魔法を!」

「バカ! お前こんな近くで爆裂魔法なんて撃ったら!」

 慌てふためくカズマの姿を見て、スカっとした。さて、すっきりしたことだし決着をつけましょうか!

 

「黒より黒く、闇より暗き漆黒に、我が深紅の……」

「ぎゃああ!」

 

 私の呪文詠唱を聞き、遠くへ走り出すカズマ。くくく、計画通り。私はローブから杖ではない、ある物を取り出した。あそこまで離れていれば、これは見えないでしょ。

 

「『エクスプロージョン』っ!」

 

 そう叫び、私は液体の入ったビンを1匹のカエルに向け投げつけた。ある店で買った、空気に触れると爆発するポーションを!

 

「ふっ、ザコが」

 これは決まった。カエルは肉片となり、返り血が雨のように降り注ぐ。威力は爆裂魔法と比べるまでもないけど、これなら遠くにいるカズマからは、魔法を使ったようにしか見えまい。

 

「ーーールミ…カ。ーーーに…げ…」

 ん? カズマが何か叫んでる。

「どうしたのカズマ! 遠くて聞こえないよ!!!」

 必死に私を指差しながら、走ってくるカズマ。もしかして、後ろ?

 

「ゲコゲコ」

 

 ……そう言えば、まだ1匹残ってた。

 

「ははは……こんにちは?」

 振り返ると、目の前にはカエル。爆発するポーションは、あれで最後の一本だ。武器も全部投げちゃった。

 

 もしかして、もしかしなくても。大ピンチ!

 

「きゃあああ~! ここは挨拶して、また今度みたいな展開じゃないの! 空気読みなさいよ! ごめんなさい! 調子のってましたごめんなさい!」

 

 私は気が付くと、下半身までカエルに飲まれていた。

 

「どいつもこいつも! ほいほい食われてんじゃねええええ!」

 

 遠くにいたカズマが、こっちに戻ってきた。よし、今後のために伏線を張っておこう。完全に飲み込まれる前に、感動の再会っぽい雰囲気を作るのよルミカ。そうすれば、きっとめぐみんにもカズマにも怒られないはず。

 

 アクア? 知らない子ですね。知らない子だけど、膝の上で説教だけは許してほしいな。

 

「私のこと……助けに来てくれたんだね、カズマ。ありがとう。私、カズマのこと信じてた! 絶対に来てくれるって! だから、私信じてる! この後で話を聞いても、カズマなら私を受け入れてくれるって!」

 なんとか伏線を張り終えた私は、完全にジャイアントトードに飲み込まれた。

 

 我が名はルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィ。とある理由で、魔法が使えない、ポンコツアークウィザードです!

 




 何故かアクア様にお姉ちゃん属性がつきました。次回はポンコツ少女の説明会です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。