真也「失踪の危機かー」
こいし「えっ、ほんとに?」
んなわけないよ。単純に構想が思いつかなかっただけだよ。
今回は、日常編です。
真也「しんみりとしてるね後半ー」
こいし「ねー」
そだね、それでは
「「「スタート」」」
真也の部屋、彼とこいしはそこで本を読んでいた。朝からさとりが仕事している部屋にある本棚から、適当に本を選んでは読んで、他の本を探すのを繰り返していた。
特に何かの本が読みたくて始めたわけではないが、2人がたまにはゆっくりと本を読むのも良いだろうと、そう話し合って決めた。
真也「ふー。この小説なかなか面白かったよー」
こいし「私の読んでたやつも展開は好きかな」
お互い読み終えてはこんな風に軽く感想を伝え合い、読んでいたものを交換したりしながら、日付の変わる今まで読み続けていた。
お互い感想を伝えるときしか話すことがほとんどないが、それでも静かな空間を不快に思うことなど無かった。むしろ、楽しんでいた。
寝転がりながら。
お互いに背を向けてもたれ掛かりながら。
時には同じ本を2人でゆっくり読みながら。
ただ、静かにこの空気を楽しんでいた。
2人はベッドの上で本を読んでいるが、その近くにいくつかの本が積まれたテーブルがある。さとりの仕事場を往復しているうちに「何度もこないで一気にいくつか持って行きなさい」と言われたのだ。半分ほどはもうすでに読んでおり、もう片方はまだ手を着けていなかった。
持ってきた本の種類は、統一性は無く、タイトルで気になったもの、あらすじを読んで面白そうだと思ったもの、単純に目に入ったものなどがある。
2人はそれぞれの本を読み終え、感想を伝え合った後、テーブルに置いた本からどれを読もうか探していた。
真也「どれを読もうかなー……お」
こいし「んー、どれにしようかな……あ」
手にとってあらすじを読んだり、タイトルを見ながら次の本を探していた2人の目に1つの本のタイトルが目に入った。
『いろんな花言葉を知る』
この本が目に入った2人は、軽く見合い笑みを浮かべると、その本を手に取り1ページ目を開いた。
真也「いろんな花言葉があるんだねー」
こいし「そうだね。普段気にもしない花にもあるとはね、思いもしなかったよー」
最初の花から1つ1つ読んで感嘆の声をあげたりしながら読んでいた2人。
本のページも半分を過ぎたあたり、2人は自分達にとってとても思い出のある花の花言葉を見つけた。
それは『薔薇』。互いに送ったペンダントを見やり、その時のことを思い出し少し赤面しながらも、どんな花言葉かと思いを馳せながらそのページを読み始めた。
まず、1色目、赤系統の薔薇。
主な意味は情熱や愛に関したものが多い。代表的なものは【愛情】や【情熱】といったところか。
さらに、赤の中の色別にも花言葉があるらしい。緋色や真紅、紅色に濃紅色、黒赤色、帯紅。ほとんどは愛に関しているものばかりだ。
また、赤い薔薇の蕾にも意味があり、純粋な愛というのが主だろう。
真也「予想していたとおりだけど愛に関してるもの多いねー」
こいし「どれも私からしたら恥ずかしいくらいの花言葉だなぁ」
自分の弾幕にも赤い薔薇あるじゃんと思った真也だったが、それは言わずに飲み込んだ。
ページをめくり2色目はピンクだ。
主な意味は優しさや上品なものが多い。代表的なものは【美しい少女】や【温かい心】といったところか。
さらに細かく見ていくと、桜色、プリティーピンク、ブライダルピンク、ダークピンクになる。主な花言葉とは少し変わって、【誇り】や【かわいい人】などの花言葉になったりする。
また、ピンクの大輪には【赤ちゃんが出来ました】という意味がある。
真也「……」
こいし「……」
最後の大輪の意味を見て、お互いなんとなくで妄想してしまい顔が真っ赤になり、恥ずかしくて何も言えなかった。もちろん、嬉しそうでもあるのだが。
3色目は黄色。
主な意味はどちらかと言えば友情的な面のものが多い。代表的なものは【友情】や【可憐】といったところだろうか。
さらに細かく見ると、ゴールドに近い黄色とイエロードットがある。前者は【何をしても可愛らしい】【希望】、後者は【君を忘れない】と、なかなか重ための花言葉だ。
真也「黄色って元気ってイメージあるけどー、なんだか同じような気がするよー」
