この爆裂娘に親友を!   作:刃こぼれした日本刀

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3月31日に加筆しました。


このゆりゆりしい妹の妄想を

「やって来ました大衆浴場! これでカエルの粘液とはさよならバイバイ。さあ2人とも、レッツお風呂よ!」

 大衆浴場にやって来た私たち。アクアのテンションは最高潮だ。しかし、私とめぐみんは脱衣場で睨み合っている。

 

「2人ともどうしたの? 早く入りましょうよ」

 服を脱ぐことを躊躇っている私たちに、アクアが不思議そうな顔をする。

「私はルーちゃんと少し話があるので、アクアは先に行ってて下さい」

「大丈夫だよアクア。すぐに終わるから」

 めぐみんと私がそう言うと、アクアは先に体を洗いに行った。

 

「ルーちゃん、無様に敗北する覚悟はできましたか? 妹が姉に勝てるとでも思ってるんですか?」

「めぐみんこそ、私に負けた時の言い訳は考えた? 落ち込む必要はないよ、私が勝つことは1万年と2000年前から決まっていたのだから」

 女には負けられない戦いがある。絶対に勝たなければならない時がある。

 

「ふふふ、泣くのはルーちゃんです。お姉ちゃんが胸を貸してあげますから、どれだけ涙を流しても安心ですよ」

「胸を貸すのは私。5秒後めぐみんはルミカ様に土下座することになるわ」

 

 女にとって脱衣場とは戦場であり、洋服とは鎧であり剣である。しかし、武器などこの神聖な決闘には必要ない! 相手を倒すなんて、鍛え上げた肉体さえあれば十分よ!

 

「「いざ、尋常に勝負!」」

 

 全裸とは己の全ての力を解放した究極の戦闘モードなのだから!

 

 

「めぐみん、戦いからは何も生まれないんだね」

「まさか、2人とも同じ大きさだなんて。世界とは残酷です」

 紅魔の里を出てからしばらく、二人とも変わっていなかった。私たちは巨乳になれなかったんだ。どっちのおっぱいが大きいか勝負だなんて、初めから無理だったんだ。

 

「ルミカ、めぐみん! こっちこっち」

 落ち込んだ私たちが体を洗おうとしていると、先に体を洗い終えていたらしいアクアがやって来た。

 

「2人とも何してたの? 私が髪の毛とか体とか洗ってあげるからこっちに来なさい。体を洗いっこするなんて、お姉ちゃんっぽいでしょ」

「「……………………」」

 嬉しそうに近づいて来るアクア。私とめぐみんは、言葉も出なかった。おっぱいが近づいて来た! 何そのバカみたいなスタイル! バカだからなの? もしかして、おっぱい大きい人ってみんなバカなんじゃないの!

 

「どうしたの? 何で二人とも泣きそうな顔してるの? お姉ちゃんが慰めてあげましょうか」

 こんなスタイルの人に体を洗ってもらってる少女がいたら。周りはどう思う? 間違いなく妹っぽく見られちゃう。私たちにはアダルティな魅力なんかないんだ。涙で前が見えないよ。

 

 問題はそれだけじゃない。アクアに髪や体を洗ってもらったら、間違えなく彼女の胸が背中とかに当たる。男の人なら天国かもしれないけど、私たちには地獄だ。そんなことをされたら、厳しい現実に心が折れてしまう。

 

「めぐみん、私に合わせて」

「ルーちゃん、まさか!」

「そのまさかだよ!」

 めぐみんに声を掛けた私は、アクアに向かって走り出す。心が殺されるのを阻止したいなら、やられる前にやるしかない!

 

「ちょっとルミカ! お風呂で走るのは危ないわよ」

 私を心配してくれるアクア。他人の心配をする暇があるなら、自分の心配をするべきだよ!

