マジックを超能力でやっていた、隕石返しのマジック三井
ソードマスターヤマト
伝説の
終末
ソードマスターヤマト
の三本からキャラが出演します
異世界・セフィーロにて、有り体に言ってしまえば一番偉い魔法使い『クレフ』は、滅びゆく世界の中で肉を焼いていた。
(うむ、いい感じに焼けてきたな)
この世界には『セフィーロに危機が迫った時、異世界から
そろそろエメロード姫が
空のような遠い場所ではなく、彼の頭上結構至近距離な場所に、突如男三人が現れた。
「!? うおっ!?」
落下する男。
ひっくり返る焼き肉。
飛び散るソース。
しかも何故か、肉もソースも戦士風の格好をした青年の服にだけ命中していた。
肉汁が服に染み込み、真っ白な服に嫌な色合いが付いてしまっている。
「……」
「お、おおぅ……お前達、もしやエメロード姫が異世界から召喚した
「オレの肉しみは……消えないんだ!」
「洗え! 落ちるから!」
悲しき肉しみが服に広がっていた。
「こほん。あー、まずは自己紹介しよう。私は
「オレはポテトだ! ……違う、オレはヤマトだ!」
「どうやったら自分の名前をそう間違えられる!?」
男の一人は、クレフと同じく中世系ファンタジー風の服を来た勇者的な男。
「私の名前は直志」
「……お前は何故浮いているんだ」
「全てを許しましょう。とるにたらないことです」
「……」
男の一人は、座禅を組み宙に浮く既に悟りを開いた後の少年。
「わ、私はマジック三井と言います。あの、ここは」
「よかった、お前は普通のおっさんだな……
……いや、よくない!
男の一人は、一見普通の冴えないおっさん。
「……これで大丈夫なのか……いや信じるしかないのか……? と、とにかく、よく聞け」
クレフは戸惑いながらも、この世界の現状と異世界から男三人が召喚された理由、すなわちこの世界に迫る危機の正体と内容を語って聞かせた。
1、この世界は心の強さが全てを決定するセフィーロという異世界。
2、『柱』という役職のエメロード姫の祈りによってこの世界は成り立っている。
3、ザガートとかいう奴が姫をさらった。世界のための祈りもなくなった。
4、ザガートを倒して姫を取り戻してなんやかんやしないと世界が滅ぶ。
5、なので、エメロード姫は異世界から
6、お前達がその伝説の
要するに、ソードマスターヤマト、悟りの直志、マジック三井の三人は、エメロード姫によってこの世界を救うため召喚された
「とまあ、こんな感じだ」
ソードマスターヤマトは自分の世界でベルゼバブという巨悪と戦っていた。
当然、こういう話を聞いてしまえば話の中でも駆け出してしまうのは当然で。
「ザガート……パンツだけは許さない! 違った。アイツだけは許さない!」
「どうやったらそう言い間違えられるんだ!」
まだ話の途中だというのに、走り出すソードマスターヤマト。
心がそのまま力になるこの世界がマジカルな作用を生み、ヤマトは空を走っていく。
慌てて追うクレフ。「あの二人よく喋るなあ」と思いつつ流されるままなマジック三井を乗せ、座禅を組んだまま飛翔する直志がその後を追う。
「待て待て待て、
「必要ない。俺の華麗な脇を見せてやる! ……俺の華麗な技を見せてやる!」
「お前はまともに喋れんのか!?」
ヤマトが空で剣を振ると、ボウリングでストライクを出した時にピンが鳴らすような音が鳴り、ザガートの居城を隠す鏡の結界が粉砕された。
「あれはザガートの居城……!」
「
「あれは私の弟子、アルシオーネ! ザガートに与していたとは!」
そこで城から飛び出してくる人影が一つ。
それはクレフの弟子の一人であり、ザガートに報われぬ恋心を抱き、氷属性の魔法を極めた
その身に纏われる強者のオーラ。これは強敵だ!
「チクショオオオオ! くらえアルシオーネ! 既存必殺音速火炎斬!」
「さあ来いヤマトオオ! 私は一回刺されただけで死ぬぞオオ!」
グサー、と刺さるヤマトの剣。
「グアアアア!
最高位の
こんな小僧に……バ……バカなアアアアアア!」
出会い頭に瞬殺だった。
「グアアアア!」
城の中で、アルシオーネの敗北を察知した者達がクックックと笑い始める。
「アルシオーネがやられたようやな……」
「フフフ……奴はザガート配下の四人の中でも最弱……」
「
それぞれがアルシオーネ以上の力を持つザガートの部下だ。
その身に纏われる強者のオーラ。これは強敵だ!