こいし「そうだね。黄色にはそういうイメージがあるのかもね」
またページをめくって4色目、オレンジだ。
主な意味は信頼や絆といったところか。友人に送るのに向いていると言える。【健やか】や【絆】、【魅力】などが一例だ。
また細かく見ると、薄オレンジ色に【無邪気】【爽やか】という花言葉がある。
真也「無邪気かー」
こいし「な、なんで私を見るの?」
無邪気という言葉に反応した真也に、なんとなくニヤニヤとした目つきで見られたこいし。疑問があったみたいだが、笑みを浮かべたまま何も言わない真也に何を言っても無駄だと察し、次の色を読み始める。
5色目、白色。主な意味は尊敬だろう。代表的な花言葉は【心からの尊敬】、【純潔】だろうか。
白の薔薇は色別というより、部位や咲き方に花言葉がある。蕾や小輪、一重咲きである。ちなみに、蕾と小輪には愛または恋をするには若すぎるという意味がある。一重咲きには素朴という意味だ。
真也「白い見た目と合ってるねー」
こいし「白は純粋な感じがするしね」
白の服を着たこいしを想像した真也が、顔を赤くしていたのを不思議そうに彼女が見ていたが、気付いていなかった。
ぱらりとページをめくって6色目、青だ。2人が見たかったうちの1つでもある。
主な意味は奇跡や不可能に関係したものが多い。その花言葉は【奇跡】に【不可能】と分かりやすい。
真也「青の薔薇ってねー?昔は作れなかったらしいんだけどー、最近になって向こうの技術が発展して作れるようになったらしいんだー」
こいし「ふーん、そうなんだー。この色は花言葉通りの奇跡の色なんだね」
真也「そうだねー。こいしにお似合いだよー」
そう言って少し肩を寄せ、にっこりと笑みを浮かべその他の花言葉を見る。
すると、
真也「……あ、あははー」
なにかを見て顔を赤くしながら気の抜けた笑い声を出す真也。
その視線の先を辿ってみると、なるほどこいしも赤面した。
そこに載っていたのは【一目惚れ】。
真也「ある意味これも奇跡だねー」
こいし「そうだねっ」
お互い顔が真っ赤だが、当時の2人にはそんな知識は無いので仕方のないことであった。
気を取り直して7色目、紫だ。
主な意味は誇りや上品など、威厳のあるものが多い。花言葉は【誇り】、【気品】といったところか。
色による違いは淡いものにあり、その花言葉は【気まぐれな美しさ】だ。
2人の脳裏に1人の人物がすぐに浮かんだが、気にすることなくそれを打ち消した。
このページはもう1色載っていた。
8色目、緑。花言葉は【穏やか・あなたは希望を持ちえる】だ。
真也「緑の薔薇って珍しいねー」
こいし「ねっ。緑色も綺麗でいいなー」
あまり見たことのない緑色の薔薇を、2人は思い思いに見てページをめくる。
9色目、虹色。
主な花言葉は【奇跡】、【無限の可能性】だ。
虹色は人工的に作られるため、天然物はない。しかし、それでも目に映る鮮やかさは天然の薔薇にも引けを取らないだろうと2人は感じた。
真也「これ、すっごく綺麗だねー」
こいし「ねっ。虹色かぁ……」
そう呟いたこいしの脳裏には、日ごろの感謝や気恥ずかしくてあまり口にすることの出来ない想いを、この薔薇とともに真也に贈りたいという気持ちが芽生えた。
それはすぐに決意に変わり、話しながらもどの色をどこで取るかなどの段取りを考え始めた。
虹色の隣からは今度は部分別の花言葉になっており、赤い薔薇の葉や葉全般での意味、棘などのが載っていた。
その下には種類別になっており、多弁と一重、野バラの花言葉が載っている。
このページはこれで終わっており、次のページを開くと今度は状態別で載っていた。
満開や赤と白のしおれたもの、白の枯れたもの。また棘のないものやその蕾にまで花言葉があった。
次ページは本数による花言葉になっていた。最初は1本から、最多では999本まで細かく書いてあった。
本数によるものだけでも多くの意味があり、それを1つずつ見ては一言二言会話を交わして次を見る。そんな時間が過ぎる中、こいしは気付いた。
黒の薔薇が出てこない、と。
もしかしたら気付いていなかっただけかもしれないが、たぶんまだ出て来てないだろうと思った。
なぜなら、青い薔薇のときに他より少し多く会話していたから、黒のそれなら忘れるはずがない。
だからまだなのだろうと結論づけた。