 

「めぐみん! 加速して!」

「了解です! 見せてあげますよ、紅魔族に伝わる禁断のテクニックを!」

 

 私たちは床の水溜りを利用し加速する。これこそが紅魔族に伝わる風呂場用体術、ツルリンパ!

 

「すいませんアクア! あなたに恨みはありませんが、僻みと妬みはあるんです!」

 アクアの右から襲撃するめぐみん。

「くたばれアクア! 乙女の怒りを思い知れ!」

 

 私は左から襲い掛かる。今日私たちは巨乳に勝つんだ! 巨乳に勝って、この理不尽な世界に反逆してみせる! 世界中の貧乳のみんな、私たちに力を貸して!

 

「「ダブルインパクト!」」

 ダブルインパクトとは紅姉妹の嫉妬と悲しみをこめた同時攻撃! 相手は泣く!

 

 むにゅんっ!

 

「2人とも私に抱きついて来るなんて。お姉ちゃんは嬉しいわ」

 やっぱり巨乳には勝てなかったよ。私たちの攻撃はジャイアントトードもびっくりの脂肪のかたまりに受け止められてしまった。アクアの胸で、私たちは泣いた。

 

「ふにゅう。気持ちいいね。めぐみん」

「ルーちゃん、肩までつからないとだめですよ」

「やったわ! 私は背中を流すと言うお風呂イベントをクリアしたのよ。これで明日から二人は、私をお姉ちゃんと呼んで尊敬してくれるはず」

 

 私たち3人は、湯船でまったりしていた。お湯につかっていると、巨乳とか貧乳とかがどうでもよく思える。だけど神様、覚えておけよ。もしもあなたに会う機会があったなら、私はこの世の理不尽に激怒して殴り掛かることだろう。

 

「ルーミーカ」

 私の横に座っていたアクアが肩をつんつんしてくる。

「どうしたの? 湯船に死体でも浮かんでたの?」

 私がアクアの方を向くと。

「えいっ!」

 顔にお湯をかけられた。

 

「うわあああ! 目が! 目がぁぁぁぁ!」

「え? え? 大丈夫ルミカ! ごめんね、私そんな痛いことするつもりなんてなかったのよ! 本当よ、だからお姉ちゃんを嫌いにならないで!」

 アクア、なんて恐ろしい女なの。もう少しで鼻にまで水が入るところだったじゃん。私のような神に選ばれし反応速度がなければ、危うく死ぬところだった。彼女は組織からの追っ手なのかもしれない。

 

 目が痛い、でも私は強い子だから泣かないぞ。

 

「ふふっ、あんな子供騙しにひっかかるなんて。しかも涙まで流して、ルーちゃんはおバカですね」

「違うもん、バカじゃないもん。美少女だもん」

 

 友達が苦しんでいるのに笑うなんて。私はめぐみんを睨みつける。

 

「あれ?」

 めぐみんの横顔を見た瞬間、私の心臓が高鳴った。顔に熱を感じる、胸が苦しい。

 

「どうしたのルミカ。顔が真っ赤になってるわよ」

「べべべ、別に! 真っ赤になんかなってないよ!」

 アクアの言葉が正しいなら、私の顔は真っ赤になっているらしい。落ち着け、落ち着くのよルミカ。真の美少女とは、どんな状況でも慌てない!

 

 そう、これは何かの間違いなの。私がめぐみんに恋しちゃったなんて、間違いに決まってるじゃない。

 

「本当に顔が赤いですね。大丈夫ですか?」

 そう言って、めぐみんが顔を近づけて……。

 

「平気だよ! 私は全然平気だよ! いつもにこにこ元気爆裂、最終兵器ルミカちゃんだよ!」

 私は必死に元気をアピールした。まずいまずいまずい。めぐみんに今近寄られたら、取り返しがつかないことになっちゃう。新世界の扉を開いちゃうかもしれない!

 

「本当に大丈夫ですか? いつもよりもバカっぽいですよ?」

 そう言って、めぐみんが私の顔を覗き込んできた!