「くらええええ!」
「「「グアアアアアアア!!」」」
そして三人まとめて突如現れたヤマトに串刺しにされた。
「やった……ザガート以外全員倒したぞ……これでザガートの居る城の扉が開かれる!」
「扉ってなんだよ(哲学)」
クレフはやさぐれた目でヤマトの後に続きつつ、ヤマトが串刺しにした者達に回復魔法をかけていく。
いまだ死者ゼロで快進撃を続けるヤマトの前に、とうとうラスボス・ザガートが姿を現した。
「よく来たな
「こ……ここがザガートの城だったのか……! 感じる……ザガートの魔力を……」
「そうだよ! 最初から私はそう言ってただろ!」
キレるクレフ。
「
お前は私を倒すのに
『エスクードの成長する武器』
『
「な、何だって!?」
「そう……(無関心)」
目が死ぬクレフ。彼は700歳を超える年齢とショタの姿を併せ持つ大魔道士だが、今日一日で300年くらいは老けこんだ気がしていた。
なんというか。別世界の法則性が持ち込まれたというか。やるせなさが爆発している。
「そしてエメロード姫は特に悪くない。後は、私を倒すだけだな、クックック……」
「フ……上等だ……オレも一つ言っておくことがある。
オレはここに来る直前までベルゼバブと戦っていた気がするが別にそんなことはなかったぜ!」
「そうか」
剣を構えるヤマト。
巨大ロボを召喚するザガート。
騎士と騎士が向かい合う。
「さあ来いヤマト!」
「ウオオオいくぞオオオ!」
ヤマトの勇気が世界を救うと信じて……! ご愛読ありがとうございました!
かくして、ザガートはボコボコにされた。
「ああ、うん、そうだ。ザガートが言っていたことは嘘じゃない。
この世界の危機はエメロード姫とザガートが愛しあったことにある。
さらわれたって問題はないんだ。実は。
この世界は結構融通が利かなくてな、『柱』は世界だけを愛していないといけない。
それ以外のものを世界より愛してしまうと、世界のための祈りが意味をなさなくなるのだ。
召喚の術式はそのためにある。
つまり世界以上に何かを愛した『柱』を殺すために、
お前達はエメロード姫が自分を殺させるために、エメロード姫が召喚したというわけだな。
だから本当はエメロード姫もザガートも諸悪の根源ではないのだよ。
エメロード姫は世界のため、自分を殺す者を召喚した。
ザガートは姫を殺させないため、姫をさらってその命を守っていたのだ。
……だからほら、その辺で止まってくれ、ヤマト。それ以上はザガートがひき肉になる」
クレフの静かながらも必死な制止に止められて、ヤマトはマウントポジションで振り上げた拳を下ろす。
「なんともならんのだ……」
ぼそり、と呟くザガート。その声は、途方も無く悲痛な叫びがあった。
「
「あ、ではやってみましょうか」
「え?」
そこで今日ずっと沈黙を保っていたマジック三井が、座禅を組んだまま宙に浮いている直志の上から恐る恐る降りてくる。
「やるとは、何を……」
「ムウ~~~えいえーい!」
「何だその声!?」
トイレが詰まった時にラバーカップを使った時のような音がして、なにやら世界の歯車がズレたような実感が、皆の脳裏に走った。
「あ、できました」
「はぁっ!?」
そしてテカーっと直志が光輝き始める。
後光を背負う彼は、まさしく仏と呼ぶに相応しい。
「ほう……どうやら私が新しい『柱』になったようですね」
「えっ」
「えっ」
「分かりました。これも巡り合わせ。これからは私がこの世界のために祈りましょう」
すーっと滑るようにどこかへと飛び去っていく座禅の直志。
クレフとザガートは、それを呆然と見送っていた。
「ザガート!」
「姫!」
「なんやかんやで助かったわ!」
「なんやかんやでどうにかなりましたね!」
「これからは、自由に……!」
「ええ、愛し合いましょう」
ザガートに、彼女ができました……
「まそっぷ」
「え? ……ああ、『元の世界に帰ろうか』とかそういうニュアンスの言葉ですか」
この世界を救ったことで、
突然脈絡もなく意味の分からないことを言い出したヤマトに対し、読心の超能力でその言葉の意味を読み取るマジック三井。二人合わせてマジック&ナイトな二人は、元の世界に帰っていった。
「なんだこれ……
クレフは突然やって来て、あっという間に予想外な方法で何もかもを解決していった
青い空。
白い雲。
今日も世界は平和だった。
そしてたぶん、これからも平和だった。
解脱済みでたぶん半永久的に大丈夫