本数に続いて、今度は組合せについてだった。
赤い薔薇の中に白色や、黄色の薔薇の中に赤色。3つの蕾の中に1つの薔薇、2本の花に1つの蕾、2つの蕾に満開の花、草花に薔薇1輪とそれなりに多くの組み合わせがあった。
どれも悪い意味ではなかった。
そして、ここから先は別の花についてになっていた。
真也「あれー、黒の薔薇はないのかなー」
こいし「ねー。私もそれ思ってたよ」
2人はそのことを疑問に思いつつ、また読み進めることにした。
◆
しばらく読み進めていると、今度はあまり良くない花言葉を持つ花について載っていた。
今まで読んでも黒の薔薇が出てこなかったので、2人は一抹の不安を抱きつつも読み進めた。
そして、ついに探していた黒の薔薇を見つける。
その薔薇の花言葉は、
【貴方はあくまで私のもの】
【憎しみ、恨み】
【決して滅びることのない愛、永遠の愛】であった。
もちろん注釈もついていた。1つ目は恋人からの束縛のような意味、3つ目は単純な愛についてだと書いてあるが無意識にもっと愛してほしいということたとも載っている。
しかし、それ以上に2人に衝撃を与えたのは2つ目。注釈には、『この意味で送られたであろう場合は要注意。あなたに対して良くない感情があるので、何か起こる前にきっぱりと縁を切っておきましょう』、と書いてあった。
それを読んだ2人はしばしの間なにも話せなかった。
少し間を置いて口を開いたのは────こいしだった。
こいし「……私は、そんな意味で渡した訳じゃないからね。この花言葉で言うなら3つ目になるけど、私は今で十分嬉しいから、そんなに考えなくて良いからね?」
優しい声色で、少し泣きそうな表情で、彼女はそう言った。対する真也も、何かを言いたそうにはしているが、口をもごとごとするばかりで何も言い出せない。
ようやく出すことが出来たのは、『うん』、その一言だった。
彼の中では取り戻した感情が酷くうねり、今はない心を戻る場所も無いように埋め尽くしている。
真也「(分かってる。こいしがそんなことを想って渡した訳じゃないって分かってる。でも、この色にこんな花言葉がつけられているのは、やっぱり昔の僕が引き寄せたようなものなのかな)」
荒れ狂う悲しみにも似た何かと、静かに膨れ上がる憎悪にも似た“黒”。ただただ、ぐるぐると脳内を、身体を、ぽっかりと空いた大事なものの収まる空間を、それは駆け巡り彼を追い詰める。皮肉にも、彼を埋め尽くしているものも同じ“黒”だった。
どこまでも終わりの無いような真っ黒な思考を止めたのは、やはり彼女だった。
こいし「あなたが1人で考え込んじゃうのは分かってる。心の無いあなたの想いは私には読めないけど、薄く開いてるこの瞳にも、あなたの強い感情はなんとなく伝わってるんだ。だから、私も受け止めてあげる」
読んでいる最中は寝ころんでいたはずの彼女は、いつの間にか起き上がっており、彼を強い想いを込めた眼差しで見つめている。
釣られるようにか、無意識のうちか、どちらにしても彼にはよく分からないが起き上がった。
そして、彼女が彼を引き寄せる。
彼より少しばかり小さい身体に引き寄せられ、身体を抱かれながら頭を撫でられる。
何が起こったのか分からない彼だったが、起きたことに気付くと驚き、口を開く。
真也「……こいし?」
呼ばれた彼女はそのままの状態で口を開く。
こいし「大丈夫。私はあなたを裏切ったりしないから。私はあなたの味方であり続けるから。だから、安心して」
赤子をあやすように呟かれたその言葉は、不思議なほど彼を落ち着かせた。
彼の中を暴れ回っていたその“黒”もどこかに隠れてしまった。
落ち着いた彼は、いったん離してと言い、彼女から少し離れると今度は彼から抱きつく。
この行為に彼女は驚くこともなく、ただしっかりと受け止めた。
その時、小さく感謝の言葉が呟かれたが、ちゃんと聞こえていた彼女は彼に見えないように優しく笑っていた。
彼もまた、呟いた後一筋の跡が頬に残っていた。
はい、花言葉回でした。
真也「いろいろあるねー」
こいし「あんなにあるとは」
資料に探してたときは思いのほか多くて驚いてましたわ。
真也「次回はどうするのー」
コラボを進めたい、が、日常も進めないと。
こいし「頑張れー」
はい、では次回まで
「「「ばいばーい」」」