 

 人形みたいに整っためぐみんの顔が私の目と鼻の先に! しかも、濡れた前髪が張りついてて。なんかもう言葉にできないよ!

 

「うーん、熱はなさそうです」

 あわわわ。めぐみんがおでこを私にくっつけて! これやばい、下手に動けない。なんか、キスできそうな距離だし。少しでも動いたら……私のファーストキスが!

 

「私も初めてなんですよ、誰かにキスするなんて。でも、ルーちゃんが相手なら。初めての相手が、女の子でもいいかなって」

 さっきのめぐみんの言葉が頭から離れない。頭がクラクラする。

 

「だめだよめぐみん! 世界には良い子も悪い子も、絶対マネしちゃだめなことがあるんだから!」

 ……急いでめぐみんから距離を……。

 

「だめですルーちゃん! 動かないで下さい!」

「ひゃい!」

 めぐみんが私の肩をつかんで、これじゃ逃げられないよ。

 

 どうしようどうしよう。このままだと、めぐみんにすごいキスされちゃう。だめなのに、だめなことなのに。何故かドキドキが止まらない。

 

「めぐみん、まずはお友達からはじめよう」

 よし、覚悟はできた。今までの関係は一回リセットして、友達からやりなおそう。大丈夫よルミカ、あなたならきっとできるわ。動物しか友達のいなかったゆんゆんとだって、仲良くなれたじゃない。

 

 私はめぐみんがどんな子になっても、絶対受け入れてみせる! でも、がんばってめぐみんを百合サイドから助け出す努力は続けよう。

 

「私はルーちゃんが、何を言っているのか理解できません。私たちは昔から友達じゃないですか。それとも、友達だと思ってたのは私だけ……だったの?」

 

 泣きそうな顔をするめぐみん。そうか、私は大きな勘違いをしていたんだね。

 

「ごめん、めぐみん。私かなりひどいこと言っちゃった」

 友達の思いに気がつかないなんて、本当に私はだめな子だ。

「ぐずっ……いいんです。私はルーちゃんを信じてましたから」

 ありがとう。こんな私を信じてくれて。だからこそ、私もその思いには答えないといけないよね。

 

「結婚しよう、めぐみん」

 私は決め顔でそう言った。

 

「え? え? ごめんなさいルーちゃん、意味が分かりません」

 ぽかんとした顔をするめぐみん。

 

「分かってる、もう無理しないでいいんだよ。めぐみんは、ずっと悩んでて。それでも勇気を出して、私に思いを伝えようとしてくれていたのに。今まで気がつけなくてごめん」

「だから何の話ですか! やばいです! ルーちゃんが、いつもの3倍はやばいです!」

 めぐみんったら、乙女なんだから。私のかっこよさにときめいてしまったようだ。結婚式でタキシードを着るのは、どうやらルミカ様になりそうです。

 

 めぐみんの思いは本物で、彼女は友達からなんて関係じゃ我慢できなかったのだ。こんなに一人の人物から思われるなんて、女冥利に尽きるじゃないの。ここまでされて、気がつかないふりをするなんて。私にはできない!

 

「でも、やっぱり私もドレス着たいかも。ドレスでお姫様だっこされるのは、昔から夢だったから。……はっ! そうだよ、2人ともドレス着ればいいじゃん! それでめぐみんにだっこしてもらえば」

「今のルーちゃんの頭の中は、どうなっているんですか! ていうか、ルーちゃんにそんな女の子らしい夢があったなんて! 小さいころは目から殺人光線出すとか言ってたあの娘が! 驚きです」

 

 お母さんが言っていた。良い女って言うのは、全てを包み込む包容力がある人なのだと。包容力イコールおっぱいの大きさだと思ってたけど、今なら違うって分かる。

 

「つまり、アクアは別にいい女なんかじゃなかったの! ただおっぱいがでかいだけのバカなお姉さんだったんだよ!」

 ふう。どうやら私はまた一つ、世界の心理を解き明かしてしまったようね。美少女に生まれられただけでも幸運なのに、その上頭も天才的だなんて。自分の運命が怖い。きっと前世は女魔王とかだったんじゃないかな。

 

「あれ? 何で私いきなり妹に罵倒されてるの? さっきからめぐみんとルミカが、二人の世界に入っちゃって。私様的には非常に寂しかったのだけど、会話に入れてもらったら突然の罵詈雑言とか!」

 アクアお姉ちゃんは、私の名推理に納得できないらしい。認めたくないものですね、自分の姉があほの子だなんて。でも、私はそんなバカ可愛いアクアも大好きだよ。

 

「この世界、女神様に厳しすぎると思うの。分かったわ、これは何者かの陰謀! 女神であるこの私に、次から次へと災難を与えるなんて。こんなことをするのは、あのくそニート? いえ、人間にはそんな力なんてないはず。まさか、これは因果律の操作による運命の改竄?」

 

 アクアはそれっぽいことを言って、現実逃避しようとしている。因果律とか運命の改竄なんて、さすがは我が姉。私も危うくかっこいい言葉に惑わされるところだった。

 

「おのれエリスゥゥゥゥゥゥ!!」

 絶叫するアクア。まずい、早く彼女を止めないと。お風呂でバイトしてる、エルメンヒルデさんに怒られちゃう。あの人が切れたら、アクセルの街が地図からなくなる可能性が!

 

「やめてアクア! 神様のせいにしないで! 大丈夫、おバカなアクアでもできる仕事があるの!」

「いや、そもそも全部ルーちゃんのせいですから!」

 そうなんだ、全部私が悪いのか。つまり、めぐみんはこう言いたいんだ。全ての事象は私を中心に発生していて、ルシフェリオン・ミッドナイト・カタストロフィとは世界の特異点なのだと。めぐみんにとって、私は全ての中心であり神のような存在であると。

 

「めぐみん、聞いたこともないようなかっこいいプロポーズありがとう!」

「駄目だこの娘……早くなんとかしないと……。アクア! ルーちゃんの頭にヒールを掛けて下さい!」

 

「何言ってるのめぐみん? アクアには結婚式で、誓いの儀式をやってもらうんだから。ヒールなんていらないよ?」

「ルミカってば、さっきからいろいろと大丈夫? 『ヒール』! 『ヒール』!」

 二人ともさっきから様子がおかしい。さては、突然の結婚発言にはしゃいじゃってる?

 

 よし、これで覚悟は決まった。もう後戻りはできない。これから私たちは、世間から変な目で見られるかもしれない。泣いちゃうようなことが、いっぱいあるかもしれない。でも、負けるつもりなんてない。私がめぐみんを守るんだ。

 

 そう決意した時、私は目の前が真っ暗になった。

 

「ーーーーーーーー」

 あれ? めぐみんとアクアが何か言ってるけど、聞こえない。どうしたんだろう、かなり焦ってたみたいだけど。なんか意識が……遠のいて……。

 

 

 

「ルーちゃん、もう平気ですか?」

 

 

 アクアに膝枕される私を、めぐみんが心配そうに見つめてくる。どうやら私は、お風呂でのぼせて気絶してしまったらしい。気がつけば、アクアに膝枕されていた。良かった、私の胸の高鳴りは恋じゃなかった。頭がクラクラしたのも、のぼせていただけだったんだ。めぐみんが動くなって言ったのも、のぼせて突然動くのは危ないからだったのです。

 

「大丈夫だよ、心配しないで。めぐみんがちゃんと2人に見えるよ」

 安心したので、私はそれっぽい嘘を言ってみた。

「大変ですアクア! ルーちゃんの脳みそが壊れちゃいました!」

「大丈夫よめぐみん、私の回復魔法があれば、どんな怪我でもちょちょいのちょいよ!」

 

「冗談ですごめんなさい!」

 私は即座に2人に土下座した。勢いよく土下座したら、また気絶しかけてものすごく怒られた。

 

「本当に一人で着替えられますか? ルーちゃんは昔からドジっ娘なので、ものすごく心配です」

「お姉ちゃんたちが、手伝ってあげようか? 女の子同士なんだから、恥ずかしがらなくてもいいじゃない」

 心配してくれるのはとても嬉しいんだけど、この自称お姉ちゃんたちは私を妹扱いするのを本気でやめてほしい。

 

「大丈夫だよ、いくら私がドジっ娘だとしても。服くらい着られるに決まってるでしょ」

 私はきちんと服を着ることはできたんだけど……フラついてうまく歩くことはできなかったので、またアクアに背負ってもらう羽目になっちゃった。このままだと、本当に妹ポジションから抜け出せなくなっちゃう。私より年下のパーティメンバーがほしい。そしてお姉様って尊敬されたい。

 

「じゃあ、いろいろあったけど。クエスト達成お疲れ様! 俺たちのこれからに乾杯!」

 カズマの乾杯の音頭は面白みがなかった。私なら乾杯する前に、口から火を吹く一発芸くらい用意しておくのに。今度みんなに見せてあげようっと。

 

「「「お疲れ様でした!!!」」」

 お風呂からギルドに帰って来た私たちは、カズマからクエストの報酬を受け取り、カエルのからあげパーティに突入していた。やっぱりからあげはおいしいな。

 

 おーほっほっほっほっほ、女の子を飲み込む恐ろしいエロガエルが、今では私たちに捕食されるのを待つだけの哀れな存在に。笑いが止まらないですわ。

 

 クエスト達成の報酬は、三日間でカエルを5匹討伐で10万エリス。倒したカエルの肉はギルドが1匹5000エリスで買取ってくれるので、プラス1万エリス。合計11万エリスをカズマとアクアが仲良く二人で半分にした。

 

  私たち紅姉妹の報酬も11万エリス。私が倒したカエルが4匹、めぐみんが倒したカエルが1匹。爆殺した2匹と毒殺した1匹は食用にできないので、買い取ってもらえなかった。もう毒なんか使うもんか。

 

 偶然とはいえ、3日以内に合計5匹のジャイアントトードを討伐したので、ギルドがクエスト達成の手続きをしてくれたのだ。良かった、11万エリスを4人で山分けだとお財布が寂しいからね。これで新しい爆発するポーションが買える。

 

 報酬はめぐみんと半分ずつにした。めぐみんはカエルを四匹倒した私に、報酬の8割を渡そうとしたけど断っておいた。

 

「私とめぐみんって、姉妹みたいなもんでしょ。喜びも悲しみも2人で分かち合ってきたじゃない? 2人で達成した初めてのクエストの感動も、一緒に分かち合おうよ。だから報酬もはんぶんこにしよう。いつもお世話になってるお姉ちゃんに、妹からのプレゼントです」

 

 私の言葉を聴いためぐみんは感動の涙を流し、カズマも美しき姉妹愛に感激していた。アクアは自分が姉妹に混ざれなかったので、少しいじけてしまった。

 

 私は言えなかった。ただなんとなく、昔読んだ本のかっこいいセリフが言ってみたかっただけだったなんて。……この秘密は墓場まで持っていこう。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「見損なったよ2人とも!」

 私、ルミカは激怒している。

「ふざけないで下さい! アクアもルーちゃんも、頭おかしいんじゃないですか?」

 激高するめぐみん。

「聞きなさい妹たち、女神の顔も三度まで! これ以上バカなこと言うなら、ゴッドブローが火を噴くわよ!」

 完全に戦闘モードのアクア。

「どうだっていいじゃん」

 黙々とから揚げを食べるカズマ。どうやら、この男には信念がないらしい。

 

「から揚げには、レモンに決まってるじゃん! だいたい、揚げ物にレモンは常識でしょ。脂っこさをレモンの酸味がさっぱりさせてくれるんだよ? こんなの赤ちゃんでも分かることでしょ? どうしてめぐみんとアクアはそれが分からないの!」

 どうして争いが起きるのか、それはから揚げがおいしいからさ。私がから揚げにレモンをかけようとしたら、バカな姉二人がいちゃもんをつけてきたのだ。レモン派代表として、負けられない戦いである。

 

「バカなのはルーちゃんです! から揚げに必要なのは塩、これ以外はいりません。レモンなんか使わなくても、塩だけあれば十分素材そのものの良さを出せるんですから! 塩分と言うのは体に必要な栄養素なんですよ? こんなの生まれる前から生物の生存本能に刻み込まれてるじゃないですか!」

 めぐみんは昔から塩を重要視していた。食料がない時は雑草に塩かけて食べてたし……貧乏生活が彼女に塩のありがたさを神聖視させてしまったのかもしれない。

 

「2人ともバカね、素材の味? 笑わせないでよ! から揚げにはそもそも味がついてるんだから、さっぱりしたいなら野菜と一緒に食べればいいの! シンプルこそ最強、これ世界の心理ですから!」

 何もかけないのがアクシズ教だとか意味不明な供述をするアクア。

 

「なあ、そんなのどうでもいいから。スキルの習得ってどうやるんだ? 教えてくれよ」

 空気の読めないカズマがおかしなことを聞いてきた。

 

「「「黙ってろこの突っ込みやろう!」」」

 私たちの右ストレートがカズマに炸裂した。

 

 

「めぐみん、アクア。この決着はいつか必ず」

 カズマのせいでやる気がなくなった私です。それに、まだ少し頭がふわふわしちゃってる。

 

「カズマみたいな冒険者は、誰かにスキルを習うんです。まずは目で見て、そしてスキルの使用方法を教えてもらうのです。すると、冒険者カードに習得可能スキルって欄が現れるので、スキルポイントを使ってそれを選択して下さい」

「冒険者以外の職業なら、現在習得可能なスキル一覧ってやつから選べばいいんだよ~」

 めぐみんの説明に、私は少し補足した。

 

「あはははは! 無理よ、コミュニケーション能力も最弱なカズマさんが人に教えてもらうなんて!」

 大爆笑するアクア。だけどいいのかな? カズマならそのうち、回復魔法を覚えたらアクアをポイ捨てしそうなんだけど。

 

「……つまりめぐみんやルミカに教えてもらえば、俺でも爆裂魔法が使えるようになるのか?」

「その通りです! 素晴らしい点に気がつきましたねカズマ!」

 めぐみんのテンションが最高潮になる。

 

「そうか! ならルミカ、教えてくれ!」

「いーやーだ!」

「断られた! めぐみんに頼むと絶対調子に乗るからルミカに教えてほしかったのに」

 おいおい、カズマ。

 

「あのさ、カズマ。私がカズマに爆裂魔法を見せたら、死ぬよ?」

「ごめん。お前が魔力足りないの忘れてた」

「私が生き残れても、カズマも死んじゃうよ? めぐみんのあの目を見て」

 私に言われて、硬直するカズマ。

 

「ふふっ、カズマ。カズマはルーちゃんを殺したいんですか? 私の可愛い友人を死に掛けにしたいんですか? そうですか、カズマは爆裂魔法を覚えたいんですね。ではまず1発受けて見ます? 物事をしっかり覚えるためには、体で実感するのが一番です。うふふふふふふ。私がその身と魂に刻み込んであげますよ、爆裂魔法の恐ろしさを」

 オサナナジミコワイ! 何これ、めぐみんが怖い! 友情が重いよ! 病んでる? もしかしたら、この娘病んじゃってる!

 

「ルミカ。今のめぐみんみたいな子を、業界用語でヤンデレと言うの。覚えておいて、あれは特大の死亡フラグだから」

 アクアがヤンデレなるものについて説明してくれた。ていうか、何なのその業界! 魔王軍よりおっかないよ。

 

「さあさあさあ! 命がおしいなら、爆裂魔法を覚えると誓うのです! 冒険者はアークウィザード以外で爆裂魔法を覚えられる唯一の職業。ルーちゃんを殺しかけた罪、爆裂道を究める中で償って行きましょう? レッツ爆裂!」

 さっきのは多分冗談だね。私のことを利用して、その場の雰囲気でカズマを爆裂道に巻き込もうとしてる。そうに違いない。そうでないと、めぐみんがヤンデレで私が危ない。

 

「落ち着けシスコン! つーか、どれだけスキルポイントがあれば習得できるんだ? 今3ポイントしかないんだけど」

 カズマがアクアに質問する。

「冒険者が爆裂魔法を習得しようと思うなら、その100倍はほしいかしら。多分ものすごいポイントを貯めれば、習得できるんじゃない? 撃てるかどうかは別だけど」

 

「無理だろそんなもん! 俺は今スキルがほしいんだよ!」

「うわーん! 私の理解者はやっぱりルーちゃんだけです!」

「よしよし。めぐみんは私と爆裂しようね」

 

 ショックを受けためぐみんは、私に抱きついてきた。さっきのヤンデレが怖かったから避けようかと思ったけど、予想以上にしょんぼりしていたので大人しく抱き締められてあげることにする。

 

「なあアクア。お前なら使えるスキル持ってるんじゃないか? 少ないポイントで済んで、どんな状況でも使える感じの必殺スキルを!」

 アクアのスキルか。ゴッドブローかな? あれならカズマの攻撃力が上がるはず。

「しょうがないわねーカズマさんは。私の秘密スキルは半端ないわよ? 地球破壊爆弾くらいやばいわよ?」

「お前は猫型のアイツを知ってるのか! アクアの知識ってどうなってるんだ」

 

「めぐみん。地球って何だろう? カズマって時々変なこと言うよね」

「もしかしたら、カズマもアクアみたいな少し可哀想な子なのかもしれません。大人な私たちが見守ってあげないと」

 私たちは年上二人を優しい目で見守ることにした。

「テテテテーン! ただのコップ! このコップに注目してね。この水の入ったコップを自分の頭の上に落ちないように乗せるの」

 そう言ってアクアは何かの種を取り出した。

 

「まさか、あの技は! 花鳥風月!」

「知っているんですかルーちゃん?」

「あれは確かに必殺技だよ。あれさえ使えたなら、私の旅ももっと楽ができたのに! あの宴会芸さえできれば、アクセルまでの旅費を稼げたはず」

 旅の途中でお金がなくなって、本当に大変だったな。アルバイトもしたし、路上パフォーマンスもしたし。アクシズ教ともいろいろあったし。

 

「すごいけどいらんわそんな宴会芸!」

「めぐみん! ルミカ! うわーん!」

 落ち込んだアクアが私たちを抱き締めてくる。

 

「アクア。私とルーちゃんには分かります。宴会でしか役に立たないのに、戦闘向けのスキルを覚えれば楽ができるのに。貴重なスキルポイントを宴会芸に割り振るなんて、愛がないとできないことです!」

「大丈夫だよアクア。めぐみんの言う通り。非効率ながらもロマンを追い求めるその姿に、私たちは感動した!!」

 あの技の完成度。きっとスキルを覚えてからも、しっかり練習をしたに違いない。アクアの宴会に向き合う真剣さが伝わった。

 

「あっはっは! 面白いねキミ! ねえ、スキルが欲しいんだろ? 盗賊スキルなんてどう?」

 私たちがカズマのことを忘れて語り合っていたら、誰かが話しかけてきた。

 

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